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2ー031 ~ 罰とダンジョン番号

 「た、タケルさ~~ん、もう限界です~~、下ろしていいですかぁ~、もう無理ぃ~」


- ダメです、それだけ喋れるなら限界じゃないでしょう。あ、身体強化を緩めたら肩がぬけますよそれ。


 「ええっ!?、そんなぁ、だいたい乙女にさせる格好じゃないですよぉ?、これぇ~」


- 元気ですね、30分延長しましょうか。あと1時間で。


 「えええぇ~、鬼ぃ!、悪魔~!」


- 何か言いました?、延長して欲しいんですか?


 「ひぃぃ、ごめんなさい~」


 ネリさんが何をしているかというと、俺が土魔法で作ったでっかい鉄アレイみたいな形の(おもり)を両手にそれぞれ持って、蟹股(ガニマタ)状態で立たされてるってわけ。

 乗り物で無茶な操縦をして、小屋に突っ込みかけ、川に突っ込んで壊した罰ってやつだ。

 でも身体強化の訓練になってるんだよ、これでも。見映(みば)えはよくないけどね。

 左右や手足、身体の中心。ちゃんとバランスよく強化配分を維持できないと余計に辛くなるっていう鍛錬なんだ。

 そりゃこんなの身体強化のない元の世界でやっちゃダメだと思うけどね。


 「ひ、膝がぁ…太腿(ふともも)がぁ…」


 鉄アレイならぬ土アレイは、大きさもだけど密度もスゲー頑張ったので、鉄より重い、はず。両方を持って、お互いに軽くぶつけてみたら、『キン!』って澄んだ音がしたよ、ハハハ。もちろん俺も身体強化しないとそんなモノは持てない。素の状態で持ちあげようとしたら腰がやばそうだ。


 そんでネリさんの監督をしながら何してるかってーと、いつものレーダー魔法をやってる。

 まだまだ西側にはダンジョンが幾つもあって、そこから少しずつ魔物が出てくるので、こうしてちゃんと定期的に調べておかないと、移動経路やら報告やら、正確にできなくなるからだ。


 情報は鮮度が命、っていうもんな。


 「腕がぁ…肩がぁ…膝がぁ…、喉がぁ…」


 一応、潰したダンジョンが収束地になって、全部じゃないけどだいたいの魔物はそうやって通ってくる道が決まっているから、移動経路もそれを掃除しながらになる。

 でも、中にはそういうのを無視して、あるいは途中のところをすっ飛ばして、違うルートを通る個体も少数だけど居る。

 だから後ろで多くの兵士さんたちが国境ラインを巡回したり、収束地のあたりに陣を張って、それらが後方、つまり国や街や村に行かないようにしてるってわけなんだ。


 当然、拠点に居るのは兵士さんたちだけじゃない。物資を運んだり武具を修理したりと、他にもいろんな人たちが居る。

 本来、最前線の拠点にはそういう人たちはあまり来ないらしいんだけど、今は余裕があるからか、後方からぞろぞろやってきてるんだってさ。


 今までは少し後方に陣を張って村などにも協力してもらって、ん?、喉?

 さっき『喉が』って言った?


- なんで喉なんです?


 「喉がぁ、渇きました…」


 そりゃ口あけっぱなしで息して喋り続けてたんだから喉も渇くだろうよ…。

 全く、しょうがないな…。


 ポーチからタンブラーとレモン――じゃ無いんだけど味はレモンなんだよ、名前は覚えてないからレモンでいいんだ――をとりだして、水魔法で水を生み出し、ナイフでレモンを切って、ちょっと絞って輪切りを浮かべて、そんで麦じゃないけど小麦のストローを挿して持っていった。


 「わぁい、タケルさん優しい~」


 元気じゃないか。


 「んん~~!、美味しい!、タケル(すい)美味しいです!、もっとください!」


 おい!、言い方!


- これは何ていう果物か知りませんけど、レモンっぽい味がするんでレモン水です。断じてそんな名前じゃないです。


 「だってタケルさんが出したお水じゃないですかー」


 だから言い方!


- 水 魔 法 で!、が抜けてますよ!?、そんなに延長して欲しいんですか?


 「あ、ちゃんと言い直します!、タケルさんが出した魔法のお水をもっとください!」


- はい30分延長決定。


 「そんなぁ~~」

 「その、タケルさんが出したお水、とやらを私にもください!」

 「私も飲みたいですタケル様!」


 キミたちそっちで訓練してたはずでは?






●○●○●○●






 「やり切りました!、頑張りましたよ?、あたし。いやー頑張ったなー、頑張ったと思う!、タケルさん?、褒めてくれてもいいんですよ?」


 なんと夕食までの4時間半、延長に次ぐ延長で、いつへたり込むかと思ってたんだけど、やり切ってしまったネリさん。

 しかも終わってすぐこの元気である。


 何だ何だ余裕あるじゃないか、もっと重さを足せばよかったかな?


