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1ー038 ~ 治療

 あれから2度ほど眠ったか?、体調は相変わらずだ。


 リンちゃんの回復魔法で体力はなんとかなっているが、高熱が引かないのですぐまた辛くなる。

 体力があれば早く治るのが定説なんだが、この世界の菌?、に対して免疫がきちんとできていなかった俺には、ここできちんと免疫を獲得しないと、また同じようになるので回復魔法も手加減しなければならないらしく、リンちゃんは忸怩(じくじ)たる思いを(こら)えているようだ。


 しかし熱が高すぎるのがまずいらしい。下手に火魔法で温度調節をするのは加減がとても難しく、適度に冷やすためには、元の世界にもあった氷嚢(ひょうのう)だとか水枕だのが適していて、魔法を使うにしても冷たい水を生み出す程度のことぐらいしか役にたてないんだそうだ。


 と、熱でぼおっとした頭で、浅い呼吸を繰り返しながら、リンちゃんが言い訳のようにそう言っているのをきいていたら、桶の水から声がした。


 『タケル様、お困りのご様子。是非私に手助けをさせて頂けませんでしょうか?』


 何だ?、誰だ?、もしかして…?


- ウィノアさん。


 喋ったつもりだが擦れ声しか出せない。でも通じたようだ。


 『まぁ!、名前を覚えて下さったのですね!、嬉しゅうございます!』


 薄目を開けて見える範囲でだが、とてもその桶の水量からは考えられない量の水が噴出し、それが一滴も漏らさず人の形をとった。そんで枕元に座ったようだ。気配がする。


 ベッド濡れてないかな?


- お久しぶりです。こんな格好で済みません。


 『ずっとお呼びがかからないので、忘れてしまわれたのかと思っておりましたの。もっと頻繁にお呼び下さいな。タケル様。此度(こたび)は御身の熱を少し冷ますためにまかり越しましたのよ?、ふふふ』

 「回復魔法ではダメなのです。免疫力の獲得や体温の調節が、」

 『委細承知でございますよ、リン様。ご安心下さい』


 そう言うとウィノアさんは俺の頭を少し持ち上げ、枕の代わりに膝をにゅるっと滑り込ませたよ。にゅるっと。


 これって…、いわゆる『膝枕』ってやつでは!?、男子永遠の夢とも言われるアレだよアレ!、俺の記憶が確かなら、初めてかもしれない!、うぉおお…。はぁ、そんな気合を出す元気なかったんだった。


 ああ、後頭部がひんやりして気持ちいい。


 『ふふっ、気持ちいいですか?、そして、こうです』


 その声に、閉じていた目を少しあけると、目の前にウィノアさんの豊満な胸が…!、あれ?、ウィノアさんそんなに胸あったっけ?、まぁいいか、額に乗せられる男の夢!、これはいいものだ。後頭部と額、ひんやりやわらかサンドウィッチだ。癒される…。


 「ああっ、そんなことを…っ!」


 リンちゃんが焦っている声がする。


 『ふふふっ、冗談ですよ?』


 あっ、額の至福が離れていく。

 代わりにウィノアさんの片手が額に乗せられた。気持ちいい。


 『でもこれだけではありませんのよ?』


 なんと、ベッドがすごく軟らかい。そして体中が包み込まれている。

 あれか?、噂に聞いたジェルベッドってやつか?、あ、ウィノアベッドか。

 身体は適温に保たれるように包み込まれ、あっ、あっ、そんなところまで、いやちょっといくらなんでもそれは恥ずかしい、けど気持ちいい。いや性的とかじゃなく感触と温度がね。ヤバい。これはヤバい。


 苦しかった呼吸も楽になってきた。

 寝返りを打てないぐらい辛かったのが寝たままで楽になってきた。

 どういうわけか汗も出てきた。


 身体の状態が過熱状態から微熱状態になったんだろうか?

