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5ー023 ~ ドゥーンの打診・マッサージチェア

 クリスさんはさすが、ハルトさんに勝った事があると聞いてたけど大したもので、ショートソード型の木剣ひとつでカエデさんとサイモンさん、クラッドさんの3名を順に軽くあしらい、それぞれに注意や指導をしていた。


 サイモンさんとクラッドさんは、最初、やや緊張気味だったけど、やっぱりベテランの域に達している冒険者だけあって、真摯にクリスさんの指導を受けていた。


 休憩の時も雰囲気がいい。


 何て言うか、指導のメリハリが利いてるって言うのかな?


 カエデさんの性格的なものも一役買ってるんだと思うけど、でもクリスさんがカエデさんを乗せてるようにも見えたし、やっぱりクリスさんの人柄なんだろう。


 それにしても達人級だとはハルトさんから聞いてたけど、体捌きがハルトさんやメルさん、それとオルダインさんとはまた違う感じなのが興味深いところだね。


 オルダインさんとメルさんは師弟でもあるので、動きが似てる。いやまぁ雰囲気でしかわからないけど、そんな感じなんだよ。鋭くて、的確っていうか、騎士団伝統のっていうかね。

 ああ、鷹鷲隊(おうしゅうたい)の上位陣が戦ってるところを見たとき、統一感があると思ったのはそれだったのか。

 そりゃまぁ指導しているわけだから、そうなるんだろうけども。

 なので、ホーラード伝統の格式ある剣術の動きでもあるんだろう。


 ハルトさんの戦いはあまり見ていないけど、訓練の時の動きと、ずっと指導を受けているカエデさんの動きは、力強さを感じたね。


 サクラさんとネリさんの動きはそれとは対照的で美しいんだ。

 体捌きの流れるような動き、流麗って言う言葉がしっくり来る感じで、元の世界、そう、日本の伝統芸、剣術ではなくて日本刀を持った動きだなと納得してしまうものだった。


 クリスさんの動きはここから見てる限り、それらとはまた雰囲気が違って見えた。

 自然な動きに見えるのに鋭くて、かっこいいんだよ。


 クリスさんがやってるから、って理由もあると思う。


 あ、いや、かっこいいっていう点ではオルダインさんとメルさんたちのも、ハルトさんのも、もちろんサクラさんのもかっこいいんだよ?

 やっぱり刀剣を扱うってのはある程度以上のレベルになると美しくてかっこいいもんなんだよ。うん。


 そんな俺はテーブルに頬杖をついて、目の前でビー玉サイズの物体を複数くるくる回しながら彼らの訓練を観察していたんだけど、それをじーっと見ていたリンちゃんがやや小声でそっと言う。


 「タケルさま、そんな風に見てらっしゃるのでしたら参加されては…?」


- え?、いや僕はいいよ…。


 今更というか、剣術のレベルが違い過ぎて気後れするのもある。


 「そうですか?、でも…」

 「タケル様にはもう剣術など必要無いのじゃ」

 「お姉さま?、前もそんなことを仰ってましたけど…?」

 「リンよ、(われ)や其方に人種(ひとしゅ)の剣術などが不要なことは理解しておろう?」

 「それは、あたしは光の精霊ですし、お姉さまはその、(いにしえ)の精霊です。一般精霊たちにならともかく、人種(ひとしゅ)の技や動きでどうにかなるような……まさか…」

 「うむ。そのまさかなのじゃ」


 …ん?

 左右で意味ありげに言うふたりが気になって、頬杖をやめて体を起こし、交互にふたりを見た。

 テーブルは円形なので、俺の姿勢でふたりの視線を遮ることは無いんだけども。


 「そんな、いつからです?」

 「(われ)出会(でお)うた時には既にそうなっておったはずなのじゃ」

 「…言われてみれば、」

 「故に、(われ)の運命のひとなのじゃ」

 「お姉さま?」

 「そう睨むで無いのじゃ、其方も誇らしく思えばよいのじゃ」

 「それはそうですけど、そうですけど…」


 俺に剣術が必要無いって話のはずだよね?

 肝心なことを言わないのか言えないのか知らないけど、さっぱりわからん。

 まぁ、剣術に関して、今更やる気は出ないから、しなくていいと言ってくれるのはいいんだけどね。


- 何の話?