- あーはいはい、がんばったねーよしよし。


 「『よしよし』ってそれ口で言ってるだけじゃないですかー、行動が伴ってませんよ!、聞いてます?、タケルさん~」


 あーもううるさいなーこの子はホントにw

 こういうタイプ、町内の集会所で面倒見てた子に居たけどさ、小学2・3年だったかなぁ、ネリさんアンタいくつよ…。


- まぁでも最初の頃を思えば、かなり成長したんじゃないですか?、今なら前に走ってへたりこんで動けなくなってた距離でも余裕で走れるかもしれませんね。


 「そ、そうかな?、成長したかな?、あたし。ふふん」


 そんなネリさんにはさっさと先に風呂に入ってもらった。






 今日の夕食には川魚を使ってみた。料理したの俺じゃないけどさ。

 乗り物が川で止まったときに、魚が居るってわかったので、土魔法で川岸ってかまぁ砂利なんだけど、そこに生簀(いけす)みたいなのを作って、水の上を走って追い込んだわけで、結構捕れたんだよね。

 ためしに軽く捌いて塩ふって炙ったら美味かったんで、それで夕食のメニューになった、ってわけ。

 川の水はきれいなので、泥臭さもなく、淡白な味だった。何ていう魚かは知らないけどね。


 カニみたいなのもいたんだけどさ、カニっぽい何かなんだよ、形とかはハサミもあるしカニなんだけど、『カニ…?、なのか?』って疑問符がつくから逃がした。


 だってハサミ4つだよ?、足も片側10本ずつぐらいあるしさー、逃がすよそんなの。






●○●○●○●






 翌朝。

 試作品2号が届いてた。

 夜にリンちゃんと話し合った結果、簡単に『スパイダー』って名前にした。

 『元の世界で蜘蛛(くも)って意味だよ』って言ったらそれに決まった。


 え?、名前が安直?、いいじゃないか分かりやすくて。元の世界だってスポーツカーで平べったいやつはスパイダーだったろ?、こっちは平べったくないけど脚が蜘蛛なんだからさ。いいんだよ、これで。






 で、コアが2まわりぐらいでっかくなってた。

 説明書はあるけど、設計図がないんだけど、って尋ねたら、今度のはパッケージング技術とかで、土魔法で生成するか盛り上げるかした土の塊――物置小屋ぐらいの量が必要――に魔力を流しながらコアを埋め込めば出来上がるんだってさ。


 やってみたら、みるみるうちに形ができ上がった。スゲーな光の精霊さん技術。


 そんで今度のはドアもあって屋根もあってサンルーフ、って言うのか知らないけど、それもついてて、窓はガラス?、なのか?、が嵌め込まれていてどこからどう見てもちゃんとした乗り物になってた。


 形も直方体じゃなくて、前後だけ楕円形が平べったくて、うーん、うまく言えないけど流線型っぽくてカッコよくなってた。


 もちろんネリさん大興奮。

 でももうネリさんには運転させないと決めた。絶対ダメ。


 しかし土魔法でなんで銀色になんの?、これ。表面どうみても金属っぽいんだけど。

 まぁどうせ技術的なこときいてもわかんないのでどうでもいいか。


 あ、でも脚は8本で毛とかは生えてないけど虫っぽいんだよなぁ、それが本体と合わないのなんの。


 前後の窓は開かないけど、左右の窓はちゃんと開く。エレベーターみたいに三角のボタンがあってそれで開閉できるみたい。

 まぁ、外からわからないからいいけどさ。


 コアのサイズが大きくなった分、出力も上がってるんだってさ。操作方法は試作品と同じ。


 あ、それと今度のは防水仕様なんだって。脚が届けば普通に進むことができて、本体は水に浮くんだとさ。それで脚8本がオールみたいな動きで漕いで進むんだと。

 コア渡された時の説明書に書いてた。


 試作品からステップアップし過ぎじゃないですかね?






