4ー060 ~ ヴェントスのお詫び
いきなり謝った目の前の真っ白のイケメン、それが左手だけをぴたっとそろえて上に向けている手。そこに乗って跪くファーさん。
雲が跪いた姿勢の大仏サイズの形をとったかと思ったら、頭の位置が俺たちよりやや下になるように少し高度を下げたってわけ。
だから今、眼前にはでっかくて長髪の白い頭部がやや下に見えてて、手の上のファーさんはだいぶ下方に見えている状況だ。ファーさんの横には布袋がぽんと置いてある。
その長髪が風にさらさらと揺れていた。ここからは見えないけど、一応背中のほうで纏めて縛ってあるのは感知でわかった。前髪も長くて中央やや横から分けてあり、それが胸元に垂らされていて、少し揺れている。少女漫画的イケメンってやつだな。
『このバカ娘めが我が宝物庫から貴重な妖精蜜を盗んで行きよりまして、それが何と貴女様の所で自ら盗品と白状しながらも献上しようとしたとの事、相違ございませんか?』
やっぱり娘って言ってるんだから、この精霊さん風の親玉のひとり、ヴェントス様だよね…。
『うむ。相違無いが、ヴェスターよ』
『はい』
『本体はどうしたのじゃ』
あ、本体じゃ無いのね。だからでっかいのかな?、関係ないか…。
『風の務めを果たしております』
風の務め…、ああ、大気の流れがどうのっていうあれかな…?
『そうか…。それで?』
『このバカ者の行いをその場で咎めず、全てをお返し下さった事、我々一同心から感謝しております』
『ほう…?』
あ、テンちゃんが不敵な笑みを…、もしかして『お礼に妖精蜜の壷ひとつもらえるんじゃない?』って言った事を考えてるのかな。
『あれらの品々は此度の品評会に出品する大切なものでございまして、失われると我がヴェントスファミリーはとんでもない恥を晒すところでございました』
うわぁ、そんなの持ってきちゃったんだ…、返して本当に良かったよ…。
『品評会とな?』
『はい、貴女様もご存じのように、我々風の精霊は妖精種を使役し数々の品々を作り、方々で非常に良い評判でございまして、ご愛顧頂いております』
『うむ』
『100年に1度、光の長たるルミノ様をお招きして我らの品々を評して頂くのでございます』
期間のスパンがおかしいけど、まぁ精霊さんたちだからなぁ…。
『そうか、今年がそうだったのか…』
『はい、此度は珍しくも、大地の方々やアクア様もご参加下さるとの事で、今までに無い盛り上がりが予想されるほどでございまして、我々風の者一同の気合の入れようがご理解頂けましょう』
『そうじゃな…』
そりゃ100年に1度の品評会なんだし、精霊さん業界のえらいさんたちが来るってんならそりゃ頑張るだろうね。そんなとこで恥をかくところだったなら、あの妖精蜜の壷、返して良かったよ…。
あ、でも盗品って言われなかったら返して無かったかも…、テンちゃんがひとつ手を付けてただろうし…、危なかった…。
『このバカ者めが、あれらがなぜ宝物庫に納められているのかも知らず、よもや盗んで持ち去るなど言語道断だと叱る事ができたのも、貴女様が即座に全てをお返しして下さったからでございます』
『ふむ、それについては吾では無く、其方が礼を述べるべきはこちらのタケル様なのじゃ』
え、ちょ、テンちゃん…。
『おお、そちらの御仁が…、申し遅れましたがヴェントスファミリーの長をしております、ヴェスター=ヴェントス#$%&と申します。まずは篤く御礼申し上げます、タケル様』
ほらぁ、言わんこっちゃない…。
風の精霊の長ってだけでも恐縮するのに、それが大仏サイズのでっかいイケメンで、顔をあげるとそのでっかい頭部が目の前なんだよ…。そんでそれがずいっと頭をさげるから大迫力だ。
- あっはい、タケル=ナカヤマです。ど、どうも…。
何を言えばいいのかわからなくなったじゃないか。迫力ありすぎなんだよ…。
変な汗かいちゃったよ…。
『それと、ご挨拶が遅れて申し訳ありません、リーノムルクシア様。貴女様もご出席下さる此度の品評会で大失態を晒さずに済みました』
え…?、リンちゃんも出席する…?
