2ー052 ~ 魔物侵略地域の昔
「村長!、今日も大漁だでや!」
満面の笑顔で桟橋かから手を大きく振りながら叫ぶ漁民たち。
「ああ、見えとうよ!、ようやってくれたなぁ!」
漁船、といっても小船だが、そこには溢れるほどの魚が載っているのが見える。
一昨日から過去に例を見ないほどの大漁の連続で、村中総出で収穫した魚を干す作業で大わらわだ。
今も村中のあちこちには板の上に広げた魚や、紐で吊るした魚、身を潰して葉に包み、それを蒸している煙と蒸気がのぼっているのがわざわざ見ようとしなくても見ることができる。
それらの作業をしている村人たちも大忙しだ。
普段ならのんびりしているようなこの時間、子供たちが遊ぶ声が時折聞こえようものだが、その子供たちや老人たちですら、作業をしなければならない状況なのだ。
そこにさらに今日も大漁だ、確かに大漁は嬉しい。だが3日連続だと逆に村人たちの体がもつか心配になってくる。
それにしても天候が良い日が続いているのは本当に助かる。とは言えこの時期はあまり雨も降らないものなのだが。
と、桟橋から漁長と数人の漁民が木箱を運んできた。
「こいつは昨日のよりもっと沖のほうでねぇと居ねえやつだ」
漁長は憂鬱そうに言う。
一昨日はただの大漁だった。過去最高ということを除けば。
だが昨日はそこに、沖の方の魚が多く獲れたと報告がきた。
漁長は沖のほうに船を出して調べるべきだと言ったが、2日連続の大漁で村中が大変なのにそんな訳のわからん調査に人手が取られるのは困ると年寄り連中が反論、仕方ないので一旦は様子を見ようということでとりあえず話は終わった。
そして今日、やはり沖から魚が移動してきているということがわかったようだ。
問題は、どこで何が起きているかだ。
「増えとるだか?」
「いんや、昨日のは沖っちゅうても島のほうだが。こいつは島ん南んやつだがぁ、そんでこいつは島ん北んやつだが」
「やっぱ沖で何かあったと見るべかや?」
「島で何かあったと儂ぁ思う。沖なら南か北んどっちかじゃろうし、波もいつもと変わらんが」
なるほど確かに。沖で異変が起きた場合、それが自然災害なら今頃村は波に飲まれていただろう。
「島だか…、まさか乗り込むんかや?」
「いんや、上がらねぇ、ぐるりを見てくるだけだがぁ」
島の周囲は崖ばかりで、唯一反対側、島の西側に小さな入り江がありそこから上陸はできることがわかっている。
何年か前に島の様子を村から数人が見に行ったが、危険な爬虫類の群れと遭遇し、急いで逃げ帰ってきた。
漁長もその時のメンバーのひとりだった。
「んだがええ。私が許可すんべ、行ってくれっかや?」
「わがった、準備次第出るが」
「んだ」
島とこちらの間は潮流の早い部分があり、漁民たちが普段使っている漁船では不安がある。
なのでそれを安定させるために両舷に丸木舟のようなものを、棒を何本も差し渡して固定するのだ。
漁に使う場合でも、片側に取り付けて網を仕掛けたりすることもあるので、彼らも慣れたものだ。
漁長のほうはそれでいいとして、年寄り連中を抑えるのは村長である私の仕事だ。
私は足元に残された木箱を運びにきた村人を見送りながら、軽く溜息をつき、作業の指揮所代わりとなっている集会所のほうへと歩き始めた。
●○●○●○●
その夜。
村人総出の作業も急ぎの分はなんとか終わらせ、広場で宴会時のような炊き出しを皆で食べ、片付けをし終わった頃。
浜のほうが騒がしい。
何だろうか?、漁長が戻ったのだろうか?
