1ー037 ~ 免疫
3層の調査が終わったというか最後は中断したんだが、激戦でかなり消耗した俺は、帰りはリンちゃんの転移で『キチン宿』に戻り、地図を全部渡してギルドへの調査報告はプラムさんに任せ、森の家に戻って休養することにした。
「タケルさま、大丈夫ですか?、かなり具合がよくないように見えます」
- 心配掛けてごめん、なんか熱っぽいのかな、すごいつらい。
「お声が…」
- うん、正直話すのもつらい。げほっげほっ…
「タケルさまっ…!、モモさん!、モモさん!、タケルさまが!」
「まぁ大変!、どうされたんです!?、とにかくお部屋で横に」
「それで、どうしたんです?」
「『ツギのダンジョン』の3層を攻略したあと、具合が悪くなったんです!」
「リン様、落ち着いて」
「はい…、かくかくしかじかで…」
- う…、水ぅ…
「わっ、タケルさまっ!」
「はい、こちらに!」
- ありがとう…
「まぁ本当にひどいお声ですね…、ゆっくり飲んでください、まだありますから」
- う…
ヤバい、ぐあっとキタコレ。急がないと!
「無理をなさらないで!、あっ」
- トイレ…
「は、はい!」
「リン様はそちらを!」
横から支えてもらってトイレに急ぐ、マジでやばいぐおぉぉ…、耐えろ俺の括約筋!、勇者にあるまじき醜態を曝す前に!
失礼しました。なんとか間に合いました。そしてめっちゃ出た。もう腹部の水分絞りきるぐらいに出た。でもまだなんか出そうな気がするのでトイレから出られません。まだなんかぐるぐる言ってます。無いとは思うけどさっき飲んだ水で押し出しているような感じ。
出るもん出たので体温が少し下がったんだろう、熱で朦朧としていたけど少しましになった気がする。でも喉の腫れがひどい。へろへろだ。こんな一気にくるとは…。
「た、タケルさまっ…!」
「ベッドにお連れしましょう」
この世界の風邪というやつだろう。俺には免疫がないので、戦闘で消耗したのとあのボスの最後ほうのブレスに毒とかあって、精霊の里で買ったペンダントを発動したから毒は消えたが、ダメ押しみたいに消耗して弱ったから罹患してしまったのかもしれない。
思いつく原因なんてそれぐらいしかなさそうだ。
でもこういうのって潜伏期とかあるんじゃないのか?
リンちゃんたちの話だと、普段は魔力が満ちているので、なかなか病に罹ることはないらしいのだが…。
もしかしたらあのボスの動きが微妙に鈍かったのは、風邪を引いていたのかも…?
いやそんなバカな。
いくら鳥っぽい爬虫類だからって……鳥?、ん?、まさか鳥インフルエンザか!?、いやいやそれこそまさかだ。
魔物だぞ?、しかもあれ頭の高さだけでも5mぐらいあったぞ?
鱗と羽毛があるからなんかでっかい鶏っぽい爬虫類っぽい何かだとか思ったけどさ。トサカあったし。
いやでも3層って、猪の魔物と鶏の魔物いたよな?
どっちもやたらでかかったけど、つまりは豚と鶏……、インフルエンザの線が濃厚な気がしてきた。
え?、マジで?、この世界インフルエンザあんの?、いやいやまてまて、熱で朦朧としてる頭だからこんなわけわからん妄想するんだ。
そういえば戦闘中、まともなブレスって最初の1度だけだったよな?、んじゃあのまともじゃない中途半端なブレスって思ったのはくしゃみとか?、ケンケン鳴いてたのは咳か?
はははそんなバカな。
うーぅ、思い当たる節が多いような気がしてきた。
そう思えばそう思うほど合ってるようなそんな気が…、ヤバい、なんか頭痛がしてきた。
熱もさらに上がってきた気がする…。
そんなだとは考えも着かないリンたちには、何か命に関わる重大な病、と勘違いしているような雰囲気があった。大丈夫だよと言ってあげたかったが、もしかしたらまたトイレに行かなくてはならないかもしれないし、正直へろへろだし、喉が腫れているので呼吸もなんだかつらいから喋るのがとてもだるい。
しかし、たかが風邪と侮るなかれ、だろう。
元の世界でも、体力のない者や弱っている人にとっては命にかかわることだって充分ありえたんだし。
そういう意味ではリンちゃんたちの考えは、あながち間違っているとは言えないだろうな…。
少しは眠れたのだろうか、額にぬれた布を置いてくれたのか、替えてくれたかしたようだ、リンちゃんの手が俺の胸元に置かれている。回復魔法だろうか。
ああ、少し楽になった気がした。
こういう時って、他人の優しさが染みるなぁ…。
リンちゃん、モモさん、ありがとう…。
モモ…、モモ缶とか思い出した、食欲が出たら食べたいな。無いか。
この世界ってフルーツは元のと全然違うんだよなぁ、似てるのはあるけどさ。
そんなことを思いつくってことはましになったのかな?
それとも一時的なもので、回復魔法のおかげかな?





