5ー008 ~ ウィンディの成長・ハムラーデルの勇者たち
何度か口を漱ぎ、コップや器を軽く洗った。
ウィノアさんから何か言われるかな?、と思ったが、特に何も言われなかった。
まぁ汚水やら汚れが流されるのは普通の事だから、それについていちいち文句を言うことは無いんだろう。
リビングに戻ると、リンちゃんがどこからかの連絡を受けていたようだ。
「タケルさま、『森の家』に戻るのは明日ですよね?」
- うん、その予定。って言って無かったっけ?
「聞いてましたけど、こちらでは今日の夕食は予定されてないんだそうで、それでタケルさまが今日出立される予定なのかどうかを先程尋ねられたんです」
- …え?
夕食が無いからって予定を早めて帰るかも知れないってこと?
俺そんなに食い意地が張ってるわけでも、そんな事で怒って帰るなんて狭量じゃ無いつもりなんだけど…。
と、俺が妙な表情をしたのを汲んだのか、リンちゃんが慌てて続けた。
「あ、最高級品をあれだけ口にしますと、夕食を食べる気がわかないのが普通なのと、試食でそこそこの量を食べていますので夕食は摂らないものなんです」
- あ、うん。
それはわかる。
ここに戻ってすぐに考えた通り、夕食と聞いても食欲が湧いてこない。
腹がぐぅと鳴っても、飲み物ですら物足りないんだから、食べようという気にならないし、おそらく食べても美味しく感じられないだろう。
「それでですね、帰るまでに会って欲しい者がいるとの事で、ファーが連れて来るんだそうです」
- え…?、あ、もしかしてウィンディ?
「たぶんそうだと思います。連絡を下さったのはドリーチェ様で、タケルさまがその者と会っている間、お姉さまと話すお時間が欲しいとの事でした」
- なるほど。
と返事をしてテンちゃんを見る。
「なに、大した話をするわけでは無いのじゃ」
「そうですね、お姉さまは昨晩もドリーチェ様とお会いしてましたから」
「む、知っておったのか」
「すぐそこのテラスで会っていてどうして知らないと思えるんです?」
「それもそうか…」
俺は全然気づかなかったよ…?
「タケルさま、ドリーチェ様が昔お姉さまの付き人をしていたのはご存じでしょう?、こうしてお姉さまが外にでられているので、心配されているんだと思いますよ」
- ああ、うん。
「心配など要らぬと言うておるのに、仕方のないやつなのじゃ」
口ではそう言っているが、優しい表情をしていた。
「今日のようにおとなしくしていて下さるなら、ドリーチェ様の心配も要りませんね」
「む、昨日の事はもう良いではないか、マ、アリシア様から言われ、あの者からも言われ、少々堪えたのじゃ…」
がくっと肩を落とすテンちゃん。
アリシアさんから言われてたときは、まぁ小さくはなってたけど、それほどでは無かったように思ったけど…。
「あのドリーチェ様が涙ながらに小言を言うんですから、そりゃあ堪えるでしょうね…」
「う…、思い出させるで無いのじゃ…」
なるほど…、それは堪えそうだ。
でも昨日の件は、テンちゃんもまぁ少しは軽率だったかも知れないけど、ほぼウィノア分体が挑発したのが悪いと思うよ。
「それにしても其方、よく知っておるのじゃ。覗き見しておったのか?」
「すぐ外の席ですよ?、起きてここに居れば聞こえますよ…」
「それもそうか…」
「聞いていたあたしですら居た堪れませんでしたからね…?」
「う、もう良いではないか、わかったと言っておろう」
どんな話だったのかと思ったけど、そういう事なら、俺は気付かずに済んで良かったような…。
まぁドリーチェさんも俺にまで聞かれたくは無いだろうしなぁ…。
だって、今回ここに来るときに転移場で見た彼女は、何ていうか凛としたって言えばいいかな、姿勢が良くて軍服っぽい衣装が似合う、きりっとした女性だったからね。あまりにもイメージ的に合わないじゃないか、そんなのとはさ。
- あ、それでリンちゃん、ファーさんはいつ来るって?
「あ、日没後少し余裕を持ってからって言ってました」
- 日没後って、んじゃそろそろ?