あ、テンちゃんが目を丸くしてリンちゃんを見てる。
『それは良うございました、ヴェントス様。私は参加するとお返事をしていないのですが、それはどちらからお聞きに?』
わ、リンちゃんが冷たい雰囲気に…。
『ルミノ様よりそう伺っておりますが…』
『そうですか…、ところでそちらの風の者を寄越したのはどのような意図からでしょう?』
『それは…、我がファミリーに新たな子が生まれる切っ掛けとなりましたタケル様に、ファミリーから感謝をと思いまして、有能な娘をひとり、』
『一族の重要な品を盗み、手土産と称して持参するような者が有能だと?』
うわー、発言に割り込んだよリンちゃん。しかも痛烈だ。
『は、はいこのバカ者はこれでも有能なのでございます…』
でかい身体、と言っても構成してるのは雲なんだけど、それがちょっと縮んだように見えた。
『ほう、そのバカ者がか?』
『はい、このバカ者は……、申し訳ございませんお許し下さい…』
あ、折れた。
- まぁまぁ、ファーさんは一応、正直に言ってくれたんだし、ヴェントスさんにも僕から言われたように正直に伝えたみたいだし…。
『タケル様、それではこのバカ娘を受け入れて下さるのでありましょうか!?』
うぉっ、顔を上げて近づけないでくれないかな…。
「「タケル様!?」」
- え?、受け入れる?、って?
「あのバカ者を其方の傍に侍らすという事なのじゃ」
テンちゃんがすっごくイヤそうに言った。
リンちゃんも似たような表情で俺を見ている。
そんなにイヤなのかふたりとも…。まぁ俺も正直言うといくら有能でも問題児は勘弁して欲しい。
- あのファーさんを…?
と、下方のでっかくて白い手の上で、きらきら期待の眼差しで見上げているファーさんを見た。
「そうなのじゃ」
- 傍に?
「うむ」
- 侍らす…?
「うむ」
- …いらないんだけど…。
「がーん…」
って声が下から聞こえた気がした。
『そう仰らず、仕事はできる子なのでございます、どうかお願いします』
だから顔がでっかいし、近いんだってば…。
息はしてないし、声も魔力音声なんだけど、口が動くんだよ、雲の口が。
こえーよ…。
- と、ところで、あの妖精蜜ですけど、100年でどれぐらい生産できるものなんです?
『あのと仰いますと、我がヴェントスが誇る最高級品の壷の事でございましょうか?』
- はい。
『あれほどの品質となりますと、あれひと壷でおよそ20年ほどでしょうか…』
え…、そんなにかかるんだ…。
『刻印が許可される通常品質の物でしたら、年に10から20壷でございます。刻印基準に満たない物でしたら大量に作らせておりますが…』
- それほど品質基準は厳格だって事なんですね…。
『はい、それで此度のお詫びと言っては恐縮でございますが、このファーに手土産として、刻印のある高級品質の壷を5つ持たせておりますので』
「むむっ…」
あ、テンちゃんが揺れてる。
ヴェントスさんの手のひらが持ち上げられ、俺たちが浮いている飛行結界の近くに寄せられた。普通なら手首の関節がとか思うんだけど、雲だからね、自由なんだろう。
『先も申し上げましたが、お許し頂けるのであれば是非。最高級品ではございませんが、あれは品評会に出す分で全てでございまして、現状で献上できる最高のものでございます故、どうかお納め頂きたくお願い申し上げます』
『お願い申し上げますー』
なるほど、布袋はそれが入ってる、ってわけね。
「(あれだけでも受け取るのじゃ)」
「(お姉さま…)」
テンちゃんがこそっと黒い事を言ってる…。
そりゃね、お詫びの品として持って来てて、それだけ受け取ってファーさんは要らないから帰れ、ってのは結構ひどいと思う。
- リンちゃん、あれ、面倒見れそう?
「…気は進みませんが、タケルさまがどうしてもと仰るのでしたら…」
うん、どうしても、とは言いたく無いなぁ…。
「(どうしても、あの蜜が欲しいのじゃ)」
「(お姉さまもあれの面倒を見るという事ですね?)」
「(それは構わぬが、吾が触れるのはまずいと思うのじゃ)」
「(はぁ…、そういう設定でしたね)」
「(設定と言うで無いのじゃ)」
「仕方ありませんね…、タケルさま、問題を起こしたら返却するという条件でなら、受け入れて下さってもいいですよ」
返却てw
物扱いだなぁ…。
- ありがとう。えっと、ヴェントスさん、
『はい』
- 今の、聞こえたと思いますけど、ファーさんが問題を起こしたら帰ってもらうという条件で、受け入れたいと思います。
『感謝申し上げます』
『ありがとうございますぅ』
- ではファーさん、荷物を持ってこちらへ。
と、飛行結界の前部分をゆっくりと開いた、うわ、気圧差か…、一気に開けなくてよかった…。そして床部分を斜めに伸ばしてファーさんのところまで階段状に繋げ、わかりやすいように乳白色に濁らせた。すりガラス状といえば伝わるかな。そんな感じ。
でっかい布袋を両手で抱えて、その脇からこちらを窺い、飛ぼうかどうしようか迷ってるファーさんと、手のひらを動かそうか考えていたんだろうヴェントスさんが、目の前に階段が現れたのを見て目を丸くしていた。
- どうぞ?
