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006_運命の桶狭間

 


 彦七郎様はまた足を挫いてしまった。

 いや、正確には落馬したことで、治りかけていたねん挫が酷くなったと言うべきだろう。

 俺は彦七郎様に肩を貸しながら歩いた。

 出てきた今川兵はとにかく切った。俺が彦七郎様を護らなければ誰が護る的な、庇護欲によるものだ。


 どこをどっちに歩いているかさえ分からないまま。

 俺はとにかく彦七郎様を安全な場所に連れていこうとしたんだが……どうしてこうなった。

「ええい、どけ! 下郎が!」

 目の前にバ●殿様が現れた!」

 白粉の顔に眉を書いて、口紅っぽいのをさしている。

 笑ってはいけないと思っても笑えてしまう。

 この時代にも志村●んがいたんだと、ちょっと心が和んだ。


「下郎! 貴様などに麿が討てると思うなよ!?」

 えー、なんで切りかかってくるんだよ!?

 彦七郎様に肩を貸しているので、右手に持った刀でバ●殿様の刀を受ける。

 俺は片手、バ●殿様は両手で刀を握っているが、意外と力負けはしなかった。

 山登りや持久走は苦手だが、筋肉だけは鍛えているんだよ!


 俺はバ●殿様の腹に蹴りを入れて、バ●殿様を引きはがした。

「くそ! 貴様なんぞにこの義元がコケにされるわけにはいかんのだ!」

 えーーーっ!? このバ●殿様が義元なの!? お笑い芸人じゃないのか!?


 義元がまた切りかかってきたので、思わず刀を受け流して義元の体勢が崩れたところに刀を横に振った。

 すると、義元の腹がぱっくりと切り裂かれ、血が飛び出した。

 このまま放置してももう助からないのではと思うほどの出血だ。

 今までも兵士を切ったが、ここまで酷い出血はなかった。

 これを俺がやったのかと思うと、なんだか気持ちが悪くなる。

 俺はもがき苦しむ義元の姿を呆然と眺めることしかできなかった。


「勘次郎! 止めだ!」

「え!?」

「何を呆けている! 義元に止めを刺せば、この戦は終わる!」

「戦が……終わる……」

 俺は呪縛のようなその言葉を聞き、体が俺の意思とは関係なく動いたのを感じた。


 気づくと、俺は義元の首を持っていた。

「義元を討ち取ったぞぉぉぉっ!」

 彦七郎様が叫んでいた。

「織田彦七郎信与が家臣、佐倉勘次郎が今川義元の首を獲ったぞぉぉぉっ!」

 彦七郎様が何度も何度もそれを繰り返した。

 俺、義元を討ち取ってしまったようです。

 おかしい……検索で桶狭間の戦いのことを調べていたから分かるが、義元は毛利新助が討ち取るはずだ。

 歴史を改ざんしてしまったのか……?


 桶狭間の戦いは俺が義元を討ち取ったことで、織田軍の大勝利に終わった。

「お前が彦七郎の家臣の佐倉勘次郎か!?」

「はい、佐倉勘次郎と申します!」

 織田信長が岩の上に座って、俺は土下座状態だ。

「面を上げよ」

「は、はい」

 俺は信長を直視しないていどに顔を上げた。

「それではよく見えぬ、もっと上げぬか!」

「はいっ!」

 信長は癇癪持ちで有名だ。部下でも容赦ない奴だ。

 下手なことをして手打ちにされてはたまったものではない。


「勘次郎! よくやった。褒めてとらすぞ!」

「あ、ありがとうございます!」

 俺は平伏した。

「彦七郎、お主に城をやろう!」

「兄者! ありがたき幸せ!」

 こうして、俺の上司である彦七郎様は城持ちになった。


 しかし、俺、なんであんなに戦えたのだろうか?

 義元の首を獲ったのは無意識だったけど、その他はそれなりに自分で動いていた。

 無我夢中だったけど、記憶はある。

 ……気持ちが悪い。


 桶狭間から清須に帰ってきた。

 早速、城を与えられた彦七郎様について俺もその城に向かうことになったが、ここで落とし穴があった。

 信長は彦七郎様に城を与えると言っておきながら、その城はまだないのである。

「城はお前が築け!」

 信長は彦七郎様にそう言い放ったのだ。

 必要な人足とか金は出してくれるそうだが、ふざけた話である。


「勘次郎! 俺の城を築くぞ!」

 目をキラキラさせた彦七郎様に、信長に騙されたんじゃないかとは言えない。

「はい」

 俺は力なく返事した。

 ちなみに俺にも褒美がもらえた。まぁ、実際に義元の首を獲ったのは俺だし、当然と言えば当然だ。

 ところで、百貫ってどのくらいなんだろうか? 褒美で百貫の碌をもらったんだけど、さっぱり分からない。。

 検索で調べよ……何々、一貫は二石に相当するから、百貫だと二百石相当か。

 でも百貫全てがもらえるわけではなく、だいたい三割から四割しか収入はないのか……。

 実際の収入が三十貫(六十石相当)だとすると、円換算で年収六百万円もないくらいなの? マジ? 安くね?

 いや、現代の年収ならそこそこだけど、俺、今川義元を討ち取ったんだよ?

 あれから、毎日うなされているんだよ。やってられねぇよ!?


「はぁ、俺……どうなるのかな……?」

 そうだ、メールきてたのを忘れてた。見てみよ。


【ミッションコンプリート】

『ミッション、殿を助けて戦功をあげろ! をクリアしました。報酬としてプレゼントをランダムで五個獲得しました』


 プレゼントは戦功次第で三個から五個に変わるってあったけど、最大の五個だった。

 そりゃ~、総大将である今川義元の首を獲ったんだから、当然だよな。

 プレゼントを見てみよう。


【ランクA】

 ・神薬×10


【ランクC】

 ・鉄砲×10


【ランクD】

 ・火薬(1箱)×10

 ・鉛玉(100発)×10


【ランクE】

 ・砂糖(1Kg)×10


 鉄砲は素直に嬉しい。

 だけど、桶狭間の戦い時点で鉄砲なんか持っていたら、絶対おかしいし!

 それでだ、まさかのランクA!? 神薬はどんな怪我でも、どんな病も癒してくれるらしい。めちゃくちゃありがたい。

 ランクAのアイテムが半端ないんですが!



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