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青春とともにプロの世界へ  作者: 急激加速
青春とともにプロの世界へ
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第5章 この手で勝ち取る未来

俺はどんな意図があるのかわからずに、角で相手の香車を奪った。

すると稲葉さんは何かを待っているかのように無駄打ちをした。


全くこの先稲葉さんが考えている事が読めない。何を考えているんだと考察しながら桂馬も奪った。

しかしそれを待ってましたと、稲葉さんは勢いよく銀を俺の角が入ってきたところに動かした。


「あっ」と声が漏れてしまう。

やられた、完全に稲葉さんのミスへの誘いに乗ってしまった。

攻めに行って帰還する筈の角行が帰還できない状況になってしまった。


つまり餌に誘われて蛇がカゴに閉じ込められた感じだ。


これは計算外。ここでカウンターを受けてしまった俺は、角行で金を奪り、角行を失う。

そして俺の角行を奪った稲葉さんは、陣形を攻めに変えて俺から奪った角行で、盤上を支配し始めた。


「いいですねぇ、熱いです!」


自分の誘いに乗った俺を煽るかのように、自信満々に言ってくる。


おちつけ、まだ大丈夫だ。稲葉さんの角行が本格的に暴れ出さないうちに対応するしかないと考えていたが、もう遅かった。


「おいおい角取られちゃったけど平気なのかヒロトォォォォォォ。

ってか対局してる女の子、俺に紹介しろぉぉぉぉ」


「トムうるさい!静かにしてよ、いいところなんだから」


VIP室では対局を中継で見ながら熱く盛り上がっている飛夢と留美。


「見た感じここからヒロトは厳しい戦いになりそうね」


顔を強張らせながら言う留美。


「まあでもヒロトなら大丈夫だろ」


「何を根拠に言ってるのよ」


「それは昨日カツ丼食ったからだよ。カツ丼食うやつは次の戦いには絶対負けねぇ!これが根拠だ!!」


「じゃあ相手の子も昨日カツ丼食ってたらどうすんのよ。」


「うっ……たしかに…まあその場合は引き分けかな」


「もういいわよ、ほらヒロトが勝つように応援するよ!」


その留美の一言におおう!と、叫ぶ飛夢。

だが相手の奪った角行は猛威を振るっていた。


「なあルミこれやばくね」


「え、ええ、これはまずいわね」


「ヒロト女相手に手なんか抜いてんじゃねーぞ!まじめにやれよぉ!」


「トム、ヒロトの顔見て!対局中ずっと表情が本気でしょ」


「うーん…たしかに俺と将棋指す時はこんな顔しないしな、ヒロトがこんな顔したの初めて見たわ」


テレビに顔を密着させるくらいまで近づいて見ている飛夢に少し離れなさいと留美は指摘する。


「ってかよくヒロトの表情に気がつくよな、普通は局面に集中していて見えない筈なんだけどなあ」


「はぁぁ!?ち、違うわよヒロトの顔をずっと見ていたわけじゃなくて、対局前のテレビで見た時の表情と変わってなかったから指摘したわけであって、けっしてずっと見ていたとかじゃなくて」


顔を赤くして早口言葉みたい喋ってしまう。


「もしかしてルミはヒロトの事が好きなのか!そうなのかーだからヒロトの顔ばっかり見てるのか

俺に内緒はないっしょ〜〜」


笑いながら煽ってくるトムの腹にパンチを投げ込む。


「うぐ……」


俺から奪った角行と留美の角行が、双刀のように俺の攻めの陣形を崩していく。


まずターゲットにされたのが桂馬だ。

二枚とも何もできずに角行に取られてしまった、そして銀二枚もあっけなく取られた。


「やばいぞどうする俺、逆転の鍵を見つけるしかない」


誰にも聞こえないような声で自問自答をしていると稲葉さんが笑いながら挑発してきた。


「苦しいでしょう?もう投了してもいいんですよ?」


投了とは負けました、参りましたと言う意味だ。

明らかにこの苦しみを味わったことのない奴が吐くセリフだ。

やはり才能で勝ち上がってきたやつは言う事が違うぜ、必ず見つけ出してやるこの苦しみから解放される為のカギを!!


「投了なんかするわけないだろ、まだ俺の玉は詰んでない」


「いつまでその勢いが続くか楽しみです!」


もう勝ち誇ったぞと言わんばかりの顔で言ってきた。

だが俺の盤面は最悪な状況だった。


持ち駒は金一枚そして盤上には、歩兵三枚、金二枚、それと飛車と玉。

もう次の稲葉さんの標的は決まっている、間違いなく飛車だ。


双刀のように襲いかかってくる角行は、もう角行ではなかった。

いつの間にか攻められているうちに角行は、馬になっていた。


将棋では敵陣に踏み込んだ時点で、駒をひっくり返す事ができる。

なので稲葉さんの角行二枚はどちらとも、馬という角行よりさらに強いものになっていた。


間違いなくこの勝負は俺の持つ飛車で決まる、ここまできたら飛車をうまく使って稲葉さんの馬二枚をどうにかするしかない。

俺の盤上は玉の周りはポッカリ空いてしまった。いやここは飛車にとって動きやすくなったと捉えるべきだ。


よし、この飛車で今の状況を返してやる、持ち時間を見てみると残り八分になっていた。

俺は残り五分になるまでに勝利への道筋を読むことにした。


三分間で脳をフル回転させ、飛車を脳内でありったけ動かし。


そして勝利へのカギを見つけた。


俺は稲葉さんに嘲笑うように告げた。

「さあてここからが勝負ダァ!」

広斗の表情は焦りとは違い悪魔のような笑みを浮かべていた。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

今回は対局の中盤を書いてみました。

広斗はかなりおされている場面が多かったですが次から逆転に持ち込む感じで話を続けていくので

次回もよろしくお願いします。


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