「はい、品評会が日没で当日分終了なんです。その後しばらくしてからだと思いますよ」
じゃあ風呂は寝る前にするか…。
●○●○●○●
以前のようにしゅばーっと飛んでくるのかと思ったら、空飛ぶ馬車で飛んで来た。
というのも、先にアリシアさんたちが戻ってきたからで、リンちゃんに『明日帰るんですから』と言われ、外に出て挨拶をしたからだ。
アリシアさんたちが馬車から降りてきてコテージのテラスからぞろぞろ入ってくる時に、それを並んで出迎えたというわけ。モモさんも一緒に戻ってきて、俺たちの後ろに立った。モモさんはまだ残る予定だからね。
それでまぁ既に知ってる事だけど、『明日帰ります』と言うと、『また里の方に遊びに来て下さいね』と軽い挨拶をしただけで、ドリーチェさんを残して、隣のコテージに入って行った。
俺たちはそのまま、テラスに並んでいるテーブル席でお茶をして待ってたんだけど、1杯どころか半分も飲まないうちに空飛ぶ馬車がやってきた。
ウィンディちゃんかー、あれからそんなに日数が経ったようには思えないので、また飛び付いてくるのかなって思ってたんだけど、そうじゃなく、それどころか幼児の姿じゃなくてリンちゃんより見かけがやや幼いかな、というぐらいになっていた。
髪の色などは前に見た仮実体のままだったので、『誰?』なんて思うような事は無かったが、腰を布のベルトで絞った、薄い山吹色のふわっとした雰囲気漂うワンピースが良く似合っていた。
「タケル様、ウィンディをお連れしました」
ファーさんが事務的にだが笑顔で言い、ウィンディの背中にそっと手で合図をしたので、小さく頷いてウィンディを見た。
「タケル様、テン様、リン様、お忙しいところお時間を取って下さってありがとうございます」
ふわりとスカートを両手で少し広げて頭を下げた。
- 久しぶり。元気そうで良かったよ。
「はい!」
にっこり笑みを浮かべて返事をするウィンディ。
「うむ。ではドリーチェよ、向こうで話すのじゃ」
「はい、テーネブリシア様」
テンちゃんたちは隣のコテージ前のテーブルに移動した。
気を遣ってくれたんだろうね。
それから、なんだか久しぶりに見た親戚の子、みたいに成長したウィンディを向かいに、テーブル席でいろいろな話をした。
どうやらウィンディはこの近くの町ではなく、以前ちらっと聞いた、ファーさんが担当していた風の神殿近くの村で過ごしているらしい。正確には、ファーさんが担当していた風の神殿のひとつに、だな。
そこで儀式をして受肉を果たし、すくすく成長して今の姿なんだと。いやちょっと早すぎな気もするが、ファーさんが言うには、剣に宿っていた期間が結構長いので、魔力的な成長度合いからすると、まだしばらくはこれぐらいの速度で育つんだそうだ。そしてある程度で見かけの成長が止まるんだと。
寿命とかどうなってんのかちょっと気になったが、そこらへんは聞きづらいので言わなかった。
だって目の前のファーさんなんて1500年以上だしさ…、その割には中身はアレだけど、でも仕事はできるらしい。見たこと無いので何とも言えないけどさ。
「タケル様にお仕えできるように頑張ります」
と、ウィンディが言うのにも優しく『ウィンディは優秀だと聞いていますよ』と言い、『はいファーお姉様』と答えるのにも笑顔で満足そうな笑みを浮かべていて、むしろファーさんのほうが『誰だコイツ』という違和感でいっぱいだった。
そう言えば前にピヨとミリィが『森の家』に来た時に、こんな雰囲気を醸し出してたっけ。あの時も誰だコイツと思ったもんだ。
精霊さんの事情みたいなもんがあるんだろうから、俺も余計な藪蛇はしたく無いし、温かい目でうんうんと頷くだけにしたけどね。
余計な事を考えたタイミングで、リンちゃんがちらっと俺を見たりしてたので、リンちゃんにはバレてたかも知れない。
テラスにはちゃんと街灯というか明かりが設置されているので、完全に夜になってしまっても明るく照らされているので問題は無いが、ウィンディとの話もそう長いものではなく、彼女の近況などを手短に聞いたぐらいで、あとは笑顔で手を振って別れた。
ファーさんがまた空飛ぶ馬車で送って行くんだそうだ。
と言っても、品評会の領域の外まで行ってから、ずびゅーんと飛んで行くらしい。
