長年一緒に居た幼なじみを振った私は好きを見つける。
「天ちゃんずっと前から好きだった!俺と付き合ってください!」
入学式が終わった後神凪高校の校舎裏。
腰から上を綺麗に曲げ、手を差し出し純粋な好意を伝える人がいる。
その人の名前は如月愁。
客観的に捉えているので当事者ではないと思うかもしれないが残念ながらその好意を向けられているのはその好意を向けている人の幼なじみ。
私、私桜羽天歌である。
まさか私が愁から告白されるとははっきり言って思って無かった。
私の中ではもう何年もいつも一緒に行動しているので、傍にいるのが当たり前のような存在になっていたから。
愁もそう思っていたのかと思ったのだがそうではなかったようだ。
長年一緒にいたからわかる。いつもより声は少し高くなってるし、お辞儀はいつもより低いし、手を差し出す時も動きがカクカクしていた。
今は愁がお辞儀してるから見えないけどきっとぷにぷにのほっぺも真っ赤なんだろうなぁ…
ほんと可愛い私の幼なじみ。
でも私の中で告白の答えは決まっている。
「ごめんなさい。私は愁とは付き合えない。もう一緒にいすぎて傍に居続けたから好きって気持ちがわかんなくなっちゃったの。」
そうなのだ。
私は好きという気持ちがよく分からなくなってしまった。
小さい頃は愁がとても好きで好きでたまらなかった。
だけど愁と一緒に過ごすにつれ段々と愁が傍にいる事が当たり前になっており好きという気持ちが分からなくなってしまった。
こんな気持ちの私と付き合ってもらうなんて愁に失礼すぎる。
「っ!!」
そんな事を考えてるうちに愁は涙を零しながら校舎裏から走り去っていった。
告白を断られたのが辛いのは分かるが少しぐらい残ってくれたっていいじゃないか。
私だって今あなたと同じような気持ちを持ちながら涙の雫を零しているのだから。
あぁ…私が愁の事を振ったとはいえ理由も聞かずに走り去って行った愁。
その行動に私は拒絶を感じてしまった。
本当は私だって愁と一緒に居たい。
ただ今までの関係を続けていたいだけだった。
でももうこの関係は終わりだろう。
私が愁を振ったことによって終わりを迎えたのだ。
これからは私も愁も気まずいので近づけないだろう。
私から近づいても今日のように拒絶される。
そう思うとさっきまでは雫だった涙がとめどなく私の頬を流れていく。
私のこの涙を止めるには私が好きを見つけて愁に私から告白する必要があるのだろう。
私の願い。愁と一緒にいたい。を叶えるために。
だからこそ今のままではダメだったのだ。
愁が傍にいるのが当たり前。ではなく愁がいなくてはダメ。と思えるように。
愁と距離を開ければ私が好きを見つけられると信じて。
翌日。
私はいつも迎えに行っている愁の家に行かずに学校へと向かった。
いつも笑いあっている幼なじみが隣に居ないのはとても辛かった。
それでも私は頑張って学校へと歩を進めた。
教室に入ると入学式翌日だというのにとても賑やかだった。
何人かで集まって駄弁っている人達。
友達を作ろうとクラスメイトに話しかけに行く人。
スマホでゲームをしていて何か悔しかったのか声をあげる人。
様々な人がいた。
その一方で静かに読書をする人。中学校の復習をする人。
そして絶望したような顔をした人…愁だ。
近くに行って慰めてあげたい。
頭を撫でてどうしたの。って言いたい。
私がいるからね。って言ってあげたい。
だけど私にその権利はない。
「ねぇねぇ。君そんな泣きそうな顔してどうしたの?」
そんな事を考えていると明るそうなクラスメイトが話しかけてきた。
「え?私泣きそうな顔してたの?」
「うん。今にも泣き出しそうな顔してたよ!どうかしたのかなって思って話しかけてみたんだ。」
なんと。私は泣き出しそうな顔をしていたようだ。それが気になってこの人は話しかけてきたようだ。
「ちょっとね…」
流石に名前も知らない人に私の気持ちを言う訳にはいかない。そう思い濁していった。
「む。今名前も知らない人に気持ち言うなんていけないって思ったでしょ?」
そうクラスメイトが言ってきて私の顔は驚愕に染まった。
彼女は超能力者か何かなのだろうか。
「あはは!図星だったみたいだね。じゃ改めて私は高宮陽夏!よろしくね!」
「あっ。うん。私は桜羽天歌。」
しまった。勢いに流されて名前を言ってしまった。
くっ。なんか負けた気がする。
「これでもう知らない人じゃないね!悩みをいってごらんよ。」
「はぁ…分かったよ。」
この人から悩みを話さずに逃げるのはどうせ無理だろうなと思ったので素直に悩みを話すことにした。幸い良い人のようだし。
「…ちょっと天歌たん…それは普通に恋だよ…」
むっ。私は真面目に考えていたのに。今までの考えが否定されたみたいで私は顔を顰めた。しかも天歌たんって。
「ごめんごめん。そんな顔しないでもうずっとに一緒に居たいってだけでそれは好きって気持ちなんだと私は思うよ。」
さっきの巫山戯たような表情から変わり真面目な顔で陽夏は私をさとしてきた。
「そうなのかな…?」
「そうなんだよ!」
一緒に居たいって思うのが好きって気持ちなのか。
愁と一緒に居たいって思うと急に頬が熱を持った。
こんなこと今まで無かったのに。
「ははは。天歌たん可愛い〜!でもその顔はもう分かったんだね。じゃ行ってきな!」
「わっ!ちょっと陽夏っ!」
いきなり背中を押されて私は倒れそうになってしまった。
でもそのお陰で私の行動は決まった。
待っててね。愁。
好きを知った私は君がどんなに気まずい顔をしていても止まらないから。
絶対に君と。
愁と付き合ってやる。私のできる全ての事を使って。
あれです。
勢いで書いた小説です。
ちょっとアクセス数多かった場合は天歌のアタック連載で書いていきます。
お優しい方。
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