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2ー013 ~ 提案

 『キチン宿』での夜からしばらくは、リンちゃんはやたらくっついて来るし、メルさんもなんだか立ち位置の距離が近かったりするのに、話すと少し下がるというか、微妙に遠慮があるというか、なんだか雰囲気がおかしかった。


 そういうのもあって俺も、メルさんには腫れ物に触れるようなイメージで、でも森の家で一緒に生活してるんだし、無視するわけにもいかず、いや、できないし、なんというか微妙な感触のままだった。

 リンちゃんにはやんわりと(たしな)めたり説得したりして、なんてかっこよくはできなくて、めちゃくちゃ苦労した。精神的に。


 しょーがないだろ?、(した)ってくれるのは俺だって悪い気はしないどころか、むしろ嬉しいよ?

 でもさー、俺22だぜ?、あっ、そういやもう23になったのかな?、こっちの暦とか全然気にしてなかったわ、うん、たぶんとっくに23になってる…、はず。

 とにかく元の世界の常識的に考えてみろって。

 その23の社会人、()えてこう言うけどさ、社会人がだよ?、中身はともかくどう見ても10歳前後にしか見えない2人に、()()()()気分になれとか恋愛感情持てとか、できないって!


 どうしてもその、リンちゃんに対してはアリシアさんから預かってる子供、っていうのが拭えない。種族が精霊ってのはいまいちピンとはきてないからよくわかんないけど。

 こんなこと言わないけどね。


 元の世界でも、リンちゃんほどではないけど、やたらくっついてくる子とか、くっつきたいけどできなくて今のメルさんみたいな行動になってる子とか、居たんで慣れてるってのもあるんだけどさ…。


 え?、一人っ子のくせになんでそんな経験あるんだ?、って?、そりゃな、こういうことなんだよ。






 社会人になるまでは実家に住んでたんだけどさ、まぁそりゃそうだけど、そこって同じ町内に集合住宅っていうかマンションっていうかがあって、住んでる人数が多いってのと町内会がスゲー頑張るひとたちだったんだよ。


 そんでどうなるかというと、町内会イベントがしょっちゅう開催される。子供の人数も結構いるから、だいたい年長組みたいなのにちっちゃい子たちの面倒見させられたりしてたんだよ。


 俺が小学校の高学年ぐらいにその集合住宅ができて、大人たちは学校の受け入れがーとか日当たりがーとかいろいろ騒いでたけど、子供にはそんなの関係なくて、それまで広々と使ってた公園やその公園にある集会所に、ちび共がどっさりやってきたわけだ。


 そのちび共は、元々同じところからやってきたわけじゃないので、てんでばらばらに親とかが、『仲良くしてやって』とか、『面倒みてやって』とか言ってくる。

 当人たちは『ちょっと買い物に』とか、『用事で』とかで俺たちに子供預けてどっか行っちゃって、まぁ俺たちはそれで小遣いもらったり、集会所におやつ置いてもらったりしてたんだからいいんだけどさ、とにかくそういうのが定着してったわけよ。


 それが社会人になって安アパートで一人暮らしを始めるまで続いたってわけ。


 俺は部活とかも適当だったし、別にレギュラーになって大会に出るわけでもなく、中途半端に行かなくなってたし、ああ、中学んときは帰宅部な。

 大学も部活やサークルなんて…、正直に言おう、婆ちゃん倒れて家のほうがごたごたしてる間にそういうのに入るタイミングを逃しちゃったんだよ。そんでもう皆があちこちグループみたいなのになってつるんじゃってるところに、後から入ってってのも気が引けたっていうか、気後れっていうかね、そんで講義受けに行くだけで帰ってきてたわけよ。

 すると、それまで年下の子たちの面倒みてたわけだし、勉強とかも見てやってたんで、その延長で、みたいなさ、そんな流れを断れなくてずるずるやってた。


 しょーがないんだよ!、その集会所がうちの向かいにあったんだから!、親も町内会の役員やってたしな。『お前家に居るなら集会所の面倒みてやってくれ』って言われるしな!


 だから同級生とどっか行くなんて文化祭んときの買出しぐらいだったし、学祭でも出店側に居なかったし、彼女ができるなんてことあるわけがない。


 そのせいで中学高校では『保父さん』ってあだ名をつけられたり『先生』って呼ばれてたりしたけどな!


