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5ー012 ~ 騎士団の訓練場

 「さぁ、では騎士団に行きましょうか」


 特に荷物などの無い俺たちなので、国賓用らしいその部屋と複数ある寝室をちょっと見て回ると、メルさんが待ちきれないような雰囲気で言ったんだ。


- ああ、オルダインさんが居るんでしたっけ?


 「違いませんけど、そうではなく午後の訓練に参加するんですよ」


 参加?、そんな予定は聞いてないぞ。乱入の間違いではないよね?

 などと冗談めいた事を連想したけど、そんな気分じゃ無いし、正直遠慮したい。


- えっと、時間があるなら城下町を散歩したいなとは思ってたんですが…。


 と、メルさん貴女そのドレスで行くつもりなんですか?、という気分で目線をすっと動かした。


 「いずれにせよ着替えますから大丈夫ですよ。ここに帰ってから身体を動かす機会が減っているんです。その口実にお付き合いして下さい」


 なるほど?

 そりゃ達人級と認められた剣士が腕を(なま)らせてしまうのは不本意だろうね。


- わかりました、でもちょっとだけですよ?、僕は騎士団の人たちと一緒にはできませんからね?


 「…でしたらその間は見ていてもいいので」


- という事なんだけど、ふたりはどうする?


 と、いつの間にか左右やや後ろの定位置についているリンちゃんたちに振り返って尋ねた。


 「そのあとはここに戻られるんですか?」


- 汗をかくつもりは無いんで、そのまま街に出たいかな。


 「え?」

 「なら、一緒に行きます。お姉さまはどうします?」

 「集団訓練はあるのか?」

 「今日は…、小集団のならあると思います」

 「ふむ、なら行くのじゃ」


 というわけで、妙に乗り気なテンちゃんも珍しいと思ったのもあり、メルさんの案内で騎士団へと向かった。






 メルさんに護衛は付かない、と聞いていたが、本当に護衛なんて付かず、それどころか女官さんのひとりすら付かなかった。


 あとで聞いたが、昔は付いていたらしい。

 でも剣士としてめきめき腕を上げていくに従って、あちこち自由奔放に出掛けるメルさんに付いて来れる者が居なくなったんだそうだ。


 一応この国にも暗部というか忍者みたいな情報部門があるそうだけど、それらは別に暗殺したりするようなひとたちではなく、市井(しせい)に紛れて情報を収集したり、気配を隠して忍び込んだりする方が主の、どちらかというと隠密系らしい。

 というかホーラード王国は平和な方なので、そういう方面は専ら情報集めが目的で、物騒な方向じゃないんだとさ。


 まぁそんなでも体術が優れているひとが居たようで、一度メルさんに付けられた事があるそうな。

 でも、メルさんが嫌がって逃げまくり、『とても追い付けません』と(さじ)を投げられたらしい。そんな事に集中するぐらいなら他の仕事をさせた方がいいという王様の判断もあったみたいだけど。


 当時ですらそんなだったのに、現在のメルさんは達人級の腕前に加えて無詠唱で魔法を扱えるとんでもないお姫様だ。こんなの魔王でも攫いには来ないだろうというのが王室の見解なんだってさ。俺もそう思う。






 それでメルさんの案内で王城の隣、と言ってもそれぞれがでっかいので結構歩かされたが、訓練場という壁と観客席に囲まれた広い場所で、オルダインさん他、見覚えのある鷹鷲隊(おうしゅうたい)のひとたちに会い、挨拶をした。


 もちろんもうとっくに訓練は始まっていて、俺たちが挨拶をしている間、木剣だったり槍だったり弓だったりを訓練しているグループが広い訓練場をうまく使っていた。


 「ふむ…」


 着替えてきますと言ってこの場を離れたメルさんを目で追ってから、結構人数がいるんだなーなんてぼーっと周囲を見回していると、隣でテンちゃんが考え込んでいる。


- テンちゃん?


 「向こう側とこちら側では練度がかなり違うようじゃ」


 へー、俺にはよくわからないが。


 「ほう、おわかりですかな、テン様」

 「うむ。其方、オルダインといったか」

 「はい、兵士や騎士を統括する騎士団長の役目を頂いております、オルダインでございます」


 あ、そうか、ホーラードでは『騎士団長』ってふたりだけで、もうひとりは『近衛騎士団長』という名誉職なんだっけ。つまり騎士や兵士の頂点がこのオルダインさんなんだ。


 ちなみに他の国々では、騎士団ごとに団長が居る。統括は国によって異なるが、ハムラーデル王国なら文官寄りの『軍務卿』、アリースオム皇国なら『軍務大臣』の下に『将軍』がいて、それぞれの戦士団がぶら下がる形らしい。

 ティルラ王国では、騎士団それぞれに担当王族がついているようだ。そこに貴族もついていて、派閥のようになっているんだとか。


 「そうか。団長というと、これら全てが其方の団員なのか?」

 「少々異なります。昔の名残で団長という名ではありますが、ここホーラードでは騎士団はそれぞれ〇〇隊という名称となっておりまして、騎士団というのは全体を指すひとつのみなのでございます」

