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5ー027 ~ 森の家に戻って

 「おかえりなさいませ、タケル様、テン様、リン様…」


 いつ連絡していたのか、『森の家』の庭に戻るとモモさんたちが並んで出迎えてくれた。

 いつもと違うのは、燻製小屋という名称の食品工場側、庭からリビング入り口に向かって右手側のほうにはクリスさんたち4名が、さっきまで剣を振ってたんだろうっていう雰囲気で並んでいた点。


 それと、モモさんが言葉を切って、取り繕うようにお辞儀をした点。


 思うに、いつもなら連れて来た子たち、ハツとメイリルさん、それとそのふたりの肩や手に乗っている有翅族(ゆうしぞく)の5名の事なんだけど、そういったお客さんがいたら『ようこそ森の家へ』とか『いらっしゃいませ皆様方』と続いていたはずなんだ。


 それが無いと、こちらから軽く名前などを紹介することができないわけで…。


 まぁその理由は、いま手早くテンちゃんの梱包を解いて俺の左肘を掴んだリンちゃんの雰囲気が原因だろうね。いつもなら軽く、いや痛いんだけど、強化して耐えないと痛いんだけど。


- …っと、ただいま戻りました。あー、紹介は中でしましょうか。


 俺が言うと、モモさんたちがさっと道を空けた。


 あ、これリンちゃんが威圧してるわけじゃないけど、魔力を発してるのか。それで威圧みたいになっちゃってるのか…。


 そのせいで粛々と、リビングに入って行く俺たち。


 ハツたちがちょっと青ざめてるというか引き攣ってる。サイモンさんとクラッドさんはそこまでじゃないけど表情が硬い。

 クリスさんは無表情だけど、カエデさんは俺を見て『何があったんですか?、これ何ですか?』と訴えかけているような顔になってた。両手が塞がってるので『あとで』って口パクで言っておいた。伝わったのかどうかはわからん。






 何故か俺とテンちゃんだけがテーブルに着き、他は座ろうとしない。


- あー、えっと、リンちゃん?


 声をかけると目を閉じて『はぁぁ…』と長い溜息。そして俺の左側の席に着いた。


- とりあえず、座りません?


 少し圧力が減った気がしたのでそう言うと、順番に座ってくれた。

 ハツたちはリンちゃんからひとつ席をあけて座った。


 そういやいつもお客さんがあっても席が2つぐらい余るんだよね、ここの食卓。

 人数とかちゃんと伝えられてて、調整されてるのかな…?

 テーブルの長さも変わってる気がするし。まぁいいか。


 そんな事を考えながら、ポケットからミリィを出してテーブルに置いたら正座した。お行儀がいい。

 それからハツたちを紹介し、モモさんたちやクリスさんたちをハツたちに紹介した。


 皆が必要最低限しか言わない、何とも雰囲気の酷い形式的な紹介が終わると、リンちゃんがさっと立ち、すすすと自分の部屋の扉の前まで行った。


 「タケル様、お姉様、ちょっとこちらへ」


 普段より幾分か硬質な声色で呼ばれた。

 扉を手で支えて小さく手招きをしている仕草は可愛らしいけど、目が半分閉じられていて笑み成分が無い。


 「…あれは逆らってはいかんやつなのじゃ」


 と、俺の袖をついと引いた。


- あっはい。


 テンちゃんが小さく『とほほなのじゃ…』って言ってる。

 やっぱり叱られるのか。仕方ないという気分で一緒にそちらへ行った。


 部屋に入り、4人掛けの白っぽい木製テーブルに着く。角の処理や彫刻があって結構上品な感じだ。そう言えばリンちゃんの部屋に入ったのって初めてじゃないかな。でも今はちょっと部屋を見回す余裕が無さそうだ。