 俺だけじゃなく他にもそういう役割させられてた子は居たけども、なんせ家が目の前だし、放課後はそこに居るのが普通だったわけで、そんな生活してると、そりゃ慕ってくる子もちょくちょく居てもおかしくない。

 親が共働きの子なんて珍しくないし、どっちかが帰宅するまでは集会所で過ごしてたしな。


 そんで宿題や勉強見たりと、いろいろ面倒みてれば慕われもする。でもそんなのはだいたい一時的なもんだ。最初は中学んときだったから、結構とまどったし悩みもしたけども、俺の性格上、そういうのどうにかしようとするよりも、棚上げしちゃうんだよな、逃げてるわけじゃないけども、今考えてもしょうがないんじゃないか?、って風にしてしまう。


 この時はそれで良かった。うやむやにしてたらそのうち治まるもんだからな。

 まぁ、同じように世話してた女子たちからスゲー言われたけどな。その経験のせいでベニさんみたいに怒って来るような女性がめちゃくちゃ苦手なんだが。






 そんなだったせいで、どうもリンちゃんやメルさんはそういう見かけだから保護対象にしか見えないわけなんだよ。いくら中身が精霊さんかっこ90や、王女様かっこ13であっても、だ。

 ん?、王女様は普通に保護対象か。13ってーと中学生ぐらいか?、元の世界の子たちとは気品っていうのかオーラっていうのか雰囲気が全然違うけどなー…。スゲー強ぇし。


 強いってのは何となく感じてたし、プラムさんからも聞いてたけど、そんなレベルじゃなかった。とんでもなく強い。

 剣の訓練するとき、相手してもらうんだけど、最初に、メルさんが素手のまま『実力を見たいのでそのままかかってきてください』って言われて驚いたよ。だって俺普段剣振ってんのそれ実剣だぜ?、そのままってこのままで?、って聞き返したら普通に頷くしさー、型どおりゆっくりってことかな?、って思ったら、『ちゃんと本気でやらないと実力がわかりませんよ?』って。


 結局、身体強化しても全然敵わなかった。かすりもしないし。素手なのに簡単になされて、ふところに入り込まれて軽くぺちぺち叩かれまくった。

 素手で剣の横んとこ撫でるとかどんだけだよ!、って思ったよ。訊いたら達人級のひとはこれぐらい普通なんだってさ。おっそろしいなホント。アナタいくつでしたっけ?、ははは。


 それで実力みてもらってからは、身体強化せずに木の棒でやってる。…のだけどこれがまた厳しいの。もちろん厳しいからこそ訓練になるからそれでいいんだけどさ……。

 見かけ小学生にしか見えない子に、ビシビシやられてる図がどうにもまだ慣れないんだよ…。


 そうやって魔法や剣の訓練をしているうちに何日かでなんとか元のような雰囲気に戻ってきたわけだ。


 でもまだなんかぎこちない時があるんだけどね。剣の稽古つけてもらってるときに、褒めてくれるときとか、ちょっと顔赤いしさ。俺も意識しないようにしないようにって思ってるからスルーしてるけども。


 魔力系の訓練でも、なんか近くに居るようになったし、プラムさんのテキストを見ながらやってるのに、質問はこっちにするようになったし…、毎回『それは僕よりプラムさんにきいたほうが…』って言うんだけど…、ああ、うん、言わなくても分かってるって。でもそんなの()められないだろ?


 あと、そのせいでリンちゃんがプラムさんやメルさんに指導するとき黒くなってたりする。プラムさんにとってはとんだとばっちりだよね?






●○●○●○●






 「タケル殿、今朝の訓練のときに思ったのだが、聞いてはもらえまいか?」


 昼食後に、メルさんがあらたまったようにそう言ってきた。

 

 「もしかしたら私の槍のように、他にも宝物庫には魔王軍との戦いに有用となる武器などがそうとは知られずに眠っているかもしれない。タケル殿であればそれを…、」

 

 俺はメルさんのその言葉に、手のひらを向けて遮った。

 もう王女様って知ってしまってるわけで、あまりはっきりと王族って立場のひとから提案や依頼をされる形にしたくなかったんだ。

 だってさ、あとで王都に戻ったときに、一度依頼されたのに断っているという既成事実があると良くないかもしれないだろ?、え?、そんなの現状では断るしか選択肢がないんだよ。


- その先は仰らなくてもわかります。ですが、それは今ここで決められることではないと思うんですよ。


 そこでメルさんにほんの少し小首をかしげつつ言葉を切る。

 続きを聞きたいかを軽く確認したつもりだ。

 彼女が頷いたので、続きを話す。






- これまでのお話を聞く限りでは、伝説の武器というものはあっても、それが魔法だとは考えられていませんよね?


 「はい。そうです」


- もし、これが魔法であって魔力操作によるものだという話をしたとします。

 そしてそれを王都で証明することができたとすると、これまで管理してきた方々は何をしていたんだということになりませんか?


