表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/51

002_運命の桶狭間

 


 おはよう。

 今日は人里を探すぞ!

 その前に腹が減ったな……。

 米はあるけど、米を焚く釜も鍋もない! どうしろってんだ!?

 米って生で食えるかな? しかも玄米っぽい……。勘弁してほしい。


 外は少し白んでいるけど、まだ暗い。

 昨日は日が沈んだすぐ後に寝たので、多分八時頃から寝始めて五時すぎまで寝ていたと思う。

 そう思うと結構しっかりと寝たようだ。

 疲れもあって熟睡だった。

 スマホに時間が表示されていたら便利なのに……。


 お堂の扉を開けて外に出た。

 伸びをして新鮮な空気を肺いっぱいに吸い込む。

 俺が住んでいた場所とは比較にならないほど美味しい空気だ。

「ん?」

 ふと見たら、誰かが倒れていた!?

「おい、大丈夫か!?」

 駆け寄って息をしているか確認したら、生きていた。

 随分と小さいし、顔も少し幼く見えるから、中学生くらいの男性だと思う。

 多分、百五十センチくらいかな。俺が百八十四センチだから、小さく見えるだけか?


『ピロリロリン』

 なんだ?

 懐に入れておいたスマホが振動していた。

 取り出して見てみると、メールを受信したようだ。見てみる。


【ミッション】

『行き倒れを助けろ! : 行き倒れの男を助けて、男を目的地まで送ろう!』

『報酬 : プレゼントをランダムで三個』


 なんじゃこりゃ!?

 ふざけているの?

 舐めているの?

 バカにしているの?


 スマホを地面に投げつけたかったが、ぐっと堪えた。

 このスマホが壊れたら現代文明との繋がりがなくなってしまうからだ。

 とりあえず、この男性をお堂の中に連れていくことにしよう。

 こんなふざけたメールがなくても、俺にできることはするつもりだ。

 抱き上げるが、見た目よりは重い気がした。

 抱き心地からかなり筋肉質だというのが分かった。これが女性だったら嬉しいのにな。


 男性を寝かせて、改めてお堂の中を見回す。めぼしい物はない。

 昨日の夜に水は飲んでしまったし、水でも探してくるか。

 お堂だからか、一応は道のようなものがあったので、その道に沿って下りると小川があった。

 この小川の水が飲めるかどうかは分からないけど、綺麗そうだから手ですくって飲んでみる。

「美味いな」

 すきっ腹なので、水をがぶがぶ飲んで、少し腹を満たす。

 ついでではないが、水筒に水を汲んでお堂に帰る。


 男性はまだ寝ている。このまま起きないんじゃないか?

 俺は医者じゃないから、この男性の状態が分からない。

 外見上の傷はなさそうだけど、病気かな?

 伝染病はさすがに勘弁してくれよ。


「う、うん……」

 男性が目を覚ました。

「はっ!? ここは!?」

 俺も昨日は同じようなことを言っていたな。

「外に倒れていたからここに運びました。怪我はないですか?」

 そこそこいい着物を着ているし、刀も持っているので武士だと思う。だから、丁寧に言葉をかけた。

 そういえば、日本語を喋っている。言葉が通じてよかった。


「そうか……逃げる途中で……」

 逃げる? 何から? 獣? まさか盗賊か何か? いや、盗賊ではなさそうかな、そこそこ身分があるんじゃないかな?

「助けてもらって、忝い。ここがどこか教えてもらぬか?」

「えーっと、申し訳ないのですが、俺もここがどこか分からないのです」

「そうか……」

「失礼ですが、逃げていたと仰いましたが、何から逃げていたのですか?」

「む、貴殿は知らぬのか? 丸根砦が……いや、なんでもない」

 丸根砦? 知らねぇし。てか、砦って何だよ!? 不穏な言葉じゃねぇか!


「すぐに戻らねばならぬ!」

 男性は立ち上がろうとしたが、倒れた。

 どうやら、足を挫いているようだ。

「くそっ! こんな時に!?」

「えーっと、俺でよければ、手伝いましょうか?」

「すまぬ! 礼は必ずする!」

 そんなわけで、俺はこの男性を担いでお堂を出た。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