幼なじみ
この作品は、お題を元に書きました。
釣瓶落としとは、よく言ったもんだ。
この頃は、陽が落ちるのがめっきり早くなった。僕は、番犬の小太郎を連れて散歩に出る時間を早めたぐらいだ。
「あれは?」
ふと見ると夕暮れの道をこちらへ向かって誰かが歩いて来る。
女性だ。可奈子か?
やっぱり!
幼なじみの可奈子だ。おさげ髪に結んだリボンを揺らしながら彼女が歩いて来る。おさげ髪にリボンなんて今時には珍しい。
素朴な可愛らしさと言うんだろうか。
それでも街灯に照らし出された、その風貌は昔に比べれば、ずいぶん大人びて見える。
彼女は、県下一の公立高校に進学した。進学塾でも常にトップだった。 同じ塾でもSSクラスは授業の内容が違う。出来が違い過ぎて、僕は声も掛けられなかった。
だけど、この場合は挨拶するべきだろうな。
だけど……何と言おうか? よおっ、元気か? 勉強、頑張ってるんだってな。いや、そんなわかりきった事を今更……。もっと何か気の利いたセリフを。
彼女が近づいて来た。
「小太郎!」
「えっ?」
彼女の方から声を掛けて来た。
「小太郎! 久しぶりね。元気だった?」
彼女は小太郎に走り寄り、頬ずりして嬉しそうに笑っている。
「そっちかよ!」
「遼ちゃんも元気そうね」
「……もかよ。……もなのか? 犬への挨拶のついでかよ!」
―了―
お題
リボン
挨拶
街灯
から書きました。