 メルさんはすこし息を吸い、考えるような表情をした。


 武器を扱うのは騎士などに就いている武闘派の人たちで、宝物庫を管理運用しているのは国の役人だというのは聞いている。

 魔導師は魔道具に関してであれば宝物庫に収められているものに関わることができるようだが、もう既に目録に記載されているため、王家から依頼もないので関わることもないらしい。


 そろそろいいかな、と思って続きを話すことにする。






- 次に、適性についてなんですよ。


 そう言って適性について話を始める。


 これまで知ったことからすると、魔法属性の適性を簡単に知る方法がない。

 無いわけではない。少なくとも王都、いや、人種(ひとしゅ)には無いと言ったほうが適切だろうか。

 以前リンちゃんに適性について尋ねたときにそう言っていた。


 ましてや武器の属性などそう簡単にわかるものではない。

 ただし、名前からしてだいたいの想像はつくものもある。


 それに、俺ならたぶん触れてみればわかる、と思う。

 でも今回は、断る話なのでこれは黙っておくことにした。


 王家の宝物庫に収められている魔法の武器に興味はあるけどね。






- その槍も、先日僕が少し使わせてもらったとき、メルさん仰ってましたよね?、『これは大した能力がある槍ではなく、時々、攻撃をした相手に少しビリビリと痺れる効果がある程度のものだと目録には記録されていた』と。

 『サンダースピア』の能力を正しく扱える者が今までその槍に触れたことがなかった、ということですね。

 メルさんは少なくともその槍を扱う資格がある、だから適切な長さに変化もするし攻撃すれば効果もでる。

 それは目録に書かれたのがいつかは知りませんが、それ以来初めての『サンダースピア』の適性者ではありませんか?


 「そうですね…」


 どうやらメルさんには適性者が珍しいんだということが伝わったようだ。

 宝物庫にある武具に、魔法の武具がいくつも見つかったとしても、使える者がいないならそれは今までと変わらない。


 でもおそらく、俺のカンが合ってれば、魔道具としてなら適性が合わなくても使えるんじゃないかなと思う。

 それを少し試させてもらうとしよう。


- メルさん、それはそうと『サンダースピア』について、少し試したいことがあるんですが、貸してもらってもいいでしょうか?


 「?…はい、どうぞ?」


 考え込んでいたメルさんは、怪訝そうな表情を混ぜながら許可をくれた。

 立ち上がって壁に立てかけてある槍を手にして振り返る。


- では庭に出ましょうか、あ、プラムさんに協力してもらいたいので一緒に来てください。


 「え?、私ですか?」


 少しとまどったようにこっちを見て、顔を見合わせる二人。

 少し微笑みながら庭に出て、5mほどの距離に土壁をつくる。俺が前のときに作ったのと同じ大きさと厚みのものだ。


 あ、念のため言っておくけど、土壁っつっても結構頑丈なんだぜ?これ。

 普通に蹴ったぐらいじゃびくともしないし、表面は石か?ってぐらい硬い。階段状にすれば充分何人も乗れる。ツギのダンジョン3層で崖んとこに沿わせて階段作ったことあったろ?、あれもこれの応用なんだよ。


- プラムさんは水魔法と風魔法が扱えますよね?、この槍、もしかしたら扱えるかもしれません、少し試してもらいたいんですよ。

 このように持って、そこの土壁に向けて、魔力操作はこんな感じです。あとはそのまま飽和させれば発動します。できそうですか?


 「なるほど、少し時間をください」


 そう言って『サンダースピア』を受け取るプラムさん。

 よかった。プラムさんの魔力感知ならもう伝わるだろうって思ってたけど、ちゃんと伝わったようで安心した。

 ダンジョンに行ったとき、氷の刃を撃ち出すやつ、時間はかかってたけどなんとか基本はできてたもんな。リンちゃんの指導があったからってのもあるけど、元は俺のつくった魔法だし。それができるんだから、大丈夫だって思ってたんだよね。

 え?、だったら心配とか安心とかおかしいだろって?、いや、でもそういうもんだろ?


 しばらく難しい表情で目を閉じながらちいさく呟いている。どうやら詠唱を構成しているようだ。

 俺は2歩ほど下がって待つことにする。


 メルさんは興味と心配が混ざったような感じで少し離れて立ってる。目は興味津々だけど口元は不安、みたいなそんなの。胸元で手を組んでまるで祈ってるみたいなポーズだし。

 しかしこうして見ると王女様らしいというか、絵から抜け出てきたみたいな子だよなぁ…。王族って美男美女だらけなのかな、なんでだろうね?、まぁそういうもんなのかもしれないけどさ。


 リンちゃんは…、あ、定位置――俺の左後ろね――に居たよ。いつの間にか。




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2019年05月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
なるほど。わかりません。
2020年01月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
同じやん。なるほど。やっぱりわかりません。
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