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戦闘員の祈りと願い

 森の奥深く、山菜を採りながら進むうち、複数のゴブリンの気配を察知した。

 即座に【隠密】を発動する。

 このスキルは、自分の存在感を薄め、匂いすらも消してくれる……気がする。

 相棒のリョウをコマンドグローブ状に変化させ、経験値を稼がせるのを忘れない。

 ゴブリンの背後に回り込み、炎をイメージした浸透系の打撃技を繰り出す。

 しかし、手応えどころか、何の感触もない。

 他の生活魔法も試してみたが、結果は同じだった。


「いけると思ったのに、なぜだ……?」


 腕を組み、思案する。感覚的には、少しパワーが足りない。

 火の魔法にしたって、ライターの炎より小さい程度だ。以前、生活魔法の威力を上げた時のように、精霊にお願いすればいいのだろうか?


「オラシオン・火!」


 そう念じながらもう一度一撃を放つと、今度は確かに手応えがあった。

 しかし、ゴブリンは燃えることなく、ただ苦しそうにうずくまっただけだ。おそらく、体内で発火したのではなく、高熱で動かなくなったのだろう。


〈エンマ様、オラシオンって何ですか?〉


リョウの声が頭に響く。


「技名があった方がいいと思って、スペイン語で『願い』と念じながらやってみたんだよ!」


〈スペイン語ならデセオです、オラシオンは『祈り』です〉


「……リョウさん。デセオ(お願い)ですから、忘れてください」


「……はい」


 今、ちょっと考えたよね? 後でネチネチ言うつもりだよね?


「そんなことよりも、他の生活魔法も試してみてはどうですか?」


 リョウに促され、その後も色々と試した。


生活魔法:デセオの追加効果


* 水:肺に水が溜まり、溺れたかのようにゴブリンは苦しんだ。


* 風:血流が阻害され、うまく動けなくなる。場所によっては即死もあり得るようだ。


* 土:アレルギー反応か、拒絶反応のように体が痺れた。


* 光:特別な追加効果はないようだが、打撃を与えた場所がしばらく光る。


* 闇:動きが鈍くなる。毎回ではないが、一時的に目が見えなくなる効果もある。


* 電:一定の確立でスタン効果がある。


* 振:単純に打撃の威力が倍になる。


* 癒:ゴブリン相手では効果が分からなかった。帰ったらガルで試してみるべきか。


 各技を試した結果、「振」は威力もあり一番使えそうだ。「電」と「闇」は追加効果があるので、実戦で使い勝手があるだろう。

 その他の魔法も使えるが、即効性がないため、一撃で倒せない大型の魔物には有効かもしれない。


 次はオークで試すかと考えていると上空から気配がして咄嗟に後方に跳び避ける。

 俺が居た場所は土埃や土砂が飛び散りそれらが晴れるとコウモリの翼を持ち角の生えたゴリラの様な筋肉をした奴が拳でクレーターを作っていた。


「誰だお前?」


「魔族『不死身』のジョーワン、オマエは危険な匂いがするから殺す!」


 問答無用で突進してくるがそれを避けながら


「リョウ、フル装備だ!」


〈了解〉


 コマンドグローブが一気に広がり全身を覆り手には日本刀。

 エンマは日本刀を構え、ジョーワンの追撃をかわす。

 ジョーワンは見た目に反して素早い動きで、巨体から繰り出される拳は一撃必殺の重みを持つ。

 エンマは【隠密】で存在感を消しながら、ジョーワンの攻撃範囲外に身を置く。

 しかし、ジョーワンは鼻をひくつかせ、エンマの位置を正確に把握しているようだった。


「その臭い、消しきれてねぇな!」


 ジョーワンが地面を蹴り、エンマの背後に回り込もうとする。

 エンマは咄嗟に【電】の魔法を日本刀に纏わせ、すれ違いざまに斬りつけた。

 ジョーワンの巨体に電撃が走り、一瞬の硬直が生まれる。


「効いたな!」


 エンマは追撃をかけようとするが、ジョーワンはすぐに体勢を立て直し、怒りの形相で咆哮した。


「小賢しい!」


 ジョーワンの拳が再び地面に叩きつけられ、土煙が視界を遮る。

 エンマは煙幕の中から現れるジョーワンの姿を捉え、今度は【闇】の魔法を刀に込めて斬りかかる。ジョーワンの動きが一瞬鈍り、エンマは間合いを取ることに成功した。


「リョウ、奴の弱点はどこだ?」


〈分かりません。ただ、魔族にしては単純な動きをしています。脳筋タイプではないかと〉


「脳筋か……なら、頭を狙うしかねぇな」


 新たな戦術

エンマはジョーワンの突進を受け流しながら、【振】の魔法を込めた拳を繰り出す。

 ジョーワンの腹に直撃するが、ビクともしない。むしろ、ジョーワンは不敵な笑みを浮かべた。


「効かんな!俺は不死身のジョーワンだ!」


 その言葉に、エンマは焦りを感じる。

 生活魔法だけでは、この不死身の魔族を倒すのは難しいかもしれない。その時、リョウの声が頭に響いた。


〈エンマ様、先ほどの『願い』の魔法、もう一度試してみてはどうですか? 精霊に強く願えば、もしかしたら……〉


 リョウの言葉に、エンマはハッとする。

 そうだ、精霊に直接頼む『オラシオン』だ。エンマはジョーワンの攻撃を紙一重でかわしながら、集中力を高める。


「オラシオン……火! デセオォォォォ!」


 エンマは刀を突き出し、ジョーワンに向かって強力な炎の塊を放つ。それはライターの炎とは比べ物にならないほど巨大で、熱を帯びた炎はジョーワンの巨体を包み込み倒れた。


〈終わった⋯のでしょうか?〉


「それフラッグ⋯」


 言い終わる前にジョーワンは立ち上がり拳を振りかぶり攻撃してくるがスピードが落ちている。


 日本刀を上段に構え振り下ろしジョーワンを真っ二つに切り裂いた。


「俺が危険だと思うなら逃げとくべきだったな」

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