 「其方は剣術などせずとも自由に振舞えば良いという話なのじゃ」


 そう優しい微笑みで言って俺の右肘にそっと手を添えるテンちゃん。

 何だかごまかされているような気がするけど、これは詳しく訊いても話してくれそうにないなぁ…。


- そうなの?、リンちゃん?


 左側のリンちゃんを見て確認してみる。


 「タケルさまはタケルさまですから」


 こちらも同じようににこっと笑みを浮かべて左腕に手を添えた。


 うーん、いつかちゃんと話してくれたらいいなぁ…。






●○●○●○●






 「クリスさん、それで嵐の剣(テンペストソード)ってどこにあったんです?」

 「どこまで話したんだったかな?」

 「大亀を倒したとこまでですよ」


 夕食時。


 剣の訓練組が順番に入浴している間にまた庭に長いテーブルができて、そこにワゴン数台で運ばれてきた料理が並び、そこでの夕食中、カエデさんがクリスさんの昔の話をというか、訓練の休憩中にクリスさんが話していた昔の話の続きをカエデさんが促した。


 「ああ、甲羅が硬くて大変だった、ってところまで話したんだったね。この剣はその甲羅に刺さってた、というか埋まってたんだ」

 「え?、埋まってたんですか?」

 「うん、倒した時に使ったのは大剣だったが最初は大きなハンマーを使ってたってのも言ったと思うが、甲羅を砕かないと引っ込まれたら剣が届かないからね、それで甲羅にダメージを与えて割ったときにきらっと光るものが見えたんだ」

 「そうだったんですか、それが嵐の剣(テンペストソード)?」

 「その時はまだ名前がついてなかったが、倒したあとでその割れた部分に隠れていたこの剣が戦利品として届けられたってわけ」


 へー、埋まってたのか。刺さってたんじゃなく。

 と言っても誰が刺したんだとかも気になるね。


 「タケルさま、あの剣なら特に我々精霊由来というものではありませんよ?」


 そんな俺の様子で察したのか、隣のリンちゃんがこそっと小声で補足した。


- あ、そうなんだ?、結構綺麗な剣だったけど。


 「元々ある程度は整った形だったのでしょう。あとは宿る精霊次第ですね。長く宿る場合は作り変えるものですから」


 そういうもんなのか‥。


 「人種(ひとしゅ)でも動物でも、家や寝床を整えるものでしょう?」


- なるほど。


 そう言えばテンちゃんのポケットにあるあのゴルフボール2個分ぐらいのきらきらした黒い石、クロマルさんが宿ってる石ね、あれもそうなんだろう。


 「剣を見つけた兵士が試しに振ってみたが、うまく振れず扱えないとわかって、俺の天幕に届くまでの間に何人かが試したらしい」

 「そりゃあ精霊様が宿ってるんですから」

 「そんなの最初からわかるわけないだろう?」

 「あ、それもそうですね」


 あっちでは話が続いていた。


 それにしても、気に入らないと邪魔をする剣か…。

 預かったとき、確かに我儘な子供みたいだったもんなぁ、今は中身が違うからあんなじゃないだろうけど。

 もしクリスさんが使ってて、何か違和感があるならファーさんに頼めばなんとかなりそうだから、あとでクリスさんにはそれとなく聞いてみてもいいかも知れないね。


 「ところでタケルさま」


 はいはい?


 「川小屋に行くのですよね?、いつ行かれるご予定です?」


- え?、あー、明日、朝食後でいいかなって思ってたけど、リンちゃんの方で何か予定あったりする?


 「特には‥、あ、今すぐの話では無いんですが、ドゥーン様が、あちらで保護している方々をこちらに移せないかとタケルさまに聞いておいて欲しいと言われてます」


- え?、ハツとメイリルさんの事?