皆で顔を見合わせて、とにかく浜の方に行ってみようと歩き始めてすぐ、息を切らせながら漁民が走ってきた。
「そ、村長!、ま、魔物!、魔物だ!、魔物がいっぺぇちっこい島に乗ってきたがー!」
「何だが!?」
「に、逃げろ!、皆逃げろー!!」
逃げるったってどこに?、通常なら家にだろうが…、川沿いに上がって街へ逃げるにせよもう日が沈んでいる。川には途中に支流もある。それらを迂回するにせよ大変な距離を移動することになる。着の身着のままでは到底無理だ。
とにかく何だかわからないが、魔物がたくさん襲来してきたということはわかった。
この剣幕だとそうとう危険が迫っているのだろう。
聞こえた村人たちにも伝わったようで、そのまま村の外へと逃げ出す者、自宅のほうへと走り出した者、干してある魚を幾つか持ち去る者、さまざまだが血相を変えて走っていることだけは共通していた。
叫んでいた彼はそれだけ言うと腰を曲げ両膝に手をそれぞれ当ててぜぇぜぇと息をしている。
私は彼の側に近寄り、彼の肩に手をおいて、少し状況を尋ねることにした。
「漁長は?」
「漁長は浜ん近い家へ伝えんがです」
「小さい島ってなぁ何だが?」
「家んごと大きさん島がじゃった、そいが幾つんあってが上ん魔物ん乗りおったがです」
「魔物ん数は?」
「乗りおん数が10はおったがです。島んざっと10は見えたがです」
ということは少なくとも百は居るということか。
警備兵は10人、村人は120人。逃げるしかない。
「どれぐらいで村ん来るが?」
「俺らん船んほうが速かったがです。んだがもう浜から見えっがです」
もうすぐってことか、浜の見張りは昼間だけだ、当番を責めるのは酷だろう。
「お前も街んほうへ逃げるとええが。そこらの干し魚幾つか持ってけ」
「そ、村長…」
「どうせ置いてっても魔物んエサじゃろうが」
そう言うと少し笑顔になったようだ。
息が整ったのか、上体を起こした彼の肩をぽんぽんと叩く。
そして私は町から派遣されている警備兵に街への先導と救援を頼もうと、街道側の入り口にある警備兵たちの詰所へと走った。
警備隊長には、もう連絡が届いていたようで、詰所のところには明々と篝火が焚かれており、数人の警備兵たちは慌しく動き回っていた。
「ああ、村長殿、街への連絡ならもう走らせました。村人たちには落ち着くように言ってもらえませんか?、これでは我々も動きが取り辛いのです」
は?、何を言っているんだろうか、と一瞬固まってしまった。
「警備隊長殿、私は避難する村人たちん街まで先導してくれんべかと頼みん来たがや。まさか魔物ん食い止めようなんて思っとりゃせんが?」
「そ、そのような事は考えておりませんが、村人より先に我々が逃げるわけにも参りません、し、殿を努めさせて頂こうかと!」
「たった10人でかや?」
「そ、それは…」
むしろ夜道を先導したり脱落しそうな村人を助けたりして欲しい。
街道とは言え、昼間ならともかく、あまり目印などもない草原なのだ、ただ川沿いに遡れば良いというものではない。
増してや先に逃げ走っている村人ほど、着の身着のままの状態なのだ。
途中に遊牧村があればいいが、移動してしまっている可能性もある。
この国はこの漁村ツーラと首都ドドンード以外は遊牧村で、時期や状況で簡単に移動してしまう。
支流といっても浅瀬があって渡れる箇所が限られている。村人たちにはそのような情報はないのだ。
ならばこそ、ある程度行き来の経験がある警備兵たちに先導してもらわなくてはならないのだ、どうしてそれが理解できないのか…。
こうしている間にも魔物たちが迫っている、怒鳴ってやりたい気持ちをなんとか抑え、警備隊長を説得した。
「……村長の仰ることはわかりました。では兵を分けて、私を含め4名が残りましょう」
