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5ー022 ~ 森の家での午後

 ぞろぞろと、リンちゃんが開けたリビングからの出入り口に続いて、モモさんたちがそれぞれカートを押して出て行った。


 リンちゃんがさっとテーブルと椅子を作り、エプロンのポケットからテーブルクロスを出して広げ、モモさんが腰のポーチから花籠や果物の器を取り出してセッティングを始め…、というように、あれよあれよと言う間に準備が整って行った。


 俺とカエデさんはリビングのテーブル席からそれを、俺は背中を向けているので直接は見えていないが、カエデさんは座ったまま背伸びをするような露骨な姿勢で見ていて、クリスさんはカエデさんの隣で、こちらは普通にその様子を見ていた。


- 準備ができたら呼びに来ると思いますので、座って下さいよ。


 立ったままのクリスさんに手で席を勧めると、『はい…』と言って素直に座ってくれた。

 でもリンちゃんたちが気になるようで、すぐにまた視線が外へと移る。


 ちなみにテーブルに置かれたミリィは、果物をひとつ抜き取り、俺の目の前まで転がしてきた。見た目からすると柑橘系っぽいけど、元の世界の夏ミカンぐらいのサイズだ。


 「()いて欲しいかな!」


- もうすぐ昼食だよ?


 「これが食べごろかな!、剥いて欲しいかな!」


- 食後にしようよ…。


 「この子、何て言ってるんです?」


- 食べごろだから剥いてくれって言われてるんですよ。


 「目の前でいい匂いがしてたら食べたくなるかな!」

 「何て?」


- 目の前でいい匂いがするから食べたくなったらしいです。


 うんうんと頷くミリィ。


 「へー、何ていう果物なんです?」


- さぁ?


 「さぁ?、って…」

 「ハルカン、ではございませんか?」

 「夏ミカンみたいですけど、そんな名前でしたっけ…?」


- 場所によって名前が違うんですよ…。


 だから名前を覚えるのを諦めたんだけどね。


 「早く剥くかな!、お願いかな!」


 しょうがないな…。


- はいはい。


 見た感じミカンっぽいし、全部食べるんじゃ無いなら別にいいだろう。

 と、席を立つとすぐお怒りの声。


 「何で逃げるかな!」


- 手を洗いに行くんだよ。ちょっと待ってて。


 納得したようなので手を洗って戻り、席に着いた。


 その実を手で持ちあげて軽くスキャン。

 構造も夏ミカンっぽいので、ならばと皮の表面に切り目を入れて手で剥き、半分ほど露出したところでポーチから小皿を取り出して、じょう(のう)と呼ばれる袋を取り外してそれに乗せた。


- これでいいの?


