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前世で親友に裏切られた俺が復讐のために転生したら、親友も転生して先に成功していた件

作者:
掲載日:2025/10/10

前世で親友に裏切られた俺が復讐のために転生したら、親友も転生して先に成功していた件



「では、次回の講義でベンチャー企業の資金調達について......」


教授の声が遠くなっていく。


俺の名前は藤原健太。

都内の大学に通う、どこにでもいる経営学部の三年生だ。

就活を控えて、将来について真面目に考え始めた、そんな平凡な大学生——のはずだった。


講義室の窓から差し込む午後の光が、ノートに反射してまぶしい。

その光を見た瞬間、俺の頭に激痛が走った。


「うっ......」


思わず頭を押さえる。周りの学生は気づいていない。

だが、俺の脳裏には、次々と映像が流れ込んできていた。


——オフィスビル。夜景の見える高層階。


「健太、この契約書にサインしてくれ」


笑顔で書類を差し出す男。

茶髪で、人懐っこい笑顔。親友の——桜井悠斗。


「これで資金調達は完璧だ。俺たちの会社、絶対成功させような!」


信じて、サインした。それが全ての始まりだった。


会社の株式はいつの間にか桜井のものになっていた。

資金は消え、契約は全て桜井に有利なものだった。

気づいたときには遅かった。

会社は桜井に乗っ取られ、俺は借金だけを背負わされた。


「悪く思うなよ、健太。ビジネスは戦争なんだ」


桜井の冷たい目。

それが最後に見た光景だった。


過労とストレスで倒れた俺は、二十八歳で死んだ。


「——は、はぁっ!」


気づけば、講義室の自分の席で荒い息をついていた。

周りの学生が心配そうにこちらを見ている。


「藤原くん、大丈夫?」


「あ、ああ......ちょっと寝不足で......」


取り繕って笑顔を作る。

だが、心臓は激しく鳴り続けていた。


これは、記憶だ。大量に脳内に流れ込む前世の記憶。


俺は——転生者なのか。


教室を出て、トイレの洗面台で顔を洗う。

鏡に映る自分の顔は、確かに今まで生きてきた二十二歳の藤原健太のものだ。

だが、脳には二十八年間生きた記憶もある。

ITベンチャーを立ち上げ、親友に裏切られ、全てを失った記憶が。


「桜井......」


その名前を口にした瞬間、怒りが込み上げてきた。


だが同時に、冷静な部分もあった。

前世の知識がある。

IT技術、ビジネスモデル、未来の流れ——全部知っている。

今度こそ、あいつに勝てる。


俺は鏡の中の自分に向かって、静かに誓った。


「今度は、騙されない」



それから一週間。

俺は前世の知識を整理し、慎重に動き始めていた。


大学の講義にはきちんと出席しながら、スマホで株価をチェックし、仮想通貨の動向を追う。

前世で学んだ知識は、確かに使える。

少しずつだが、アルバイト代を元手に投資を始めた。


そんなある日、大学の掲示板にポスターが貼られた。


『特別講演会:若手実業家が語る、成功への道』

『講師:桜井悠斗(25歳・株式会社ネクストウェーブ代表取締役)』


その名前を見た瞬間、体が硬直した。


桜井悠斗——あの桜井が、この世界にいる?