「開催期間中は緊急時以外、空飛ぶ馬車を利用する決まりになってるのですよ旦那様」
という事らしい。
それでリンちゃんは俺にやたら予定やら行き先やらを尋ねてたのか…。
まぁ、特に個別の品評会場というか展示会場というか、そういう所に行くつもりは無かったからね。というかそういう規則があるなら早めに言っておいて欲しかった。
もし何かで他所のエリアに行く気になってたら、さくっと飛んでってたよ…。
そういうわけで、俺とリンちゃんがコテージに入るタイミングに合わせてか、テンちゃんも戻ってきて、俺はのんびり風呂に入り、ウィノアさんのBGM付きマッサージを受けてから、リビングでだらだらし、眠りに就いた。
●○●○●○●
ハムラーデル王国王都アンデルスに戻った俺とカエデは、しばらくは王国軍騎士団の再編成を含めた書類仕事に忙殺されていたが、数日して緊急と題した会議に呼び出された。
ああ、もちろん呼び出されたのは俺だけだ。
その会議とは、また勇者と騎士団の派遣に関する事だった。
なかなかのんびりとはさせてくれないらしい。
そんな事を考えながら執務室に戻ると、書類仕事をしていたカエデが顔をあげた。
そのカエデはできた書類を立って待っていた兵士に、『これでお願いね』と言って手渡した。
何故か、という事も無いが、カエデの手伝いをする兵士には若い女性が多い。彼女もよく見かける何人かのうちのひとりだ。
いや、別に俺はそれを不満には思っていないぞ?、いないからな?
その彼女が敬礼をして返事をし、俺をちらっと見て目礼をしながら急ぎ足で後ろの扉から出て行くのを見送ってから、俺は手で支えたままだった扉を閉めた。
これでこの部屋には俺とカエデしか居ない、ちょうどいいタイミングだ。
- 戻ったぞ。
「…おかえりなさい。…会議で何か言われたんですか?」
俺が何か言うのを待っていたんだろう、顔色を窺うようにしてからひと呼吸あけて尋ねるカエデ。
表情はそうなのだが、座ったままぐーっと伸びをしながらだった。他に兵士などがいないので構わないが。
- ああ、それなんだがな…。
後頭部を掻きながら俺の机ではなく打ち合わせ用のテーブル席にどさっと座り、何と伝えたものかと少し考えてしまった。
というのも、今回はどちらも俺が出向くほうがいいと思えたからだ。
ひとつは、トルイザン連合王国からの依頼で、炎の洞窟から魔物が出てくる兆候が見られるので、協力を要請してきたのだ。
炎の洞窟とは3ヵ国あるトルイザン連合王国の東側、ゴーンザン王国の火山地帯にあるダンジョンの事で、定期的に熱風が吹き出すとても危険な洞窟の事だ。
本来であればトルイザン連合王国所属の勇者クリスが担当すべきものであるが、表向き彼はその当時行方不明とされており、代わりに連合王国中央部分のベルクザン王国所有の黒鎧か、または俺が、炎の洞窟から溢れた魔物の処理に協力してきた。
現在はホーラード王国にある『勇者の宿』を管理する勇者隊から、勇者クリスが帰還し復帰までの快復期間中であることが通達されており、行方不明では無くなっている。
それと共に、ベルクザン王国の黒鎧は何故か健在という話で、今回はその黒鎧との協力体制でと要請があったとの事。
確か、黒鎧は中身が勇者クリスであるというのが、以前、タケル殿たちとの話で判明していたはずだったのだが…、まさかそのような事情を会議で言うわけにも行かず、どういう絡繰りなのか判明しないまま首肯するしか無かった。
そちらも気になる話ではある。
もうひとつは、このハムラーデル王国南部にあるドラ砂漠にある塔への派遣だ。
砂漠と言っても乾燥地域という意味の砂漠であり、砂も多いが砂ばかりでは無い、荒野地域だ。
こちらには既に勇者ジローが騎士団と傭兵団を率いて派遣されている。
それが、魔物の出現回数が増えてきた事と、距離は短いが飛行する魔物が含まれるようになったという事で、前線を下げて対処しているらしく、それらに対処可能な武装と物資を運ぶついでに人員の補充や状況検分をしてくれないかという話なのだ。
「もしかして、ジローさんのとこですか?」
カエデも自席からコップを手に歩いてきて俺の向かいに座り、その中身が半分ほどのコップをコンと音を立てて置いてからテーブルに腕組みをするような感じで肘から先を置き、身を乗り出すようにして言った。