 「この皮も剥いて欲しいかな」


 はいはい、と言って薄皮をぴっと裂いて広げてやると、『ありがとうかなー!』と言って小さい袋(砂じょう嚢)を剥がし取って、ちゅるんと果汁を吸い取った。


 どうやって食べるんだろうって思ってたら、そうやって食べるのか…。

 食べるというか、飲むというか…。


 吸い取ったあとの薄い皮が次々と小皿に貯まって行く。ペースが速い。


 「あたしもひとつ下さい」


- あっはい、どうぞ。


 カエデさんに剥きかけのままテーブルに置いたのを手渡すと、ピヨを膝の上に置いてから受け取って、ひょいとひとつ(むし)ってそのままぱくっと口にいれた。


 俺は白いのがイヤなので綺麗に取り除くんだけどね、それかミリィにしたように薄皮も剥いてから食べる。


 でもカエデさんはそのままもぐもぐ食べて、そのまま飲み込んでしまった。ワイルドだな。


 「甘くて美味しいですよ、食べごろって言ってましたけど」


 そう言ってもうひとつ食べてる。


 「タケルさんは食べないんですか?」


 そしてまた口にいれるカエデさん。


- 昼食前だから。


 「これくらい大した量じゃないですよ」


 それはそうなんだけどね…、と、小皿の実が半分以下になってる目の前のミリィを見る。


 「ん?、あたしはこれだけでいいかな、美味しいからみんなで分けるといいかな」


 ほう…、てっきり勝手に食べたとか言ってへそを曲げるかと思ってたよ。


 「何て?」


- 自分はこれだけでいいって。美味しいからみんなで分けて食べてってさ。


 「絞って飲み物にするとひとり分かな、でもこうして食べたら分け合えるかな!」


 なるほど、有翅族(ゆうしぞく)の村でもこういう風に分けて食べてたんだろうね。


 「へー、ミリィちゃんいいとこありますねー」


 カエデさんに通訳するとにこにこもぐもぐ食べながら言った。


 「ピヨちゃんも食べる?」

 「あの、私めがそれを頂くと汁が零れますので…」

 「あれ?、嫌がってる…?」


- 汁が零れるから食べないんだってさ。


 膝の上だからなぁ…。


 「そんなの、気にしなくていいのに…」


- まぁ、無理に食べさせなくても…。


 「そうですね…」


 と、ピヨの前に差し出していたのを自分で食べた。


 考えてみたらピヨって普通にスープなどの汁気のあるものを食べてたような…。

 いや、こいつに関しては深く考えるのは()めておこう。






 「タケルさま、ご用意できましたよ?」


 リンちゃんが呼びに来たので立ち上がると、奥のソファーのところに居るテンちゃんも立って、こちらを見てひとつ頷いた。


- ミリィ、手を洗いに行こうか。


 「はーい」


 手が夏ミカンじゃないけど夏ミカンくさいからね。

 ちなみに味はカエデさん曰く、夏ミカンに近かったけど、夏ミカンかというと何か違う味らしい。よくわからん。似たようなもんじゃないのか?

 カエデさん自身も何十年も前に食べたものと比較するのは難しいらしいし。


 そんな事を思いながら、手に飛びついて親指を軽く抱えて座るミリィを連れて洗面所へ行き、水を少し出すとミリィも慣れたもので器用にその水でちょいと両手を濡らし、置いてある石鹸の所に移動してちょいちょいと手を付け、こすり合わせてからまた戻って洗い流すのを見届けた。

 その次は俺だ。ポンプ式のハンドソープが置いてあるのでそちらを使う。


 ミリィがハンドタオルのところに飛んでって、積んである1枚を取ってきた。

 自分も拭くついでに俺の顔の前まで来て揺らす。


- ああ、ありがとう。


 「うん」


 この家というかここは食品工場が隣にあるせいか、ここも寮のほうでも衛生管理が徹底しているので、ミリィもきっちり教え込まれている。だから慣れているんだろう。

 隣の洗面台では俺たちについてきていたカエデさんとピヨ、さらにその隣には俺やカエデさんを見倣ってかクリスさんも手洗いをしている。


 もちろんテンちゃんも来ていて、脱衣所の隅っこに凭れて待っている。

 ここは洗面台が並んでいるけど、テンちゃんはミリィやピヨとの接触を避けるために少し離れているからね。


 あと、ピヨの手洗いについては何も言うまい。


 そしてぞろぞろと出て行き、リンちゃんの誘導に従って庭に作られた食卓の席に着いた。


 「モモさんが迎えに行きましたので、少々お待ち下さい」


 リンちゃんが言うのに頷いて待つ。


 ミリィとピヨは俺とは離れたところで大人しくテーブルの上に用意された料理の前だ。

 カエデさんがピヨに話しかけたり、対面のクリスさんと小声でひそひそ話している。

 ところどころ聞こえてくる言葉からすると、周囲の建物の説明っぽい。

 カエデさんだってここに来てそんな間もないんだから詳しいはず無いんだけどなぁ…、誰かに聞いてたのかな?