「浜ん近い家に火を放ちます、そん手伝いをお願いします」
「な、何ですと!?」
「魔物ん量が多すぎるがです。抗えんがです、少しでも魔物ん足が止められんがじゃ追いつかれ村人ん死ぬがじゃ!」
「わ、わかりました!、お手伝いします!」
浜のほうへと走る途中、漁長と数人の漁民が居た。
漁長は家々に火をつけると言い、自宅を燃やされる漁民が反対していたようだ。
気持ちはわかる。しかし言い争ってるヒマなどない。
私は浜のほうを指さした。もう浅瀬の少し向こうに黒々といくつもの小島が近づいてきていた。
火をつけるにせよ数件程度の猶予しかない。
「村長命令だが!、火を放て!、もう魔物んすぐそこだが!」
広場の篝火から燃えている薪を持ってきていた私と警備兵数人が、近くの家々にそれぞれ入り、布を壁際に集めて油を撒き、火をつけた。
急いでその家を出る。先ほど反対していた漁民が叫んで居たがそれどころではない。
ふと浜のほうを見てしまった。
暗い中、黒い小島はついに浅瀬に乗り上げたようだ、乗り上げた?、何だあれは、動いているような…。
火を放った家々の壁が燃え始めた、少し浜のほうが見やすくなった。
小島だと思っていたのは巨大な亀だった!
上に乗っていたトカゲが飛び降り始め、岸へと泳いできたようだ。
急いで逃げなくては!
「もうええ!、逃げるがじゃ!!」
私の声に皆も手を止め走り出した。
●○●○●○●
十数秒に1度、地響きがする。
『ギャ!』、『カカッ!』、聞き慣れない音が響く。
「走れ!!」
「追いつかれるが!!」
逃げる村人の最後尾が見えてきた、何と荷車を押したり引いたり、大きな荷物を背負ったりしている。だから遅いのか。
「荷んは諦めんが、追いつかれたが死ぬがぞ!」
人より大きなトカゲが後ろから這い走ってくる。
それでも荷物を捨てない者ら。
そんなのの面倒など見切れない。
私だって命は惜しいのだ。
それでも叫ぶ、叫びながら走る。
「荷ん捨てて走れ!!、死ぬがぞ!!」
後ろのほうから悲鳴が上がった。誰かがやられたのだろうか。
ちくしょうめ…。涙が溢れてくる。
私はツーラ最後の村長か…。
また悲鳴が上がった。
「荷ん捨てて走れ!!、死ぬがぞ!!」
何度も叫ぶ。声が枯れて来た。
前が見辛い。袖で拭う。
誰かが捨てた荷に足を取られて倒れた。
「そ、村長!」
「ええがら先に行げ!!」
「し、しかし!」
「行げ!!」
「これを置いて行きます!、御武運を!」
立ち上がろうとしたが足首を捻ったようだ、おまけに転んだときに手をついたせいで左手にも力が入らない。
警備隊長が置いていってくれた槍を杖代わりに立ち上がった。
後ろを見る、荷を捨てた村人たち数人が走って来る。
数件が燃えている村の火と煙を背景にして見えた。
その後ろ、最後尾を走る村人に襲い掛かる瞬間だけ立ち上がったトカゲが見えた。
上がる悲鳴。
結構走ったように思ったが、大した距離ではなかったように思えた。
私はもう走れない。
ならばこの槍で一矢報いてやる。
そう思って踏ん張れない足を開き、槍を構えた。
瞬間、横から突き飛ばされた。
倒れてそちらを見……
●○●○●○●
「総首長!、ツーラ村に魔物が大挙して襲ってきたらしいな!」
総首長室の仕切り布を掻い潜り、入るなりそう言ったのはバル族の首長ゴーイ=バルだ。
このバルドアという国は大河カルバスを挟んで大きく南北2つの地域に分けられ、北側をバルデシア、南側をバルドスと呼んでいる。
バルデシアには3つの部族、バルドスには5つの部族があり、それで八部族。
それぞれの首長が合議によって国の政務などを行っている。
現在の総首長はドアド族の首長である私だ。