 あ、この家のって意味ね。川小屋のリンちゃんの部屋って俺の部屋と繋がってるからね。


 「お姉さまが付いていながらどうしてこんな事になったのか、説明ぐらいはして頂けるんですよね…?」


 リンちゃんが指差す席に座ると、また『はぁぁ…』と大きく溜息を吐いてからまた息を吸い、すっと身を乗り出すように両肘をテーブルに乗せて指を組んでからのセリフがこれだった。

 どこかの司令官のようだ。なんて思ってる余裕は無い。


- い、一時的なんだよ、ずっとじゃないんだよ。ね、テンちゃん。


 「う、そ、そうなのじゃ、向こうが雨の作業中ちょっと預かるだけという話なのじゃ」


 俺の右脚をぺしっと叩きながらだった。

 こっちに振るで無いのじゃ、と言外に言われた気がする。


 そうして俺とテンちゃんで代わる代わる、ハツの家での事を話した。互いに途中で押し付け合ったとも言えそう。


 「わかりました。でもタケルさま?、あの場所にはホームコア端末が設置されています。それで連絡を取って下さっても良かったのですよ?」


 あ、あー、そういえばあったあった。


- ああ、思いつかなかったんだ、ごめん。でも僕は連絡方法を知らないよ?


 「そこはあちらのドゥーン様かアーレナ様にお願いすれば連絡して下さいます」


 ちらっとテンちゃんを見たけど、候補に挙げなかったのは何だろう?

 と、釣られてテンちゃんを見たけど、そこで思い出した。


- あっちで旧竜族っていうか本来の竜族の話が出てさ、あの砂漠の砂嵐の(きわ)ぐらいのところに集落があって10頭程度いたはずなんだよ。


 「はぁ、突然何ですか?」


- それが昨日降りたときには感知に引っかからなかったんで、ちょっと気になってドゥーンさんたちにも尋ねたんだよ。


 「はぁ」


 何とも気乗りしない話だと言わんばかりの相槌だなぁ…。

 でも話を始めてしまったんだし、もうやっぱいいやなんて言えない。


- ドゥーンさんたちは管轄が違うのと、そんな害獣に関わってるヒマがないみたいでね、


 「はぁ」


- もし、ファダクさんのほうで何か知らないかなって…。


 「はぁ、それをあたしに尋ねろという事ですか?」


 すっごいイヤそうだ。頼みづらいなぁ…。


- …うん、あのね、別に保護しろとか連れて来いとかそういう話じゃなくてね、


 「ええ、わかります。ちょっと気になった、それだけなんですよね?」


- う、うん。だからね、


 「わかりました。確認するよう伝えておきます。そういうわけでタケルさま、お話は終わりです。あとはお姉さまと少しお話がありますので、すみませんが」


 と、手で扉を示されてしまっては、出なくちゃならないだろう。

 ちょっと今日のリンちゃんは迫力があって怖いなー…。

 母艦で合流してから溜息しか無くて笑顔がないのがなー…、ちょっと切ない。


 まぁでも少しずつ硬さが取れていってたっぽい気がしないでもないので、あとはテンちゃん次第だろう。


 それにしてもそんなに怒られるような事をした覚えが無いんだよなぁ。

 俺としては、こういう行き当たりばったりなのはいつもの事だと思うんだけども…。


 え?、自覚があったのかって?、今回はしょうがないだろ?、あの流れでつい言っちゃったんだから。あ、俺のせいか。うーん、釈然としないけど、まぁ俺のせいなんだろう。






●○●○●○●






 「さて、お姉さま、」

 「わ、悪いとは思っておるのじゃ、しかし其方の行けない場所で其方の代わりにタケル様に笑顔を癒しを提供するのが(われ)の使命だと思ったのじゃ、故にタケル様の意見に反対するなどできるわけがなかろう?、な?」