いい勘をしているわけでは無く、ここのところ書類仕事にそちら方面への支援物資の事があったが故の推測だろう。
- ああ、それもある。
砂漠というか荒野の民は、あまり褒められた事では無いが、余程の実力がないと女性が戦闘行為をする事について忌避感を持っている。
ジローもその考えに賛同している部分があり、ふたりが顔を合わせた当時はまだ、カエデはこの世界に来てまだ日が浅く、あまり戦闘が得意ではなかったため反りが良くないのだ。
「それも、ってことはもうひとつあるんですか」
- ああ、そうなんだ。それでどちらもカエデには不向きじゃないかと思ってな…。
「そんなこと言ったって、ハルトさんが2人居るわけじゃないんですから、どっちかはあたしが行かなくちゃいけないんでしょ?」
- そうなんだがな…、お前、ジローの所に行くか?
「うーん…、今なら勇者って認めてもらえそうではありますけど…、もうひとつってどこなんです?」
- 炎の洞窟、ゴーンザンの火山地帯だ。
「うげ…、あそこってあの暑いとこで洞窟の外に出てくるのを待つんですよね?、それもめちゃくちゃ熱い魔物でしょ?」
- ああ。
「前にハルトさんが行ったのって10年ぐらい前でしたっけ?」
- そうだな。
あの時は幸い、かどうかは知らないが、固まった溶岩を纏っただけの遅い魔物で助かった。普通の武具が効くという意味でだが。
喩え溶岩を纏ったような魔物であっても、それは熱いのは熱いが、俺には『フレイムソード』がある。熱に熱で対抗するわけではないが、一般の武具とは違い、熱には強い武器なのだ。
もし『フレイムソード』を所持していなかったなら、他の者たちと同じく武骨なハンマーを使う事になっていただろう。それでもどうにかなった程度の魔物だった。
「次も同じのが出てくるとは限らないんですよね…?」
- まぁ、そうだな。
「というか『フレイムソード』で熱いのに強い敵をどうやって倒すんです?」
- それは前に言っただろう?、魔物が熱攻撃をしてくる場合、普通の武具では耐えられないが、『フレイムソード』なら耐えられるし斬れる。寧ろクリスの『テンペストソード』の方が炎熱攻撃に対してどう対処するのか疑問だぞ?
「嵐の剣って言うぐらいなんだから雨でも降らすんじゃないんですか?」
- いや、あれは単純に風属性のみだ。水は出なかったはずだ。
「じゃあ、風で冷ますとか?」
- まてまて、今はどちらにお前を派遣すればいいかという話であってだな、
「はいはい、じゃあジローさんの方でいいですよ」
- お前、ジローとは合わなかったろう?、いいのか?
「だってあたしは特別な武器なんて持ってませんし、炎熱攻撃なんて逃げるしか無いですもん、魔法で水だしても、それこそ焼け石に水でしょ?」
上手いこと言ったつもりなんだろう、にやりと不敵に笑って言う。
そんなカエデに砂漠の塔の現況が書かれた資料を手渡しながら答える。
- そうだな…、タケル殿なら水魔法でどうにかしてしまいそうだが…。
「タケルさんには水の精霊様がついてますからね、そんなのと一緒にしないで下さいよー」
ぷーっと膨れたように態度をころっと変えて言うカエデに思わず微笑んでしまった。
こういう愛嬌のある仕草を自然にできるところが、兵士たちに人気がある理由なんだろうと思う。
- ああすまん。そのタケル殿に応援を頼めればいいんだがな…。
「もうタケルさんってホーラード所属になってるんでしょ?、だったらホーラード王国を通して支援要請すればもしかしたら来てくれるかも知れませんよ?」
ふむ…、一理ある。
- そうだな、一応そっちも依頼を出しておくか…。
「タケルさんが来てくれたらどっちもさくっと終わらせちゃいそうですけどねー」
ぺらぺらと資料をめくって目を通しながら軽い調子で言うカエデに、呆れを含めてやや咎めるように言っておく。
- むぅ…、あまり彼に頼り過ぎるのはどうかと思うがなぁ…。
「大先輩として?、ですか…?」
資料を見る手をとめ、探るような視線でいたずらっぽく聞いてくる。
言い難い事を、と思ったが、ここは素直に答えておこう。
- それもある。とても追いつけそうには無いとも思う。だが追い付こうとは思っているぞ?