慌ててスマホで検索する。

すぐにヒットした。

若手実業家として各メディアに取り上げられている桜井悠斗。

写真は——間違いない。

前世で俺を裏切った、あの顔だ。


「まさか......」


嫌な予感がした。だが、確かめなければならない。


講演会当日。大講義室は満席だった。

ビジネスに興味のある学生たちが集まり、期待に満ちた表情で壇上を見つめている。


そして、桜井悠斗が現れた。


スーツに身を包んだ彼は、前世と変わらぬ人懐っこい笑顔で手を振った。

だが、俺にはその笑顔の裏が見えている。


「皆さん、こんにちは。桜井悠斗です」


流暢な語り口で、自分の成功体験を語り始める。

大学時代から投資を始め、IT企業を立ち上げ、二十代で成功を収めた——という内容だ。


俺は後ろの席で、じっと桜井を観察していた。


彼の話には、前世の知識が含まれていた。

今後流行するであろうビジネスモデル、技術トレンド——それらを「自分で考えた」かのように語っている。


つまり、桜井も転生者だ。

しかも、俺より先に記憶を取り戻し、既に成功している。


講演が終わり、質疑応答の時間になった。

多くの学生が手を挙げて質問する。

桜井は一つ一つ丁寧に答えながら、時折会場を見回していた。


そして——俺と目が合った。


一瞬、桜井の表情が変わった。

驚きと、そして何か確信めいたものが、その瞳に宿った。


講演会が終わり、学生たちが桜井の周りに群がる。

俺はそっと会場を出ようとした。


「藤原健太くん」


背後から声がかかった。

振り返ると、桜井が笑顔で立っていた。


「少し、話さないか?」


その目は、全てを知っているかのように、俺を見つめていた。




大学近くのカフェ。

窓際の席で、俺と桜井は向かい合って座っていた。


「久しぶりだな、健太」


桜井は親しげに微笑んだ。

だが、その「久しぶり」という言葉には、明らかに前世の意味が込められていた。


「......お前も、か」


俺が呟くと、桜井は満足そうに頷いた。


「ああ。十歳の時に記憶が戻った。最初は混乱したけどな」


十歳——俺より八年も早い。

だから、こんなに成功しているのか。


「驚いたよ。まさかお前も転生してるなんて」

桜井はコーヒーを一口飲んで続けた。

「前世のことは......悪かったと思ってる」


「......」


「あの時の俺は若くて、野心に目が眩んでた。

でも今は違う。この人生では、ちゃんとやりたいんだ」


綺麗事を並べる桜井の顔を、俺はじっと見つめた。

この男の本性を、俺は知っている。


「それで、俺に何の用だ?」


「実は、お前に協力してほしい案件があるんだ」


桜井は身を乗り出した。


「新しいSNSアプリの開発プロジェクトなんだけど、お前の技術力が必要なんだ。

前世でお前が作ったシステム、あれは本当に素晴らしかった」


前世と同じだ。

同じ言葉、同じ笑顔、同じ手口。


「資金は俺が出す。お前は開発に専念してくれればいい。

成功したら、利益は山分けだ」


山分け——前世でも、そう言っていた。

だが実際には、全て桜井が持っていった。


「......考えさせてくれ」


「もちろん。でも、このチャンス、逃さない方がいいと思うぞ?」


桜井は名刺を置いて立ち上がった。


「連絡、待ってるから」


去り際、桜井は振り返ってこう言った。


「健太、今度こそ一緒に成功しよう。前世の失敗を取り戻すんだ」

その笑顔は、完璧だった。

だが俺には分かる。この男は何も変わっていない。


カフェを出て、俺はすぐにスマホで桜井の会社を調べ始めた。

表面上は順調な企業だ。

だが、よく見ると不自然な点がいくつかある。


急成長しすぎている資金繰り。

頻繁な人事異動。

そして——前世と同じように、共同創業者たちが次々と会社を去っている。


「やっぱりな......」


桜井は今回も、誰かを騙している。

そして次のターゲットは、俺だ。


俺は決めた。

表面上は桜井の誘いに乗ったフリをして、逆に彼の正体を暴く。

今度は、俺が罠を仕掛ける番だ。


「桜井さんのプロジェクト、参加させてください」


一週間後、俺は桜井のオフィスを訪れてそう告げた。


「健太!よく決心してくれた」


桜井は心から嬉しそうに握手を求めてきた。

だが、俺の心は冷えていた。


契約書を渡され、目を通す。

一見普通の共同開発契約に見える。

だが、細かい条項を読むと——

著作権は全て桜井の会社に帰属、利益配分は「協議の上決定」という曖昧な表現。


前世と全く同じ手口だ。


「問題ないよね?」


「ええ、大丈夫です」


俺はあっさりとサインした。

桜井の目に、一瞬だけ勝利の色が浮かんだ。


だが、俺には別の計画があった。


開発に携わるフリをしながら、俺は桜井の会社を徹底的に調べた。

前世のIT技術の知識を使って、彼の会社のシステムに不正にアクセスする——なんてことはしない。

それは犯罪だ。