 「そちらはまだ何とも…、ドゥーン様が移したいとお考えなのは有翅族(ゆうしぞく)5名の方らしいです」


 あー、ディ…なんとかさんたちの事か。


 「ドゥーン様のお話では、有翅族(ゆうしぞく)の村には戻れないんだそうで、外にも出してやれないのが心苦しいとの事です。それで、ミリィがこちらで受け入れられているのならと、」

 「相変わらず甘いのじゃ。彼奴(あやつ)が村に命じて受け入れさせれば良いだけなのじゃ」

 「お姉さま、それは過干渉にあたるのでは…?」

 「過干渉など、そもそも有翅族(ゆうしぞく)の村は彼奴(あやつ)が作った村ではないか。過保護に過干渉、今更なのじゃ」

 「それはそうですけども…」


 テンちゃんが知ってるって一体いつの話なんだろうね?


 「それをタケル様に持ってくるなど責任逃れなのじゃ」

 「そこまでは言いませんが、一応これはアリシア様を通しての打診ですよ、お姉さま」

 「む…、アリシア様は何と?」

 「ミリィにも同族が居た方がいいのではないかと…」

 「ふむ…」


- あ、彼女たちとミリィは同族だけど、仲がいいわけでもないような…。


 「そうなんですか?、タケルさま」


- んー、仲が悪いまでは行かない知り合い…?、僕がミリィを連れて村の外に出た時に彼女らに初めて会っただけだし、ハツの家でも一緒に行動してなかったと思うんだけど…。


 と、ミリィの方をみると、クラッドさんからミリィ用のフォークに刺した団子を受け取ったところで、こっちを見たミリィと目が合った。

 クラッドさんめっちゃ笑顔だよ。

 意外な一面ってやつか。


 何でもないよ、という意味で手を小さく振ると、ミリィも同じように手を小さく振った。

 伝わって無い気がする。


 「そうすると、ミリィのためにという理由がひとつ消える事になりますね…」


- うん、それにミリィはまだ子供っぽいところがあるけど、ハツの家にいる5人は大人だからね…。


 「女性だけとも聞いてますが、受け入れる事自体はどうなんです?」


- んー…。


 「あれはここで上手くやっておるようなのじゃ。同族が増えれば気も遣おう、余計な要素を増やさんでもその者らは村に返せば良いのじゃ。その方が丸く収まるというものなのじゃ」


 モモさんたちの負担が増えないなら構わないよと言おうとしたんだけど、テンちゃんにそう言われたら断った方がいいような気がしてきた。


 「ドゥーン様のお気持ちとしては、あちらで周囲の人種(ひとしゅ)に受け入れられるのが難しい獣人族(けものひとぞく)の2人も受け入れて貰えればと思ってらっしゃるようでしたが…」


- いやそれはこの家だけならいいけど、こちらには獣の特徴の無いひとたちしか居ないから、周囲に受け入れられるのが難しい点は同じだよ?


 「そうですよね…」


 さっきからリンちゃんも歯切れが悪い言い方だなぁ…。

 気は進まないけど、立場的に俺に話を聞いてみなくちゃならない、っていうのがよく分かる。


- でも見分を広めるためとか、慰安のためにとか、そういう理由で一時的に預かるぐらいならいいんじゃないかな。


 「一時的に、ですか」


- ほら、ここは設備が充実してるしさ。


 体育館とか遊技場とかプールとか、あるみたいだし?

 俺は見た事ないけど。


 「そう…、ですね…」


- ドゥーンさんやアーレナさんから、また顔を見せに来て欲しいと言われてるんだけど、なかなか予定が立てられないからね。


 「あのふたりにならそのうち会うて話す機会もあろう、気にする事は無いのじゃ」


- ハツたちに、ですよ。


 「先程から言うておるそのハツというのが人種(ひとしゅ)の子の名か?」


- はい、耳は僕と同じですけど、尻尾がある子がハツで、もうひとり、100年ぐらい眠ってた子を保護したんですが、その子がメイリルさんです。


 「なるほど、そういう事情ですか…」

 「ふむ、しかし其方が受け入れたとして、ずっと手元で保護するつもりか?、こちらで生きて行くというのは異なる特徴を持つ人種(ひとしゅ)には酷ではないか?、人種(ひとしゅ)は異形を受け入れはせぬのじゃ。一部の者らは受け入れよう、しかし全体としてはそうも行かぬ。まだあちらで住まわせた方が良いと思うのじゃ」


