4ー078 ~ 分析結果・勇者カズの川小屋到着
1日あけて翌々日の朝、朝食を…、というか一言いわせて欲しい。
どうしてパンと味噌汁と肉じゃがなんだよ…。
牛乳は無かったのが幸いだけど、何だか小学校の頃の学校給食を思い出したじゃないか。しかもあれ昼食だし。
リンちゃんにそれとなく尋ねたんだけどさ、『タケルさまが以前作られていたスープの味付けを再現したものですけど…?』って言われた。
ちなみに光の精霊さんたちには元々味噌っぽいものを使った料理はあるんだよ。醤油っぽいものを使ったものもね。ついでに味醂っぽいものもある。マイナーな調味料らしいけどある。
だから炒め物や煮物で、和食っぽい見かけのものは昔からある。
でも、俺が作ってたもののような、昆布っぽいものからとったダシを使ったり、肉じゃがだけじゃなく煮物や焼き物に味醂を使ったりってのが無かったんだ。あ、味醂は使ってた時期がかなり昔にあって、古い伝統料理のような扱いになってるんだそうだ。
で、だよ。
例によって、『新しい使い方』とか、『我々の伝統料理が新しく』とかリンちゃんが興奮気味に言い始めたので焦ってとめたよ…。
向かいで食べてるロミさんなんてくすくす笑ってやんの。
ロミさんは和食の事を知ってるだろうにね。
おかげで細かい調理方法とかを、改めて確認のためとかで質問されたんだけど、俺だってそんな和食の専門家じゃないし、家庭料理で覚えただけなんだから、細かい事を尋ねられても困る。
そこでロミさんに助言をもらおうと尋ねたんだけどさ…。
「私は食べる方が専門で、作る方はあまり詳しくないの、ごめんなさい?」
だってさ。ちぇ…。
しょうがないから必死で思い出して答えたよ…、ってか分量なんてお菓子作りじゃないんだからきっちり覚えて無くて適当なんだよなぁ…。
「その、『少々』とはどれくらいですか?」
「今の、『ひとつまみ』とは…」
そんな事をいわれてもなぁ…。
「わかりました、あとでタケルさまが思うそれらの分量を計らせて下さい」
- あっはい…。
「それと、先ほど仰った煮物に使う香辛料ですが、乾燥したこれくらいの花蕊?、ですか?、昨晩の煮物に使用したのはこちらの粉末ですが、これで代用は利きますか?」
と、もう質問攻めだった。
和食じゃなくなってるけどまぁ、ついでにいろいろ訊かれたってわけ。
そんな、朝からちょっと気疲れする朝食だったんだよ。
で、朝食が終わってお茶のんで、さて、そろそろ『瘴気の森』へ様子を見に行くかって思ったら、『あ、サンプルの分析結果が届いてたんでした』って言うんだもん。
いやリンちゃんそっちのほうが重要なんだよ、こっちは…。
分析してもらった草は、やっぱりハーブの一種だった。
それが瘴気に強くなったもので、瘴気を分解して浄化する魔法をかなりゆっくりとした弱いものではあるが、使い続けているんだそうだ。
その作用の副産物として茶色の分泌物を生成している。それがお茶に似た成分と俺が言ったものらしい。
瘴気と魔力を中和されたサンプルは、光の精霊さんのところにも存在する、柑橘系の香り成分に酷似した物質を生成する、ハーブと言える種類の草の近縁種だそうだ。変異前は同じ種ではないかと分析した研究者が言っていたんだと。なるほど、だから近縁種ね。
瘴気というのは以前少し話に出た、負の魔力といわれているものと性質が似ていて、条件次第ではアンデッドが生まれる原因になったり、生物が変容してしまったり、毒性を発揮するようになったりと、悪性の魔力とも言えるものだ。ろくな事がないね。
ファーさんがそうだったように、瘴気が濃い環境ではまともに魔力制御ができなくなるし、通常の空間のような魔力波の伝達が乱され、結果的には阻害と変わらない事になる。
元の世界でよく、死者の怨念なども創作物では瘴気という扱いをされている事があったけど、まさにそのような原因によって瘴気が発生する事もあるとか。余程の条件が揃わないとそうはならないらしいけども。
内在する魔力が強く量が多いほど、瘴気に対する抵抗力となる。リンちゃんとテンちゃんには瘴気の影響が無いのはそういう理由だそうだ。