代わりに、俺は表に出ている情報を丹念に集めた。

登記簿、決算報告、過去の取引先。

そして何より、桜井の会社を去った人々への接触。


そんな中、一人の女性に出会った。


「あなたも、桜井に騙されたんですか?」


カフェで向かい合った彼女——水野美咲は、疲れた表情で俺を見た。


「ええ。私は前世でベンチャーキャピタリストでした。桜井悠斗という男に投資して、全て持ち逃げされました」


「前世......じゃあ、あなたも」


「転生者です」美咲は苦笑した。

「十五歳で記憶が戻りました。今世では慎重に生きようと思っていたのに......桜井がまた現れて、また騙されました」


彼女の話を聞いて、全てが繋がった。


桜井は転生者を狙っている。

前世で自分が関わった人間を見つけ出し、前世の記憶を利用して再び騙している。

俺は三人目のターゲットだった。


「証拠は、ありますか?」


「ええ。契約書と、桜井の会社の不正な会計処理の記録」


美咲はタブレットを取り出した。

そこには、桜井の会社が投資家から集めた資金を、別会社に不正に流している証拠が並んでいた。


「でも、私一人では何もできなかった。

弁護士に相談しても、証拠が不十分だと言われて......」


「俺も、証拠を集めています」


俺は自分のスマホを見せた。

桜井の会社の不自然な取引記録、過去の被害者たちの証言。


「二人で協力すれば、桜井を止められるかもしれない」

美咲の目に、希望の光が宿った。


「本当に......彼を止められるんですか?」


「止めます。今度こそ、あいつに正義の鉄槌を」


俺たちは手を取り合った。

復讐ではない——これ以上被害者を出さないための、戦いだ。




美咲と協力して、俺たちは桜井の会社の実態を掴んでいった。


桜井の会社「ネクストウェーブ」は、表向きは順調なIT企業だ。

だが実態は、投資家から集めた資金を別のペーパーカンパニーに流し、桜井個人の資産として蓄えている——典型的な不正会計だった。


「こんなに杜撰なのに、なぜ今まで発覚しなかったんですか?」


美咲の疑問に、俺は答えた。


「桜井は転生者を狙ってる。前世の記憶がある人間は、普通の人より騙しやすい。

『前世の失敗を取り戻そう』という心理を突いてくる」


実際、俺も危うく騙されるところだった。

前世の記憶がなければ、桜井の本性には気づけなかっただろう。


「それに、桜井は頭がいい。小規模な詐欺を繰り返して、大事になる前に逃げる。

被害者は泣き寝入りするしかない」


「でも、今回は違う」


美咲は決意を込めて言った。


「私たちには証拠がある。そして——来月の株主総会で、全てを暴露する」


桜井の会社の株主総会。

俺と美咲は、別々のルートで少数株主となっていた。

株主として参加する権利がある。


「問題は、どうやって確実に証拠を突きつけるかだ」


俺たちは綿密な計画を立てた。

会計士、弁護士、そして過去の被害者たち——全員に協力を求めた。


そして、桜井には「プロジェクトが順調だ」と報告を続けた。

彼は俺を完全に信用していた——いや、舐めていた。


「健太、お前のおかげでアプリ開発が進んでるよ。やっぱり組んで正解だった」


オフィスで笑顔を見せる桜井。

その顔を見ながら、俺は心の中で思った。


今度は、お前が騙される番だ。


株主総会の一週間前。

俺は桜井に「全財産を追加投資したい」と申し出た。


「本当か、健太!」


桜井は目を輝かせた。

まさに、前世で俺が見せた表情と同じだ。


「ああ。このプロジェクト、絶対成功すると思うんだ」


嘘だ。だが、桜井はそれを信じた。

自分が絶対に勝つと思っている人間は、相手が罠を仕掛けているとは考えない。


契約書を準備すると言う桜井に、俺は笑顔で答えた。


「株主総会の後でいいですよ。そこで正式に発表しましょう」


「いいね、それ! 株主たちの前で発表すれば、会社の評価も上がる」

桜井は完全に罠にはまっていた。


株主総会——それが、決戦の日だ。



株主総会当日。会場となったホテルの会議室には、投資家や株主たちが集まっていた。

壇上には桜井が立ち、自信に満ちた表情で業績報告を行っている。


「今期の売上は前年比一五〇%増。新規プロジェクトも順調に進んでおり......」


流暢な説明に、株主たちは満足そうに頷いている。

だが、最前列に座る俺と美咲は、じっとその時を待っていた。


「それでは、質疑応答の時間に移ります」

司会者の言葉と同時に、俺は手を挙げた。


「質問があります」


桜井は一瞬、俺を見て微笑んだ。

だが、その笑顔はすぐに凍りついた。


「御社の決算報告書に、いくつか不自然な点があります」


俺はタブレットを掲げた。

スクリーンに、桜井の会社の不正な会計処理が映し出される。


「この『業務委託費』として計上されている三億円——実際には存在しない取引先への架空支払いですね?」


会場がざわついた。

桜井の顔から血の気が引く。


