眞木治水(まき おさみ) (1)
「えっ……?」
高校の入学式から帰って来て、居間にやってきた瀾ちゃんが固まった……。
平常心に戻るまで、約三〇秒。
瀾ちゃんにしては長い方だ。
「な……なんで……?」
あたしと一緒に居間に居たのは、中学の頃からの同級生で、同じ高校の同じクラスになった久保山紫ちゃん。こっちは……固まったまま。
「知り合いだったの?」
そう言や、紫ちゃんは小学校まで瀾ちゃんが前に住んでたのと同じ小郡に住んでて、中学1年の時に、久留米に引っ越して来た筈……。
「えっと……何から説明すればいいか……。紫……ちゃんは……私の小学校の頃の同級生だ」
ん? 何で下の名前で呼んで、しかも「ちゃん」付け?
「で……瀾ちゃんは、あたしの双子のお姉ちゃん。親の離婚で別々に育って、名字も違うけどね」
「あ……そ……そう……なんだ……」
「えっと……」
「あ……私、飲み物……持って来る……。何がいい?」
「大丈夫、それ……あたしが……」
「いや、後の洗い物も私がやる」
「あ……そ……」
何なんだ、この妙な雰囲気は……?
『わかんないの?』
先月から、あたしに取り憑いてる自称「神様」、事実上は傍迷惑な怪獣である瑠璃ちゃんの声が頭の中で響いた。
『わかんないよっ‼』
『ほんとに、わかんないの?』
『だから、何が言いたいの?』
そして、数分後、瀾ちゃんはインスタントじゃない方のコーヒーを持って台所から戻って来た。
「あ……元気だった……?」
「う……うん……」
「ごめん……ずっと連絡しなくて……」
「い……いや、こっちこそ……」
だから、何なんだよ、この雰囲気は?