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第2話 神殿の視線

 


昼の街は、

穏やかだった。


 


露店の呼び声。

子供の笑い声。


 


ロンドは、

セリオと並んで歩く。


 


後ろには、

ルーナ。


 


三人で依頼帰りだった。


 


「Eランクになったしさ、

 少しは楽になるよな」


 


セリオが笑う。


 


ロンドは、

曖昧に頷いた。


 


胸の奥に、

小さな違和感。


 


誰かに、

見られている気がする。


 


振り向く。


 


人混み。


 


誰も、

こちらを見ていない。


 


「気のせい……か」


 


その時。


 


黒いローブの老人が、

道の端に立っていた。


 


視線が、

ロンドに向いている。


 


目が合う。


 


老人は、

ゆっくりと頷いた。


 


「……雷が、

 目覚めつつある」


 


ロンドは、

足を止める。


 


「今、

 何て……」


 


老人は、

踵を返す。


 


「雷神神殿へ来なさい」


 


人混みに、

消えた。


 


セリオが首を傾げる。


 


「知り合い?」


 


ロンドは、

首を振る。


 


胸が、

ざわつく。


 



 


夕方。


 


街外れの丘。


 


古びた石造りの建物。


 


雷神神殿。


 


半ば崩れ、

人の気配は少ない。


 


「……ここか」


 


ロンドは、

扉を押す。


 


軋む音。


 


中は、

薄暗い。


 


香の匂い。


 


奥に、

老人が立っていた。


 


昼の男だ。


 


「よく来た」


 


低い声。


 


「私は、

 神官ヴァルド」


 


ロンドは、

一歩引く。


 


「俺に、

 何の用ですか」


 


ヴァルドは、

石の台座を指す。


 


古い本。


 


「古文書だ」


 


ページを開く。


 


「神が、

 人の器に宿る例がある」


 


ロンドの喉が鳴る。


 


「雷の神も、

 例外ではない」


 


「お前から、

 微かな神性を感じる」


 


ロンドは、

首を振る。


 


「そんな……

 俺は、ただの冒険者です」


 


ヴァルドは、

静かに言う。


 


「ならば、

 なぜ短期間で

 雷撃が成長した」


 


答えられない。


 


「恐れるな」


 


「今は、

 可能性の話だ」


 


「だが、

 狙う者も現れる」


 


ロンドは、

眉をひそめる。


 


「狙う?」


 


ヴァルドは、

目を細める。


 


「神性を、

 危険とみなす者たちだ」


 


胸が、

冷える。


 



 


夜。


 


宿。


 


ベッドに座り、

天井を見る。


 


――神が宿る。


 


そんなこと、

信じられない。


 


だが。


 


夢で見た影。


 


トールと名乗った存在。


 


思い出すと、

胸が熱くなる。


 


「俺は……

 何なんだ」


 


扉が、

ノックされる。


 


セリオ。


 


「大丈夫か?」


 


ロンドは、

少し迷ってから話した。


 


ルーナも、

黙って聞いている。


 


話し終えると、

セリオは笑った。


 


「難しいことは、

 分からないけどさ」


 


「ロンドは、

 ロンドだろ」


 


ルーナが、

小さく頷く。


 


「一緒……戦う」


 


胸が、

少し軽くなる。


 


「ありがとう」


 


ロンドは、

拳を握る。


 


自分が何者でも。


 


冒険者であることは、

変わらない。


 


だが。


 


遠くで、

雷が鳴った。


 


それは、

偶然ではなかった。


 


第二章は、

静かに深まっていく。


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