 「なるほど、ではこちら側と、あちら側では所属の隊が異なるというわけじゃな?」

 「その通りでございます。こちら側が鷹鷲隊(おうしゅうたい)、あちらの奥で弓と槍の訓練をしておりますのが蜂隼隊(ほうしゅんたい)、向こうの盾と剣で型の訓練をしているのが犀角隊(さいかくたい)でございます。本日はこの3隊での訓練日でございますな」

 「ふむふむ、兵科が決まっておるのか?」

 「そういう訳ではございませんが、その傾向にあると言えましょう」

 「そうか、興味深いのじゃ」

 「光栄でございます」


 このふたりが笑みを浮かべて頷き合っているというのは、何やら悪だくみでもしていそうな図に見えなくもないのが何とも言えないね。


 しばらくして、訓練用のだろうか、胸当てと手袋とブーツ姿となったメルさんが走ってきた。


 俺は訓練させられちゃたまらないので、逃げることにしたが、テンちゃんは『集団戦の訓練が見たいのじゃ』だそうだ。意外な一面だね。

 まぁ俺たちが遅ければ追いかけて来れるだろうし、テンちゃんが騎士団の外にでたら感知できるから、迎えに来ればいい。


 そう遠くには行かないんだし、そんな説明をして頷いたテンちゃんを残し、俺とリンちゃんはそそくさと、案内の兵士さんに従って騎士団の正門から外にでた。


 ああメルさん?、迷ってたみたいだけど、残って訓練するみたいだったよ?


 だって俺と剣を振る訓練をしたところで、あそこの兵士さんたちに変な目で見られるだけじゃん。俺の剣の腕なんてあそこの兵士さんの誰よりも下手なんだから。






●○●○●○●






 そうして適当にうろちょろして、市場に行って目についたものを買ったり、大道芸人が何かやってるのを見たり、劇場の前を通って何やってるのかをチェックしたり、買い食いをしたりと、いわゆる王都観光をリンちゃんとふたりで満喫した。


 ここのところ無表情が多かったような印象があったリンちゃんはそんなのが嘘だったかのようにご機嫌で、始終にっこにこしてたよ。可愛い。よかった。


 「たまにはこういうのもいいですね♪」


 本当に楽しそうで俺もそんなリンちゃんを見てるだけで楽しい気分になれた。


 それから、王城近くまで戻ってきたんだけど…、テンちゃんがまだ騎士団の訓練場に居る。


 え?、まだ訓練してんの?


 行くと、剣と盾を構えた小集団、と言っていいのかわからないけど、ざっと数えたところ16名の集団が、でかい黒い犬12頭と対峙しているところだった。


- リンちゃん、あれって…。


 「…はぁ…、そうです。お姉さまの仕業です…」


 あれというのはその黒い犬だ。テンちゃんの魔力を感じる。というか繋がってる。

 ってかあれ犬なのか?、黒豹みたいなのも居るような…。


 広い訓練場の壁ぎりぎりのところを走っているひとたちもいる。

 彼らは体のどこかしらに黒い汚れがついていた。服はわかるけど、顔についてるのは何なんだ?


 そっちを見ている間に戦闘が始まったようだ。始めとかの合図は無いんだな。


 「とにかくお姉さまの所に行きましょう」


 くいくいと袖を引かれて言われたのに頷き、戦闘を横目で見ながら降りていく。

 途中にある壁の扉は出た時と同様、開放されていたので、走るひとたちが途切れたタイミングで通り抜け、テンちゃんとメルさん、そしてオルダインさんたちが立って囲んでいるテーブルに近寄った。


 「おかえりなのじゃ」


 にこっと楽しそうに言うテンちゃんにただいまと応えた。オルダインさんたちもこちらを見たので軽く会釈をしたら、皆さん揃って右手を胸に添え小さく頭を下げた。かっこいい。さすが上級騎士たちだ。

 いや上級とか知らないけど何となく。だってテーブル周りの人たちだけ甲冑着けてんだよ。メルさんも。黒くない甲冑だから、ちょっと違和感ある。


 「おかえりなさい、街はどうでした?」


 メルさんがいい笑顔だ。ちっさい甲冑姿で。


- あっはい、いや、その前に、


 俺は視線と手で示しながら問う。


- これは?


 「はい?、訓練ですよ?」


 そりゃそうだろうよ。

 と、俺が妙な表情をしたのがばれたのか、小さく笑われた。揶揄(からか)われたらしい。

 メルさんがそういう時は、機嫌が良い時だ。


 「ふふっ、テン様が興味を持たれまして、実戦が見てみたいと仰ったんですよ」


- それがあれですか…?


 「タケル殿、今は獣ですが、先程は人型(ひとがた)であったり、竜だったりしたのですぞ?」


 実に楽しそうに言うオルダインさん。

 人型はともかく竜って何だよ…。と、テンちゃんを見る。リンちゃんもジト目でテンちゃんを見た。


 「ふふ、面白かろ?、材料はこれなのじゃ」


 テンちゃんの横には木箱に山盛りになっている黒い物…、なんだこれ?

 そこからもテンちゃんの魔力を感じるんだが。


 「手で触るとなかなか取れないのじゃ」


- え?、なにこれ、炭…の粉?


