012_古木江城
あの日以来、犬千代さんは機嫌がいいし、つきものが落ちたような表情をしている。
こんな犬千代さんを見られて、俺も嬉しい。とはいえ、ちょっと気が引ける。
【ミッション】
『犬千代の心を癒そう! : 親父とも慕う柴田勝家と犬千代のわだかまりをほぐしてやろう!』
『報酬 : プレゼントをランダムで三個』
俺自身のためでもあるんだよな。
【ランクB】
・馬用ニンジン(10個)×10
【ランクE】
・清酒(小樽)×10
・ミカン飴(20個入り)×10
犬千代さんのおかげで、ランクBの馬用ニンジンが手に入った。
早速、風丸に一本食べさせた。すると、翌日の朝に藤次が慌てて俺のところにやってきてうるさかったのだ。
何ごとかと風丸のところにいくと、なんと筋骨隆々の馬がそこにいたのだ。
言ってはなんだが、昨日までは冴えない馬だったのに、存在感溢れる名馬になっていた。
「ランクB、ぱねぇ……」
俺はランクBの威力をその時に知ったのである。
他にも完了したミッションがある。『畑を耕そう!』というミッションだ。
昨年、ちゃんと収穫ができて、ミッションコンプリートである。
【ランクB】
・名工具足
【ランクD】
・火薬(1箱)×10
この時にもランクBが出たけど、まだ手を出していない。
ランクBなのでかなりハイスペックな具足だと思うけど、もし戦争にいくことがあったら使おうと思っている。いきたくないけど。
さて、今の俺だが、築城の追い込みに入っている。
来月には殿が入城するので、気合をいれているところだ。
もちろん、犬千代さんは張り切って現場監督をしている。声が大きいので皆の士気をあげたり指示をするのに丁度いいのだ。
さらに月日は流れて永禄四年二月、殿が入城を果たした。
「いい城だ! 勘次郎、よくやった!」
「ありがたきお言葉、恐れ入ります」
「この城は古木江城と名づける!」
む、古木江城だと? ……その名は俺も知っているぞ。
以前、殿を検索した時に古木江城というのがあった。
実史で殿はこの古木江城で戦死しているのだ。
だけど、古木江城が築城されたのは永禄十年頃なので、あと六年も先の話だ。
俺がこの時代にきてしまったので、俺の知っている(検索した)歴史とは違ってしまったのか?
俺という異物が混じってしまったことで、本来の歴史が変わってしまったと考えておく方がいいな。
それはさておき、この古木江城で殿を戦死させるわけにはいかない。
まだ先の話なので、この城をもっと堅牢な城にしなければと俺は心の中で誓うのだった。
殿が入城したので、信辰も一緒にやってきた。
俺は城の外に家があるが、信辰は城の中の屋敷に入った。
別に差別されているわけではないぞ。俺にも城内に屋敷があるのだ。
ただ、ただのサラリーマンでボロアパートに住んでいた小市民の俺には、今の家の方がこじんまりしてあっていると思ってのことだ。
なんというか、尻の落ち着きがいいのである。
四月に入ると、信長様が三河との国境に出兵した。
なんでも二月に岡崎の松平元康と国境を決める取り交わしをしたけど、三宅という人が国境を越えてちょっかいを出してきたらしい。
それに怒った信長様が出陣したのだ。
この古木江城とは反対側への出陣だったので、犬千代さんの参陣が間に合わず、犬千代さんはがっかりしているけど、殿に出陣の声がかからなくてよかったと俺は思っている。
五月、とうとう古木江城が完成した。
一応の完成というだけで、これからもっと堅牢にするための増築をしていくことになるが、当初の予定分は完成した。
「勘次郎、よくやった! 褒美として、百貫を加増する!」
「ありがとうございます」
殿はとても嬉しそうだ。
「佐倉殿、見事な城だ。感服したぞ」
「七郎左衛門殿にそう言ってもらえると、とても嬉しいです」
最近、俺と信辰は仲がいいとは言わないが、悪くもない。
信辰に柴田勝家のおっさんを紹介してもらってから、以前よりも態度が改善してきたのだ。
俺が頼みごとをしたのが、嬉しかったようだ。
こんなことなら、もっと頼みごとをして信辰を働かせてやろうと思う。
『ブー、ブー、ブー』
スマホのバイブ振動が腹の辺りに伝わってくる。築城完了報酬のメールかな?
【ミッション】
『七郎左衛門の好感度! : 七郎左衛門の力を借りて好感度を上げよう!』
『報酬 : プレゼントをランダムで三個』
信辰の好感度か。可愛い女の子なら好感度を上げようと思うけど、信辰かぁ~。
てか、こんなのどうやって好感度が上がったのか判定するんだよ?
メール送信者基準だろ!
一応、築城の方の報酬のメールもあった。
【ランクB】
・筋肉増強剤(10人分)×10
【ランクC】
・鉄砲×10
【ランクD】
・鉛玉(100発)×10
【ランクE】
・ミカン飴(20個入り)×10
・リンゴ飴(20個入り)×10
最初は思わなかったけど、飴は地味に嬉しい。これ、結構重要なことだ。
この時代にまともな飴なんてないからさ。
そして、今回もランクBが出たけど、この筋肉増強剤は筋肉を鍛えるのが趣味だった俺へのご褒美だろうか。
それとも俺の筋肉はまだまだという意味なんだろうか?
まさか、使ったら廃人になったりしないよな?
馬用ニンジンの効果をみると、すごいものだと思うけど、使うのを躊躇してしまう。