ファーさんに影響が出るのは、風の精霊は性質上、周囲の空間に漂う魔力を利用して魔法を行使するのが通例で、呼吸するように周囲の魔力を取り込んで排出することもしているので影響を受けやすいんだと。
水の精霊ウィノアさんもだいたいそんな感じなので、ああいう環境では首飾りに宿ってるというか首飾りそのものらしいんだけど、ウィノア分体が大人しいのはそれが理由なんだってさ。
テンちゃんの近くでは大人しいと、リンちゃんがぼそっと補足してたけどね。
話を戻して、瘴気の対処について。
タンニンはともかく、地中深くまで染み込んだ瘴気の浄化あるいは中和はかなり難しそうと思ってたけど、もしかしたらその草に任せてればあの地は浄化されるかも知れない。
そういう希望がでてきたなら、俺がここでする事は、瘴気発生の原因を特定してそれを処理するところまでかな。
まだ口にはしてないよ?、何せ原因が何なのかまだ調べてもいないんだから。
でも何かロミさんは察してるような顔で俺を見て微笑みを浮かべてたんだよなぁ…、現時点でそんな期待をされてもちょっと肩に重い荷物を載せられたような錯覚がしてくる。
あ、そうそう昨日ちょっと見てきたけど、霧の量は減ってたよ。
でももう少し減ってくれないと中を調べる気になれなかったんで戻ってきたんだ。
西側の湿地帯の水は減ってるのか減って無いのかよくわからなかったけど、東側の冠水や水たまりは明らかに減っていた。
コウさんのいる駐屯地の周囲もまだ地面が泥状態のようだった。
とにかくこのあたりの平野部は、水はけが良くないというか保水力が高いみたいだ。まぁそりゃそうなんだろうけども。
あの駐屯地は、上からよく見ると土の色が微妙に違っている事から、他所からかなりの量の土砂を運んできて整地したんだろう。
村との道もそうやって土砂や石などを敷いているようだった。
でもまぁ元々はある程度、歩いたり荷車が通ったりできる程度の部分だったんだと思うよ。だって道がまっすぐじゃ無いし、ところどころ木材で補強してる箇所があるみたいだからね。
というわけで、昨日はこのマッサルクって都からの道や、『瘴気の森』周辺に存在する村落、それらの道のあたりをしっかりと地図にして、ロミさんに渡しておいたってわけ。すげー喜んでたよ。
地図による正確な情報から、周辺の村落が結構頻繁に行き来している事や、『瘴気の森』側ではないほうの森の中に何かの栽培施設であるとか、新たに水田のようなものを作っていたりというような事まで詳しくわかってしまったので、そういう意味でも喜んでいた。
おそらく課税とかそんなアレだろうね。
一瞬、あのあたりの村民たちに悪い事をしちゃったかな、って思ったけど、考えてみりゃ『瘴気の森』の件に解決の目途が立てば、役人やら何やらを派遣して調査なども本格的に始まる事になるんだから、遅かれ早かれってやつだ。
だから俺は悪くないはず。たぶん。
●○●○●○●
- さて、んじゃそろそろ見に行ってくるよ。
「昨日も言ったが、まだ入れぬと思うのじゃ」
- それでも見に行って確かめないと…
「んー、タケルさま、こちらをご覧ください」
と、リンちゃんに言われてそっちを見ると、リンちゃんが手にした例の手のひらサイズの端末の上に立体映像が浮いてた。
- え、これって、
「はい、現地の様子です。このように外側はだいぶ引きましたが、まだ地面が瘴気の霧に覆われています」
いきなりで絶句した。
いや確かに便利だよ?、すごいよ?、執務室の方へ行こうとしていたロミさんも目を見開いて身体を捻ってこっちを見てる状態で固まってるくらい。
- あ、うん…、いやリンちゃん、それはありがたいんだけど、やりすぎ。
「でもタケルさま、せっかく上空にエスキュリオスが居るんですから、こk…、使わない手はありませんよ?」
いま、こき使うっていいかけたろ。
- そりゃそうかも知れないけどさ……、この赤い印は?
「あ、それはT=C>…、計測操作指示点を示すマーカーです」
- 計測操作指示点?
