表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/51

031_服部党

 


 鯏党を組織したことで、『忍者部隊を登用しよう!』がミッションコンプリートになった。


【ランクB】

 ・筋肉増強剤(10人分)×10


【ランクC】

 ・鉄砲×10


【ランクD】

 ・鉛玉(100発)×10


 筋肉増強剤がよくでる。

 これはマッスル部隊を組織しろという天啓なのか?

 それとも、俺に使えということなのか?

 いずれにしても、一粒使ってみようと思う。

 効果について検証もしなければならないし、効果時間も気になる。


 いつもの稽古の前に一粒飲んでみると、体中の筋肉が俺に主張するんだ。「俺を見ろ!」と。

 ムキムキ……筋肉がまるで意思を持っているかのように活性化していく。

 五分ほどして落ち着いたが、筋肉量が明らかに増えた自覚がある。

 筋肉三割増しっていう感じだ。

 刀を鞘から抜いて振ってみると、空気を切り裂いて木の上の方に生えていた枝を切り落とした。

 明らかに刀の届かない場所にあったのに……。

 やべー、ただでさえ俺の体は武術の達人なのに、達人を越えたかもしれない……。


 筋肉増強剤の効果はあまりにも大きいと実感できた。

 実際に家臣たちと木刀で稽古するが……今までも俺が勝っていたけど、清次と伊右衛門の二人がかりでも俺が勝った。

「殿……」

「嘘だろ……」

 二人は明らかに強くなった俺に驚愕している。

 ついでにいうと、雲慶と利益の二人の化け物相手でも押し気味で戦えた。


「南無阿弥陀仏。物の怪でも憑かれたか?」

「雲慶は俺をなんだと思っているんだ!?」

「化け物でござる」

 化け物なのは否定しないが、面と向かって言われると腹が立つ。

「よし、表に出ろ! ぶっ飛ばす!」

「む、殿でござるな……」

 こんにゃろ……。


 筋肉増強剤がすごいことは分かった。

 あとはいつ効果が切れるのかと、切れたあとのデメリットを確認しないといけない。

 なんて思っていたことがあった。


 あれから三カ月が経った秋の空の下に俺はいるが、一向に筋肉が元に戻ることはなく、デメリットもない。

「ははは……永久的な効果かよ……」

 こうなると、服部党との戦いの前に家臣たちにも筋肉増強剤を与えていいかも……。

 さすがに兵士全員に与えるには恐ろしい効果なので、信頼できる者にだけ与えるとしよう。


 秋といえば収穫の秋である。今年のシイタケも順調に育っていて、収穫は昨年の倍以上になっている。

 それだけの原木を用意して植えつけしたからだけど、実際にその量を見ると顔がにやける。

 今年も生シイタケを焼いて家臣たちにふるまったら、当然のように大宴会になって、知らないうちに殿までいた。

 本当にうちの殿は家臣の迷惑も考えないな。


 この頃になると、鯏党から多くの情報が入ってくるようになった。

 服部党はこの鯏浦城を攻めたいが、長島(三重県長島町)にある願証寺との折り合いが得られていないようだ。

 願証寺というのは東海地方の本願寺(一向衆)門徒をまとめる寺で、影響力が非常に大きい。

 服部党にしてみれば願証寺の後押しがないと、尾張国のほぼ全てを支配している織田に手を出せない。

 だから願証寺の助力がない限り、防衛に専念するしかないのだ。

「願証寺にも探りを入れることはできるか?」

「やってみます」

「危なかったら、無理に潜入しなくてもいい。危険のないていどのできる範囲でいいんだ」

「分かりました」


 貞次に指示を出した後、俺は庭に出て秋の爽やかな空気の中、散歩をした。

 俺がこれから戦うだろう相手はあまりにも大きい。

 長島を舞台にした一向衆と織田信長の戦いは、歴史上稀に見る虐殺が行われている。

 織田信長は一向衆に参加した者の家族も皆殺しにする徹底ぶりで、十万人規模の死人が出たとも言われているのだ。

 そんな歴史があと数年で起こると思うと、俺はとても平静ではいられない。


 秋晴れの空を見上げる。澄んだ綺麗な空だ。

 いつの間にか家臣が住むエリアにまできてしまったようだ。

 ん、あれは鯏党の長老か。縁側で子供の訓練を見ているのか。

 そう言えば、あの長老の名前を聞いていなかったな。スマホで確認してみるか。

 俺はスマホのカメラ機能を起動させて、画面上に映った長老をタップした。


『百地三太夫 : 伊賀の国の忍者の元締め。気が向いたので伊賀から出てきて、悠々自適な生活を送っている』


「………」

 おいっ!?

 なんでこんなビッグネームがいるんだよ!?

 貞次の野郎、えらい大物を連れてきやがったな!


「おや、お殿様ではないですか」

 も、百地三太夫に見つかった!?

 いや、別に隠れているわけではないけどさ。

「ご、ご老体。いい天気だな」

「ええ、いい天気ですな」

 なんて言ったらいいのか、さっぱり分からん!


「子供たちの面倒を見ておられるのか?」

「忍の技は幼き時より仕込まねば身につきませぬからのぅ。っほっほっほ」

「子供たちはしっかり食べていますか?」

「お殿様のご配慮によってしっかり食べさせていただいております」

 百地三太夫は俺に軽く頭を下げてきた。

 米だけは無限に湧いて出てくるから、いくらでも食ってくれ。


「その子の動きはなかなかなものですね」

 一番小さな男の子の動きは、大きな子供たちよりもいい感じに見える。

「ほう、お殿様にはそう見えますかな?」

「忍の動きはわかりませんが、切れは一番かと」

「ほほほ。才蔵よ、お殿様に褒められたぞ。よかったな」

「はい!」

 男の子が元気に返事をしたが、才蔵だと?

 百地三太夫と才蔵……霧隠才蔵!? まさか、真田十勇士の霧隠才蔵じゃないよな?

 真田十勇士はもう少し後の時代の人物だと思うから、人違いだと思うけど……。


「どうかしましたかな?」

「いや、なんでもない」

「そうですか。ほほほ」

 なんだか色々と見透かされている感じの人だな。

 しかし、なんでこんなところで百地三太夫は油を売っているのかな? 物見遊山ではないよな?


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