1ー025 ~ 晩御飯
何かドロップアイテムがでたり宝箱があったり、ということもなく…、って前も言ったような気がする。
でもそうなんだよ。ただ倒しただけ。
一応、遺品とかがないか、部屋の中は探すんだけどね、みなさんが。
なんもない。
で、リンちゃんがペンダント配って、そんで転移して戻る。それを2回。
ペンダントあるんじゃん!、リンちゃん!、でもなんで俺にはペンダントくれないのかな?、あ、数が足りない?、ならしょうがないか。
というわけで2層への入り口、ってこれ何?、もやもやしてるんだけど。
あ、ダンジョンの階層ってこうなってんの?、そういうもん?、ならしょうがないか。
そういえば東の森のダンジョンは2層がなかったもんなー、やたら広いっていうか長いけどさ。全長何kmあるんだか。何kmどころじゃなかったな、まぁいいけど。終わったことだし。徒労という言葉がぴったりだったんでどっちかってーと忘れたい部類だし。
そしていつものように、リンちゃんが小屋つくって3部屋にしてベッド6つ作って、結界を張るわけですよ。
そんでもって、俺が外にテーブルやら竈やら作って、サイモンさんとエッダさんが用意してくれた食料と、あとは肉と野菜を取り出して、大鍋でシチュー作ってたまにかき混ぜ、となりで炒め物を作ってる。
『鷹の爪』の皆さんは唖然としていたけど、すぐ立ち直って、料理のお手伝いをしてくれている。
できあがり。さぁ実食ですよ、みなさん。
「なんか普段よりいい食事だったかも」
「こんなダンジョン探索なら大歓迎だな」
「これに慣れてしまうと戻れなくなりそうだ」
「「あー…」」
皆さん食後にお茶を用意したら、のんびり寛いで、そんな話をしてた。
俺?、今プラムさんと魔法の訓練中。『考えるな、感じろ』的な魔力感知と、考えて感じて動かす魔力操作だ。
俺も一度通った道さ。がんばれプラムさん。
「タケルさま、お風呂はどうなさいます?」
- ん?、作ってなかったっけ?
「ありますよ?」
- んじゃ入ろうか。
「ではお湯いれてきますね」
リンちゃんを見送って、魔力操作の訓練の続きをしはじめると、プラムさんが、
「あ、あの、タケル様?、お風呂があるんですか!?」
「「「ガタタッ」」」
「ふ、風呂だと!?」
「ここダンジョンよ!?」
あっちにも聞こえたようだ。
●○●○●○●
うん、やはり風呂はいいもんだよね。みなさん満足しておられました。
あ、ちゃんと男女別ですよ。当然っすね。
男湯には俺が、女湯にはリンちゃんがいるので、お湯が足りなくなっても足せるしさ。
さっぱりきれいになったところで、そろそろ不寝番を作るかね。
うーん、ちょっと頭部の造型がいまいちだな。こうかな?、うーん、妥協すっか。
あら、少し離れてみてみたら、手足のバランスが悪いな。なかなか難しいぞこれ。
やっぱり鎧甲冑風にすべきか?、それともハニワの兵士みたいにすべきか…、あ、ハニワか、そうか顔はそうしよう。
するとこれ中が空洞のほうが敏捷性があがるかな?、ハニワの兵士って確か槍と盾もってたよな?、馬…はコアがないからだめか。2体つくるのに、1体目でこんなに時間かかってちゃだめだよな。
「タケル君、キミさっきから一体何を作ってるんだい?」
サイモンさんが装備のお手入れをしている手をとめて、そう尋ねてきた。
やっぱ気になりますか?、ふふふ、これはですねー
- 不寝番ですよ、夜営で見張りの必要がないですよ、って言ってたじゃないですか。
「その土人形がかい?」
- あとでコアを埋めて自動人形にするんですよ。
「え…」
ゴーレムって言うとなんか違うんだよね、あれってEMETHだとかなんとか、そんなのがあってコアがない、魔術的なやつ。
でもこっちのはコアがあって、魔術じゃなく魔法だ。
コアを起動したのと同じ術者が身体部分をつくると、魔法的に波長がどうのでコアからその体内に神経回路が形成されるとかなんとか、だったかな、そのへん自動でやってくれるのでこっちはあまり考えなくていいらしい。
あ、だったら中身空洞じゃダメなんじゃないか!
そんなこんなあって、できました、ハニワ兵士風ゴーレムx2。
次からはもっと手際よくつくれそう。
「タケル様、土魔法がお得意なんですね。こんなにスムーズに動くゴーレムは初めて見ました。でもこのデザインはちょっと…」
え!?、プラムさんからダメ出しもらっちゃったよ!?
り、リンちゃんは?
「タケルさまのセンスがどうでも、あたしはタケルさまに付いていくだけです」
いやそれ、暗に『センスが悪い』って言ってるよね?
ちょっとなんで目ぇそらすの!?
●○●○●○●
翌朝。
なぜか寝不足の『鷹の爪』のみなさん。なんでなん?
「部屋の外でときどきあのゴーレムが動いてたろ?」
- あっはい。警邏ですから多少は動いてもらわないと。
「あの土人形が動き回る音とかが気になって眠れなかったよ」
「うん、重さも相当あるから足音が響いて…」
そういうもんか。俺は自分で作ったものだから魔法的に繋がってるし、気にならなかったけど。
- それはすみませんでした。でも、慣れてくださいとしか…。
「そうだよね…」
しかしどっちがいいんだろうね?
静まり返って小屋の中で眠っているような気配しかなく、結界はあっても、不寝番が誰もいなくて、人形が2体立ってるだけ。
もしそこに何かが侵入してきたとする。いきなり動き出す土人形。
侵入者はさぞびっくりするだろう。
それと、
小屋の周り、結界の中を動き回っている土人形。
もしそこに何かが侵入…、してこないよね。動いてるものがあるんだから。
うーん?
前者だと、侵入してくるよね。無警戒に。油断してると思われて。
でも後者だと、動いているものがあるんだから、警戒して近寄ってこないよね?
そう思って後者にしたんだけど、前者のほうがよかったのかなぁ?
魔物みたいに考えなしなら、前者でも後者でも侵入してくるのは同じだしさ。
というか人形たちはちゃんと近寄ってくるものに対して警戒するんだから、動き回っているままじゃないし。
うーん、どっちがいいのかわかんないなー
どっちにせよ、みなさんには慣れてもらうしかないんだけどね。