 「調理場や風呂場の煙突に溜まっていた(すす)なのじゃ」

 「あー、それですぐに消滅しないんですね」

 「うむ」


 どゆこと?


 というわけでメルさんから説明を聞いた。


 最初は土にするか練習用カカシにするかという話だったらしい。

 ところがここを掘ったりして欲しくは無いとの事、それに練習用カカシを動かすというのは気味が悪いし、そもそも動くようにできていない。


 テンちゃんが作る仮初(かりそめ)の眷属というか仮眷属は、拡散したり光に当たると徐々に消えていくので、何か依り代があるといい。でも自分たちが普段見慣れている練習用カカシが動くのはやっぱりまずい。


 そこで、何か黒いものは無いかという事で、テンちゃんの目についたのが、ここから見える複数の煙突だったってわけ。


 で、影伝いにテンちゃんが魔力を()わして――この時点で相当数の兵士さんたちが座り込んだらしいが、テンちゃんとメルさんが回復魔法をかけて治したそうな――煙突内部や排気設備内部の煤を、用意してもらったこのでっかい木箱に集めてきたらしい。


 掃除もできて一石二鳥だね。


 その話をしているメルさんや、周囲のひとたちは皆さんすっごい苦笑いだった。

 テンちゃんは楽しそうだったけどね。あと、リンちゃんは肩を落として項垂(うなだ)れてた。呆れたんだろう。わかる。


 だってさ、それら煙突の上から黒い影が、実際の影を塗り潰す真っ黒なモノがだよ、じわじわとか不気味な音を立てながら煙突から出てきてこの場まで、影伝いに這ってきたんだってさ。


 どんなホラーだよ…。


 正体が煤だってわかってるからまだいい。そして光を全く反射しないから見た目の不気味さったら無かったらしい。


 つまりはこの山盛りの煤は、テンちゃんの魔力に染まった、超微細素材って事だ。

 テンちゃんと魔力的につながっている状態だと、自由に操れるみたい。


 すごいな、面白い。

 現在操作しているテンちゃんの魔力の編み方は複雑だけど真似ができないわけじゃないし、なんとか覚えられそうだ。覚えたら同調して俺も動かせそうだ。

 でも起動術式とかがわからないな。


 あとでテンちゃんに聞いたら、俺が水球の形を変えて動かしていたのを参考にしたらしい。それで昔、眷属を作る研究をしていた頃の事を思い出して、手を加えた術式なんだってさ。へー。


 それと、テンちゃんの魔力に触れて大丈夫なのかなとも疑問だったんだけど、それも煤のおかげで緩和されているんだとか。

 例に挙げると、テンちゃんのスカートのポケットにまだ入ったままのクロマル(ゼロ)さんの依り代ね、あれ他の人が触れても何ともないらしいよ。

 リンちゃんがぼそっと『でも魔力に敏感な者なら不気味な物体だと思うでしょうね』だそうだ。不気味かー、わからんでも無いね。


 それで、緩和程度であっても力が抜けるような消耗を感じるらしい。ところが攻撃を受けたというイメージもあり、痛みはほぼ無いが、攻撃を受けたんだからダメージがあるのは当然、というやや強引とも言える論理でもって、受け入れられたんだそうだ。


 うまいことごまかしたもんだ。






 そんな説明を聞いている間にも、戦っている兵士さんたちと黒い獣たちの戦況は変化している。

 ぶった切られた黒獣は形が崩れて地を這い、また箱に戻ってきていて、攻撃を受けた兵士さんは戦列から離脱し、装備を置いて外周を走り始めた。


 その攻撃判定が、黒いアザか…、なるほど。


 どうやら見ていると、盾や剣以外、あ、パンチキックなどもOKなのか、触れた箇所に必ず黒い跡が付着するのではなく、黒獣が攻撃をして、それを装備以外で受けてしまった場合にのみ、付着しているようだ。


 走り終えたひとが、テンちゃんのところにきて『ありがとうございます!』と敬礼すると、テンちゃんが『うむ』と言い、彼のアザが箱に戻された。

 あ、回復魔法までかけてあげてるじゃないか。サービスいいな、テンちゃん。

 それだけご機嫌だという事か。


- で?、何でこうなったの?


 「小集団戦闘が詰まらなかったのじゃ」


 …は?


 「あ、あの、型の稽古だったのです。個ではなく、集団としてどう動きどうあるべきかという訓練なのです」

 「座学で覚えるだけでは身に付きませんからなぁ」


 メルさんとオルダインさんが補足してくれた。なるほど。


 「だったら実践にしてやればおも、覚えるのじゃ」


 いま面白くなると言いかけたろ…。

 何その、見ていてつまらんから面白くしてやったみたいな。


 「しかし実際これは良い訓練なのですよ?、タケル様。危険はありませんし」

 「ですなぁ、少々手応えに不満はありますが、やり甲斐がありますな」

 「実剣が使えるのがいいですね」

 「黒甲冑は使えませんが、訓練用甲冑なら問題ありませんからね」


 楽しそうに口々に言う幹部たち。それで甲冑着用なのか。

 オルダインさんだけ方向性が違うような気もするが。


 「ふむ、オルダインよ、ならもう一度やっても良いのじゃ」

 「おお、お願いできますかな?」

 「良いぞ、そろそろそちらも終わるのじゃ」


 テンちゃんに釣られて見ると、ちょうど黒獣の最後の1頭が剣に切られるところだった。

 残った兵士さんは3人。きっちり形が崩れて地面を伝って戻ってくる黒い影(煤)を見送ってから、肩などを叩き合ってお互いを(たた)え、喜んでいた。


 「ふふん、腕が鳴りますわい」

 「団長、少し手加減して下さいね?」

 「いや、次のは前のようには行かぬのじゃ。密度も強さも段違いにするのじゃ」

 「おお、楽しみですな!」


 喜んでるのはオルダインさんだけなんだけど、それはいいのか?