 「はぁ…、どうせそんな事だろうと思ってましたよ。あまつさえ私の居ない間に『ポイント稼ぎなのじゃー』とか考えていたのでしょう?」

 「う…」

 「図星ですか。そこはまぁいいです」

 「いいのか?」

 「良くはありませんが、些細な問題です。いいですか?、お姉さま」

 「な、何じゃ?」

 「こちらで掴んでいる情報によりますと、今回タケルさまがお連れした有翅族(ゆうしぞく)、個体名ディアナという者がおりますね?」

 「そうじゃな」

 「はぁ…、やはりその程度の認識でしたか。いいですか?、お姉さま、あの者は話し言葉の癖がお姉さまとだだ被りなんですよ?、タケルさまからすれば『のじゃ調』が複数存在する事になるんですよ?」

 「…な、なんと…、言われてみれば確かにあの者は(われ)と話し方が酷似しておるのじゃ…、あいでんてちーの危機なのじゃ…ッ!」

 「しかも、ドゥーン様によるとあの家に保護された時は黒い翅に黒い服だったそうです。タケルさまが最初に見たときもその衣装だったはず」

 「な、なんじゃと…?」

 「現在あの者の服装が白っぽくて良かったですね」

 「……」

 「では、些細な問題の方ですが――」






●○●○●○●






 リンちゃんの部屋を出て扉を閉めると、中のふたりの気配が急に薄くなったように感じた。居ることは判るんだけど、これじゃあ中で何を話してるかはわからない。


 あ、いや、盗み聞きとか考えてたんじゃ無いよ?、断じて。

 そうじゃなくて、いつもならこそこそ話していてもだいたい聞こえるんだよ、魔力が乗ってるのが普通だから。とくにテンちゃんの声ね。

 それが聞こえないぐらいの処理がされてるんだなって、薄々そうじゃないかとは思ってたんだけど、改めて認識したって意味。


 ところで俺たちがリンちゃんの部屋に居た間に、外では剣の訓練が再開していた。


 クリスさんは性格的に真面目なんだなーと思わせるような真剣さで、素振りをするサイモンさんたちひとりひとりの隣に行き、それぞれの動きをよく見ては一旦止めて、脚やら腕やら姿勢やらに手を添えたり、自分の身体の一部をよく見ていろと指示をしているような身振りをしてから素振りをし、頷いたのを見てまた次、というように細かい指導をしているようだった。


 そのせいか、ここから見る限り彼らの素振りは俺が最初に見た時よりも鋭さを増しているような気がしないでも無い。

 いや何となく、だよ?、そんなもん素人の俺に細かい違いなんてわかるわけないだろ。


 「お主、いや、タケル様のご自宅は素晴らしいですね」


 目の前のテーブルではクッキー類の大皿とフルーツをカットした大皿を前に、ディアナさんたち有翅族(ゆうしぞく)5名が、彼女たち用の中ジョッキを片手に、まるでピクニック…には見えないな、もう片手に持ってる串に刺したフルーツや、手に持ってるクッキーのサイズが彼女らにはでっかいからね、どっちかっていうと酒盛りのようだ。


- え、あ、ありがとうございます?、ってかディアナさん、普通に話して下さいよ。


 「ですが精霊様方から様付きで呼ばれる御方にそれは…」


 どうも前の黒い(ワンピース)の印象が強いせいか、今の象牙色とクリーム色の間ぐらいの明るい清楚さを感じる服装だと同じひとに思えない。

 せめて言葉遣いだけでも前のままにしてもらわないと。


- 精霊さんたちは訳あってそうしているだけですよ、気にしないで下さい。ほら、ミリィだって普通に話してるんですから。


 俺が言っても聞いてくれないんだもん、仕方ないじゃないか。


 「…ではそのミリィに倣って、タケルさん、とお呼びしても?」


- はい、…そう呼ぶ事を許すのじゃ。


 「ふふっ、お主にはその口調は似合わんのぅ」


- そうですか。まぁそういう風に普通に話して下さい。その方が僕も気楽なので。


 良かった、ディアナさんが砕けた口調…なのか?、まぁ普通に戻ったので、手が止まっていた他の4名も動き出したよ。


 名前が出たついでにそのミリィはどこに居るのかというと…、ん?、どこ行ったんだ?

