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046_上洛と別れ

 


 永禄十一年五月。

 娘が生まれた。可愛すぎる!

 どっかの親父が娘は嫁にやらん! というのをよく聞くが、その気持ちは今の俺にはよく分かる。

「この子はお福だ。幸福になるようにお福と名づける!」

 現代のキラキラネームなんてあり得ない。

 この時代にキラキラネームなんかつけたら、子供が可哀そうだ。


「お由、今度は次男がほしい! 頼んだぞ!」

「まぁ、旦那様ったら……」

 いちゃいちゃしたっていいだろ?

 お由は今年で二十八歳なので女盛りなんだ!


 長男勘一郎と長女お福。そこにお由がいて一家四人でゆっくり過ごす。

 しかし、俺の平和な時間はそれほど長くなかった。

 越前(福井県)の朝倉家に身を寄せていた足利義昭様が岐阜に入ったからだ。


「兄者は義昭公を奉じて上洛することになるだろうと手紙で言ってきている」

 それは知っているけど、問題はこの伊勢からも兵を出すのかってことだ。

「殿も上洛されるのでしょうか?」

 素直に疑問を投げかけたら、殿が持っていた手紙を俺に渡してきた。

 それによると、殿にも兵五千を引き連れてこいと書いてあった。

 好き勝手言ってくれるよね。


「誰が留守居をするかですな」

 信辰が呟くように発言した。

 自分は留守居なんてしたくないというのが、顔に書いてある。

「ふむ、殿のお考えは?」

 滝川殿も留守居ではなく、上洛したいと顔に書いてある。

「殿、某が留守を守りしましょう」

 俺は真っ先に手を上げた。

 だって、お福に会えないなんて嫌じゃん!

 それに上洛なんて面倒だしぃー。


「佐倉殿が留守を守ってくれるのであれば、安心ですな!」

 信辰が嬉しそうだ。

「然様。佐倉殿であれば、安心です」

 滝川殿も俺が残ることで、上洛組に入れると思って喜んでいる。

「ふむ、いいのか?」

 殿が聞いてくるが、俺は上洛になんか興味はない。

「構いません。ただ、他の方の人選は某に一任していただけますか?」

「二人ともそれでいいか?」

「「はい!」」

 信辰と滝川殿が元気よく返事をした。子供かよ!


 殿が兵を引き連れて岐阜へ向かうのは九月だ。

 それまでに上洛に必要な物資やなんやかんやを用意しなければならないけど、それは信辰と滝川殿にやらせる。

 俺が留守居を引き受けたので、二人は二つ返事で物資の調達を行っている。


 俺は早速、殿に同行する武将たちの名簿を作った。

 とはいっても、作ったのは半兵衛だけどね。

「半兵衛は仕事が速くて助かるよ」

「大した作業ではありませんから」

 俺は半兵衛が作った名簿に目を通す。

 その中に楠木正具殿の名があった。

「ん? 楠木家はなぜ正忠殿ではないんだ?」

 お爺ちゃんだから遠征は無理だと思ったのかな?


「楠木家は足利将軍家によって朝敵になりました。いまでこそ勅免を受けておりますが、足利義昭公を奉じて上洛することで足利家と楠木家の間にあるわだかまりも少しはほぐれましょう」

「なるほど……。だが、正忠殿でもいいのでは?」

「楠城は最前線の拠点です。そこを空にするわけにはいきますまい。それに正忠殿もそろそろ隠居される頃合いだと思います」

 たしかに重要拠点だからお爺ちゃんが守ってくれれば安心だ。


「ところで、誰が言うんだ?」

「殿に決まっているじゃないですか」

「はぁ?」

「殿以外に誰がそんなことを話せましょうか?」

 俺以外でいいじゃん!

 俺だってそんなこと話すの嫌だし。

 そんな目で見るなよ! はぁ、なんで俺が……。


「そんなに難しくありません。殿が言うことで説得力が出るのです」

 たしかに俺もお留守番だけど、俺は上洛が面倒だからいかないだけだぞ。

「それで、なんって言えばいいんだよ?」

「正忠殿は家督を譲って楠城の留守を守り、正具殿が当主として義昭公の上洛を助けるのだと」

 楠城は対北畠家との最前線にある城だから、重要拠点を守る人が必要だと説けばなんとかなるかな……?


 自室に戻ると、メールを確認する。

 半兵衛との話合いの時に受信していたのだ。


【ミッション】

『楠木の代替わりを行え! : 老齢の正忠を隠居させて息子の正具に家督を譲らせろ!』

『報酬 : プレゼントをランダムで三個』


【ミッション】

『殿の不在! : 殿が上洛している間、殿の代わりに桑名を治めろ!』

『報酬 : プレゼントをランダムで三個』


【ミッション】

『一向衆の動向! : 一向衆の動きを調査しろ!』

『報酬 : プレゼントをランダムで二個』


【ミッション】

『南蛮吹き! : 南蛮吹き工房を立ち上げろ!』

『報酬 : プレゼントをランダムで三個』


 三つ目の一向衆の動向が気になる。

 何かよからぬことを企んでいるんじゃないだろうな?


 そんなわけで、不本意ながら楠城へ赴いた。

「佐倉様、本日はどのようなご用向きで?」

 正忠(おじいちゃん)殿と正具(おじさん)殿が二人揃って迎えてくれた。

 俺は信長様が義昭公を奉じて上洛すると、二人に話した。

 二人は目を見開き、驚いている。


「そこで、楠木家からも兵を出していただくことになる」

「そ、それは……」

 正忠殿が言いよどむ。

 まぁ、元朝敵の楠木家だから仕方がない。

「この上洛で活躍されれば、過去の汚名をそそぐことができるかと」

「「っ!?」」

 殿にはそのことについて口添えすると、お言葉をもらっている。

 殿にしたって、自分の家臣が朝敵とか逆族と言われるのは不本意だろ。


「佐倉様、それは誠であろうか?」

 正忠殿がうるうるした目で俺を見てくるが、お爺ちゃんのそういうのはいらない。

「ただし、この楠城は極めて重要な城でもある」

「「………」」

 二人がじっと俺の顔を見る。


「ですから、正忠殿」

「はい……」

「家督を正具殿にお譲りなされ」

「佐倉様!?」

 叫ぶように俺の名を呼んだのは息子の正具殿だ。

「いくら佐倉様でも」

「控えろ!」

 正具殿を正忠殿が抑える。


「某にこの城を守れと仰るのですな?」

「はい。その通りです」

 正忠殿は察してくれたようだ。

「分かりもうした。本日ただ今をもって、家督を正具へ譲りましょう」

「ち、父上!」

「正具よ、佐倉様のお心遣いに感謝するのだ」

「………」

「隠居したわしが城を守り、当主である正具が義昭公の上洛を助けるのだ。そして正成公の汚名をそそぐのだ!」

「……分かりました。楠木の悲願、この正具が叶えてみせます!」


 なんとかまとまった。

 正忠殿が話の分かる人でよかった。

 ふーっと、肩の荷を降ろす。


 

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