- あれ?、メルさんは行かないんですか?


 「私は個人戦なんですよ、これを使いますので」


 と、テーブルに立てかけてある『サンダースピア(見慣れた槍)』を手にするメルさん。

 そのやる気に槍が応えたのか魔力を纏い、電磁波が発せられたが、カバーもちゃんとつけてあるので先端から放電はしなかった。

 そのうちそのカバー、黒焦げになるんじゃないか?


- なるほど…。


 「メルもやる気なのか?、其方の相手は加減と保護が面倒なのじゃが…」

 「そんな、お願いしますよテン様ぁ」


 槍を元のように立てかけてから、テンちゃんに縋るように迫ってお願いをするメルさんの勢いに、さすがのテンちゃんも半歩下がってる。


 「まぁ待つのじゃ、こちらはこちらで集中せねばあっという間に負けてしまうのじゃ」

 「はい…」






 「おお、今度は人型ですかな」

 「大きくないですか?、あれ」


 オルダインさんを先頭に並ぶ騎士たちの前に複数体現れたのは、元の世界のゲームに出てくるトロルやオーガといったような、普通の人間の倍以上ある大型の魔物だった。


 「大昔にはあのような魔物も居たのじゃ」


 へー…、それっていつの話なんだろうね。


 それにしてもでかい。横幅もあるから余計に大きく感じる。煤でできてるからか、全身真っ黒で、光の反射がないせいか遠近感がおかしくなる。

 俺は魔力感知で距離も感じ取れるし目でも見えているので何とかなるけど、視覚だけだと距離がわからないんじゃないか?、これ。


 「大丈夫ですよ、彼らだって一廉(ひとかど)の騎士です。目だけを頼りに戦うのではありませんから」


 ふんすと鼻息荒くして言うメルさんに少々引き気味な気分で『そうですか…』と答えておく。


 そのトロルっぽいのはでっかい棍棒を手にしていて、鬼のような2本角があるオーガっぽいものは剣のようなものを手にしている。ん?、その後ろの牛角みたいなのが生えてるやつはでっかい両刃斧を手にしてるな。まるでミノタウロスのようなイメージだ。真っ黒だけど。


 どうでもいいが、この世界にはギリシャ神話なんて無いからミノタウロスなんて名称じゃないだろうね。

 さらにどうでもいいが、魔物が持ってる武器って、一体誰が作ったんだろうね?

 そんな技術力があるなら他に…、ってそんな事を考えている間に始まった。やっぱり『始め!』とかの合図って無いのね。






 始まりはしたが、お互いに飛び掛かるような事は無く、地味な始まりだった。


 互いに間合いを測るようにじりじりと…、そのうち動きが出た。

 両サイドのトロルっぽいのが棍棒を、片方は叩きつけるように振り下ろし、もう片方はバックハンドで左から薙ぎ払うように攻撃をした。


 叩きつけた側は、隊列がさっと開いて盾を構えながらきれいに避けている。

 薙ぎ払いの側はさっと並んだ全員がぐぐっと踏ん張って盾で受け止めていた。


 どちらもものっそい(物凄い)音がした。地響きもある。


 こちらのテーブルの両側後方で待機中の兵士さんたちから歓声というか『おお…』と声が上がったかと思ったら湧き出した。

 じっと固唾を飲んで見ているひとも居れば、興奮気味に拳を振り上げて声援を飛ばしているひとも居る。熱狂だな、すごいうるさい。仕方ないんだけど。


 隣の戦闘民からも何やら妙な熱気が伝わってくる。というか魔力が伝わってくる。

 叫んだりはしていないが、両拳を握っていてめっちゃ力が入っているのがわかる。魔力が籠ってるし…。


 その手で叩かれたり殴られたりしたら無事には済まなそうなので少し離れよう。


 戦闘の方は、いつの間にか叩きつけた側のトロルっぽいのが居ない。

 いつの間にかって事はないな、さっき叩きつけた棍棒に乗って走り、それを持ち上げた瞬間にジャンプして襲い掛かったオルダインさんと、それに追随してたひとが腕をぶった切ってたよ。


 なんだそりゃ、どんな超人だよ…。って思ったね!