「はい、こちらにちらちらと表示されているのが計測値です」
読めないけどね。精霊語っぽいし。
でもその位置に浮いているのが文字なら、項目ごとに複数あって、その横の文字が目まぐるしく変化しているのは分かった。
ついでによく見るとその段は背景部分がグラフのようになっているんじゃないかと予想が付く。
- あ、そうなんだ。昨日のデータと比較したりは?
「もちろんしています、ここの表示は変化度です。水分量と瘴気量それぞれがどのように推移しているかがこれでわかるようになっています」
そうですか…、読めないけどね。
- んー、霧が減って調査に入れるようになるのはいつ頃になりそう?
「現状から推測すると38時間後のようです」
リンちゃんが表示されている部分を指でちょいちょいと操作をし、それを見ながら言った。何だよこのSF映画みたいな展開…。
- じゃあ今日は行ってもしょうがないのか…。
「そういう事情なら、午後から少し用事を頼んでもいいかしら?」
小さく呟いただけのつもりが、ロミさんには聞こえていたようだ。
どうやらのんびりできるのは午前中だけらしい。
●○●○●○●
- これ…、か。
なるほど他とは違う作りですぐにわかると、途中で巡回していた兵士に聞いたが、その通りだな。
「あ!、手配書のぁ痛っ!」
「手配書では無いだろう、せめて人相書きと言え」
「えー、人相書きでも大して変わんないじゃんー」
まるで旅館か民宿のような大きさの、瓦葺き平屋の前に立ち止まって見ていたら、入り口の布を手で除けて2人の女性が中から出て来て言った。
人相書きとはあのタケルという後輩が俺の目の前で描いた似顔絵の事だろう。似顔絵というには些か描写が細かすぎてまるで写真のようだったが…。
- あの、もしかしてサクラ先輩とネリ先輩でしょうか?
「ん?、ああ、今日あたり到着すると聞いていたぞ。カズ…君だったな」
「(ほらほらぁ)」
金髪の女性が今発言した黒髪の女性に肘を当てて小声で言っているが、こちらにも聞こえている。しかも何故か得意げだ。
「(何がほらほらだ、最初くらいきちんとするんだ。言っただろう)」
「(はぁい)」
すぐ目の前に居る俺は、聞こえないふりをしながら待った。姿勢を正して直立不動でだ。
- 初めてお目にかかります!、勇者番号6番、サワダ=ヨシカズです!、カズと呼んで下さい。
準備ができたと見て挨拶をし、頭を下げた。
「ああ、勇者番号1番、トオヤマ=サクラだ。もう知っての通りサクラと呼ばれている」
「はい、勇者番号12番、ネリよ。ネリと呼んでいいわ」
頭を上げて返事を…、していいのだろうか?
サクラ先輩がネリ先輩を、眉根を寄せて呆れたような目で見ているが…、まぁいいとしよう。
- よろしくお願いします!、サクラ先輩!、ネリ先輩!
「ああ、よろしく――」
「ふふ、よろしくするわ。漸く後輩らしい後輩に会え痛っ!、もーサクラさん後輩の前でそうぺしぺし叩かないでよぉ」
「いくら何でも名乗りぐらいちゃんとしたらどうなんだ。それと『よろしくするわ』って何なんだ、ネリ、まさかタケルさんにもそんな挨拶だったのか?」
「タケルさんの時は、えーっと、どうだったかなー、覚えてないかも」
「全く…、ああそうだった、カズ…君、リン様、じゃなかった、タケルさんから首飾りを預かったと思うが、いま着けているか?」
- はい!、重要なものだから肌身離さず着けろと聞いていますので、このように装着しております!
リン様というのが何方の事かはわからないが、言い直したのであのタケルという後輩から受け取った首飾りの事で間違いないだろうと思い、襟元をぐいと引っ張って見せると、サクラ先輩は頷いた。
「そうか、なら中に入ってくれ。登録の手続きを行うよう言われているんだ」
- …登録の手続き?、ですか?
登録とは何の事だろう?
「その首飾りは言わばここに入るための仮のものなんだ。リン様から有効期限が切れる前に登録手続きをしておけと言われている」
「つべこべ言わずについて来ればいいのよぁ痛っ!」
「もう少し言い方を考えろといつも言っているだろう」
「だって、後輩なんだからいいじゃんー」
- あ、あの、俺、いえ、私はそれで構いませんので!、どうかお気遣いなく!