 達観してるなぁ、というかそういう歴史を見てきたんだろうね。

 テンちゃん長生きだし。

 まぁ元の世界の歴史でもちょっとした違いで諍いや戦争が起きたりしてたもんだ。


 「そうですね、あちらには獣の特徴の無い人種(ひとしゅ)も存在していましたね」

 「うむ、分けねば削り合うのじゃ、ゆえに、」

 「お姉さま」

 「ん、その、何じゃ、あちらで生きて行く(すべ)を見出させるほうが良いのじゃ」


 何か不都合な事でも言いかけたんだろうね。

 下手なごまかし方だけど、まぁいいか。


- そうですね、まぁそういう事で、遊びに来るぐらいならいいけど、永住するつもりでというなら断っておいた方が良さそうだね。


 「わかりました、その方向で返答します」


 そう言ったリンちゃんは微笑んで言ったところからすると、少しほっとしたようだ。






●○●○●○●






 夕食後。

 後片付けはリンちゃんやモモさんたちがてきぱきとやってくれている。


 その間、クリスさんたち4名は、庭に出てまた剣を振るらしい。

 腹ごなしだそうだ。

 昼もそんな事を言ってたような気がする。


 「タケルさんはいいんですか?」


 と、カエデさんがリビングから外に出るときに振り向いて尋ねたけど、今のうちに風呂に入りたいからと言って断った。

 どうせ彼らはまた汗を流しに風呂に入るだろうし、モモさんたちだって入る時間が必要なんだから、俺がのんびり入浴するには皆が何かしている時間にした方がいいのだ。


 そう言えばピヨとミリィはさっさと出て行ったけどどこに行ったんだろう?


 魔力感知で軽く…、とは行かないんだよ。

 俺が索敵魔法でピンを撃つとここの精霊さんたちのほとんどが感知しちゃうらしくて、騒ぎになるから禁止されちゃったんだよなぁ…。


 だからパッシブの感知だけになるんだけど、そうするとここって精霊さんだらけだから、ピヨとミリィはそこに紛れちゃってよくわからない。

 この家の周囲でピヨとミリィだけで遊んでるのならわかるんだけどね。


 わからないって事は、たぶん寮に居るんだろう。


- ミドリさん、ピヨとミリィは?


 たまたま目の前を通ったというか、俺がミドリさんの後ろを通って脱衣所へと向かったんだけど、ついでに尋ねてみた。


 「あの子たちでしたら、この時間はいつも寮に居ますよ?、呼んできましょうか?」


- あ、いや居場所が気になっただけですから。


 俺が小さく会釈すると、ミドリさんは「そうですか」と会釈してテーブルの上を整える作業の続きをし始めた。


 そうして脱衣所に入る前にしれっと付いてきていたテンちゃんとリンちゃんを追い返した。






 なんだか久しぶりにこの家の風呂に入った気がする。


 そう思ってしまうのは、また少し広くなってるせいもある。

 ここって来るたびに『ん?、あんなの前からあったっけ?』って思うぐらい、少しずつ変わってるんだよ。

 壁の絵は投影だから毎回似たような絵ではあるけど違うしさ…。


 どこが違うとか考えた事もあったんだけどね、光の角度が違うとか、木々の色が違うとか花が咲いてる咲いて無いとかね。

 それどころじゃない事のほうが多くて、もう違いを探すのもやめたんだけど。


 『タケル様、改めてお手数をお掛けして申し訳ありませんでした』


 今回も、ほらね。


- そう何度も謝らないで下さい。別に大した事でもありませんから。


 というか、謝るなら俺にじゃなく、カエデさんにでしょうが。

 と言いたいところではあるけど、水を司る精霊様としてはそうも行かないんだろうね。

 俺だってそろそろ、それぐらいの察しは付くさ。


 と、視線を壁の絵に戻すと、少し離れた湯舟の上に出現していたウィノアさんの上半身は、波も立てずにすすすと俺の横に並んだ。


 そして始まるウィノアマッサージ。

 もう慣れたもんだ。


 脱衣所にあるマッサージチェアを使うと、対抗心か何か知らないけど、マッサージが心もち強弱の変化がついたり丁寧になったりする。

 ついでに愚痴も言われる。『私がお世話する方が気持ちいいでしょう?』とあれこれ言葉を変えて何度も問い掛けられる。まぁ『そうですね』とか、『ええまぁ…』とか答えてるけど、あまり適当な返事をすると拗ねるから気を遣う。