 そしてトロルっぽいものの後ろにいたオーガの剣をオルダインさんが剣で受け流し、その隙に後ろからきたひとが斬りかかろうとしたが、ミノタウロスっぽいやつが斧を斜めに振り下ろしたので中断、斜め後ろにステップして避けたところ。


 と説明している間に薙ぎ払い側のトロルっぽいのも居なくなってた。


 いいとこ無いな、トロルっぽいやつたち。


 中央にいたトロルっぽいやつも既に居ないんだけど、魔力感知してたはずが正直よくわからないタイミングで掻き消えていた。その犯人は最初に動きが始まった時に、味方の後ろを素早く移動して、中央のやつの足をぶった切り、薙ぎ払って姿勢が前屈みだったやつの首を蹴って三角跳びの要領でそのまま中央のにとどめを刺したっぽい。

 首をいいタイミングで蹴られたのはそれで隙ができてしまい、盾で受け止めたひとたちが寄ってたかってあちこち斬りつけて終わり。


 ええー…?


 何この超人集団。


 盾のひとたちぴょんこぴょんこ飛び掛かってたんだけど…。


 テンちゃんを見るとまだ余裕が…、あるのかな、どうだろう?


 テンちゃんから複数の魔力線が地面を伝って黒魔物たちに繋がっているのがわかる。

 黒魔物が地面から飛び上がっても、その影には複数の魔力線が見えた。


 1本じゃないってところがまたすごいね。


 と言うのも、前列のトロルっぽいのが居なくなったからか、両側のオーガっぽいのと中央のミノタウロスっぽいのが武器を振るいやすくなったわけだ。

 それでオルダインさんと戦ってない方、盾のひとたちが多い方ね、掻き消えたトロルっぽかったやつにとりついてた人たちが落下して態勢を整える前にジャンプして攻撃を仕掛けたわけ。


 その時に魔力線を見たんだけどね。


 何人かが間に合わずにもろに攻撃を食らって、全身真っ黒になって退場した。


 こっちの方に退避してきて、楽しそうに『ひゃー』とか言って面頬を上げたときに、面の覗き穴というかスリットなどが空いてるわけだけど、その形が顔に黒く残ってた。

 互いに見てめっちゃ笑ってた。堪えたけど俺も笑った。

 メルさんは笑いながらも咳払いをひとつして、それで『おっと』ってその騎士さんたちは声を上げて笑うのを止め、装備を置き、でも甲冑のままがちゃがちゃと外周を走り始めた。


 置いた装備からべっとり染まっていた黒い色が地を這って箱に戻って行くのはやっぱりホラーだと思う。


 そうしている間にもまた2人やられて退避してきた。


 ひとりは体に横一文字に黒く太い線が残っていて、もうひとりは肩から胸まで黒い線が斜めに入っていた。


 なるほど、どうやられたかが残るってわけか。

 考えようによっては面白い。


 「いやー、油断しました、ははは」


 と言って戻ってきたのはさっき三角跳びをしたひとだったと思う。

 体の右側が真っ黒になってた。横から殴られたらしい。一応魔力感知で見てた。


 「前に出過ぎだったな、ベルガー。あれでは狙われても仕方ないぞ」

 「面目ありません。では走ってきます」

 「ああ」


 メルさんは騎士さんたちにはこういう話し方をするんだったね。

 ベルガーって名前になんか聞き覚えがあると思ったら、鷹鷲隊(おうしゅうたい)の隊長さんじゃなかったっけ?


 そして左側のオーガっぽいのがオルダインさんに懐へと潜り込まれて消滅、ミノタウロスっぽいのと右側のオーガっぽいのを凌いでいたひとたちも、2人欠け、3人目が欠けたところだ。

 残るはオルダインさん他7名。半分になったってわけだ。


 黒いほうは、ん?、オーガっぽいやつが左手に剣を持ってるな、右手が無い。

 あ、よく見たら棍棒や剣は消えずに残ってるのか…。


 しかしミノタウロスっぽいのの斧、すんごいサイズだな。

 さすがにあれは受け止められないからか、皆さん必死で避けている。


 後ろに回り込もうとしてもオーガっぽいやつが牽制しているようだ。

 ああして連携をとるように片方が護りに入ると難易度も上がるんだろう。


 オルダインさんは…、ああ、落ちている剣を拾われないようにあの位置なのか。


 じゃなかった。


 持ち上げて投げたぞあの爺さん。とんでもないな。


 それをミノっぽが斧で防ぎ、一瞬で詰め寄ったオルダインさんが斬りつけた。

 しかしミノっぽはその図体にも関わらず身軽にジャンプしてかわし、斜め後ろにいたオーガっぽが攻撃が外れたオルダインさんに攻撃を、あ、ヤバくね?