 モモさんが誰を迎えにって、サイモンさんたちだ。

 そう言うからにはもう近くまで来ているんだろうと、ちょいと森の方を探るように魔力感知に集中してみると、モモさんともうふたりが走ってこちらへ向かっているのがわかった。結構早い。


 あれ?、ふたりだけ?

 身体のサイズからすると、もうひとりはクラッドさんかな?、大楯背負ってるし。


 テンちゃんが俺の隣の席に着き、そしてすぐにモモさんたちも姿を見せた。


 意外と早いなとも思ったんだけど、その前に、彼らが身体強化で走ってきていたのは感知でわかっていたので、どちらかというとモモさんからかけられたのではなく、自前の身体強化だった事の方に驚いた。


 と言っても、メルさんや俺たち勇者が使うものよりは数段弱い身体強化だけど、それでも普通に森の中の小道を走って来るよりはかなり早く走れる。

 最初にサイモンさんたちと出会った頃には、身体強化なんてできなかったはずなので、それから相当頑張ったんだろう。大したものだと思う。


 「お待たせ致しました」


 まずモモさんが言い、それからサイモンさんが挨拶をした。


- お久しぶりです。


 お元気そうですねと言うのも何だし、他のおふたり、プラムさんとエッダさんはどうしたんですかと尋ねるのも座ってからにした方が良さそうなのでこれだけだ。


 「来る途中に聞いたけど、帰ってたんだね」

 「久しぶり、とりあえず、座って、いいか?」


 クラッドさんの方は少し息が乱れているようだ。


 「ああ、そうだね」


 と俺たちを見たので頷いた。

 モモさんが先導して俺たちの向かい側に座る途中に、「クラッドはまだ覚えて間もないんだよ」と身体強化について言い訳していた。


 今回はお誕生日席のような場所に椅子は無く、俺の右側にテンちゃん、左側にリンちゃんの席がある。それが端っこで、リンちゃんの隣には空席が2つあって、ワゴンが寄せられているので給仕用、その向かい側にもワゴンが寄せられていて、そちらの辺側への給仕用だろう。こちら側にはアオさんとベニさんとファーさんが立ち、向かい側にはモモさんとミドリさんが立ってというか給仕が始まった。


 おそらく給仕が終わるとワゴンを少し引いて、彼女たちが座るんだろう。


- プラムさんとエッダさんは?


 「ああ、プラムたちは王都の魔法学院から呼び出されてね、そっちに行ってるんだよ。エッダはそれの護衛という名目で付き添ってるよ」


- そうなんですか。


 「珍しく経費を全部持ってくれるらしくてね、さらに随伴2名まで面倒を見ると破格の好条件だったんで、逆に怪しく思って詳しく聞いたところ、魔法学院を経由して依頼してきたのは王都イアルタン教会ホーラード大聖堂だったんだ」


- へー…


 ん?、教会が魔法学院を経由して破格の依頼をしてきた…?


 「わざわざ急ぎの使者を立てて、ツギの街の冒険者ギルドに手数料を払ったみたいなんだ」

 「僕たち『鷹の爪』のプラムへの指名依頼って扱いだから断れなかったんだよ」


 プラムさん名指し…、って!

 あー…。


- それってもしかして、アリースオムからの?