 そんな事が何度かあると、めんどくさいのでマッサージチェアを使いたくなくなるわけだ。


 しかし時々マッサージチェアのバージョンアップがあり、リンちゃんから感想を聞かれるので使わざるを得ない事もある。

 リンちゃんだって立場上仕方なく間に入ってるんだから、ウィノアさんの事でマッサージチェアを使いたくない、なんて言えるわけがない。


 以前、ウィノアさんが夜中にマッサージチェアをこっそり使ってた事があったんだけど、そのバージョンアップの度に、気になるのかやっぱり夜中にこっそりチェックしているらしい。


 らしい、というのは、俺は初回だけは何事かと見に行ったんだけど、その後は気にしないようにしているからね。


 でもテンちゃんやリンちゃん、モモさんもそうだけど、感知力の高い精霊さんたちにはやっぱりバレているわけだ。

 テンちゃんは俺に悪い笑みを見せながら告げ口というのとはまた違うんだけど、ちらっと話題に出すぐらいはしてくる。それをリンちゃんが呆れ顔で『お姉さま…』と言うところまでがセットだ。


 モモさんたちは事情を察しているのか、立場的に言えないのかは知らないけど、そんな余計な事は言わない。テンちゃんにもそこは見習って欲しいと思う。


 今回のバージョンアップは、俺はまだ試してないんだけど、光の精霊さんの技術者さんたちがやたら張り切ったせいだ。


 何でそんなに張り切るんだと思ったら、ここんとこ俺が出かけた先にマッサージチェアを設置するのが2度もあって、リンちゃんが技術者さんたちにメンテなどの都合もあって説明をしたわけだけど、その説明の仕方が原因だった。


 2度ってのはほら、ロミさんの希望でアリースオムの部屋に置いたのがあったろ?、まずそれがひとつ。


 もうひとつは、リンちゃんが『カエデさんの件や騎士団でお姉さまが勝手な事をしたお詫び』で、メルさんの部屋にマッサージチェアを置いてもいいですかと、ここに帰ってきてから言われたんで、まぁいいんじゃない?、と許可的な返事をしたのがふたつめ。


 で、現地人種(ひとしゅ)の希望で、とは言えないリンちゃんが、技術者さんたちに説明をするのに、『タケルさまが出先に設置を希望するほど好評』と伝えちゃったからだそうだ。そりゃ張り切ろうってもんだよね。


 そりゃちょっとどこかに滞在するたびにそこへ設置するように見えるんだから、俺がマッサージチェアをどんだけ気に入ったんだって思われても仕方がないのはわかる。

 わかるけど、リンちゃんよ…、もうちょっと他の理由は無かったのかな…?


 言っちゃったもんは仕方ないんだけどね、何だかなぁ…。






 まぁそんなわけで、マッサージチェアのバージョンアップ動作を踏襲というか採り入れたウィノアマッサージなわけだ。

 全身コースは俺が断固拒否するので、今回も首と肩と背中と腰と腕だけ。

 まぁ上半身だけでも充分なんだけどね。


 そういやマッサージチェアの全身コースは試した事が無いな。


 そんでもってまたリラックスBGM付きだ。

 これも実は、ウィノアさんがやり始めたのが最初じゃなく、マッサージチェアのヘッドレストにBGM機能が付いた方が先だったらしい。いやまぁどっちが先だろうがどうでもいい。ほんとどうでもいい。


 しかし当人たち、ウィノアさんとリンちゃんね、そのふたりにとっては重要らしい。それに加えて主張するポイントがそれぞれ違う。


 ウィノアさんとしては、『曲はオリジナルではありませんが、生演奏です』と、水でできた笛や水音の共鳴などを利用したオリジナル楽器?、というかウィノアさんの一部が変形して奏でてるわけだから、生演奏に違いないんだけどそれをアピール。

