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2ー009 ~ 威力

 次に2つ目。


 魔力感知と魔力操作の訓練をしているとき、メルさんは当然、槍は近くに置いているだけで持ってないんだよね。


 もってる時は布に包まれてても自然に魔力を纏わせている。

 そのせいで槍から、電磁波がでている。


 近くに置いてるときは、それが無い。そりゃそうだろうけども。


 なんで気付いたかっていうと、やっぱり大事なものだから、リビングから庭にでるとき持って出てきたわけで、そんときに、ふと、何と言うかちょっとした違和感?、みたいなのを覚えて、槍について訊いてみることにしたわけだよ。


 そしたら『サンダースピア』って言うらしいじゃないか。布を解いて見せてもらったんだけど、そんときはまたメルさんが手にするわけで、それで分かった。


- メルさん、さっきリビングでの話で、馬に乗れない、って言ってましたよね?


 「はい。この槍をもっている時だけは馬が私を乗せるのを嫌がるどころか、近寄ると逃げてしまうので…」


- さっきの話でも商隊の馬が離れようともがくので気を遣ったって言ってましたし。


 「そうですね…、はっ?!、もしかしてこれも何とかなるのですか!?」


- ええ。結論からいうと、魔力を纏わせなければ馬に乗れるでしょう。


 「何ということだ…、全ては今日からの訓練次第ということですね!?」


- そういうことになりますね。


 ますます訓練に身が入るようで何よりだ。

 そんでもってあの槍、ちょっと触らせてくれないかな…、どう切り出そうかな、とか考えてると、メルさんがはっと顔をあげた。


 「この『サンダースピア』以外の武器だとその、武力…ではないのでした、魔力を纏わせていても馬に乗れたのです。馬が嫌がるのは魔法の武器だからでしょうか?、それとも『サンダースピア』だからでしょうか?」


 ああ、そこを説明してなかった。


- 『サンダースピア』だからですね。その槍は魔力を纏わせて攻撃をすると名前からして雷撃を相手に与えるんじゃないでしょうか?


 「雷撃ですと!?、そのような強力なものではなく、武器のあった宝物庫の目録によると『攻撃を受けた相手がたまに少しビリビリして痺れることがある』という程度だったようですが…?」


 それでそんな大げさな名前なわけがないんじゃないかなぁ…。

 まぁそれはあとで試させてもらうとして、と。

 今は俺でも電磁波がでるのかどうか、やってみよう。


- ふむ…、よかったら僕に持たせてもらえませんか?、動物が嫌う原因を調べるためにも。


 「は、はい。どうぞ」


 あら、結構素直に貸してくれた。嫌がられたらどうしようって悩んでたのに。


 槍を受け取り、メルさんが手を離したのを見てから、魔力を纏わせてみた。


- おおっ?


 「ああっ!」


 槍のサイズが少し伸びたのでちょっと焦った。メルさんもなんか焦ってる。

 槍を持っていないほうの手を向けて、落ち着くように指示して、槍をよく見てみよう。もちろん魔力感知の目で。


- ああ、なるほど。これはこの槍の機能のようですよ。メルさんにお返ししてまた魔力を纏わせると元に戻りますよ。ほら。


 半信半疑な様子で槍を受け取るメルさん。槍のサイズがまたメルさんが持っていたときのサイズに縮んだ。


 「なるほど…、この槍にはこのような機能が…」


- すみませんがもう一度、貸して頂けますか?


 「あ、はい」


 そして受け取って魔力を纏わせると、また伸びた。


- これはおそらく、使う者に適したサイズとバランスに変化するようにできているみたいですね。


 「すごい槍だったのですね…」


- それだけでは無いと思いますよ?


 「え…?、それはどういう…」


- まぁそれはあとで。…うん。やっぱりこれ、魔力を纏わせると電磁波がかなりでるようですね。


 「で、『でんじは』とは何ですか?」


- 簡単にいうと雷撃を出す準備をするということです。そうなると周囲には準備している波のようなものを放散するんですが、それを動物は敏感に感じ取って嫌がるんです。


 あまり詳しく説明しても、たぶん伝わらないだろうしなぁ…、発振とか増幅とかそんなこと言ってもしょうがないし、俺も魔力感知で動きを見て、たぶんそうだろうなーぐらいのことしか分かんないからな。

 

 「そんなことが…」


- はい。つまりこれは魔力を雷撃に変換する機能を持った魔法の武器ということです。


 「そうだったのですか…、でも目録には…、」


- それだけではないと思いますよ、ってさっき僕が言ったのをこれから証明しますね。ああ、もちろん壊したりはしません。大丈夫です。


 「一応こんなでも国宝なのですが…、わかりました、勇者様ですし、どうぞ」


- ではちょっとやってみますね。あ、土魔法で的を作ります。驚かないでくださいね。よし、こんなもんかな?、それで、リンちゃーん!


 「はい、タケルさま」


- 雷槍らいそうのテストをするから、障壁を張ってもらえるかな、そっち側に。


 「わかりました。どうぞ」


 障壁の向こう側でメルさんが唖然としていた。でもスルーする。

 槍に魔力を篭める。


- よし、こんな感じかな、とぉっ


 気の抜けるような掛け声とともに、『サンダースピア』の先端から凄まじい音がして、正面に用意した土壁が根元を残して飛び散った。音スゲーなこれ。自分でやってびっくりしたよ。ハハハ、ちょっと楽しくなってきたぞ。


 あ、そっか、水魔法で先にイオン撒いて通り道をつくると遠距離誘導雷撃ができそうだな。


- 次は遠距離攻撃をやってみますね、的は……こんなもんかな?