 正常な風邪引きってのも表現がおかしいが、そういう状態になったのだろう。

 あ、汗が吸収されているような…。


 なんかちょっと恥ずかしい。けど快適だ。気持ちいい。これはヤバい、クセになったらどうしよう。


 『ふふっ、お分かりですか?、リン様、こういうことは水の精霊にお任せくださいな』

 「……くっ、わかりました。お任せします」


 リンちゃんも俺の状態が分かったのだろう、少し悔しそうだがウィノアさんに任せることにしたようだ。


 ああ、とにかく気持ちがいい。やっとまともに眠れ…、そう…、だ…






●○●○●○●






 いい夢だった。素晴らしい夢だった。めくるめく快感。ハマりそうな快感。爽快感。ああ、あれだ、これ起きたらマズいやつだ。リンちゃんにバレないように洗いに行かないと……。


 がばっと起きた。つもりだった。そうだった、ウィノアベッドだったんだった。


 『そんなに急に身体を起こされたら驚きますわ?』


 優しく俺の背中を支えながら言うウィノアさん。マジ天使。


 少し振り向くと、枕元にお姉さん座り――正座を横に崩したやつね――しているウィノアさんが居た。


- あ、ありがとうございます。だいぶ良くなった気がします。


 見ると座ってる下に半透明の、これウィノアさんの身体の一部だったのか。今更気付いた。が広がっていて、起こした俺の首から下をすべて包み込んでいた。

 その上から毛布が腰から下を覆っているような状態。


 『いかがでしたか?、気持ちよさそうでしたが、ご気分はいかがです?、気持ちよかったですか?、ふふふっ』


- あっはい。とてもいいです。何やら素晴らしい夢を見た気が…、あっ!?


 何か夢でいろいろ出しちゃった気がする。美味しい飲み物も飲んだし、出した、そんな夢だった気がする。

 慌てて毛布をめくったが、痕跡は無かった、というかそもそも半透明のジェル状に包まれているので見えないんだが。


 『ふふふっ、大丈夫ですよ?、勇者タケル様のは大変美味でした』


- えっ!?


 『いやですわ?、魔力ですよ、ま・りょ・く。ふふふっ』


 いやそれ絶対魔力じゃないですよね、だって、ひじょーに言い辛いし考えたくはないんだけど、やっちゃいましたよね?、いろいろ出したような気がするし。

 何が?、って言わないよ?、絶対に。


- あ、いやその、リンちゃんとかには内緒にして頂けると…、その…。


 『はい。私とタケル様の、ひ・み・つ、ですね、ふふふっ』


 人差し指を俺の唇にちょんと当てる。なんて妖艶な。

 ヤバい、もうなんかウィノアさんがゴキゲンすぎる。


 『また愉しみましょうね?、絶対ですよ?』


 そういえばこっち来てからはそんな余裕なかったし、娼館を見つけたときにはリンちゃんが居たから行けなかったんだよね。

 自力?、いやリンちゃん居るし、できないって。


- そういえばリンちゃんは…?


 『リン様ならそちらのベッドでおやすみですよ』


 言われてそちらを見ると確かに隣のベッドでリンちゃんが眠っている。

 おかしいな、普通なら起きてくるのに。余程疲れてたのかな?


 『いけないお人ですね、タケル様は。他の女性の話は野暮というものですよ?、もちろん聞こえず感じ取れないように結界を張っていますので、気付かれていません。ご安心下さいな』


 これは敵に回してはダメなやつだ。手練手管が違いすぎる。水の精霊おそるべし。天使だと一瞬思ったが違うやつだこれ。おそるべし。


- 水の精霊ってみなさんそんな感じなのですか?


 『ああ、光の精霊と違って、水の精霊は一にして全、全にして一ですの。分体にはそれぞれ多少は個性の違いもありますが、基本的には全てが私、ウィノア=アクア#$%&でございます』


- それはまたなんというか、概念というか物凄くスケールの大きい話ですね。


 『ああ…タケル様にはそういった概念をご理解頂けるのですね!、素晴らしいですわ。ステキですタケルさま。

 今回は以前眷属が犯した罪を少しでも(あがな)うことができればと思い、お助けに参上したのですが、タケル様と此度の交感で、永らく忘れていた感覚が蘇りましたの。

 それだけではただ秘めておけばよいものでした。

 しかし!、タケル様は私のことに興味を持たれ、私という存在に理解を示して頂けました!、なのでこれをお渡しします。これからは水のあるところではなくても私、ウィノア=アクア#$%&をいつでもどこでもお呼びしてください。水のお守りでございます。どうか、どうか…』


 うわぁ、なんか怖いぞ。『コウカン』って聞こえたけど何だ?、知りたいけど知りたくないような…。

 そんでもって元の世界で言う地雷とかそんな香りがぷんぷんする。ヤバい。


 でもこれ断ると怖いよなぁ、なんせ水だもん。水に嫌われたらたぶん生きてゆけないだろうなぁ…。


 あ、でもあの夢はまた見たいような…。


 う、一瞬ウィノアさんがにこっと微笑んだ気がする。もしかしたら心読まれてたりするかもしれない、気をつけよう。


- 分かりました。で、これどうやって持ってればいいんですか?


