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青春とともにプロの世界へ  作者: 急激加速
青春とともにプロの世界へ
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第6章 まだ見ぬ世界へ

まるで鎖が解けた獣のような勢いで広斗の飛車は大暴れをし始めた。

それは昇り竜の如く敵陣に突っ込んで行き、尚且つ隙を与えないように馬の動ける範囲を確認しつつ、敵の駒を薙ぎ払っていく。


「さァさァもっと熱くいくぞ!中盤でやられた分を五千倍にして、返してやるからよォ」


広斗の勢いが止まらない、盤上はまだまだ広斗には不利な状況なのにもかかわらず、もう勝ち筋が見えているかのような動き。

稲葉さんに焦りが生じ始める。


「今更勢い付いたところで、意味なんかないわよ。もうお遊びはお終いね、あなたの玉を詰ませて楽にしてあげるわ」


そう稲葉さんは言うと、ターゲットを変えて俺の玉に目がいった。


だがここで俺はそれを遮るように王手をかけた。

王手とは、相手の王又は玉に届くラインまできたら言う台詞である。


俺のかけた王手は、かなり遠距離からのものだったので、簡単に防がれてしまう。

稲葉さんはそれを銀で防いだ。

そして俺の飛車は敵陣に入ったので、ひっくり返して龍になる。

だがここで相手の馬が動いてきた。


「王手!」


駒を指す音に続いて、声が聞こえた。

かなり強引なやり方で、王手をかけてきた。

俺より先に詰ませてやるそんな気持ちが伝わってくる指し方だ。

だが稲葉さんは、ここで致命的なミスをした。

そして馬を指してから数秒後。


「あっ、やばい…やってしまったわ」


そう、稲葉さんは王手と同時に俺の龍の位置を確認せず、龍の届くラインに指してしまったのだ。

そして稲葉さんの双刀の片方が折れた。


「ここでミスをするなんて…」


表情を険しくしながら長柄君を睨みつける。

だけどまだ私は負けたわけじゃないわ。

こっちには馬と飛車がまだある、長柄君とはまだイーブンよ。

だけど私の飛車を思うように動かせない、なぜなら私の飛車は玉の前にあり、周りは金や銀で固めてしまっている。前には歩兵もある。


そして私の守りの陣形はいつ崩れてもおかしくない状況だ、長柄君の龍が大暴れをしているせいで、固かった防御が崩されているのだ。


私の顔に焦りが出てくる、あれだけ盤上を支配していたのに、もうその力が残ってない。

だめだここは一度防御を固め直すか!

負けない為にはこれしかない、もう今の私には攻めきる力が残ってない。

まだ間に合うはず。

私は長柄君から奪った駒を適当に王の周りに指した。


「もう終わりだ稲葉さん」


「チッ私はまだ負けてない!」


「俺が指すこの一手であなたは負けるんだよォォォォォォ」


長柄君の右手には、序盤で自分の角を捨てる時に奪った私の金だった。

そして私はそれが詰みに繋がることを理解した。



「王手」



緊張が走り静まりかえる対局室。


「負けました」


一例をする二人そして

「ありがとうございました」


長柄広斗の勝利でこの対局は幕を閉じた。


インタビューいいですか、などと報道の方達が俺のところに集まってきた。



「やったぁぁ!ヒロト勝った!!」


「うぉぉぉぉヒロトよくやった!!俺は勝つって信じてたぜ!」


VIP室では大いに盛り上がっていた。


「っしゃ!これからお祝いだ!ルミ、ヒロトと一緒に飯行こうぜ」


「ええそうね!焼肉でも行きましょう!」


「これで本物のプロ棋士か〜実感あるのかなぁ」


「こういうのって意外と実感なかったりするものよね」


「まあこれでヒロトの将来、いや今日からプロ棋士として社会で生きていくのか」


「私たちもこれからのことをしっかり考えないとね〜、あっはやくお店予約しないと」


「俺に任せろ!電話は得意だぜ、まあよく俺の携帯にいたずら電話がかかってくるから、いつも電話にでんわ!って携帯に向かって叫ぶほど電話の対応は得意だぜ!」


「なんか違う意味の寒さも含まれてる気がしたけどはやく電話しないさい!」


この頃俺はインタビューを受けていた。


「今日の試合は熱かったですねー!いかがでしたか?」


「そうですねー、最後の逆転劇は自分でもビックリでした」


カメラの前なので失礼のないように丁寧に答えていく。


「今日からプロ棋士という事ですがお気持ちは?」


「はい!最高の気分です!ずっと目指してた目標だったので今日勝てて良かったです!まあ明日将棋連盟に書類を出しに行くのでまだ正式なプロ棋士とは名乗れないんですけどね」


そして五分ほど過ぎたあたりで撮影ストップがかかった。


そしてお疲れ様でした〜と声がかかり皆帰りの準備をしていく。

俺も帰りの支度をしていると突然声をかけられた。


「長柄君今日は楽しかったわ、とても悔しいけど間違いなく私は負けた、その事実は受け止めるわ。次は負けませんからね!」


「あぁ、俺も楽しかった、また機会があったら対局してください」


「長柄さん終盤に入ってかなり雰囲気変わってましたね〜」


「それは稲葉さんが煽ったからでしょう」


そんな会話をしながら一緒に建物の外へ出た。

すると広斗こっちだ!と声が聞こえる。

飛夢の声だ、留美もこちらを見てお疲れ様と声をかけてくれた。


「今日は二人とも応援してくれてありがとう」


「おう!楽しかったぜー!あんなにハラハラしたのは歴史で零点取った時以来だぜ!」


「トムあんたの黒歴史をさらっとばら撒いてんじゃないわよ、でもヒロト本当にお疲れ様!」

超ニッコリとした笑顔で言ってきた。


「おいヒロトその後ろにいる子さっきの対局してた子だよな!」


「あぁそうだぜ、稲葉さんこの人達は俺の同級生達です」


照れながらひょっこりと出てきた。


「初めまして、稲葉優美子と申します」


「ゆ、優美子さんこれから俺らご飯行くんですけど一緒に行きませんか?」


緊張しながら告げる飛夢、さてはこいつ一目惚れしたな。


「えっでもそれは長柄君の打ち上げですよね

私がいってもいいんですか?」


「違う違う!二人の激闘を讃えるためのお食事会だよ、だから遠慮しないで来ていいよ!むしろ来てください!」


あれこれって広斗の為の打ち上げじゃなかったっけ?留美は突然の飛夢の言い訳に少し戸惑っていた。


「そうだよせっかくだし一緒に稲葉さんも行こうよ!これを機に仲良くなりたいし」


「いいんですか!じゃあ私も行きます!」


「だ、大大大歓迎です!」


なんか鼻息が荒くなってるぞ飛夢。


「それで飯はどこに行くんだ?」


まだ詳細を知らされていない俺は聞いてみる。


「もちろん焼肉よ!」


「俺が予約したからすぐに入れるぜ」


「気がきくな〜じゃあ早速行こうか」


こうして俺たちは打ち上げに向かった。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

今回は対局終盤の話なので、熱い対局にしたいなと思いながら書きました。

広斗と優美子の運命の対局は、広斗が勝ちこの先どう話を続けるか考え中ですがこれからも読んでください。

ここで次回予告!

みんなで楽しく打ち上げをし、プロ棋士になる為に将棋連盟に書類を出しに行くが、その間に思わぬ事故発生!?

次回もぜひ読んでください。

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