「ああ、」
「ほらほらぁ」
「ああもう、とにかく中へ」
2人の先輩に続いて家屋の中に入ると、明るく清潔そうな部屋。
テーブルと椅子が並んでいて奥にはソファーとテーブル、壁には白い板に行動予定のようなものが書かれているのが見えた。
あの後輩が勇者の拠点と言っていたが、本当の事のようだ。
「こちらに来てこの黒い板に手を当ててくれないか」
- はい。
何をされるのかわからないまま、サクラ先輩の言う事に従った。
体感で10秒ほど黒い板に手を当てたままだったろうか、黒い板の上部端に四角く青い点がひとつ現れ、それが3つになると、サクラ先輩が『よし、もういいぞ』と言った。
「すまんが横へ」
軽く俺の肩を押したので抵抗せず素直に横にずれると、サクラ先輩は黒い板の下の部分をすっと指先で撫でてから、手元の紙を見ながら黒い板に表示されたものを見比べて『こっちか…』と呟き、指先でそれを何度か押している。
- あの…、これは一体…。
「だからぁ、登録処理だってば。登録しないとここが使えなくなるんだよ?、って、君ちょっと臭うよ?、いつから身体洗ってないの?」
近寄ってきたネリ先輩は、話してる途中で鼻をつまんで2歩も下がってしまった。
自分ではよくわからないが、夜の間走ってきたので汗臭いかも知れないとは思うが…、女性にそう言われると申し訳ない気分になった。
ツギの街からここまで、夜は駆け足で移動し、昼間は移動中に見つけた馬車の荷台で眠らせてもらうという方法で、できるだけ急いで来た。着替えが少ないので、途中の水場で洗いはしたし身体も拭いたが、臭うと言われた様子からして結構臭いのだろう。
有効期限には余裕があるとは聞いていたが、彼の様子から、暗に早めに行かなくてはという気にさせられたのもあり、自分でもかなり急いだつもりだ。
昼間の街道には馬車がよく走っていたのも助かった。
- え、すみません、どこか水を使っていいところはありますか?
「今サクラさんが」
「よし、登録できたぞ」
「じゃあお風呂が使えるね」
「ああ、入ってくるといい。こっちだ、来てくれ」
- は、はい…。
え?、風呂?、風呂があるのかここは…。
驚きながらサクラ先輩がすぐ横の扉を開け、入った部屋へ付いて行くと、棚に籠が並んでいるところで立ち止まった。
「これが脱衣籠だ。こちらの棚にはバスタオルとタオルがある。そして――」
彼女が開けた棚には手触りが良さそうで見るからに高級そうなタオルが詰まっていた。驚きながら目で追うと洗面台の下の棚を開いて続けた。
「ここには髪質に合わせたシャンプーやリンスなどがあるが…、カズ…君には必要無さそうだな」
と、俺の頭を見て言った。一般の兵士と同じように短く刈り込んであるからだろう。
- 先輩、カズと呼び捨てて下さい。
「そうか?、ではカズ、着替えは持参しているか?」
- はい、こちらにあります。
そう言って手に提げていた布袋を持ち上げた。
「そうか。着替えを洗濯する場合は、裏に洗濯機があるので使うといいだろう。あとで使い方を説明しよう」
洗濯機!?、何だ?、まるで元の世界のようではないか。
俺が『勇者の宿』で眠っている間に一体どれだけの進歩を遂げたんだ!?
- は、はい、お願いします!
「一応、ここの棚にバスローブがあるよ、それとここに冷蔵庫があって飲み物があるからね」
ネリ先輩が得意げに説明をして、中央の台の横の扉を開いて中からビンを取り出し、蓋を捻って開けてごくごくと飲み始めた。
「っかー、よく冷えてて美味しい」
「あのなぁ、浴室の説明がまだなんだが…」
「あ、そうだった、ねぇカズ」
呆気に取られて見ていると名前を呼ばれたので急いで返事をする。
- は、はい!
「混合水栓とかシャワーとか、知ってる世代?」
- ええ、まぁ、一応は…。
「だったらそれとほぼ同じだから、使い方、わかるよね?」
- あるんですか?、シャワーが?
