023_シイタケ栽培
俺の初夜をぶち壊してくれた服部党には、いつか痛い目を見せてやると心の中で強く誓った翌日。
俺は城から帰って、初夜をすっぽかしてしまったお由さんに頭を下げた。
「頭をお上げください。お殿様をお護りするのは当然のことです。私はそんな旦那様を誇りに思います」
「お由さん、ありがとう」
お由さんは太陽のように暖かな笑顔で俺を包み込んでくれた。
いい妻を娶った俺は幸せ者だ。
「旦那様、私は旦那様の妻となりました。お由と呼び捨てにしてください」
「え、あ、うん。お、お由……」
「はい」
甘い空気だ。まさか俺がこんな甘い空気に包まれるとは思ってもいなかった!
「加藤様、とんだことになってしまい、申し訳ございません」
今度は義理の父である加藤様に頭を下げる。
「何を仰るか。婿殿の行動は正しいのだ、気にされるな」
「ありがとうございます」
加藤様はこの後すぐに帰っていかれた。
さて、ここで初夜の続きといいたいのだが、問題がある。
長屋に移動した俺は、伊右衛門を見舞った。
「熱が引かないのだぎゃぁ」
藤次が濡らしてから絞った手ぬぐいを伊右衛門の額に乗せる。
「おそらくは刃に毒が塗られていたものと」
貞次が元忍者の経験から、予測を話してくれた。
「毒か……貞次は解毒剤を持っていないのか?」
「毒は作り手の個性が出ますから……」
解毒剤はないわけか。
「申し訳ございません」
「貞次が悪いわけじゃないから、気にするな」
そう言えば……もしかしたら、使えるか?
俺は自室に戻り、スマホを取り出した。
今回、俺は二つのミッションをクリアした。その報酬をもらったのだ。
一つ目は言うまでもなく、『嫁を娶ろう!』だ。その報酬がこれだ。
【ランクB】
・名工の槍
【ランクD】
・矢(100本)×10
【ランクE】
・清酒(小樽)×10
・砂糖(1Kg)×10
・リンゴ飴(20個入り)×10
そして、『殿が狙われている!』の報酬がこれだ。
【ランクB】
・とてもよい薬×10
【ランクD】
・火薬(1箱)×10
【ランクE】
・清酒(小樽)×10
今回得た報酬の中に、とてもよい薬というのがある。これを取り出す。
「……試験管のような瓶に青い液体……ポーションかよ!?」
もしこの薬でダメなら、以前手に入れて手つかずの神薬を使おう。
再び伊右衛門の長屋に赴き、とてもよい薬を伊右衛門の口に少しずつ流し込む。
「伊右衛門、ゆっくりと飲むんだ」
伊右衛門は朦朧とする意識の中、ポーションを飲み干した。
「旦那様、それはなんだぎゃ?」
「以前、手に入れた薬だ。これで治ってくれればいいんだが……」
伊右衛門の世話を藤次とお菊さんに任せて、俺は家の庭で刀を振った。
こんな時代だからこういうこともある。
だけど、俺に近い人が傷ついたり、死ぬのを見たくない。
エゴだというのは分かるし、勝手なことを言っているのも分かっている。
だけど、こういうのは頭の中で考えるものではなく、心で感じるものなんだ。
無我夢中で刀を振った。
マラソンならすぐに息があがるのに、刀をいくら振っても息があがることはない。
疲れ果てれば、少しはこの心のもやもやが消えるかと思ったけど、わけの分からないハイスペックな体が今は恨めしい。
その日の午後、伊右衛門の熱が下がったと藤次が教えてくれた。
「伊右衛門、気分はどうだ?」
「殿、申し訳ありません」
「何を謝ることがあるのか!」
「殿が秘薬を使われたと、聞きました」
「あんなものは秘薬でもなんでもない。ただの水だ」
「そうですか……ありがとうございます」
「馬鹿者。謝るな」
知らない内に涙が流れていた。伊右衛門が回復したことが嬉しくて流れた涙だ。
その夜は、しっかりとお由さんを抱いた。
伊右衛門には悪いが、あんな素晴らしい体のお由を前にして、我慢などできない。
溜まっていた物を全て吐き出すように抱いた。おかげで二夜連続で寝ていない。
それはお由さんも同じだったようで、その日は起き出せなかったようだ。
『ブー、ブー、ブー』
今度はなんだよ?
【ミッション】
『服部党をぶっ潰せ! : 服部党をこのままにしておいたら、また殿は命を狙われる。服部党を潰すしかない!』
『報酬 : プレゼントをランダムで五個』
おいおい、マジかよ。
てか、いつかはぶつかる相手なんで、今からそれを想定して対応しておくのもありか……。
今日は清次、雲慶、貞次、伊右衛門と訓練だ。
清次は槍、雲慶は金棒、貞次は小刀、伊右衛門は刀、俺は槍だ。
先日、ミッションの報酬でもらった名工の槍を試そうと思っている。
清次の槍は三メートルないくらいだけど、俺の槍は二・五メートルほどで少し短い。
「殿、いきますぞ!」
「おう!」
清次が槍で突いてきたので、それを槍で払い、地面を踏み込んで突きを放った。
ぴたりと清次の鼻先で止まる俺の槍。
「参った!」
清次は槍を下ろして、降参した。
「南無阿弥陀仏。鋭い突きであった。あれでは、某も避けることはできぬであろう。さすがは殿である!」
どうやら俺の体は刀と弓だけではなく、槍も得意のようだ。
その後、雲慶たちとも手合わせをしたが、全員に勝ってしまった。
家臣だから忖度があったのかもしれないと疑ってしまう。