 でかい水晶球みたいなサイズがある。ほら、よく占いの館とかで台の上に水晶球でっかいの乗っけてるのあるじゃん?、あのサイズ。

 まさかとは思うけどこれ、ウィノアさんの身体の一部とかじゃないよな?、だったらちょっとイヤだな。


 え?、お前寝てたとき飲んだんじゃないのか?、って?

 やだなぁ、ウィノアさんの身体の一部を飲んだなんてことあるわけないじゃないか、考えさせないでくれよハハハ…。


 『二の腕につければ腕輪になります。首元に近づければ首飾りになります。入浴など水に入っても問題ありません。外そうと思えばこの状態に戻ります』


- なんかすごいアイテムですね。伝説級とかじゃないんですか?、これ。


 『ふふっ、タケル様に着けて頂くのですもの、生半可なアイテムなど水の精霊の名に賭けてお渡しできようはずがありませんわ。効果はばつぐんでございます、あっ、そろそろリン様に気付かれそうです。ささっ、お早く』


- あっはい。


 なんか勢いに押し切られてしまった。まるでリンちゃんに隠れて他の女性とよろしくやっちゃって気まずいみたいな雰囲気にさせられたせいだ。

 あ、夢の中ではよろしくやっちゃったかもしれないが。


 こういうところが上手(うわて)なんだよなー、このひと。


 結局水晶球は胸元に押し付けられたので首飾りになった。

 しっとりひんやり鎖骨のあたりを帯状に守っているような、そういう首飾りで、雫型に垂れ下がってる部分がある。

 模様のように網目状になっている部分と帯状の部分があるようで、手で触れた感じ、結構これセンスいいんじゃないかな、って思えるデザインだろう、美術館とかにあるようなさ。

 でも透明なんだよね。


 ウィノアさんがシャツとズボンを取ってくれて、急いでそれを着た。

 あれ、この着替えどこにあったん?、まぁいいか、おおお?、何だこの服、柔軟剤でも使ったみたいに肌触りがいいぞ!?、いつもみたいにゴワゴワしない。素晴らしい。


 あ、おれマッパでウィノアさんに包まれてたんじゃん。


 今はただの膝枕状態に戻ってるウィノアさん。策士だなぁほんと。


 あ、リンちゃんが起きる気配が。

 「あ、タケルさまっ、もうお加減はいいのですか!?」


 リンちゃんがベッドから起きて飛びついてきた。


- うん。ウィノアさんとリンちゃんの看病のおかげでね。


 「あたしはあまりお役に立てませんでした…」

 『いいえ?、リン様の回復魔法が下地にあったればこそ、タケル様のご病気からの快復が早かったのでございますよ?』


- ほらね?


 「はいっ!」


 いい笑顔だ。






 「ところでタケルさま?、なんだか花のようないい匂いがします」


 あっそれたぶんウィノアさんのせい。





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作者注釈:

 タケルが着替えた服は、ウィノアが来たときにタケルが着ていたものです。タケルは寝巻きなんてもっていませんし、熱でうなされているときだったので普段着のままです。

 というか普段着になる古着を何着かと、光の精霊の里でもらった灰色の賓客用服しかもっていません。

 もうお分かりのようにウィノアが洗濯して乾かしたものです。


 ついでにタケルの身体も髪の先からつま先まできれいに洗い採られてしまってます。字はこれで合ってるはず。たぶん。


 つまりタケルはスッキリ爽やか状態で、ほんのりサービスでスイレンのような花の香りがしています。

 ウィノアさんのサービス満点ですね!、うらやまけしからんですね!



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2019年05月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
なるほど。わかりません。
2020年01月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
同じやん。なるほど。やっぱりわかりません。
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