「ああ、救援に騎馬隊と荷馬車10台、今日の昼過ぎに出たところだ」
「隣国への連絡は?」
「連絡隊に手紙を持たせた」
「そうか…」
八首長会議の時期ではないため、自分の部族に戻っていたのだろう、バル族は他の部族に比べるとこの首都ドドーンドに近いところに集落を作る。おそらくは首都に残っていた部族の者から連絡を受け、急いでやってきたのだろう。
彼は溜息をつくと、この部屋においてある客用のソファにどっかと座った。
「襲来した魔物の規模は?」
「対処できないほどの数だということしかわからん」
「ツーラ村の兵は?」
「10人程だ」
「騎馬隊は何人出した?」
「40」
「足りるのか?」
「わからん」
「わからんばかりではないか」
「続報次第だな。とにかくバルドアでは魔物が大挙してやってくるなんてことは今まで無かったんだ、騎馬隊で対処できなければ隣国に頼るしかない、それぐらいのことは分かっているだろう?」
側仕えのもってきた器と水差しをひったくるように受け取って注ぎ、『何だ茶か…』と言いつつも一気に飲み干すゴーイ。
相変わらずの態度だ。
立場は総首長である私のほうが上だが、彼のほうがひとつ年上だし首長歴も長い。
部族的には建前としては同列ということになっているが、やはり部族の大きさや抱える人数などによって序列はある。
それでいうとバル族が一番大きいので、こうした態度にもなる。
私のドアド族は3番目だが、幼少から部族交流などで彼とは長い付き合いだ。いわゆる幼馴染というやつだ。
「……北は?」
「こちらからは出した、向こうからの連絡はまだない」
「そうか…、どう思う?」
「どうもこうも情報が少なすぎだ、今打てる手は打った。首都内の各部族にも通達した、お前もそれで来たのだろう?」
「ああ」
「バル族はまだ大丈夫だろうが、西の方の部族は移動の準備をした方がいいかもしれん」
「そんなにまずい状況なのか?」
「ツーラ村 124名が難民として押しかけてきたとして、バル族で食わせて行けるか?」
「無理とは言わんが…、三月、いや、半年ならぎりぎり持たせられるな」
「それではその後が持たんだろう」
「ああ、それまでにここか、他所に分かれてもらわねばならんだろうな」
「ツーラに一番近いというと、ダリ族か、あそこだとどうだ?」
「羊をつぶせば持つだろう?」
「だからそれでは、」
「ああわかったわかった、だから移動の準備をさせた方がいいという話だな」
軽く両手をあげて降参したように言って笑う彼。
別に私を困らせようという意図はないらしい。
「そういうことだ。西の方の部族にはそう通達を出した」
「気が早くないか?」
「ツーラで対処できずに村民が全員逃げようと即断するほどの量だぞ?」
「まさかここまで引かせるのか?」
「そのつもりだ。途中には防御に適した場所がない。
ここなら壁もある、物見櫓もある、少しは持つだろう」
「わかった、総首長殿の仰せのままに。俺たちも動く」
そう言いながら彼は立ち上がって一礼し、早足で出て行った。
「頼む」
私はその背中に向けてそう呟いた。
バル族はこの首都ドドーンドから南東側一帯を大きく支配する部族だ。
そしてハムラーデル王国の付き合いも長い。いわゆる窓口となる場所でもあるからだ。
そのバル族の首長である彼が『動く』と言った。
これは有事の際、ハムラーデル王国との取り決めでもあるが、避難民の受け入れや王国軍の出動に関して八首長会議を経ずに彼が全権を持って動くという意味だ。
それと、バル族の騎馬隊は首都に集結することになる。
つまり彼は、『兵は預ける、俺はハムラーデルへ交渉に向かう』と言ったということだ。
八首長はそれぞれ、こういった有事の際には役割が決まっているのだ。