「うん、でもタケルさんは近接戦闘がまるでダメらしいですから、魔法では追い付けなくてもいいんじゃないですか?」
ん?、この短期間でカエデは何か得たのだろうか…。
以前なら妙に気負っていたか、焦りのようなものが垣間見えたものだ。
- そうだな。待て、俺はまるでダメとまでは思ってないぞ?、一体誰に聞いたんだ?
「メルさんが言ってましたよ」
- メルさんと言うとあの姫騎士様か…。
「タケルさんの剣の師匠なんですってね」
- それで一緒に来ていたのか…。
「それと、メルさんの魔法の師匠がタケルさんって言ってましたよ?」
- そういう関係だったのか…。
なぜホーラードの王族がハムラーデル国境について来ていたのか不思議だったが、そういう事ならわからない話では無い。
「だってほら、メルさんが持ってたあの魔法の教本、じゃなくて教本でしたっけ?、あれはタケルさんと精霊様の指導をメモしたものが元になってるってメルさんが言ってましたから」
俺がいつも教本と濁って言うのを気にしていたようだ。
別にどちらでも伝わるので問題無いのだが。
ん…!?
- 何だと!?、精霊様のご指導だったのか!?
「わ、ちょっと落ち着いて下さいって、」
- あ、すまん。
急に立ちあがった俺を両手で抑えるような仕草をし、慌てるカエデに謝って座り直した。
「メルさんから聞いたんですけど、タケルさんは最初、リン様から魔法の基礎を教わってたみたいです。その後、精霊様もびっくりするぐらいめきめき上達しちゃったんですって」
- なるほどなぁ…。
「最初から素質みたいなのがあったんだろうって、メルさんもリン様も言ってました」
- ふむ…。
剣の素質の代わりに魔法の素質を得ていた、とするとありえない話では無いか…。
「でもタケルさんが言うには、勇者ってみんな魔法の素質があるんだから、鍛錬すれば追い付けるって言ってましたけどねー」
- それは無理があるだろう…。
「ですよねー」
いくら何でもあんな風に空を飛ぶなど、想像すらできんな。
「まぁタケルさんですから、あ、んじゃ先にジローさんの方に来るようにお願いしますね?」
- ん?、それはいいが…どうしてだ?
「だってほら、タケルさんがホーラードから来るなら、こっちの旧街道の砦にリン様の転移魔法で来れるじゃないですか」
- 転移魔法の仕組みは知らんが、そういうものなのか?
「なんか、転移石板を置いてあるって言ってましたよ?」
- そうなのか?
「うん、だから、砂漠の塔のほうが近いでしょ?、資料にも空を飛ぶ魔物がどうのって書いてますし、タケルさんなら対処しやすいと思います。すぐ終わらせてそっちに向かってもらった方がいいじゃ無いですか」
- 確かに彼なら飛べるし威力のある魔法も…、いや待て、両方ともタケル殿に対処してもらうつもりか?
「え?、そういう話じゃなかったんですか?」
- いやさすがにそこまで彼に依存するのはまずいだろう。
「んー、でも頼めば何とかしてくれそうな気、しません?」
- 言われてみればそう…、いやダメだぞ?、俺たちだって勇者なんだからな?、ホーラードにそんな風には言えんだろう。
「じゃあダメ元って事で」
- だめもと?