 それで今日は訓練時間が短くなったけど、朝食のあと、『スパイダー』に乗り込んで移動開始だ。


 今日はハムラーデル側の、東から2番目と3番目のダンジョンを攻略する予定。

 規模から言っても大型は居ないと予測できるからね。


 俺は大きめのサンルーフの下に手すりつきの台があってそこに立ち、上半身を外に出した状態で移動砲台役をやった。

 屋根の上にも手すりと風防があるのがありがたい。至れり尽くせりだな。


 で、倒した魔物を回収するのに、ついそのまま上から出て、踏み切った足が屋根を『ベコッ』って凹ませてしまった。


 ネリさんがまた大笑いしながら、『あははは!、タケルさんが壊した~あはははは!』って、もうムカついたんでデコピンしてやった。

 そしたら額を押さえて『痛い~ひひひははは痛い~ひひひははは』って涙目で笑い続けてんの。人生楽しそうだなこのひとw


 そんでまたサンルーフから外を見たら、凹んだ箇所が直ってた。スゲー。






●○●○●○●






 ハムラーデル側東2のダンジョンは、2層しかなく、分岐は1層目に1つあっただけで、何ということもなくあっさり終了。


 ちょっと問題があったのは2つ目に処理した、ハムラーデル側東3のダンジョンだった。


 ん?、ダンジョンの表現?、ああうん。

 魔物侵略地域を、中央で2分する川があるんだよ、それに沿って中央にダンジョンが並んでる。

 まずこれを中央と言って、東から順番に番号つけたわけ。

 次に北半分のほうは、ロスタニア側、同じように東から順に番号振ったんだ。

 最後に南半分のほう。

 こっちがちょっとめんどくさい。ハムラーデル側、ってのはいいんだけど、東から順番に番号を振るときに、2つ並んでる箇所があるわけだ。

 で、そういうところは、北東、ってつけたってだけ。ちょっとだけ面倒なのはそこね。


 それでいうと、この前翼が生えたトカゲのでっかいやつがボスだった4層あるダンジョン、もう埋めたけどさ、あそこの場合は、新拠点から数えることにしたので、中央東5、って言うことになるって寸法なのだ。


 ここで一応、ティルラ国境第一と第二の前にあった2つずつで計4つのダンジョンを除いて、処理したダンジョンは、

 ・中央東1~5

 ・ロスタニア側東1・2

 ・ハムラーデル北東、ハムラーデル東1

 の9ダンジョン。

 ティルラ国境の4つを足して、合計13ダンジョンの処理が終わったというわけ。


 それで今日2箇所やったので、2つ増えて合計15ダンジョンね。


 あと、分かっているダンジョンは11箇所ある。ここから先は階層も一部を除いて多いから、処理したダンジョン数でいうと半分以上だけど、手間はどんどん増えていくから、同じようなペースではできないと思ってる。


 それに、はっきりとダンジョンだとは分からない箇所もいくつかある。ただの収束地かもしれないし、もしかしたらダンジョンなのかもしれない、って箇所がね。

 これは幾つかあるんだけど、こればかりはあとで現地に行って確認しないとわからない。

 ある程度近くまでいけば分かるかもしれないけどね。


 感知でわかんないのかって?、いや、自然にできていた岩の裂け目なのか、ダンジョン入り口なのか、区別つかないんだよ。ダンジョンの奥の方までは上からの魔法じゃ見えなくてね。入り口を入って少しぐらいのところまでなら見えるんだけども。


 もしかしたら自然にできていた洞窟かもしれないし…。

 水脈とかのこともあるので、一応ウィノアさんにも尋ねてみたんだけどね。

 水脈が近くにあったとしても、だからってダンジョンだとは限らないから、結局わからないままなんだ。






 ああ、それで今日2つ目に処理したダンジョンの問題だっけね。


 これも規模的には2層で、大したことはなかったんだけどさ。

 ここ、池の(そば)なんだよ。それで2層目は良かったんだけど、1層目を帰りに崩すときに、壁んとこの向こう側の薄い岩盤にヒビが入ってしまってさ。


 ああ、崩すときには土魔法の振動で天井を崩すようにしてるんだけど、どうも壁のほうに共振しちゃったみたいで、そのせいで壁から水がちょろちょろ染み出てきて焦った。


 これダムとかの映画にあるやつだ!、ってめちゃくちゃ焦ったけど、落ち着いてみりゃどうせ崩れて埋まるんだよね。で、あとで池のとこ見に行こうって思ってたらウィノアさんが音声で言ってくれた。


 『池ではありません、池の下の水脈です。池から染みこんで繋がっている程度ですから、池には影響は少ないでしょう』


- そうでしたか。よかった。あ、水脈に影響は?


 『それも大丈夫です。少し濁りますが、それも許容範囲です。ダンジョン内部が埋まっていなければ問題ですが、埋めてくださっているので』


- それはよかった。


 というわけ。

 問題ってほどでもなかったけど、その時は後ろに居たみんなに『あっ!、池の境が割れたかも!、急いで逃げよう!』って、一旦走って逃げだしたわけで、あとで大丈夫だって知ったときにさ…。


 「ふふっ、慌てんぼうさんですね、タケルさんは」

 「タケル様が落ち着いてくださらないと困ります」

 「あははは!、さっきの慌てようったら!、あははは!」


 とりあえずネリさんにだけはデコピンしておいた。


 「ひっひひひ酷い~っひひ痛い~っひひははは」


 また額を押さえて涙目で笑ってたよ。

 変なやつ。面白いけど。




20191105:文頭にひとつ余計な空白があったのを削除。

     おかしな表現を訂正。 ときにの ⇒ 時の

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2019年05月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
なるほど。わかりません。
2020年01月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
同じやん。なるほど。やっぱりわかりません。
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