 「アリースオム?、ホーラード大聖堂だよ?」


 そこまでは聞いてないのかな。


- あー、えっと…。


 「何か知ってるなら話してもらえるかい?」


 サイモンさんがちらっと俺の左右、リンちゃんとテンちゃんがそれぞれそっぽを向いているのを伺いながら尋ねた。

 これは助けてもらえそうに無い。俺の失言だったし、仕方ない。


 でも俺のせいだってところまでは言わないようにしよう。

 俺にだってちょっとは罪悪感ってものがあるんだよ。


- 先日、アリースオムのマッサルクってとこに用事で行ってたんですよ。


 「君たちがかい…?」


 距離的にというか時間的に一瞬疑問に思ったんだろうけど、転移魔法の事を思い出したんだろう、続けて言いかけたのを止めたみたいだ。


- はい。それで、現地の教会が回復魔法の技術向上を目指しているって耳にしまして、


 ここでサイモンさんが頷くのを待って、続ける。


- それでホーラードの魔法学院に風属性魔法について、ホーラードの教会経由で問い合わせてるって話だったんですよ。


 「そ、そんな話をどこで…」


- 僕の用事ってのは、アリースオム皇帝陛下直々の依頼だったんで、まぁいろいろ耳にしたんですよ。


 ロミさんは勇者だけど、アリースオム皇帝でもあるからね。間違ってはいない。


 「…そうか、君は勇者様だったね…、そりゃそういう事もあるか…」


 後ろの方は少し俯き気味の小声になっていたが、顔を上げて続けた。


 「なるほど、それでプラムへの指名依頼だったのが納得行ったよ。貴重な情報をありがとう」


- どういたしまして。


 「しかしプラムの提出した論文はまだ学院上層部にしか伝わっていないはずだとプラムが言ってたんだけど、それがどうしてアリースオムの教会に情報が伝わってたんだろう…」


 タイミング的にはぎりぎりだったのか…、でもここはしらばっくれるしかない。


- さぁ…?、そこまでは僕にはわかりませんよ…。


 「それもそうだね。まぁしっかりとした依頼だって事がわかっただけでもありがたいよ」

 「ではタケル様、お願いします」


 こちらの話が段落するのを待っていたのか、もう給仕を終えて席に着いていたモモさんが俺を促した。


- あっはい、では美味しそうな食事に感謝して、いただきます。


 サイモンさんたちも俺たちの『頂きます』に慣れた様子で俺や精霊さんたちが手を合わせて言うのに追随した。

 カエデさんも同じようにしているのを見て、クリスさんもしていた。

 もちろん、ミリィとピヨもやっている。


 クリスさんが小さく、『ふ、懐かしいな』と言っていた。

 ついでにピヨがスプーンやフォークを使っているのを見て手をぴたっと止めて目を丸くしていた。


 だよね?、目を疑うよね?、あれ。






 「タケルさん、あちらの方々は誰なのか聞いてもいいかい?」


 食事が始まって少ししてから、具体的にはモモさんたちが料理の説明をしていたのが落ち着いてから、サイモンさんがカエデさんとクリスさんの事を尋ねた。


- あっはい、こちら側の男性が勇者クリスさんで、向かい側の女性は勇者カエデさんです。


 「「え?、勇者様?」」


 サイモンさんとクラッドさんの声が被った。


 「勇者クリスってったら、あの白銀の勇者で嵐の剣を持ってるっていう伝説の勇者様だよね?」


 そうですよと頷く俺。


 「思ってたより随分と若いね、それと勇者カエデってハムラーデルの妖精って言われてるあの勇者様だよね?」


 え?、ハムラーデルの妖精?、カエデさんそんな二つ名がついてたの?


- それは知りませんけど、ハムラーデル所属の勇者なのは確かですよ。


 「そうだったんだ…、改めてタケルさんが勇者様だって再認識したよ…」


 まぁ別に俺が勇者だとかの認識はどうでもいいっちゃいいんだけどさ。俺自身、それほど自覚があるわけじゃないしさ。

 なので、サイモンさんには何と答えればいいのかわからんので、苦笑いで食事を続けた。


 カエデさんたちの方では、クリスさんの剣について、ファーさんが何か言ったんだろう、カエデさんの声とファーさんの魔力混じり音声だけしか聞こえないけど、それで判断できた。

 別に秘密にしたい訳でも、言われて困る話でもないし、大まかな話は『勇者の宿』でしちゃってたから問題無い。


 ファーさんもいい気分転換にでもなればいいなと思う。

 ここんとこやけに大人しい印象があるからね、ちょっと心配はしてるんだよ、これでも。






 そのあとは、少し間をあけてからだったが、プラムさんから魔法の手解(てほど)きをしてもらったとか、まだサイモンさんもクラッドさんも初級魔法すらうまく発動できない事があって難しいけど、身体強化だけは何とかモノにできたとか、そんな話を聞いたりした。


