クラシックだけが人生だ
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
私の好きな曲をギチギチに詰め込んだ話。
バルカローレ以外は、有名所なので、馴染み深いかと。
夕暮三時、日も傾き掛けて来た頃合い。俺達は行きつけの純喫茶を訪れていた。深紅の壁で覆われた、何処か暖かみのある店内。無口なマスターがせっせと給仕を行うその中で、俺達は三時宜しくお茶を嗜んでいた。
互いに同じメニューを頼んだ。オリジナルの珈琲と、キャラメルムースのケーキ。高級茶器に乗せられた其れを見ていると、幸せな気持ちになる。
女は黙ってケーキを口に運び、ミルクを溶かした珈琲に口を付ける。時折味わう様に瞼を閉ざし、今の至福を享受する。今が何よりも幸せなのだと。そう空気が語っていた。
「今際の際は、此処の喫茶店に来て、美味しい美味しいキャラメルムースのケーキを食べて、それから、それから、近くの本屋で流れるグラズノフのバルカローレ聴いて眠りに着くの。そうしたらきっと天国に行ける」
「此処で最後じゃないのか」
「うん。此処も素敵だけど、鎮魂歌には向かないかな。アグレッシブだからね。蘇生しちゃうよ」
まぁ確かにな。純喫茶で流れる音楽というのは、しっとりしたクラシックを連想させる。けれどもこれが意外。アグレッシブなのだ。ワルキューレ行進曲は何度聴いたか分からない。幻想即興曲だって。此処だけにあらず、別の純喫茶でも。
バルカローレとは、イタリア語で舟歌を意味する言葉である。曲調は全体的に落ち着いていて、バックで流れるピアノの高音が雨音の様に跳ね回る曲。灘らかな水流の真上、オールを水に沈める水音が丁寧に曲に落とされている。良くこんなにもピッタリの曲を作ったもんだと思う程に。
俺も同じ様にケーキを口に含みながらぼんやりと考える。確かに、悪く無いのかも知れない。
「G線上のアリアも綺麗だけどね。あれは薔薇だから、人生の全盛期に流すのが良い。薔薇色だけが人生だって謳うんだ。でも私はフーガト短調。是非パイプオルガンで。禁欲だけが人生だ」
女はそう言って笑った。分からない言葉の羅列。実はただの戯言で、なんの意味も無いのかも知れない。
「最後の最後まで、素敵な物に満たされて今際を迎えたいよ。難しいかな?」
「そうだな。死ぬ時間は選べないんだ」
ただ指揮者の意のままに、楽譜に刻まれた音符のように、時を刻み続ける。それだけが人生だ。
オマケ
「ずっとずっと探して居るんだ。硝子の声で鳴く楽器。なんて言うのだろうね。君詳しいから知ってる?」
「チェンバロ。因みに協奏曲がお前に合いそう」
「有難う。漁る事にするよ」
G線上のアリアで薔薇を連想し、
フーガト短調は厳格故に禁欲で、
バルカローレは最期に一緒に居て欲しい。
という感性で今を生きてます。
えぇ、感性のままに書くとこうなります。意味不明!!
禁欲だけが人生だと思う事が増えてきたので、G線上のアリアは私には過ぎたもの。
目に毒な程に輝き過ぎている。
最近知ったのです。ステンドグラスの声で鳴く楽器。
何年も、何年も、探し続けても見つから無かった楽器。
チェンバロでした。
なんならド偏見で打楽器だと勘違いしてました。
これから沢山聴きます。
喫茶店って意外とアグレッシブなクラシック多いんです。これは大マジです。是非皆様も体験して欲しい。
そして全力で捌くマスターの動きも見て戴きたい。
寝る前に聞くと目が覚めるので、それ以外のをお勧めします。
ショパンとかラヴェルとか、お勧めです。
ショパン派です。
グラズノフのバルカローレがお好きなら、ラヴェルの『水の戯れ』お勧めです。雨音は癒し。