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異世界コールセンター 再び

作者: KINA

~・~ ようこそ!HALO WORKへ! ~・~



『ではこちらのご依頼などいかがですー?』


「えっと…”村近くの洞窟に住み着いた大型獣を退治してください”か、大型獣の詳細が書いてないですg…」

『これはですねーいくつか段階を踏んで最終的には討伐出来れば良いなーって依頼でして、まずは”現地調査”を成功させるだけでも報酬が出るんですよー。』


「食い気味にきますね… あ、そうなんですね。一人でも出来るってことですか。」


『そうですそうですー、もし討伐対象の確認が出来ましたら改めて人を集める、そんな流れになりますねー。』


「そのー、こういうの初めてなんですけど危険じゃないですか?」


『そーですねー、確認の方法は冒険者の方々にお任せしておりますが、足跡を石膏や粘土で型取りしたり、獣であれば糞を採取したりといった方法でも良いんですよー。私共には色々な情報が揃ってますので、大型獣の判別はお任せくださいー。』


「わかりました。じゃぁコレでお願いしまs…」

『はいー!ではこの書類にお名前をご記入ください。』


「グイグイきますね…、ここですね、……はい出来ました。」


『はいー!ではこちらが冒険者斡旋組合(ハローワーク)の身分証明証になりますのでー、現地の依頼者にこちらとこちらとこちらの書類を渡した上でサインを貰ってくださいねー。』


「わかりました。」


『それでは行ってらっしゃいませー!』









~・~ 異世界コールセンター 再び ~・~




所長ちょっとよろしいですか?


「どうした、なにか問題でも起きたのか?」


半年ほど前に住宅保険に入っていただいた方からの入念話なんですが、ウチで扱ってる保険の対象になるかどうか判断が難しい事態が起きているとのご相談なんです。


「具体的にはどういう内容なんだ?」


住宅購入と同時に保険に入ってもらったのですが、ウチの保険って主に自然災害が対象じゃないですか。


「地震・火災・水難による損害、ぐらいだな。」


オプションで自然発生による魔法被害もありますが今回は入ってらっしゃらないので置いときます。


「うむ、それで?」


何でもここ1週間ほどお客様の住宅の周りで不審者がうろついているらしいんですよ。


「不審者?」


えぇ、お客様が居ないときを見計らって敷地に侵入しては石膏や粘土をばら撒いていくそうなんです。


「石膏?粘土?なんでそんなモノを??」


最初は気にせず掃除していたらしいんですが、次の日にはまた粘土が置いてあり、片付けても片付けても次の日には置かれていると…


「変質者か?」


しかも…、あの、お客様の…、トイレまで荒らそうとした形跡があったそうです。


「…変態だな。」


変態ですね。間違いありません。



「それでお客様はどうして欲しいと?」


念話相談所(コールセンター)の住居保険条文に「住居の安全をお守りします」とあるので、この不審者の対処を保険内で対応して欲しいとの入念話なんです。


「あーなるほど、自然災害保険だから防犯まで含めるかどうかってことか。」


そうなりますね。


「お客様の契約期間は?」


終の住処っていうんですか、既に現役を引退しておられて、風光明媚な場所で余生を暮らしたいとのことなので、無期限での契約ですね。


「お得意様だな。」


お得意様なんです。



「よし、ではすぐさま出張対応で現地調査を行おう。」


はい。


「お客様の安心があってこその保険だ。」


はい。


「おまえ、出張対応してきてくr」

イヤです。


「即答かよ。」


だって相手はトイレを荒らすような変態ですよ?不用意に近づいて変態行為の対象が私になってしまう可能性だってあるじゃないですか。私が狙われた場合は労災になるんですか?


「労災ってなんだよ。確かに相手は変態だが、まずは素性を調べてからじゃないと国家権力へ突き出すことも出来ないだろう。」


そりゃまぁそうですけど、ウチの住宅保険の範疇を越えているようにも思うんですが?


「無期限契約のお得意様のためなら、たとえ火の中水の中。」


所長が直々に出向かれるのはどうでしょう。


「変態行為の対象が俺になるかもしれーじゃないk」

それはないですね。


「即答かよ、少しは敬えよ。」


所長と私を天秤にかけるとどうしても我が身が愛おしくて…


「お前も大概だな。」


ありがとうございます。


「褒めてはねーよ。」


そんな気はしてました。




「しかし、お客様の身に危険が及ぶ前になんとかしないとだ。」


たしかにそうなんですよね。


「よし、出張手当と有給二日、あと変態への対処が完了した時点で金一封を出そう。」


う、出張手当は当たり前として有給二日は魅力ですね。変態への対処は国家権力へ報告するだけですか?


「もちろんだ、ウチには逮捕や拘束の権限はない。変態行為の状況証拠を集めたら最寄りの国家権力へ提出して後はあちらさんに任せればいい。ついでにお客様に防犯魔法の設置か用心棒の斡旋の提案もしておきたい。」


それらも住宅保険内で対応するんですか?


「お得意様向けの柔軟な対応というやつだ。防犯に使えそうな魔法なら提携している魔法組合にそういうアイテムがあるし、警護なら冒険者斡旋組合(ハローワーク)に求人を出せば問題ないだろう。ただし今回だけな。」


わかりました。私もお得意様になりたいです。


「お前は出張対応得意さまだな。」



「お前は出張対応得意さまだn」

いえ聞こえてますよ。有給三日に釣り上げるタイミングかどうかを考えていただけです。


「既に契約は決定しているので変更することは出来ない。心苦しいが、出来ない。」


はぁ… とりあえず魔法組合とハローワークにも顔を出してから現地に向かいます。


「おう、よろしく頼む。」




「あ、そうだ、」


なんでしょう?


「そのお得意様なんだが、どういう方なんだ?」


そうですね、契約書には種族:重獣龍種、職業:元魔獣国四天王と書いてありますね。若い頃はヤンチャしていたが今は丸くなり『四天王の中でも最弱よ』とのことです。


「そういう肩書の方でも変態は怖いんだなぁ。」


そりゃ何されるかわかりませんものね。


「粘土に石膏、そしてトイレ荒らしだもんな。」


変態、ダメ、絶対、ですね。じゃ席に戻って出発の準備を進めます。




こうして今日も念話相談所(コールセンター)の対応職員はお客様の笑顔のために世界へ旅立つのでした。

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