 と思ったら攻撃があたる寸前にオーガっぽに横から斬撃が入った。

 それで攻撃が少し逸れたおかげでオルダインさんは態勢を崩しながらも転がって回避。

 オーガっぽの身体が消えて剣がすっ飛んで行く。


 それに巻き込まれてひとり脱落。


 ジャンプで避けたミノっぽが、オーガっぽに攻撃を加えたひとを上からぶった切った。

 あ、空中でオルダインさんがさっき投げた剣を掴んだのか…、なんて器用な。


 と同時に、すっ飛んだ剣を避けたひとのうちひとりに斧を振り下ろしてまたひとり脱落。いや、2人脱落だ。避け方がまずかったんだろう、重なってたんだ。


 両手それぞれの武器を振り下ろした直後が隙だと思ったのか、正面から頭部目掛けて攻撃をしようとした2人が、横から剣で薙ぎ払われた。もちろん脱落だ。


 これで残るはオルダインさんともうひとりだけだ。


 そのオルダインさんは薙ぎ払い攻撃の直後にすごい速さで突進して斬りに行ったが、ミノっぽは斧で防御しつつそのまま体を回転するようにして剣で彼を追う。


 しかし残っているひとりが攻撃しようとしたのを見てか、斜めにジャンプして回避、仕切り直しとなった。


 黒いのはミノっぽのみ。でもでかい両刃斧とでかい剣をそれぞれの手に持っている。


 オルダインさんは斧の側に、もうひとりは剣の側に、じりじりと挟み込む位置へと移動している。

 ミノっぽは両手それぞれを構えたままだ。


 さっきのようにジャンプして下がるなどで視野に収めるものだと思うんだけど、どうなのかな?


 オルダインさんが盾をブーメランのように回転させて投げつけたのを、斧を少し動かして弾き落とした。

 そこに走りこんできた騎士さんに対応しようと剣を動かすミノっぽ。


 と思ったらそれはフェイントだったようで、軽いステップで下がったと思ったら一瞬でオルダインさんに詰め寄り斧を斜めに振り下ろした。


 回避するオルダインさん。

 そこに畳みかけるように鋭い剣速でミノっぽが、あ、斧から手を離したのか、剣を送る。

 回避中でも態勢は崩れていなかったのか、剣を受け流すがその瞬間にミノっぽから繰り出される張り手。

 ミノっぽの指は斬られたがオルダインさんは退場判定なんだろう、ぺいっと横に払うように放り出されて転がった彼は、全身真っ黒になっていた。


 後ろから追って攻撃をしようとした騎士さんも、直線的な動きが災いしたのか、両手を地面につき、体を捻ってアクロバティックというかカポエラみたいな動きをしたミノっぽに蹴られて退場。


 足首に剣が刺さっていたが、ミノっぽは健在。よって騎士側の敗北となった。


 しかしなんちゅう戦闘だよ…。


 「いやぁ、参りました。テン様。わっはっは」


 真っ黒な顔で豪快に笑うオルダインさん。白髪頭も真っ黒だ。


 蹴られて吹っ飛んでいた騎士さんも駆け寄ってきて、『素晴らしい動きでした』と快活に笑っている。こちらも全身真っ黒だ。


 「うむ。其方らもなかなかの戦いぶりであったのじゃ」

 「光栄でございます」

 「ありがとうございます。では団長」

 「おお」


 と言って走り始めた。

 最初に脱落したひともまだ走り続けているところを見ると、早く脱落した分、長く走るって事なんだろうね。






 「ん?、どうしたのじゃタケル様よ」


- え?、いや、楽しそうだからいいかなって。


 「うむ、久しぶりなのじゃ」


 とにっこり微笑んで言い、俺の右腕に腕を絡ませてぴったりくっついてきた。むにゅーっと。

 でも今回はまぁいいか。リンちゃんも何も言わずに左後ろに立ってるし。無表情だけど。


 騎士さんたちや待機中の兵士さんたちは、テンちゃんの胸よりも戦いの方に夢中なようで、さっきの戦いを見た興奮が未だ醒めやらぬ様子、あーだこーだと数人ずつが議論したり賛美をしたりと忙しそうだし。


 ついでに隣の戦闘民王女も鼻息が荒い。


 「タケル様もいかがですか?、見てみたいのですが…」


 と、目をきらっきらさせてテンちゃんを見た。

 俺はできれば遠慮したいなぁ…。魔法ありならどうとでもできるけど。

 魔法での直接攻撃無しとか条件つけられたら逃げるね。


 「タケル様だと話にならないのじゃ」


 俺もそう思う。


 「やはり魔法が強力だからでしょうか?」

 「それもあるが、一瞬であれらを構成している魔法が解除されてしまうか、(われ)とのつながりを切られるか、制御を奪われてしまうのじゃ」


 あー、そういう手もあるか。


 「それはさすがに…」


 ズルい手ではあるよね。論外とか思ってそうだけど。


 「仮にそれを禁じたとして、タケル様よ、其方ならどう戦うのじゃ?」


- んー、まぁ雷落として光線でぶった切りますか。


 「ほらの、こんなものあれらでは相手にならないのじゃ」

 「なるほど…」


 こんなものとか言われちゃったよ。


 「他にも、空高く上がられてしまってはこちらからは手出しができなくなるのじゃ」

 「そうですね…」

 「タケル様はせぬと思うが、地面に大穴を開けられたり大水で押し流されたりも考えられよう。あれらは魔法で構築されておるが、あくまで質量で物理攻撃なのじゃ。タケル様にはどうやっても歯が立たないのじゃ」

 「そうですね…、まさか魔法禁止にするわけにも行きませんし…」


 それをされたらこの場で俺が一番弱い自信あるよ?


- まぁまぁ、それで、さっき言ってた加減と保護って?