「ま、待て。それは——もちろん存在している取引先で…」


「まだあります」

美咲が立ち上がった。


「私は以前、この会社に投資しました。ですが、約束された配当は一度も支払われていません。

それどころか、投資金は代表個人の口座に流れています」


スクリーンに次々と証拠が映し出される。

株主たちの表情が変わっていく。


「これは......どういうことだ?」


「桜井社長、説明してください!」

株主たちが立ち上がり、桜井を問い詰める。


「お、落ち着いてください。これは......誤解です。会計上の処理ミスで......」


「ミスじゃありません」

俺は冷静に続けた。


「あなたは意図的に投資家を騙し、資金を横領していた。それも——」

俺は桜井をまっすぐ見つめた。


「前世と、全く同じ手口で」


その言葉に、桜井の目が見開かれた。


「お前......前世の記憶があるのか?」


会場が静まり返る。

だが、俺は構わず続けた。


「ああ、そしてお前の手口も全部覚えてる。前世で俺を騙した時と同じだ」


桜井の表情が歪む。

焦り、怒り、そして——恐怖。


「お前は今回も、転生者を狙って騙し続けてきた。

前世の罪悪感や失敗を利用して、同じ人間を何度も」


「黙れ!」


桜井が叫んだ。


「お前に何が分かる!前世でお前は甘すぎた。

ビジネスは弱肉強食だ。騙される方が悪いんだ!」


「その理屈で、どれだけの人を傷つけた?」


美咲が声を上げた。

会場の後ろから、さらに数人の男女が立ち上がった——過去の被害者たちだ。


「私も騙されました」


「俺も前世の記憶を利用された」


次々と証言が上がる。

桜井の顔は真っ青になった。


「これで終わりだ、桜井」


俺は最後に告げた。


「お前はもう、誰も騙せない」


会場は騒然となった。

株主たちは桜井の即時退任を要求し、弁護士は警察への告訴を宣言した。


桜井は崩れ落ちるように、その場に座り込んだ。


「なんで......なんでお前らは......」


その呟きを、俺は冷ややかに見下ろしていた。

因果応報だ。前世で蒔いた種が、今世で実を結んだだけだ。




株主総会から二週間後。


桜井悠斗は会社から追放され、不正会計と詐欺の容疑で警察の捜査を受けていた。

彼の資産は凍結され、社会的にも完全に終わっただろう。


俺と美咲は、会社近くのカフェで向かい合って座っていた。


「終わりましたね」

美咲は安堵の表情を浮かべた。


「ああ」


俺はコーヒーを飲みながら答えた。

だが、胸の中にあるのは達成感ではなく——妙な虚しさだった。


「どうしたんですか?勝ったんですよ」


「......そうだな」


確かに勝った。

桜井は全てを失い、二度と誰かを騙すことはできなくなった。

俺の復讐は果たされた。


だが、それで前世の苦しみが消えるわけじゃない。

失った時間が戻るわけでもない。


「藤原さん」


美咲が真剣な目で俺を見た。


「私たち、被害者の会を作ろうと思うんです。

転生者を狙った詐欺の被害に遭った人たちを支援する団体」


「......そんなものが必要なのか?」


「必要です。桜井みたいな人間は、他にもいるかもしれない。

前世の記憶がある人間は、それを悪用されやすい。

だから——守らなきゃいけない」


美咲の言葉に、俺は少し救われた気がした。


復讐だけで終わるんじゃない。

この経験を、誰かを守るために使う。それなら——少しは意味がある。


「協力します」


俺はそう答えた。

美咲は微笑んだ。


「ありがとうございます。それと——新しいプロジェクトも始めようと思って」


「プロジェクト?」


「ええ。今度は本物のSNSアプリを作りませんか? 詐欺に使うんじゃなく、人と人を本当に繋ぐための」


その提案に、俺は少し考えてから頷いた。


「いいな、それ」


前世で俺が本当に作りたかったもの。

桜井に裏切られて、実現できなかったもの。


今度こそ、本物を作ろう。

信頼できる仲間と一緒に。


窓の外では、夕日が沈み始めていた。


俺は前世の記憶に囚われていた。

復讐することだけを考えていた。だが——それだけじゃ、何も生まれない。


桜井は全てを失った。俺の復讐は完遂した。

でも、それは終わりじゃなく——新しい始まりなんだ。


「じゃあ、明日から動きましょう」

美咲が明るく言った。


「ああ」


俺は初めて、心から笑顔になれた。


前世の失敗は、確かに痛かった。

だが、その痛みがあったから——今の俺がある。

二度と騙されない強さと、本当に信頼できる仲間を見極める目を持った俺が。


カフェを出て、夜の街を歩く。

前世では届かなかった夢に、今度こそ手が届く気がした。


復讐は終わった。


そして、新しい人生が——今、始まる。




【完】

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