 リンちゃんは光の精霊さんに伝わるクラシック曲によって音数や幅広い曲数をアピール。


 と、俺からすれば心底どうでもいいような事で、別々に張り合おうとするんだから困りものなんだよ。

 どちらがいいですか、と単純に問い掛けられないのはいいけど、こちら(私)のほうがいいですよね?、なんて訊かれても困るんだよ。リラックスさせる事が目的なら困らせずにリラックスさせて欲しいものだ。


 『ふふ、いかがです?』


 俺から漏れてる魔力だとか表情とかでわかってるはずなのに。


- ええ、気持ち、いい、ですよ。


 『あのような物などお使いにならなくとも、私がお世話致しますよ?』


 だからそういう事を言うなというのに…。






 そうそう、マッサージチェアはサイモンさんやクラッドさん、それと今日試したらしいクリスさんにも大好評なんだそうだ。


 カエデさんから、『川小屋にもありますよ、それ』と言われたクリスさんは頬を緩めて喜んでたんだと。

 ついでに、ハムラーデルの砦小屋にもあるとか言ってた。

 ほんと、俺の出先には必ず設置されてるな、マッサージチェア。


 でも、彼らが使う事については、ウィノアさんは何も言わないんだよなぁ…。






次話5-024は2022年09月30日(金)の予定です。


20250119:訂正。 ちらっと俺を見て言う ⇒ やや小声でそっと言う


●今回の登場人物・固有名詞


 お風呂:

   なぜか本作品によく登場する。

   ひさびさの入浴シーンは、マッサージチェア話でした。


 タケル:

   本編の主人公。12人の勇者のひとり。


 リンちゃん:

   光の精霊。

   リーノムルクシア=ルミノ#&%$。

   アリシアの娘。タケルに仕えている。

   相変わらずの板挟み役。ごくろうさまです。


 テンちゃん:

   闇の精霊。

   テーネブリシア=ヌールム#&%$。

   後ろの部分は精霊語のため聞き取れない。

   リンの姉。年の差がものっそい。

   (いにしえ)の精霊ですからね。これでも。


 ファーさん:

   ゼファーリィ=ヴェントス#$%&。

   風の精霊。

   有能でポンコツという稀有な素材。

   風の精霊の里では高位の存在なんですよ、これでも。

   尊敬の対象なんですよ、これでも。

   つまりタケルに縁のない芸事に堪能という…。

   生かされない不遇な配置という事に。

   今回セリフ無し。居るのは居ますよ?


 ウィノアさん:

   水の精霊。

   ウィノア=アクア#$%&。後ろの部分は精霊語。

   一にして全、全にして一、という特殊な存在。

   タケルの首飾りに分体が宿っている。

   今回久しぶりの登場。


 アリシアさん:

   光の精霊の長。

   全精霊中最古というような存在。実は凄い精霊(ひと)

   だいたい名前くらいしか登場しませんが一応。


 モモさん:

   光の精霊。

   『森の家』を管理する4人のひとり。

   食品部門全体の統括をしている。

   今回はメイド長のような立ち位置。

   クリスのおかげでサイモンたちの相手をせずに済んでいる。


 ミドリさん、アオさん、ベニさん:

   光の精霊。

   モモと同じく『森の家』を管理する4人のひとり。

   食品部門の幹部。モモの補佐をしている。

   お仕事迅速、メイドに徹してます。


 ハルトさん:

   12人の勇者のひとり。現在最古参。

   勇者番号9番。オオミヤ=ハルト。

   ハムラーデル王国所属。

   およそ100年前にこの世界に転移してきた。

   『フレイムソード』という物騒な剣の所持者。

   今回は名前のみの登場。


 カエデさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号10番。シノハラ=カエデ。

   勇者歴30年だが、気持ちが若い。

   でも言動はタケルからするとちょっと古臭い。

   クリスに鍛錬を見てもらえて上機嫌。

   声がでかいのはハムラーデルのデフォルトです。

   剣の鍛錬をしていれば、精霊さんたちの事を考えずに済みますね。


 ジローさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号3番。イノグチ=ジロウ。

   ハムラーデル王国所属。

   砂漠の塔に派遣されて長い。

   2章でちらっと2度ほど名前があがり、

   次に名前が出てくるのが4章030話でした。

   ヤンキーらしいw

   今回出番無し。


 クリスさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号5番。クリス=スミノフ。

   現存する勇者たちの中で、4番目に古参。

   『嵐の剣(テンペストソード)』という物騒な剣の持ち主。

   しばらくはタケルと行動します。

   剣技のみで既に勇者最強です。

   身体強化も普通にできます。

   魔法は詠唱が必要ですが、

   剣を通してなら一部無詠唱で扱えます。

   まだタケルにははっきりと知られていませんが、

   魔力の感知力や操作力はかなり鍛えられてます。

   黒鎧という魔道具に封じられていた期間が長いためです。

   一緒に居る間に稽古をつけて欲しいと頼まれたため、

   タケルたちと話す時間があまりとれません。


 ロミさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号2番。マサダ=ヒロミ。

   現存する勇者たちの中で、3番目に古参。

   現在はアリースオム皇国皇帝を名乗っている。

   クリスとはこの世界に転移してきた時に少し話した程度だが、

   互いに気にかける程度の仲間意識はある。

   今回は名前のみの登場。


 シオリさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号7番。クリバヤシ=シオリ。

   現存する勇者たちの中で、2番目に古参。

   『裁きの杖(ジャッジメントケーン)』という物騒な杖の使い手。

   現在はロスタニア所属。

   勇者姫シリーズと言えばこのひと。カエデは大ファン。

   今回出番無し。


 サクラさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号1番。トオヤマ=サクラ。

   ティルラ王国所属。

   勇者としての先輩であるシオリに、

   いろいろ教わったので、一種の師弟関係にある。

   勇者としての任務の延長で、

   元魔物侵略地域、現バルカル合同開拓地に居ます。

   今回は名前のみの登場。


 ネリさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号12番。ネリマ=ベッカー=ヘレン。

   ティルラ王国所属。

   サクラと同様。

   魔力操作・魔力感知について、勇者の中では

   タケルを除けば一番よくできる。

   結界の足場を使った戦闘がメルに遠く及ばないのは、

   メルが達人級の剣士であることと、

   そもそも身体能力や身体強化はメルのほうが圧倒的に上だから。

   今回は名前のみの登場。


 カズさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号6番。サワダ=ヨシカズ。

   ロスタニア所属らしい。今の所。

   体育会系(笑)。性格は真面目。

   呆けていたのは、勇者食堂にいた、

   一目惚れしちゃった娘が精霊様だと感づいたから。

   今回出番無し。


 ホーラード王国:

   勇者の宿がある、1章からの舞台。

   名称が出たのは2章から。

   2章の冒頭に説明がある。


 寮の子たち:

   タケルの家とされている『森の家』その隣の、

   燻製小屋という名前の食品工場に勤める精霊さんたちの事。

   寮生活をしているが、自由時間は結構多いので生活を楽しんでいるようです。

   これでも光の精霊さんですから、

   普通の人種(ひとしゅ)とは比較にならない魔力量があります。

   これまで名前が登場したのはアーコなど数名ですが、

   寮には200人ほど居ます。


 サイモンさん:

   1章の後半に登場した、ツギの街を拠点に活動する、

   冒険者チーム『鷹の爪』のリーダー。

   4名しかいないが、それなりにツギの街では有名。

   『森の家』には魔法職であるプラムと共にちょくちょくやってくる。

   今回はプラムとエッダが王都に行ったので、

   暇になったクラッドと共にやってきた。

   クラッドと違い、あまりミリィやピヨには構わない。

   理由はお察し。


 クラッドさん:

   サイモンと同じく『鷹の爪』のメンバー。

   大楯を扱い、小剣または剣を使う。

   いわゆる盾役、タンクってやつですね。

   ミリィやピヨを餌付けするのが楽しいらしい。

   意外と可愛らしいものが好きっぽい。



 ※ 作者補足

   この登場人物・固有名詞紹介の部分全ては、

   あとがきの欄に記入しています。

   本文の文字数にはカウントされていません。

   あと、作者のコメント的な紹介があったり、

   手抜きをしたり、詳細に書かれているけど本文には

   無関係だったりすることもあります。

   ご注意ください。


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2019年05月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
なるほど。わかりません。
2020年01月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
同じやん。なるほど。やっぱりわかりません。
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