 居場所がわからないという事は、寮の方に行ったんだろう。


 あっちは強弱さまざまな精霊さんたちが居るので、ミリィもピヨも、それとハツやメイリルさんもだけど、紛れちゃってよくわからないんだよ。

 もちろんすぐ近くに居るなら見分けは付くんだけどね。というかあっちは多過ぎ。


 「タケル様、ミリィたちでしたら寮の方へおふたりを紹介しにいくと言ってましたので、ベニに付き添ってもらってます」


- あ、そうですか。


 俺が寮の方向を見ていたのから察したようで、台所からでてきたモモさんが答えを言ってくれた。


 「お食事はどうされます?」


- あー、あっちで朝食を食べて出たとこなんですよ。モモさんたちは?


 「まだです。そろそろ準備をと…」


 と、テーブルの上をちらっと見た。


 「移動します。あちらでよろしいでしょうか?」


 さっと立ち上がってソファーの方を手で示すディアナさん。

 やっぱり俺の知ってるディアナさんと違うなぁ。もっとふてぶてしい印象だったんだけど。


 って思ったのがバレたのか、むっと口元を閉じて俺をちらっと睨んだ気がする。


 「そうですね、お皿をお持ちしますね」


 そう言ってささっと大皿2つを持ち上げてソファーの前のテーブルへと運ぶモモさん。それに粛々と従ってふわりと飛んで行くディアナさんたち。


 彼女たちはミリィと違って、背中にそれぞれ形状の違う(はね)があるので、そうやって飛んでいる姿を見ると、何だか元の世界で言う妖精っぽい。

 前に見た時は服が地味というか、端がほつれていたりしてちょっと見窄(みすぼ)らしかったけど、今は明るい色の布でひらひら綺麗だからなおさら幻想的度合いが増して見えるね。

 昆虫と違ってあまりぱたぱた羽搏(はばた)かない点も含めて、ね。


 でも手に中ジョッキを持ってるのが雰囲気ぶち壊しな気がした。


 「タケル様、外の方々にお伝えして頂いてもいいでしょうか?」


 彼女たちがテーブルに着地するまでをぼーっと見ていたら、戻ってきたモモさんが微笑みを崩さずに言った。


- あっはい。


 返事をして外にでるとき、アオさんとミドリさんが階段を下りてくるのがわかった。

 食事の準備を手伝いに来たんだろう。






 外に出て、クリスさんたちに近付いて行くと、クリスさんがちらっとこちらを見て小さく頭を下げた。俺も同じようにして応えておく。


- 夕食の支度を始めるそうです。


 「わかりました。聞こえたか?」

 「「はい!」」


 サイモンさんとクラッドさんがまるで道場の弟子たちのようにきびきびと、クリスさんとカエデさんの手から模擬剣を受け取って駆け足でリビングに向かい、手前のデッキ横の棚にそれらを片付けてから、その棚から着替えだろう衣類を手に中へと入って行った。


 あんな棚、あったっけ?、まぁいいんだけどさ、いつもの事だし。


 そこでふと、その棚へ歩き始めたクリスさんとは違い、カエデさんがぼーっと俺の横で立っているのが気になった。


- どうしたんです?、カエデさん。


 「え?、あー…」


 俺が言葉を発したからか、クリスさんがぴたりと止まってこちらを向いた。


- 言いにくい事なら言わなくてもいいですよ?