 「ああ、1度目はメルが遠慮のうぶっ放しおっての、直すのを手伝ったがあそこの壁が粉々になったのじゃ」


 よく見るとテンちゃんが指さしたあたりの壁、土魔法の魔力がかなり残留していた。

 テンちゃんが手伝ったみたいだけど、残留魔力はメルさんのもののようだ。

 リンちゃんも目を眇めて見ていたが、何も言わなかった。


- 1度目はってことは2度目も?


 「うむ、それで周囲に障壁を張る事にしたのじゃ」


 なるほど…。と頷いた。


 「なのに此奴(こやつ)はそれをいい事に本気でぶっ放しおったのじゃ…」

 「まさか避けられるとは思いませんでした」

 「避けても(われ)の障壁で受け、逸らしておるのじゃから手間は変わらないのじゃ」


- 障壁は無事だったの?


 メルさんの本気の『サンダースピア』での攻撃を耐えるってめちゃくちゃすごいぞ?


 「障壁を別に用意して上に逸らしたのじゃ」


 なるほど、そうしないとまた訓練場が壊れたって事ね。


 「そうせねばあの者らが無事では済まなかったのじゃ…」


 え…?


 テンちゃんがくいくいと親指で示したほうには、まだ熱いままの兵士さんたち。


 ぶっ放す方向を考えて無かったのか、メルさん…。

 とは言わないけど、見ると、びくっとして小さくなった、ように見えた。


 「あ、あの時はつい、集中してしまったので…」

 「まぁ(われ)が居る以上はそう心配も要らぬのじゃ」

 「ありがとうございます、テン様」


 さっき壁が壊れたとか言ってなかったっけ?

 まぁいいんだけどさ。


- それで、この様子だとまだ続けるの?


 「うむ、もう少しやらねばあの者らが落ち着くまい?」


 なるほど。


- んじゃ僕らは部屋に戻ってるね。


 「何じゃ、見て行かぬのか?、見に来たのでは無かったのか?」


 腕を抱えて揺らさないで。むにゅむにゅだよ。素晴らしいけど顔に出さないようにしないと。


- まだここに居るみたいだったから様子を見に来ただけなんだよ。


 ミントみたいな香りがする薬草が売られてたのを大量に買ってきたからね。


 「むぅ、では早めに切り上げ――」

 「そんな、テン様っ!」

 「な、何じゃ、あっ」

 「あれ…?」


 急いで駆け寄った、といっても1歩だけど、リンちゃんが急いでメルさんを引っ張った。


 「お姉さまに触れてはなりませんよ、メルさん」

 「はい、失礼致しました、テン様。ありがとうございます、リン様」


 ああ、テンちゃんに触れたら体内魔力のバランスが崩れるわけか。

 こっそりリンちゃんが小声で『理由はまた後程説明します』って囁いている。


 ちょっと寂しそうな表情を一瞬して俺の腕をむぎゅーっと抱きしめたテンちゃんの頭を撫でておこう。






次話5-013は2022年05月13日(金)の予定です。


20220513:衍字訂正。 ミノっぽにから繰り出される ⇒ ミノっぽから繰り出される



●今回の登場人物・固有名詞


 お風呂:

   なぜか本作品によく登場する。

   今回も入浴シーン無し。ここんとこ無いですね…。


 タケル:

   本編の主人公。12人の勇者のひとり。

   戦闘の方向性が全然違いますからねー。


 リンちゃん:

   光の精霊。

   リーノムルクシア=ルミノ#&%$。

   アリシアの娘。タケルに仕えている。

   デートして満足でした。


 テンちゃん:

   闇の精霊。

   テーネブリシア=ヌールム#&%$。

   後ろの部分は精霊語のため聞き取れない。

   リンの姉。年の差がものっそい。

   ヌル様と言われる事もある。

   基本的に、タケルの横に寄り添っていれば穏やかなんです。

   光の精霊と名乗るのは、デフォです。

   意外な一面でしたね。


 ファーさん:

   ゼファーリィ=ヴェントス#$%&。

   風の精霊。

   有能でポンコツという稀有な素材。

   風の精霊の里では高位の存在なんですよ、これでも。

   尊敬の対象なんですよ、これでも。

   つまりタケルに縁のない芸事に堪能という…。

   生かされない不遇な配置という事に。

   今回出番無し。


 ウィノアさん:

   水の精霊。

   ウィノア=アクア#$%&。後ろの部分は精霊語。

   一にして全、全にして一、という特殊な存在。

   タケルの首飾りに分体が宿っている。

   今回は出番無し。


 アリシアさん:

   光の精霊の長。

   全精霊中最古というような存在。実は凄い精霊(ひと)

   だいたい名前くらいしか登場しませんが一応。


 モモさん:

   光の精霊。

   『森の家』を管理する4人のひとり。

   食品部門全体の統括をしている。

   今回も出番無し。そろそろ戻った頃。


 ハルトさん:

   12人の勇者のひとり。現在最古参。

   勇者番号9番。オオミヤ=ハルト。

   ハムラーデル王国所属。

   およそ100年前にこの世界に転移してきた。

   『フレイムソード』という物騒な剣の所持者。

   今回出番無し。


 カエデさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号10番。シノハラ=カエデ。

   勇者歴30年だが、気持ちが若い。

   でも言動はタケルからするとちょっと古臭い。

   今回出番無し。


 ジローさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号3番。イノグチ=ジロウ。

   ハムラーデル王国所属。

   砂漠の塔に派遣されて長い。

   2章でちらっと2度ほど名前があがり、

   次に名前が出てくるのが4章030話でした。

   今回出番無し。


 クリスさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号5番。クリス=スミノフ。

   現存する勇者たちの中で、4番目に古参。

   現在快復ターン中。

   今回出番無し。


 シオリさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号7番。クリバヤシ=シオリ。

   現存する勇者たちの中で、2番目に古参。

   『裁きの杖(ジャッジメントケーン)』という物騒な杖の使い手。

   現在はロスタニア所属。

   勇者姫シリーズと言えばこのひと。カエデは大ファン。

   今回出番無し。


 サクラさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号1番。トオヤマ=サクラ。

   ティルラ王国所属。

   勇者としての先輩であるシオリに、

   いろいろ教わったので、一種の師弟関係にある。

   勇者としての任務の延長で、

   元魔物侵略地域、現バルカル合同開拓地に居ます。

   今回出番無し。


 ホーラード王国:

   勇者の宿がある、1章からの舞台。

   名称が出たのは2章から。

   2章の冒頭に説明がある。


 メル:

   ホーラード王国第二王女。

   2章から登場した。


 ホーラード王家の面々:

   王と王妃、それと末弟の名前は今回初登場。

   王妃、姉、妹、弟の発言も初登場。

   それぞれの存在は2章で示唆されていた。はず。

   姉と妹には婚約者が存在する。

   以下、メルから見た関係と少し紹介を。


 ソーレス:

   メルの父。ホーラード王。温厚な性格。

   平凡だが穏当で良い治世をすると評判は上々。


 ルティオネラ:

   メルの母。ホーラード王妃。

   5人の母で、それも既に成人済みの子が2人いるとは思えない程、

   やや細身。国内の美容関係のトップに君臨する。

   だがそれは当人ではなく、配下に付いているものたちのせい。

   持ち上げられるのもお役目と割り切っており、性格はさっぱり系。

   愛称はルティ。


 ウィラード:

   メルの兄。ホーラード王太子。既に立太子の儀は終えている。

   民の信頼篤く、これも良い治世をするだろうと期待されている。

   婚約者候補が多いが、まだ決まっていないのが欠点。

   愛称はウィル。


 ストラーデ:

   メルの姉。第一王女。隣国ティルラに婚約者が居る。

   相手はティルラ王国王太子ハルパス。将来的にはティルラ王妃となる。

   演劇や歴史に戯曲、フィクションなどに幼少の頃より興味があり、

   いまやホーラード国内のみならずティルラなどの隣国の、

   芸能関係に幅広く影響を齎す存在。

   絵姿が最も多く売れているのは、その均整の取れたスタイルのため。

   愛称はスティ。


 リステティール:

   メルの妹。第三王女。1年違い。

   婚約者が居るとは当人の弁。実際は婚約者候補だが、

   周囲もそのうち確定するだろうと温かく見守っている状況。

   宝飾品や工芸品に興味を持ち、そのため高価なものを蒐集するのが

   父王と兄たちの悩みの種。

   メルに対抗心がある。

   ストラーデと同様にスタイルがよく、年の割に大きめの胸が自慢。

   愛称はテティ。


 アイネリーノ:

   メルの弟。第二王子。4つ違い。

   母親似で女の子かと思われるくらい線の細い、愛らしい顔つきで、

   城内の女官たちの人気を一身に集めている。

   当人は草花が好きな極めて大人しい性格。

   わがまま傾向があるリステティールからは溺愛されていて、

   よく一緒にいる。というか付きまとわれている。

   メルリアーヴェルについては崇拝の対象であり、英雄視もしており、

   近寄るのも話しかけるのも畏れ多いなんて思っていたりする。

   メルからするとそれが懐かれていない、

   嫌われているのではないかと心配になる原因でもある。

   愛称はアイン。


 オルダインさん:

   ホーラード王国の騎士と兵士の頂点である騎士団長。

   団長という名称の理由が今回出ましたね。

   メルリアーヴェル姫の剣の師匠でもあります。

   もちろん達人級。

   全盛期の頃より多少衰えはあるにせよ、それでもすごい爺さんです。


 ベルガーさん:

   ホーラード王国の鷹鷲隊(おうしゅうたい)の隊長。

   数ある騎士隊の中で、鷹鷲隊(おうしゅうたい)は一番有名。

   王国民の尊敬と信頼を集めています。

   この超人ですら、達人級には1歩及ばずなのです。



 ※ 作者補足

   この登場人物・固有名詞紹介の部分全ては、

   あとがきの欄に記入しています。

   本文の文字数にはカウントされていません。

   あと、作者のコメント的な紹介があったり、

   手抜きをしたり、詳細に書かれているけど本文には

   無関係だったりすることもあります。

   ご注意ください。


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2019年05月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
なるほど。わかりません。
2020年01月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
同じやん。なるほど。やっぱりわかりません。
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