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1ー004 ~ リンちゃん

 東の森のダンジョン村には皆が朝食を食べ終えたような時間帯に着いた。


 まぁ、森の拠点を出たのが夜明け後だったしな。


 しかもいつもなら途中で角ウサギやら角キツネやらを見つけて、いや、見つかって襲ってくるんだよな、なんで逃げねーんだろうな、あいつら。そんで捌いたり後始末したりして時間食われるんだけど、今日は全くエンカウントが無くて、リンと喋ってるうちに村に着いた。


 定食屋のおばちゃんとこに燻製肉いれた箱もってって買い取ってもらい、前んときの箱がひとつ空いたとかで返してもらったんだが、どうすっかね、これ。


 まぁ、事がうまく運べば、今日はこの村に泊まることになるんだから、宿屋に部屋とって預かってもらえばいいか。


 ところでリンちゃんよ、キミさっき燻製肉を買い取ってもらったとき、悲しそうな、別れを惜しむような顔してたよね?、お兄さんチラっと見てたよ?






 宿屋に行ったら、前んときの部屋とってた料金がまだ残ってるって言われて、鍵渡された。

 部屋のベッドの下んとこに置いてた箱もそのままだった。お金あるじゃん。よかった。これで盾が買えるぜ。


 「あのぅ、タケルさま?」


 そういえばこんな見るからに小学生ぐらいで紺色のミニスカメイド服――邪道だとかそういうのはいいじゃないか――っぽいエプロンドレス?、って言うんだっけか、そんな感じの服装に、淡いピンク色の可愛らしいリュックサック?、の小さいやつを背負って、頭は艶のある銀髪を今度はツインテールにして根元を同じく淡いピンク色のリボンで結んでいるような、ちょっと俺を含めて町の人たちが地味な色ばかりなのでかなり目立つと思うんだが、ここまで誰もこの子について注目したり言ったりしたひと、居なかったよね?


 「あ、あのぅ、余りじっと見つめられると照れます…」


- そこんとこどうなのさ、リンちゃん。


 「た、タケルさまっ!?」


- あ、声に出てた?、ごめんごめん。いや、ここまで誰もリンちゃんのこと言ったり注目したりした人が居なかったなって。


 「あっ、それは、魔力のない人には見えないようにしているからでして…」


- えっ、そんなことできんの?、もしかして村にきてからリンちゃんと喋ってたりしてたら他のひとからするとでかい独り言の変な人じゃん。


 「あ、それはそのぅ…ごめんなさい」


- あ、いいよ、大丈夫大丈夫、リンちゃんのことあれこれ訊かれるのも困るし。正直助かったかも。


 「よかったぁ、ありがとうございます。」


- それで何か言いかけてた?


 「あ、はい。大事なものとかお金とか、あたしが預かれば安全ですよ、って言おうとして…」


- そうなの?、でもお金とか予備の装備とかだと、重いよ?


 「大丈夫です。んと、このように」


 背中のリュックを下ろしてフタをぺろんと開け、口をぐいっと広げると、ベッドの下の箱や、さっきおばちゃんから返してもらった箱を、ひょいひょいと入れた。

 あ、ベッドのとこの木箱は宿の備品だから中身だけに…、あとで言おう。


- え?、大きさからして入るようには見えないんだけど、どうなったのそれ。


 「えっと、これはいわゆる魔法の袋っていうのと同じなんです。たっぷり入ります。重さも関係ありません」


- うぉぉぉ…、これが前の世界で創作物の定番アイテムとも言える、魔法の袋かぁ…なんか感慨深いな、これで勝つる!、みたいな。


 「喜んでいただけたようで、嬉しいです。あ、それと…」


- うん?


 「リンちゃん、って呼ばれるのは少し照れます」


 はにかんだ仕草が可愛いじゃないか。あ、でも80歳とか言ってたっけ、まぁいいや。


- 気にしないで。呼び捨てにするのに慣れてないし、こっちの問題だから。慣れて。


 「タケルさまがそう仰るのでしたら…」


- ところで魔力って?


 「この世に生きるもの全てに魔力があるのですが、それを使って周囲に何らかの作用ができるほどの存在が居ます。人種(ひとしゅ)にもまれにそういった存在が生まれたりしますし、私たち精霊であればほとんどの者が魔法を使うことができます。それでその、一定以上の魔力を持っている存在について、魔力がある、と表現しています」


- なるほど。んじゃ僕がリンちゃんを見えているのは魔力があるってことなのかな。


 「タケルさまは勇者さまですから、もちろん魔力をお持ちです。でもあたしが見えるのはタケルさまがあたしのご主人様だからです」


- あ、そういう仕組みなのね。って、え?、魔力あんの?、僕に?


 「はい」


- んじゃもしかして、魔法が使えるようになったり…?


 「覚えれば使えるようになります。と、お母様が言ってました」


- おおお…、ん、どうやって覚えるの?


 「あたしが教えます!」


- おおお、そっか、いい子だなぁリンちゃんは。よしよし。


 「あっ、タケルさまぁ…」


- あれ、リンちゃんちょっと背が伸びた?


 「あっ、はい!、あれから10年経ってますので!、あっ!」


- あー…、もしかして再教育って…?、でも5分ほどしか経ってなかったよね?


 「えっと…そのぅ、100万倍の加速空間で、アクセ」


- ストーップ!、ストップぅ!、そこから先はいけない。


 「すぴりっととた…もごご」


- おおっとっとぉ、それは言ってはいけない。なんとなく分かったから。OK?


 急いでリンちゃんの口を押さえた。あぶなかった。


 「はい。なのであちらの10年がこちらではだいたい5分少々だったんです」


- なるほど。辛かったね、ありがとうね。よしよし。


 「お母様が怖かったです。でも命の恩人のタケルさまにお仕えするために頑張りました!」


- そっかそっか、よしよし。


 おおっと、こうしてる場合じゃなかった。雑貨屋さんで盾買って荷物取りに行かなくちゃ。




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2019年05月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
なるほど。わかりません。
2020年01月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
同じやん。なるほど。やっぱりわかりません。
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