 「ううん、そうじゃなくて、えっと、あのひとたちも、そのうち冒険者やめちゃうじゃないですか」


- はい。


 そりゃそうだろうね。生涯現役で冒険者やるひともいるだろうけど、それでも勇者である俺たちとは寿命が違うんだから、そのうち、というのが何十年後かはわからないけど、いずれは引退するだろう。


 「でもあたしたち勇者は若いままで、周りがみんな年とってっちゃうんですよ」


- そうですね。


 俺はまだそこまで現実を見てきていないけど、カエデさんはこの世界で30年以上勇者ってものをやってきている。

 そうすると最初の頃に知り合い、仲良くなった兵士さんたちはもう引退してるだろうから、そういう感傷も経験してきているんだろうと思う。


 「なんだ、そんな事を気にしてたのか?」

 「あいたっ!、クリスさん!、そんな事って何ですかー!」


 話している間にすぐ近くまで戻ってきたクリスさんが、カエデさんの背中をぺちっと、いや、バシっと叩いた。いい音がした。

 その勢いに一歩前に出たカエデさんがぐわっと振り向いてクリスさんに迫ったわけで。


 「お、おい、そこまで怒る事は無いんじゃないか?」

 「だって!、ひとがしみじみと感傷に浸っているのに、心無い言い方で小突くなんてデリカシーが無いじゃないですか!」


 小突いたってレベルじゃなかったんだけど、珍しくカエデさんが涙目で怒ってる。結構いい音がしたし、痛かったのかな?

 いや、魔力の様子からして本気で怒っているわけじゃなくて、これは甘えてる?、のか?、よくわからんが…。


 「っと、そう泣くなって」


 クリスさんが軽く、ひょいひょいとカエデさんが振り上げた拳をそれぞれ掴んだ。


 「泣いてません!」

 「まぁ聞けよ、俺たち勇者の一番大切な役割って何だかわかるか?」

 「へ?、一番大切な…、役割、ですか?」


 カエデさんの力が抜けたのを察したんだろう、掴んだ手をゆっくり下ろして手を放しながら頷くクリスさん。


 「ああ。さっきの冒険者たちや、所属国の兵士たちに対しての、な」

 「んー…、あ、みんなが死なないように、(しっか)り指導する、ですか?」

 「お前それハルトさんの受け売りだろ?」


 ああ、なるほど、ハルトさんらしい。

 勇者は死んでも復活する。何度か言ってるけど実際は死ぬ直前に強制転移で完全快復まで寝てるんだけどね。


 そこはおいといて、だからというわけじゃないけど、兵士や冒険者への最初の指導は、無駄に命を散らさないように防御の指導が多くを占める。らしい。ハルトさんが言ってたんだよ。

 中には攻撃は最大の防御なんていう指導をしているところもあるらしいけど、それは防御や体捌きがある程度できるようになってからだ。何も無謀を奨励しているわけじゃ無い。

 こっちはオルダインさんね。メルさんも同じような事を言ってたと思う。


 受け売りばっかなのは許して欲しい。


 「えへ、そうですけど、違うんですか?」

 「それも大切なのは確かだがな、そういうのを含めて、一番大切な役割って何だと思う?」

 「えーっと、わかりません!」

 「お前な…、まぁいい、彼らの思い出に残る事だよ」


 なるほど、こちらはクリスさんらしい言い方に思えた。

 やはり何十年も勇者をやってる先輩たちは、関わったひとたちが先に年老いて行くことについて、それぞれ何かしら一本通った芯のような考えを持っているのかも知れない。


 「へ?」

 「へ?、じゃねぇよ。俺たち勇者は、関わった人々が将来子供や孫に自慢できるような関わり方を心がけたほうがいいんだよ、彼らの思い出になるように」

 「あー、なるほど…」

 「ま、これはヨダさんって勇者が言ってた事を俺なりに解釈したもんだけどな」

 「ヨダさんってハルトさんも言ってたヨーダさんの事ですか?」

 「そうそう、よく笑う、変わったひとだったよ。って、俺も汗流してこないと、ではタケル様、お先に頂いて来ます!」


 言うが早いかたたっと棚まで飛ぶように走り、衣類を持ってささっと脱衣所へと入って行った。す、素早い。無駄のない動きだった。


 「え?、あ…!」


 カエデさんが口を半分開けたまま、手を少し動かしたまま固まって、またすぐ手を下ろした。


 「ヨーダさんたちの話、聞きたかったのに…」


 それは俺も同感だけど、クリスさんたちがもたもたしてるとカエデさんが汗を流す時間が遅れると思うよ。






次話5-028は2022年11月18日(金)の予定です。


20221112: タケル視点のとき、彼の発言が「」になっていた1箇所を訂正。

 (※ 視点格が勇者の場合は「」ではなく行頭ハイフンにしている本作での規則によるものです)