「ダメで元々の略ですよ」
- お、おう。
「要するにだ、簡単そうな方から支援要請をすればいいのだ」
- そんなところを真似せんでもいい。
「似てませんか?、結構ウケるんですよ、これ」
誰に、とは兵士たちにだろう。
しかし俺はそんなしかめっ面をして言った覚えは無いぞ?
- 知らん。
だいたい本人に向かってやるものでは無いだろうに。
「ふふっ」
全くこいつは…。
次話5-009は2022年04月08日(金)の予定です。
20220408:リンの発言内にあった余分な改行をひとつ削除。
20220408:後半のハルト視点部分に描写をそこそこ追加。複数箇所。
20250118:何かヘンなので訂正。
(訂正前)ゴーンザン王国にある火山地帯にある
(訂正後)ゴーンザン王国の火山地帯にある
20250506:「現在」が紛らわしいので訂正。 現在行方酢名 ⇒ その当時行方不明
●今回の登場人物・固有名詞
お風呂:
なぜか本作品によく登場する。
あくまで日常のワンシーン。
さらっと1文で終わりましたね。
タケル:
本編の主人公。12人の勇者のひとり。
次の予定ってやつですね。まだタケルには伝わってませんが。
リンちゃん:
光の精霊。
リーノムルクシア=ルミノ#&%$。
アリシアの娘。タケルに仕えている。
タケルのため、あれこれと心を配っているのです。これでも。
テンちゃん:
闇の精霊。
テーネブリシア=ヌールム#&%$。
後ろの部分は精霊語のため聞き取れない。
リンの姉。年の差がものっそい。
ヌル様と言われる事もある。バ〇ルの塔とは関係無い。
ドリーチェに涙の小言をもらってしまいました。
ファーさん:
ゼファーリィ=ヴェントス#$%&。
風の精霊。
有能でポンコツという稀有な素材。
風の精霊の里では高位の存在なんですよ、これでも。
尊敬の対象なんですよ、これでも。
ウィノアさん:
水の精霊。
ウィノア=アクア#$%&。後ろの部分は精霊語。
一にして全、全にして一、という特殊な存在。
タケルの首飾りに分体が宿っている。
また風呂から生えて…、まぁデフォですね。
いいなぁ、ウィノアマッサージ。BGM付き。
どんどん進歩してますね。
マッサージチェアに負けないように?
アリシアさん:
光の精霊の長。
全精霊中最古というような存在。実は凄い精霊。
だいたい名前くらいしか登場しませんが一応。
今回でまた、しばらく登場しないかも?
ヴェントスさん:
風の精霊。
ヴェスター=ヴェントス。
ヴェントスファミリーの長。
ファーの親のようなもの。
実際この精霊は惑星環境の大気循環などを是正したりする、
とっても偉い精霊なのです。
今回出番無し。
モモさん:
光の精霊。
『森の家』を管理する4人のひとり。
食品部門全体の統括をしている。
それ以外にも、リンの付き人役をしたりもする。
またもやセリフが無かった…。
ドリーチェさん:
光の精霊。
昔、テンの付き人をしていた事がある。
母艦エントローグで総指揮という立場のえらいひと。
今回セリフはありませんが存在感はあったはず。
ハルトさん:
12人の勇者のひとり。現在最古参。
勇者番号9番。オオミヤ=ハルト。
ハムラーデル王国所属。
およそ100年前にこの世界に転移してきた。
『フレイムソード』という物騒な剣の所持者。
今回Cパートは彼視点。
カエデさん:
12人の勇者のひとり。
勇者番号10番。シノハラ=カエデ。
勇者歴30年だが、気持ちが若い。
でも言動はタケルからするとちょっと古臭い。
今回Cパートに登場。
ジローさん:
12人の勇者のひとり。
勇者番号3番。イノグチ=ジロウ。
ハムラーデル王国所属。
砂漠の塔に派遣されて長い。
2章でちらっと2度ほど名前があがり、
次に名前が出てくるのが4章030話でした。
今回も名前のみの登場。
※ 作者補足
この登場人物・固有名詞紹介の部分全ては、
あとがきの欄に記入しています。
本文の文字数にはカウントされていません。
あと、作者のコメント的な紹介があったり、
手抜きをしたり、詳細に書かれているけど本文には
無関係だったりすることもあります。
ご注意ください。