 強化も無詠唱じゃなくて、あのちょっと恥ずかしい文言を詠唱して集中しなくちゃできないので、専ら移動用か訓練用なんだそうだ。

 魔物討伐などで使うには消耗が大きいんだってさ。


 それには理由があって、魔物討伐って、ダンジョンのようにすぐ遭遇するような場所とは違い、依頼を受けて現地に行って話を聞いてから周辺調査をすることから始まるわけで、そこから出没するあたりを見当つけて捜索や待ち伏せが始まり、遭遇するまでが大変なので、身体強化をかけ続けるわけには行かないから、だそうだ。


 遭遇してすぐに身体強化ができるほどでは無いとか。

 早く咄嗟にできるように訓練中なんだと、ちょっと嬉しそうに言っていた。


 嬉しそうだったのは、自分たちはプラムさんとは違って魔法なんて無縁だと思っていたのが、少しでも扱えるようになってきた事が嬉しいんだと思う。

 プラムさんの教え方がいいんですね、良かったですねと言っておいた。ふたりともいい笑顔で頷いていた。






●○●○●○●






 昼食が終わっても、サイモンさんたちはのんびりお茶をしていたので、こそっと隣のリンちゃんに尋ねると、どうやら今日はここに泊まるらしい。


 以前、彼らが来た時には、まぁ俺が居た場合はここに宿泊していたわけで、その後は来てちょっと話して、庭の隅っこにあるウィノアさんの泉のとこでお祈りをしたら帰っていたらしい。


 それが何度かあって、わざわざツギの街から何時間もかけてここに来て、また何時間もかけて帰るのか、みたいな事をモモさんから心配されたんだと。

 それで、勇者村に宿を取ってますと聞いて、では次からはここに泊まって下さいと提案されてから、そうするようになったようだ。


 まぁこの『森の家』が俺の家だからって、管理してるのはモモさんたちだし、サイモンさんたちは知らない仲では無いし、泊まった事だってあるんだから、いちいち俺の許可なんて必要ないね。


 間取りは知らないけど部屋はあるみたいだし?


 で、そんな話やお茶のあと、食卓を片付けてから、食後の運動とやらでカエデさんとクリスさんが鍛錬をするんだそうだ。


 カエデさんが借りにきたんでポーチからロングソードとショートソードと木剣ほかいろいろ出した。だってどれがいいのかわからないし。

 全部借りてったよ。両手剣もあったのに。


 俺?、俺はいいや、見てるだけで。


 で、リビングから出てすぐにある小さなテーブルと椅子のとこで、俺とリンちゃんとテンちゃんの3人座ってそれを見てたわけ。


 サイモンさんとクラッドさんならクリスさんの指導でカエデさんが鍛錬するのを近くで見学して、すぐ参加になってたよ。

 何かすっごい感激し喜んで参加してた。そういうもんなのかね?、よくわからん。


 まぁクリスさんの事を『伝説の勇者様』って言ってた事を思えば、そうなるんだろう。そういう事にしておく。


 準備運動なのか剣を振ってたのが、そのうちクリスさんを相手に3人が交代で模擬戦形式の指導を受けるようになったみたいだ。


 それくらいの時間になると、テンちゃんはリビングに置いてた本を持ってきて続きを読んでたし、リンちゃんはお茶を用意してくれてた。


 俺はというと、例の小さな球体やら何やらを浮かせてくるくるするやつでヒマを潰しながら彼らの鍛錬を見てたんだけどね。

 いつの間にか庭の端っこに長机をモモさんが作ってて、そこに給水器と木のコップを並べて置いてたよ。


 サービスいいね、ここ。


 ああそうそう、途中休憩の時にカエデさんが、ホーラードの王都で鷹鷲隊(おうしゅうたい)の訓練でやってた、というかテンちゃんがやってたんだけど、例の(すす)でつくった怪獣とか人型とかの訓練の話をして、何か盛り上がってたよ。