●今回の登場人物・固有名詞


 お風呂:

   なぜか本作品によく登場する。

   入浴はしてるけど描写が無いのはまぁお察しください。


 タケル:

   本編の主人公。12人の勇者のひとり。

   リンが不機嫌だった理由がわかってませんね。

   それがタケル。


 リンちゃん:

   光の精霊。

   リーノムルクシア=ルミノ#&%$。

   アリシアの娘。タケルに仕えている。

   今回名前のみの登場。

   タケルには言っても無駄なので、

   テンに当たってるような…。


 テンちゃん:

   闇の精霊。

   テーネブリシア=ヌールム#&%$。

   後ろの部分は精霊語のため聞き取れない。

   リンの姉。年の差がものっそい。

   わかってるんですよ、これでも。


 ファーさん:

   ゼファーリィ=ヴェントス#$%&。

   風の精霊。

   有能でポンコツという稀有な素材。

   風の精霊の里では高位の存在なんですよ、これでも。

   尊敬の対象なんですよ、これでも。

   つまりタケルに縁のない芸事に堪能という…。

   生かされない不遇な配置という事に。

   今回出番無し。

   ちゃんと居るんですよ?、影が薄いだけで。

   そのうち出番があります。たぶん。


 ウィノアさん:

   水の精霊。

   ウィノア=アクア#$%&。後ろの部分は精霊語。

   一にして全、全にして一、という特殊な存在。

   タケルの首飾りに分体が宿っている。

   今回出番無し。


 アリシアさん:

   光の精霊の長。

   全精霊中最古というような存在。実は凄い精霊(ひと)

   だいたい名前くらいしか登場しませんが一応。


 モモさん:

   光の精霊。

   『森の家』を管理する4人のひとり。

   食品部門全体の統括をしている。

   いわゆるメイド長みたいなものもやってます。


 ミドリさん、アオさん、ベニさん:

   光の精霊。

   モモと同じく『森の家』を管理する4人のひとり。

   食品部門の幹部。モモの補佐をしている。

   今回名前は出ました。ちゃんと居ます。


 ハルトさん:

   12人の勇者のひとり。現在最古参。

   勇者番号9番。オオミヤ=ハルト。

   ハムラーデル王国所属。

   およそ100年前にこの世界に転移してきた。

   『フレイムソード』という物騒な剣の所持者。

   今回名前のみの登場。


 カエデさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号10番。シノハラ=カエデ。

   勇者歴30年だが、気持ちが若い。

   でも言動はタケルからするとちょっと古臭い。

   クリスに鍛錬を見てもらえて上機嫌。

   声がでかいのはハムラーデルのデフォルトです。

   森の家で鍛錬中。

   感傷に浸るとか似合わないなんておもっちゃダメですよ。

   中身がおばちゃんってのも言っちゃダメ。


 ジローさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号3番。イノグチ=ジロウ。

   ハムラーデル王国所属。

   砂漠の塔に派遣されて長い。

   2章でちらっと2度ほど名前があがり、

   次に名前が出てくるのが4章030話でした。

   ヤンキーらしいw

   今回出番無し。

   なかなか登場までいかないですね。


 クリスさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号5番。クリス=スミノフ。

   現存する勇者たちの中で、4番目に古参。

   『嵐の剣(テンペストソード)』という物騒な剣の持ち主。

   森の家で鍛錬中。

   ひさびさの会話シーンな気がします。

   カエデたちには砕けた口調になります。


 ロミさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号2番。マサダ=ヒロミ。

   現存する勇者たちの中で、3番目に古参。

   現在はアリースオム皇国皇帝を名乗っている。

   クリスとはこの世界に転移してきた時に少し話した程度だが、

   互いに気にかける程度の仲間意識はある。

   今回出番無し。


 シオリさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号7番。クリバヤシ=シオリ。

   現存する勇者たちの中で、2番目に古参。

   『裁きの杖(ジャッジメントケーン)』という物騒な杖の使い手。

   現在はロスタニア所属。

   勇者姫シリーズと言えばこのひと。カエデは大ファン。

   今回出番無し。


 サクラさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号1番。トオヤマ=サクラ。

   ティルラ王国所属。

   勇者としての先輩であるシオリに、

   いろいろ教わったので、一種の師弟関係にある。

   勇者としての任務の延長で、

   元魔物侵略地域、現バルカル合同開拓地に居ます。

   今回出番無し。


 ネリさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号12番。ネリマ=ベッカー=ヘレン。

   ティルラ王国所属。

   サクラと同様。

   魔力操作・魔力感知について、勇者の中では

   タケルを除けば一番よくできる。

   結界の足場を使った戦闘がメルに遠く及ばないのは、

   メルが達人級の剣士であることと、

   そもそも身体能力や身体強化はメルのほうが圧倒的に上だから。

   今回出番無し。


 カズさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号6番。サワダ=ヨシカズ。

   ロスタニア所属らしい。今の所。

   体育会系(笑)。性格は真面目。

   呆けていたのは、勇者食堂にいた、

   一目惚れしちゃった娘が精霊様だと感づいたから。

   今回出番無し。


 ホーラード王国:

   勇者の宿がある、1章からの舞台。

   名称が出たのは2章から。

   2章の冒頭に説明がある。


 メルさん:

   ホーラード王国第二王女。

   2章から登場。

   リンに気に入られており、時々やりとりをしていたりする。

   王城の彼女の寝室に転移石板がある。

   今回は名前のみの登場。


 寮の子たち:

   タケルの家とされている『森の家』その隣の、

   燻製小屋という名前の食品工場に勤める精霊さんたちの事。

   寮生活をしているが、自由時間は結構多いので生活を楽しんでいるようです。

   これでも光の精霊さんですから、

   普通の人種(ひとしゅ)とは比較にならない魔力量があります。

   これまで名前が登場したのはアーコなど数名ですが、

   寮には200人ほど居ます。


 サイモンさん:

   1章の後半に登場した、ツギの街を拠点に活動する、

   冒険者チーム『鷹の爪』のリーダー。

   4名しかいないが、それなりにツギの街では有名。

   『森の家』には魔法職であるプラムと共にちょくちょくやってくる。

   今回はプラムとエッダが王都に行ったので、

   暇になったクラッドと共にやってきた。

   魔法はまだ少しの身体強化と初級魔法の一部だけ。

   無詠唱はできないので詠唱が必要。

   クラッドよりは器用な分、略式詠唱でもできる事がある。

   森の家でクリスたちと鍛錬中。

   セリフが「はい!」しかありませんでしたね。


 クラッドさん:

   サイモンと同じく『鷹の爪』のメンバー。

   大楯を扱い、小剣または剣を使う。

   いわゆる盾役、タンクってやつですね。

   魔法はまだ少しの身体強化と初級魔法の一部だけ。

   無詠唱はできないので詠唱が必要。

   森の家でクリスたちと鍛錬中。

   セリフが「はい!」しかありませんでしたね。


 ドゥーンさん:

   大地の精霊。

   世界に5人しか居ない大地の精霊のひとり。

   ラスヤータ大陸を担当する。

   雨が断続的に何か月か続くので、その間の事を考えた結果なのです。

   今回名前のみの登場。


 アーレナさん:

   大地の精霊。

   ラスヤータ大陸から北西に広範囲にある島嶼(とうしょ)を担当する。

   魔砂漠正常化作業を地下から手伝っている。

   今回名前のみの登場。


 ハツ:

   詳しくは3章を。

   森の家にしばらく居ることになりました。

   やっとピヨと邂逅。もふもふ要員が揃ったかも?