 100mほど離れたところに等間隔で10個の的をつくる。的は少し重なり合って前後に立って広がっている。うん、いい感じ。


 槍に魔力を篭める、と同時に水魔法でイオンの通り道を……

 む、道筋が難しいな、ああ、風魔法も併用するか、よし!、耳塞いでてね!

 

- いくぞー?、とりゃっ


 轟音とともにものすごい光雷が的まで一瞬で駆け抜け、10個用意した的が跡形もなくなり、それらが立っていた地面は大きくえぐれていた。


 うわーちょっとやり過ぎたか?、耳がキーンってなっちゃったよ目もなんか見えにくい。回復魔法かけとこう。


 この槍の力ってこんなもんじゃなさそうだ、全然余裕っぽいぞ?

 なるほど国宝っていうぐらいはあるね、こりゃすごいな。


 道筋をつけずにやれば、先端から周囲の相手に向かって雷撃が飛ぶね、加減しないと周囲の魔物とかみんな黒こげだよこれは。






 「ゆ…、勇者様…」


- ん?、どうしました?、メルさん。あ、これお返ししますね、いい『雷槍』でした、僕もこんなの持ってみたいかも。


 「は、はい…、らいそう?、でございますか?」


- そう、雷の槍、『サンダースピア』のことです。メルさんは普段これをお使いのようですが、正直こんな威力を出すと危険すぎませんか?、かなり抑えて加減しないと。どこまで抑えて使われてます?


 「え…、あの…、その…、お恥ずかしいのですが、抑えるなんて滅相もございません。私では頑張ったところで武器を打ちつけた相手が電撃で麻痺する時間がちょっぴり延びる程度でした…。

 あ、あんな、あのような厚い土壁が吹っ飛ぶような、あのような距離の複数の的が消失し地面があんなにえぐれるような恐ろしい威力などとてもできません…」


 メルさんは次第に涙目になり、先ほど俺が差し出した槍を、受け取ろうとしてその寸前で手を震わせてなかなか柄を持ってくれない。

 声もちょっと震えてる感じ。

 小声で、『あんなの知らない、こんな恐ろしい槍だったなんて知らない…』ってかすかに聞こえた。


 「タケルさま、メルさんが困ってらっしゃいます。そちらでお茶にしませんか?」


- そうだね、んじゃメルさんもそちらのテーブルへ。お茶でも飲みながらゆっくり話をしましょう。


 音とか威力とか、めちゃくちゃ驚いてたもんなぁ…、俺もつい面白くなってきて調子に乗ったとこあるから悪かったと思うけど。

 一度整理する時間も必要なんだろうな、さすがリンちゃん!






●○●○●○●






 またリン殿がお茶を淹れて下さったのだが、どこからいつの間に出したか全くわからなかった。


 カップを持つ手がまだ少し震えている。


 何だ?、何だったんだあれは…、結局タケル殿から『サンダースピア』を受け取ることができなかった。

 彼は置いていた革カバーをつけて布を巻き直して隣のテーブルに立てかけてくれていた。

 私はその槍に少し視線を留めて、本当にさっきのが私が持ってきた『サンダースピア』だったのか?、という疑問をぬぐえないでいた。


 もしそうなら、達人級と自負する自分ですら、この『サンダースピア』を全く使いこなせていなかったのだということになる。


 それに先ほどの土魔法は一体何だというのか。王都の筆頭魔導師ですらあんな速さで魔法を、しかも無詠唱で発動できやしない。


 あんな一瞬であの距離の地面を操作できるなら、相対した敵や魔物など、ものの数ではなくなってしまうではないか。


 これで1年未満の未熟な勇者だというのなら、本来の勇者というのは一体どれほどの化け物なのだろう?






 王都の騎士たちが影で、私や団長のことを化け物だとか怪物だとか言っていたことは知っていた。軽蔑ではなく恐れからそう言うのだということは理解していたし、それが強さというものだろうと甘んじてそう言われていることを黙認していた。団長と同列に扱われているのだと喜びもした。


 だが…、今の私のこの感情、そして今さっき思った恐れと『化け物』という言葉。騎士たちは私や団長に対して、こんな気持ちだったのだろうか?






 それにしても近くにいたはずのプラムは、先ほどタケル殿がやっていたことを横目で見ながら、とりわけ驚くようなこともなかった。

 私が知っている王都の魔導師たちなら、あのような魔法発動を見れば驚くと思うのだが、まさかもう慣れたとでも言うのだろうか…?


 それほど彼女らにとって、これは普通のことなのだろうか…?


 疑問に次ぐ疑問で頭がどうにかなりそうだった。


 香りのよいお茶をのみ、お茶請けに出された、よい香りのするクッキーやドライフルーツをつまんでいると、だんだんと落ち着いてきた。


 私が話すのを待っているのだろうか、微笑んでお茶を味わっているタケル殿。


 その好意に甘えて、疑問をひとつずつ尋ねていくことにした。




20210705:何となく訂正。 ことさらに ⇒ とりわけ

20250205:脱字訂正。 離れようもがくので ⇒ 離れようともがくので

  

// なぜこんなに経ってから見つかるのか‥orz

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2019年05月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
なるほど。わかりません。
2020年01月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
同じやん。なるほど。やっぱりわかりません。
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