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034_今孔明

 


 永禄六年の冬だったか、メールがきたのを覚えている。


【ミッション】

『今孔明を褒めよう! : 今孔明(竹中半兵衛重治)の策によって織田軍は敗走した。素直に今孔明を褒め称える手紙を最低二通書こう!』

『報酬 : プレゼントをランダムで三個』


 命を賭けて戦った俺にしてみれば、なぜ? という疑問が一番最初に出てきた。

 しかし、よく考えれば、竹中半兵衛重治という人物が立てた作戦で織田軍はコテンパンにやられたのだから、敵味方関係なくその能力を称賛していいと思った。


 筆をとった俺は何を書こうかと悩んだ。

 悩んだ末に出した結論は、素直な賛辞だった。

 手紙はわずか数行の短いものだけど、俺の素直な気持ちを表したものだと思う。


 二回目は一カ月ほど経ってから書いた。

 この間、竹中様からの返事はなかったけど、返事がほしくて書いたわけではないので、構わない。

 今度の内容は、もし会うことがあれば竹中様と酒を酌み交わして兵法について語りたいという内容だ。

 これに関しても返事はないけど、それでいい。

 この二通の手紙を書いたことで、ミッションコンプリートになった。


【ランクC】

 ・丈夫な刀


【ランクE】

 ・味噌(小樽)×10

 ・醤油(小樽)×10


 とうとうきた、味噌と醤油!

 これで俺の食生活は圧倒的な進化を遂げるだろう!

「ぐふ、ぐへ……あーっははは!」

 笑いが止まらないぜ!

 この時代の食事は自然食といったら聞こえはいいが、味気ないのだ。

 お菊さんは料理が上手なのでまだいいが、一般的に味気ないのである!


 さて、味噌と醤油を得た喜びを噛みしめて、今の俺と俺の周囲の状況を教えておこうか。

 今は永禄八年の秋だ。

 俺は滝川様と協力して服部党の荷ノ上城を落としている。

 俺の碌は現在千九百貫で、そこにシイタケ栽培の儲けが収入としてある。

 この夏、信長様は犬山からすぐのところに構築した、美濃(中農)伊木山の砦から斎藤側の城に攻め込んで、宇留摩城、猿啄城、堂洞城を攻め落とした。


 来年、殿はさらに美濃攻略を進めるだろう。

 そして俺はきたる長島一向衆との戦いに備えている。

 殿が長島方面の攻略を任されてしまって、実史ではなかったことが起きている。

 今の織田家は美濃の斎藤家を敵に回しているが、まだ一向衆とはそこまで険悪ではない。

 だが、一向衆と険悪になるのは時間の問題だし、長島の先にいる北畠家が敵として想定されている状況なので、ちょっとでも気を抜くと一気に滅んでしまうだろう。


 信長様が美濃攻略に本腰を入れたら、おそらく二年ほどで美濃を手に入れるだろう。

 それは藤吉郎たちが調略によって敵を寝返りさせていることが大きいけど、斎藤家の求心力が急激に落ちていることが原因だ。

 竹中様によって稲葉山城を奪われた、斎藤龍興を見限る斎藤側の武将が多いのである。

 そう、竹中様は少数で稲葉山城を奪取して、すぐに龍興に返還している。

 そういったことがあって、龍興の君主としての資質が問われているのだと思う。


 長島方面は美濃のようにはいかない。

 なぜなら、俺たちの相手が宗教団体だからだ。

 盲目的に仏を信じている信徒たちは、自分たちを扇動する僧侶が腐っていても関係なく俺たちに襲いかかってくる。とても厄介な相手なのだ。

 俺たちからすれば、倒しても倒しても次から次に現れる、まるでゾンビのような相手だ。


 それはそうと……マジかよ……今、俺の前には竹中半兵衛重治がいるんだ。

「斎藤家を出奔して参りました。どうか佐倉様の下で働かせていただきたく存じ上げます」

 竹中様が俺に頭を下げる。

 今年で二十一歳の色白で細身の美男子だ。

 てか、その肌の白さが病的に見える。やっぱ体が弱いのかな?


「えーっと、それなら信長様に……」

「某は斎藤家の家臣でした。今さら織田家に仕えるのは憚られます」

 たしか、検索でも信長に仕えるのは固辞したとかってあったよな?

「……えーっと、彦七郎様もダメってことかな?」

「はい。某が仕えるのは佐倉様以外にありません」

 織田一族はダメってことね。

「なんで俺? こう言ってはなんだけど、織田家以外にも仕える先は多くあったのでは?」

「お手紙をいただいておりました。あの手紙の内容は表裏のない佐倉様のお気持ちを書き連ねたものと存じ上げます」

「まぁ、そうだけど……」

「某はあの手紙を読み、斎藤家を去ることを決めたのです。ですから、佐倉様にお仕えをしたいのです!」

 ここまで言われたら断れないよ。ただ……。


「俺では竹中様が満足いく碌は与えられないですよ?」

「碌などあとから増えていきます」

 おぉー、すごい自信だな! さすがは今孔明!

「分かりました。竹中様を家臣にしましょう!」

「ありがとうございます」


【ミッション】

『竹中半兵衛重治を登用しよう! : 竹中半兵衛重治を登用するのだ!』

『報酬 : プレゼントをランダムで三個』


 このミッションが発生した翌日、竹中様が俺の元に現れた。

 おかげで俺は軍師を得ることができたけど、本来仕えることになっている藤吉郎に対する罪悪感が半端ない。

 俺という異物のおかげで、歴史がかなり変わってしまっているのは分かった。

 こうなったら、自分で最良と思うことをするしかない。


【ランクC】

 ・丈夫な刀


【ランクE】

 ・清酒(小樽)×10

 ・焼酎(小樽)×10


 最近の報酬は丈夫な刀が多いな。

 あと、『家臣を増やそう!』もコンプリートしたので、報酬がある。


【ランクB】

 ・筋肉増強剤(10人分)×10


【ランクC】

 ・丈夫な刀


【ランクE】

 ・清酒(小樽)×10


 また丈夫な刀だ。戦いが近いからなのか?

 そして、またメールがきた。


【ミッション】

『精鋭兵を鍛え上げよう! : 一千人の兵士を鍛え上げて精鋭に育てろ!』

『報酬 : プレゼントをランダムで三個』


【ミッション】

『服部友貞を倒せ! : 長島城の城代である服部友貞を倒せ!』

『報酬 : プレゼントをランダムで三個』


【ミッション】

『長島城を攻め取れ! : 長島城を攻め取れ!』

『報酬 : プレゼントをランダムで五個』


 どうやら長島城攻めは決定事項のようだ。

 俺はこのミッションに操られている気がするけど、ミッションをクリアするといいことがあるのも間違いない。

 いったい誰がミッションを出しているのだろうか?


 

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