 メイリルさん:

   メイリル元王女。詳しくは3章で。

   ハツからはメイと呼ばれてます。

   森の家にしばらく居ることになりました。

   やっとピヨと邂逅。

   でもメイリルの耳や尻尾は気軽にもふもふできないと思う。


 有翅族(ゆうしぞく)

   身長20cm前後の種族。

   背中に昆虫のような(はね)を持つ。

   種族特性として、魔法が使えて空を飛べる。

   (はね)は生え変わったりするもので、

   毎回同じ形状のものが生えるとは限らない。


 ディアナさん:

   3章008・9話に登場した、有翅族(ゆうしぞく)の長老の娘。

   月光のような白っぽい髪に、赤茶色の瞳。

   黒鳳(くろあげは)蝶のような羽。

   初回登場時から黒いワンピースだったが、

   いまは腰に黒いベルトでゆったり留める、

   清楚なクリーム色のワンピースを着ている。

   種族固有の魔法で人型サイズに変身できる。

   魔法に関して実力者でもあるので、ミリィの成長に気づいています。

   タケルのせいで口調がのじゃ調に戻りそうですね。

   テンのあいでんてちーがピンチ?


 ディアナのとりまき:

   当然だが有翅族(ゆうしぞく)

   4人とも見かけの年齢は10代から20代とそれぞれだが、

   ディアナと一緒に50年前に村を出たのだから実年齢はお察し。

   ディアナの事を姫様と呼ぶ。

   精霊さんだらけなので実はびくびくしています。


   それぞれの名前が実は5章001話で出ていたのに

   紹介を忘れていたのでここに記載しておきます。


   エイナ:

     端がちょっと青紫色をした白いシジミみたいな(はね)

     髪はニミナと同じく明るいニンジン色で、

     普段は首の後ろでまとめ、布で包んで(かんざし)で固定。

     ディオナの筆頭世話役。手先が器用。


   ニミナ:

     小ぶりで薄い緑色で半透明の(はね)

     髪はエイナと同じく明るいニンジン色で、

     普段は編み込みをして後ろでまとめ、(かんざし)で固定。

     ディオナの世話役その2。エイナの妹だったりする。


   トリア:

     細長くて透明な(はね)。糸トンボみたいな感じ。

     肩まであるレンガ色のふんわりヘアー。

     4人中一番大人しい性格。胸が一番大きい。


   レモア:

     ふわっとしている黄色っぽい茶髪で活発そうな短めの髪型。

     (はね)は5名中一番小さくてまるっこくて透明、

     ミツバチのような(はね)

     ハツ曰く、「いつもちゃっかり得してるみたい」。

     背丈が小さい事は別に気にしていない。飛べるからね。

     でもミリィより胸が小さい事は気にしている。

     なので、ミリィに少しだけ対抗心を持つが、

     一応大人的な余裕はある。



 ※ 作者補足

   この登場人物・固有名詞紹介の部分全ては、

   あとがきの欄に記入しています。

   本文の文字数にはカウントされていません。

   あと、作者のコメント的な紹介があったり、

   手抜きをしたり、詳細に書かれているけど本文には

   無関係だったりすることもあります。

   ご注意ください。


 しかし今回あとがき部分多過ぎ…?

 もうちょっと減らす方がいいような気がしてきました。

 と言いつつ現状維持なのですよね…、減らすと言っても難しくて。

 まぁそのうち減るかも知れません。そのうち。


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2019年05月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
なるほど。わかりません。
2020年01月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
同じやん。なるほど。やっぱりわかりません。
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