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048_上洛と別れ

 


 長島城が一向一揆衆に囲まれたと報告があった。

「半兵衛、出陣するぞ」

「はい」

 一里も離れていない距離なので、二時間もあれば到着してしまうが、長島城は輪中にあって簡単に行軍はできない。

 しかし、俺たちは長良川の上流から船に乗って輪中へ向かう段取りをしている。


 俺たちは夜陰に紛れて輪中へ渡った。

 長島城からは鉄砲隊による掃射音が聞こえてくる。

 俺がミッションの報酬で得た鉄砲を長島城に配備させておいたのだ。

 報酬で得た鉄砲はちょうど百丁あったので、火薬と鉛玉を惜しまず日々訓練させていたのが、ここで役にたったようだ。

 一万の一向一揆衆相手に百丁の鉄砲では少ないと思うかもしれないけど、城壁の中から雨など関係なく撃ちまくれて、一向一揆衆が聞いたこともない轟音がするので、一向一揆衆を怯ませる効果くらいはあるはずだ。


「殿、鉄砲の音が止みました」

「暗くなって一向一揆衆も攻めるのを止めたのだろう」

 ここからが俺たちの腕の見せどころだ。

 一向一揆衆は長島城を占拠できていないので、輪中の中で野営をすることになる。

 俺たちは一向一揆衆が寝静まったころを見計らって奇襲をする。


「いいか、狂信者は皆殺しだ。一人も逃すな!」

「おう!」

 草木も眠る丑三つ時、俺たちは暗闇に紛れて一向一揆衆が野営をしている場所を目指す。

 前回も夜襲をしていることから、一向一揆衆も警戒しているだろう。

 いくら皆殺しと言っても一人や二人は生き残りがいてもおかしくはないから、俺の戦法が伝わっていても不思議ではない。

 だが、俺の強襲夜襲部隊を舐めてもらっては困る。

 あるていど夜襲を予測されていても、それを食い破るくらいの精鋭揃いだ。


 輪中の中を進み、一向一揆衆の野営地に接近すると、見張りが数人見えた。

 向こうは篝火を焚いているので、こちらからはしっかりと姿が確認できる。

 逆にこちらは黒ずくめで、顔にも炭の粉を塗っている。暗闇に紛れれば見つかることはまずない。


 数人の見張りを音もなく無力化して、野営地に突入する。

 手で「かかれ」の合図を送る。

 強襲夜襲部隊が洗練された動きで寝ている一向一揆衆を殺していく。

 わざわざ大きな音を立てて起こす必要はない。

 気づかれるまで暗殺まがいに一向一揆衆を殺していく。

 しばらくすると、さすがに気がつかれたようだが、想定よりも遅いくらいだ。


「切って切って切り殺せぇっ!」

 一向一揆衆の数は多い。いくら強襲夜襲部隊が精鋭中の精鋭でも、たった二百人で一万人の一向一揆衆を皆殺しにはできない。

 いくらなんでも無理だ。じゃぁ、どうするか。簡単だ。毎日夜襲をするのである。

 一向一揆衆がこの輪中にいるのなら、それは俺の庭だ。

 奴らがこの輪中の中でデカい顔をしていられるのも、今のうちだ。


 俺はその日から毎日夜襲を行った。

 誰も殺さなくても騒ぎを起こすだけでも構わないのだ。

 一向一揆衆に安眠などさせない。永眠なら構わないけどな。


 五日もすると、一向一揆衆の動きが明らかに悪くなってきた。

 強襲夜襲部隊は徹底的に一向一揆衆の裏をかいて夜襲をしかけた。

 反撃を受けてもそれを食い破ってやるくらいの力はあるが、このように毎晩夜襲をしかけることができるのは半兵衛の手腕が大きい。

 どこをいつ狙うか、どうやって強襲夜襲部隊を動かすか、半兵衛の頭の中ですべて構築されていくのだ。

 半兵衛を軍師にして本当によかったよ。


 徹底的に夜間は強襲夜襲部隊による夜襲、昼間は城からの攻撃、これによって十日も経つと一向一揆衆は疲弊の極致である。

 ざまぁみろ。だが、地獄を見るのはこれからだぞ。

 お前たちは簡単に殺さない。宗教は心のよりどころであり、自分たちの欲望を満たすためのものではない。

 自分たちの欲望を満たすために宗教を利用する奴と、盲目的に宗教を信じて利用される民、俺はどちらも認めない。

 そのことで他人を不幸にしている奴の言い分なんて、聞く耳なんてない。


「殿、そろそろよろしいかと」

「そうか。なら、手はず通りに」

 半兵衛が頷く。その目は獲物を狙うサメのように恐ろしげだ。


 疲れ切った一向一揆衆に総攻撃をしかける。

 今回は長島城の兵、強襲夜襲部隊、それに古木江城、鯏浦城、蟹江城から全兵力を投入する。

 総兵力では明らかに劣っているが、こちらの兵は訓練された精鋭ばかりだ。

 しかも、武装が全然違うし、士気もこの上なく高い。


「殿、清次殿が長島城から討って出ました」

「よし、いくぞ!」

 長島城を守っていた清次、雲慶、一豊、利益が討って出たのを確認した俺は、強襲夜襲部隊を率いて渡河すると、対岸からも兵が渡河してくるのが見えた。


「お前たちは佐倉の精鋭中の精鋭だ! 決して遅れをとるな!」

「おおぉぉぉっ!」

 俺が強襲夜襲部隊を鼓舞すると、対岸の兵も俺たちに対抗するように声を張り上げた。

「野郎ども、田原に負けるな!」

 対岸から渡河してくる兵は古木江城、鯏浦城、蟹江城の兵で、それを統率しているのは元浜田城の城主である田原元綱だ。

 俺の部下になってから鯏浦城の城代にしていて、古木江城と蟹江城の兵士の訓練を任せていたのだ。



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