ドアド族の首長にも当然、役割があるが、私は総首長なのでここを離れられない。
そういう時のために、部族には首長代理が居るので問題はない。
やれやれ、今日は眠れそうにないな…。
●○●○●○●
夜半過ぎ、続報が届いた。
相当急いだのだろう、騎馬隊の詰所で報告を終えた兵士は気を失ったんだそうだ。
昔は直接最高位の者へと報告していたそうだが、ハムラーデル王国ではそれによる弑逆未遂事件があったため、使者などは直接最高位の者には会わせないことになったそうだ。
バルドアもそれを真似てこのように一度、兵のところで報告をさせることになっている。
その報告によると、大きな家ぐらいの小島に乗った百数十ものトカゲ型の魔物の群れなのだそうだ。
そしてその小島は、巨大な亀だということだ。
彼は村長や警備隊長らと最後まで村に残り、魔物の侵攻を少しでも遅らせるために村人の家に火を放ち、そして伝令役として1頭残されていた馬を駆って街道脇を来たらしい。
途中、騎馬隊とすれ違ったそうだが、その時にこれらの情報を少し伝えはしたとのことだ。
なるほど、なら騎馬隊では荷が勝ちすぎるだろう。
できるだけ村人を助ける方針で動いてくれると思うが、それもどれだけ余裕があるかわからない。
騎馬隊長の判断を信じるしかない、か。
しかし人より大きなトカゲ型の魔物が百数十…、多い。正直手に余る。
そんなもの腕利きの冒険者が1・2体を同時に4人以上で対処するようなものだと聞いた。
騎馬隊や槍を持った兵士が何人居ればどうにかなるものだろうか?
それと問題なのが、大きな家ぐらいの巨大亀だと?、そんなものどうやって倒せばいいのだ?
この街の防壁は、そのような巨大亀など想定していない。
今から防壁の内側に土で補強しても、高さが足りないのではないか?
その亀の上にトカゲ型魔物が乗ってきたというのなら、同じようにされれば防壁に意味があるとは思えない。
まずいな、悪い方向に考えすぎている気がする。
しかし防壁があまり持たないかも知れないなら、民たちを逃がす方向で急いで考えなくてはならないだろう。
そこに北側バルデシアをまとめるデーバ族からの連絡が届いたと報告があった。
北側は西から順にニーア族、ガダ族、デーバ族の3部族が居るが、その報告によると、ニーア族はほぼ壊滅らしい。
かろうじて逃げて生き残った者が、ガダ族に保護されたそうだが、ガダ族は半数の家畜を置いて逃げてきたとのこと。
デーバ族はこちらからの連絡で移動の準備をしていたところ、ガダ族がやってきて、ロスタニア方面へと一緒に逃げたということだ。
連絡隊の者はデーバ族の者だそうで、後ろにトカゲ型の魔物は見ていない、と言っていたらしい。
どうやらだいたい1部族の民と1部族半の家畜が贄となって侵攻を遅らせたようだ。
デーバ族ならロスタニアとの親交もある、先にこちらからロスタニアへ連絡隊を出していたので、彼らが到着する前には連絡が届き、国境に防衛隊を派遣してくれることだろう。
魔物の数や構成について、もう少し詳しく分かれば良かったのだが、現状でも巨大亀は手に余る。余るどころではないが。
この情報を連絡隊を新たに編成し、渡すべきだろうか…?
普通に考えればそうすべきだろう。
ところが現状では1兵でも惜しい。いや、本当にそうだろうか?
むしろロスタニア、ティルラ王国、ハムラーデル王国の3国に2名ずつの連絡隊兵士を派遣したとする。
6名減った増えたでどうにかなるレベルの相手ではない、ならば、情報を伝えるほうを優先すべきだ。
そう決心し、新たに連絡隊を派遣する命令書と、伝達すべき内容を羊皮紙に急いで書いた。
願わくば、この首都の防壁で魔物の侵攻が食い止められることを祈りながら、3国からの救援部隊が早く到着してくれることを祈りながら…。