「ああ」
「うん、あるの」
2人を交互にみるとそれぞれ対照的な表情で返事をした。
「いつでもお湯がたっぷりの広いお風呂だよ」
先輩2人がこの広い脱衣所から出て行き、扉を閉めてから、俺は夢なんじゃないだろうなと若干疑いながらも服を脱ぎ、籠に入れてから棚にあった桶にタオルを入れて持ち、浴室に入った。
- ……何だこれは……。
そう呟かずにはいられなかった。
まるで銭湯かというぐらいの広さがあり、壁には先ほどネリ先輩が言っていた、シャワーの混合水栓や、壁に固定されているシャワーがあり、椅子が並んでいる。
さらには浴槽側の壁には富士山のようなタイル絵があり、奥には観葉植物、奥の中央には何とイアルタン教の布飾りがつけられた水の精霊アクア様を祀った像があった。
それが天窓から午前の光が差し込み、壁の絵と湯気によって神秘的で幻想的な雰囲気を醸し出していた。
身体を清めたら祈りを捧げろという事だろうか…。
●○●○●○●
「思ったより素直そうね」
脱衣所から豆乳のビンを片手に、私と一緒に出たネリは、そのままソファーの方に座り、豆乳の残りを一気にごくごくと飲み干してから言った。
- ああ、そうだな…。
確かに、先輩後輩という立場を重んじる性格のようで良かった。
体格からして何かスポーツをしていたんだろう。
リン様から受け取った似顔絵で知ってはいたが、ハルトさんと似た感じに思えるのは髪型とその体格のせいだろう。よく見れば顔は全然違うのだから。
私は給水器から水を汲み、ネリの向かいに座った。
- しかしネリ、会うなり臭いと言うのはいくら後輩でも失礼が過ぎるだろう。
「だって臭かったんだもん」
- それでも、言い方というものがあるだろう。
「カズは気にして無かったよ?」
- あちらが大人で良かったな。
「ぷぷ、大人の後輩」
- タケルさんだって大人で後輩なんだから別におかしくはないぞ?
「あ、そう言えばそうだった。あ!、タケルさんってカズから見ても後輩だよね?」
- うん、そうなるな。
「なのに、タケルさんはタケル”さん”で、カズは呼び捨て?」
- じゃあどうすればいいんだ、カズ”さん”と呼べばいいのか?、それだと彼が困るんじゃないか?
彼は先輩後輩を重視してそうだから、私たちから”さん”付けで呼ばれるのは、何か彼が納得できるような説明をしなくてはならないだろう。
「んー、タケルさんは特別だって言えばいいんじゃない?」
- それにはアクア様やリン様たち精霊様の事も説明しなくてはならなくなるぞ?
「そんなの口で言ったって信じられないんじゃない?」
- ならどうするんだ?、ここから魔物を一掃しダンジョンを潰したのがタケルさんだと言えばいいのか?
「それこそ信じてもらえないってー、タケルさんはすごい魔法が使えて、ここもタケルさんの家で、あたしたちは頭が上がらないからタケルさんって呼んでるって言うだけでいいんじゃない?」
そんな、子供に教えるんじゃないんだから…。
- それで納得してくれるだろうか…?
もしかしたら後輩勇者のくせに生意気だと憤慨してしまうのではないか?
こういう時は、ネリの気楽さが羨ましいと思う。
そのネリは、何かを思い出したように立ちあがり、台所へと歩いて行った。
「今日のごはんは何かな~♪」
何かな~♪、じゃ無いと思う。本当にいい性格をしている。
はぁ…、と溜息を吐いた。
次話4-079は2021年09月24日(金)の予定です。
●今回の登場人物・固有名詞
お風呂:
なぜか本作品によく登場する。
あくまで日常のワンシーン。
今回は入浴あるけど、カズじゃぁね…。
タケル:
本編の主人公。12人の勇者のひとり。
現地の水はけが悪いのは仕方ないとしても、
どうして霧がそんなに長持ちするのか、
もやーっと疑問に思っています。
リンちゃん:
光の精霊。
リーノムルクシア=ルミノ#&%$。
アリシアの娘。タケルに仕えている。
タケルの役に立つならば、
使えるものは飛んでる母艦でも使えという考え。
テンちゃん:
闇の精霊。
テーネブリシア=ヌールム#&%$。
後ろの部分は精霊語のため聞き取れない。
リンの姉。年の差がものっそい。
まだちょっと立場が弱い。乗り物を壊したから。
ファーさん:
ゼファーリィ=ヴェントス#$%&。
風の精霊。
有能でポンコツという稀有な素材。
もしかして、アリースオムでは役立たず?