 何せカエデさんは声がでかいので、よく聞こえてくる。


 テンちゃんが本から顔を上げてその様子を見ていたので、見ると、『あれをやるには場所が狭いのじゃ』と言ってた。


 「ここでアレをされるとそこらの魔道具に影響がでますのでダメですよ」


 と、リンちゃんにしっかりと釘を刺されて『う…』と肩を(すく)めてたけどね。


 そういえば鷹鷲隊(おうしゅうたい)は訓練で魔道具って使わなかったのかな、通信用とかあったはずだけど。

 まぁ、あの訓練の時にもし持ってきてたなら、壊れたとか聞こえてきてたはずなので、そういう事が無かったって事かも知れないね。


 「昔と違ぅて対策はしておるのじゃが…」


 と、小声でぼそっと呟いてたけど、『安全性の確認ができるまでは禁止です』と言われて詰まら無さそうに本に目を落としてたよ。


 でもあの魔法、便利そうだよね。

 何がって、いろいろとさ。






次話5-023は2022年09月24日(土)の予定です。

(都合により2週+1日延期しました)


20221105:誤字訂正。 向きかけの ⇒ 剥きかけの

20250119:訂正。 索敵魔法を使って ⇒ 森の方を探るように魔力感知に集中して



●今回の登場人物・固有名詞


 お風呂:

   なぜか本作品によく登場する。

   今回も入浴無し。そろそろあってもいいと思う。

   でも今はお客さん4名のうち3名が男性だから…。


 タケル:

   本編の主人公。12人の勇者のひとり。

   すっかり剣を振らなくなりましたね。


 リンちゃん:

   光の精霊。

   リーノムルクシア=ルミノ#&%$。

   アリシアの娘。タケルに仕えている。

   テンにはしっかり釘を刺さないと、

   魔道具がたっぷりあちこちにあるここでは

   何かあったら被害甚大なのです。


 テンちゃん:

   闇の精霊。

   テーネブリシア=ヌールム#&%$。

   後ろの部分は精霊語のため聞き取れない。

   リンの姉。年の差がものっそい。

   何か理論系の難しい本らしい。

   状況は理解しているので素直に従います。


 ファーさん:

   ゼファーリィ=ヴェントス#$%&。

   風の精霊。

   有能でポンコツという稀有な素材。

   風の精霊の里では高位の存在なんですよ、これでも。

   尊敬の対象なんですよ、これでも。

   つまりタケルに縁のない芸事に堪能という…。

   生かされない不遇な配置という事に。

   今回セリフ無し。居るのは居ますよ?


 ウィノアさん:

   水の精霊。

   ウィノア=アクア#$%&。後ろの部分は精霊語。

   一にして全、全にして一、という特殊な存在。

   タケルの首飾りに分体が宿っている。

   今回も出番無し。


 アリシアさん:

   光の精霊の長。

   全精霊中最古というような存在。実は凄い精霊(ひと)

   だいたい名前くらいしか登場しませんが一応。


 モモさん:

   光の精霊。

   『森の家』を管理する4人のひとり。

   食品部門全体の統括をしている。

   今回はメイド長のような立ち位置。

   サイモンたちを迎えに行ったのは、急がせるため。

   場合によっては転移魔法で戻ってくることも可能だからです。


 ミドリさん、アオさん、ベニさん:

   光の精霊。

   モモと同じく『森の家』を管理する4人のひとり。

   食品部門の幹部。モモの補佐をしている。


 ハルトさん:

   12人の勇者のひとり。現在最古参。

   勇者番号9番。オオミヤ=ハルト。

   ハムラーデル王国所属。

   およそ100年前にこの世界に転移してきた。

   『フレイムソード』という物騒な剣の所持者。

   今回は出番無し。


 カエデさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号10番。シノハラ=カエデ。

   勇者歴30年だが、気持ちが若い。

   でも言動はタケルからするとちょっと古臭い。

   クリスに鍛錬を見てもらえて上機嫌。

   声がでかいのはハムラーデルのデフォルトです。


 ジローさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号3番。イノグチ=ジロウ。

   ハムラーデル王国所属。

   砂漠の塔に派遣されて長い。

   2章でちらっと2度ほど名前があがり、

   次に名前が出てくるのが4章030話でした。

   ヤンキーらしいw

   今回出番無し。


 クリスさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号5番。クリス=スミノフ。

   現存する勇者たちの中で、4番目に古参。

   やっと登場。というか復活速過ぎ。

   まぁこのひとも苦労してきてますからね…。

   しばらくはタケルと行動します。

   剣技のみで既に勇者最強です。

   身体強化も普通にできます。

   魔法は詠唱が必要ですが、

   剣を通してなら一部無詠唱で扱えます。

   まだタケルにははっきりと知られていませんが、

   魔力の感知力や操作力はかなり鍛えられてます。

   黒鎧という魔道具に封じられていた期間が長いためです。


 シオリさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号7番。クリバヤシ=シオリ。

   現存する勇者たちの中で、2番目に古参。

   『裁きの杖(ジャッジメントケーン)』という物騒な杖の使い手。

   現在はロスタニア所属。

   勇者姫シリーズと言えばこのひと。カエデは大ファン。

   今回出番無し。


 サクラさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号1番。トオヤマ=サクラ。

   ティルラ王国所属。

   勇者としての先輩であるシオリに、

   いろいろ教わったので、一種の師弟関係にある。

   勇者としての任務の延長で、

   元魔物侵略地域、現バルカル合同開拓地に居ます。

   今回出番無し。


 ネリさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号12番。ネリマ=ベッカー=ヘレン。

   ティルラ王国所属。

   サクラと同様。

   魔力操作・魔力感知について、勇者の中では

   タケルを除けば一番よくできる。

   結界の足場を使った戦闘がメルに遠く及ばないのは、

   メルが達人級の剣士であることと、

   そもそも身体能力や身体強化はメルのほうが圧倒的に上だから。

   今回出番無し。


 カズさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号6番。サワダ=ヨシカズ。

   ロスタニア所属らしい。今の所。

   体育会系(笑)。性格は真面目。

   呆けていたのは、勇者食堂にいた、

   一目惚れしちゃった娘が精霊様だと感づいたから。

   今回出番無し。


 ホーラード王国:

   勇者の宿がある、1章からの舞台。

   名称が出たのは2章から。

   2章の冒頭に説明がある。


 寮の子たち:

   タケルの家とされている『森の家』その隣の、

   燻製小屋という名前の食品工場に勤める精霊さんたちの事。

   寮生活をしているが、自由時間は結構多いので生活を楽しんでいるようです。

   これでも光の精霊さんですから、

   普通の人種(ひとしゅ)とは比較にならない魔力量があります。

   これまで名前が登場したのはアーコなど数名ですが、

   寮には200人ほど居ます。


 サイモンさん:

   1章の後半に登場した、ツギの街を拠点に活動する、

   冒険者チーム『鷹の爪』のリーダー。

   4名しかいないが、それなりにツギの街では有名。

   『森の家』には魔法職であるプラムと共にちょくちょくやってくる。


 クラッドさん:

   サイモンと同じく『鷹の爪』のメンバー。

   大楯を扱い、小剣または剣を使う。

   いわゆる盾役、タンクってやつですね。



 ※ 作者補足

   この登場人物・固有名詞紹介の部分全ては、

   あとがきの欄に記入しています。

   本文の文字数にはカウントされていません。

   あと、作者のコメント的な紹介があったり、

   手抜きをしたり、詳細に書かれているけど本文には

   無関係だったりすることもあります。

   ご注意ください。



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2019年05月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
なるほど。わかりません。
2020年01月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
同じやん。なるほど。やっぱりわかりません。
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