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006 Dランクへの昇格

 オルトがオーク討伐に慣れてくれたおかげで、私たちの稼ぎは飛躍的に増えた。オルトも私も、着実に強くなってる。そして今日、ついにその努力が実を結んだ。


 ギルドの受付カウンターで、オルトが真新しいギルドプレートを受け取っている。その表情は、隠しきれない喜びで輝いている。


「オルトさん、この度はDランクへの昇格、おめでとうございます!」


 職員の言葉が聞こえる。彼のギルドプレートには、私が推薦したことで与えられていたEランクの文字ではなく、Dの文字が刻まれている。彼の努力が認められた証だ。


「ありがとう……ございます!」


 オルトが嬉しそうに、頭を何度も下げてる。職員が、Dランクから受けられる新たな依頼や、利用できるようになるギルドの設備に関する説明を始める。

 オルトが真剣な表情でそれを聞き入ってる。少し離れた場所から、その様子を眺めていた私は、出会ってからこれまでのことを思い出した。


 オルトは、最高の拾いものだった。ゴブリンロードが居るって噂を聞いて、それを探し回ってたら、光の柱が見えて、そのもとへと急いだら1人でオロオロしてるオルトを見つけたんだよね。そして、そのオロオロしてた人が、1ヶ月もせずにDランク。

 オルトの世話で減ってた収入も、オークを討伐するようになってすぐに取り戻せた。オークの魔石はそれなりの価値があるけど、無駄にサイズが大きいのが難点で、私的には稼げる魔物じゃなかったけど、オルトが荷物持ちとして優秀だから、重さも嵩張ることも考えずに、効率よく稼げるようになったのが大きい。


 オルトが職員の説明を聞きながら、ウンウンと頷いている。


 稼ぎはともかく、彼の「癒しの加護」は、とんでもないスキルね。私の身体能力が、この短期間に、驚くほど向上してるのが分かる。

 トレーニングは前から続けてるけど、成長してるのがここまで実感できることなんてなかった。彼の加護を受けて眠る。それだけで、私の微妙だった身体能力が、どんどん強くなってる。ハッキリ言って、これは知れ渡ると危険なレベルだ。


 オルトがDランクから使わせてもらえる、ギルド内にある倉庫へ連れて行かれる。


 もし、この急成長させる力を軍やギルドに知られたら、きっとあちこちから求められるようになる。強い兵士や冒険者を創り出すための「道具」として。最悪自由を奪われる。私が受けてるこの恩恵には、それだけの魅力と価値がある。

 だから、この成長促進効果については私たちだけの秘密だ。でも彼は「癒しの加護」の凄さには気づいているようだけど、その潜在的な危険性までは分かっていない気がする。知っといたほうがいいと思うけど、まだその部分は説明してない。

 だって私が満足するまでは、スキルを使い続けてもらわないと困るもん。もし説明した途端に、私にも使ってくれなくなったら本当に困る。私はもっともっと強くなりたい。もっと経済力をつけないと、支えたいものも支えられない。


 職員と戻ってきたオルトが、私に軽く手を振って、また説明の続きを聞いている。その聞く姿勢にも真面目さが見える。


 オルトって本当に真面目よね。義理堅いし、とてもいい人。正直で変に欲もない。言葉はまだカタコトだったりするけど、ちゃんと人の話を聞いてくれるし、私のことを信じてくれてる。あの時のギルドの一件を考えても、私のことを大切に思ってくれてるのは間違いないはず。私は、彼が良ければこのままずっと一緒でいいと本気で思ってる。


 ただ、一つ心配なことがある。


 オルトの身体能力の成長はとんでもなく早い。この先、彼が自分の凄さを自覚するようになったら、私みたいなCランクの冒険者じゃなくて、もっと高ランクの冒険者と組みたくなるかもしれない。それは仕方のないことだと理解できるけど……ちょっと寂しい。

 そうならないように、オルトを私に惚れさせることができたらいいんだけど、私、そういうの苦手なんだよなぁ。どうすればいいかよくわからない。

 この2年、私はずっと一人で活動してきた。 変な噂が一度立つと、どこのパーティーも誘ってくれなくなる。実力がなくても、可愛らしさでちやほやされてる子もいるから、それと比べると、正直女としての魅力にも自信が持てない。

 男女のペアパーティーだと、なんとなく親密な関係になることが多いって聞くけど、私には経験がない。オルトとは仲良くできてると思うけど、男女として関係が近づいてるのかは微妙。

 オルトが夜中にトレーニングに出かける前、私の寝姿を眺めてることはある。それは気づいてる。でも強い下心があれば警戒スキルで感じ取れるんだけど、それが全然ない。

 無防備な格好も見られてるはずなのに、そういうのが無いってことは……本当に真面目なのか……それとも私に魅力がないのか……どっちなんだろ? 

 でも、眺めてるってことは、眺める価値はあるってことよね? きっと。


 ギルド職員からの説明が終わり、オルトが戻ってくる。


「おまたせ」


 オルトにそのあたりのことを聞いてみたいけど、そんなことを聞いたら、私がそういうの求めてるみたいに聞こえるよね。さすがにそれは恥ずかしい。

 まぁいいや。仲は良いんだから。なるようになるでしょ。


「昇格おめでとう」

「ありがとう」


 オルトはいつもどおりの人の良さそうな笑顔だ。だからこそ読めない。たまにはいやらしい顔でもしてくれたら、気持ちが読みやすいのになー。



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