浴室で踊ったぐらい?
ウィノアさん:
水の精霊。
ウィノア=アクア#$%&。後ろの部分は精霊語。
一にして全、全にして一、という特殊な存在。
今回も出番無し。
彼女も瘴気の影響を受けやすいのです。
アリシアさん:
光の精霊の長。
全精霊中最古というような存在。実は凄い精霊。
だいたい名前くらいしか登場しませんが一応。
ハルトさん:
12人の勇者のひとり。現在最古参。
勇者番号9番。オオミヤ=ハルト。
ハムラーデル王国所属。
およそ100年前にこの世界に転移してきた。
『フレイムソード』という物騒な剣の所持者。
今回も名前のみの登場。
カエデさん:
12人の勇者のひとり。
勇者番号10番。シノハラ=カエデ。
勇者歴30年だが、気持ちが若い。
でも言動はタケルからするとちょっと古臭い。
お使いで走ってます。そろそろ砦への帰路かな?
今回も出番無し。
ハルトもですが、そのうち出て来るのでここに残しています。
と言いつつなかなか出てきませんねー
ロミさん:
12人の勇者のひとり。
勇者番号2番。マサダ=ヒロミ。
現存する勇者たちの中で、3番目に古参。
現在はアリースオム皇国皇帝を名乗っている。
強かなのはこっち。
リンたちの行動に何も言わずにいるのは、
下手に口出しするよりも、見守るだけにしておいて、
窓口はあくまでタケルに絞る方針。
そのほうが早く解決し、有益だと考えているから。
コウさん:
12人の勇者のひとり。
勇者番号8番。ヨシカワ=コウイチ。
現存する勇者たちの中で、5番目に古参。
コウがこの世界に来た時には既に勇者たちは各国に散っていた。
アリースオム皇国所属。
今回は出番無し。
カズさん:
12人の勇者のひとり。
勇者番号6番。サワダ=ヨシカズ。
ロスタニア所属らしい。今の所。
体育会系(笑)。性格は真面目。
川小屋に到着したので登場人物に復帰。
後半Bパートは彼視点。
サクラさん:
12人の勇者のひとり。
勇者番号1番。トオヤマ=サクラ。
ティルラ王国所属。
勇者としての任務の延長で、
元魔物侵略地域、現バルカル合同開拓地に居ます。
もちろん川小屋と呼ばれている建物に住んでます。
苦労症ですねぇ…。
ネリさん:
12人の勇者のひとり。
勇者番号12番。ネリマ=ベッカー=ヘレン。
ティルラ王国所属。
サクラと同様。
サクラはしょっちゅう偉いひとたちと会議をしますが、
ネリはそのおかげで楽ができてます。
でも領域内を走り回らされるので、楽とは思ってません。
川小屋:
2章でリンが建てた、現在はバルカル合同開拓地にある、
カルバス川分岐のところの小屋。
光の精霊のホームコア技術で守られていて、
まるで現代日本と変わらない暮らしができてしまう家。
小屋というよりはちょっとした民宿ぐらいのサイズ。
現在は、サクラやネリ、シオリが利用している。
ちょくちょくリンが補給物資を届けている。
シオリはまだホーラード王国から戻っていない。
アリースオム皇国:
カルスト地形、石灰岩、そして温泉。
白と灰の地なんて言われてますね。
資源的にはどうなんですかね?
でも結構進んでる国らしい。
勇者ロミが治めている国。
ベガース戦士団:
コウと一緒に『瘴気の森』に派遣されている戦士団。
ここに派遣されている戦士団で最大。
コウとよく行動している、
それなりに長く存在している戦士団でもあります。
母艦エスキュリオス:
4章056話で登場した。
ベルクザン王国内の竜神教神殿地下にあった、氷漬けの恐竜を、
その装置ごと回収するために近くに来た母艦。
4章065話で、『倉庫ごと回収』というのも、
この母艦が近くに居たままだったから。
統括責任者はベートリオ。
※ 作者補足
この登場人物・固有名詞紹介の部分全ては、
あとがきの欄に記入しています。
本文の文字数にはカウントされていません。
あと、作者のコメント的な紹介があったり、
手抜きをしたり、詳細に書かれているけど本文には
無関係だったりすることもあります。
ご注意ください。