『は、はい、失礼します』
俺が手招きをしてそう言うと、ファーさんは足元を確かめるようにしながら一歩一歩、階段を上ってきた。
「荷物を置いて下さい」
「はい」
そっとしゃがんで荷物を足元に置いたファーさんの向かいで、同じようにしゃがんだリンちゃんが袋の口を紐解いた。俺の前でテンちゃんがそれを見てごくりと唾を飲み込んだ音がした。
リンちゃんはエプロンのポケットから普通の布を取り出して横に敷いては上等そうな布に包まれた壷をひとつずつ確認して、元通り包んで横の布の上に置いてさっと風呂敷のように包んで結び、背中から降ろしたリュックサックの口に大事そうに入れていった。
あれ?、5壷って言ってたよね、10壷あるように見えるんだけど。
- 壷、多くない?
「あ、3つは通常品質で2つは刻印の無い普及品です。せっかくですからどれぐらい差があるのか旦那様にも試して頂ければと思いまして持ってきましたですよ」
- え、まさか黙って持ってきたんじゃないよね?
「いえいえとんでもございませんですちゃんとヴェントス様の許可を頂いておりますですファーは同じ失敗を繰り返すような事はしませんですよえへへ」
相変わらず早口だなぁ…。
失敗を繰り返さないのはいいと思う。だけどその失敗をしないようにして欲しいものだと思う。
- そうですか。ヴェントス様、お気遣いありがとうございます。
『そう仰って頂けると幸いでございます』
「タケルさま、確認が終わりました。確かに高級品質の妖精蜜5壷、通常品質3壷、刻印の無い普及品が2壷で、包みの布もそれに応じた品質の妖精布でした」
あ、布もそうだったんだ。上等そうに見えてたのは合ってた。
だからさらに布で包んだって事ね。
- じゃあ降りようか。ヴェントスさん、お忙しいところご足労下さってありがとうございます。
『いえいえ、こちらこそ上空まで足を運んで頂き、驚きました。娘の事、よろしくお願い致します。では御前を失礼致します、タケル様、ヌル様、リーノムルクシア様』
そう言って改めて頭を下げるとその姿勢のまま、雲がふわーっと四散し、ただの雲となった。
- 僕たちが下で待ち構えてたらどうしてたんだろうね…。
「先日リン様がウィンディにしていたように仮実体で降りてましたですよ」
- え?、そうなの?、んじゃ上がってくること無かったんじゃ…。
「タケル様よ」
- はい?
「下は人目があるのじゃ、仮実体を作るのにヴェスターは派手な演出をするのじゃ…、それでは困った事になり兼ねないのじゃ」
- なるほど…。
「さすがはヌル様ですヴェントス様の事をよくご存じです」
「ヌルではなくテンと呼ぶ事を許すのじゃ」
「な、なんと!?」
「お姉さま!?」
「か、勘違いするで無いのじゃ、妖精蜜の手土産に釣られたわけでは無いのじゃ、しばらくタケル様の周囲に居るのじゃ、その名で呼ぶ事の不都合もあると思っただけなのじゃ」
本音がだだ漏れな気がする。
「そうですか」
それを察してリンちゃんは興味無さそうに棒読みで返してるし。
「む、信じて無いのか、私だっていろいろ考えて」
「お姉さま」
「な、何じゃ」
「わかってますから。ねぇタケルさま」
- え?、あ、うん、じゃあ降りようか。
と言うとリンちゃんはひしっと俺にしがみついた。
「え?、え?、何ですかこれぇぇぇ!」
降下移動を始めるとファーさんがその場(飛行結界の床だけど)にしゃがみ込んで頭を抱えた。
え?、何で?、この子普通に飛べる子だったよね?
●○●○●○●
砦の中庭小屋の入り口前に到着し、飛行結界を解除すると、リンちゃんが俺から離れてしゃがみ込んでいるファーさんを引っ張り起こして立たせた。
「さぁ、登録しなくてはならないんですから、立ってください」
「ふぁぁ、ファーはまだ頭がくらくらしてますよ…」
「わかりますけど、ほら、その袋を持って。行きますよ」
そんな事を呟いているファーさんが、頭をゆらゆらと揺らしながらリンちゃんに手を引かれて中に入った。
あの袋って、壷だけが入ってたんじゃ無かったのか…。
俺とテンちゃんもそれに続いて中に入り、給水器のところで水を汲んでソファーに座った。
「おかえりなさい、あの方は?、踊り子のような恰好だけど…」
ロミさんが操作盤のところでリンちゃんに登録処理をしてもらっているファーさんをちらっと見て、俺を訝しむような雰囲気を漂わせながら言った。
- あ、あのひとはファーさん。風の精霊さんです。成り行きで連れて来る事になっちゃって…。
「え!?、風の精霊様なの!?、その、従軍してる踊り子とかじゃ無く?」
- そう見えるかも知れませんけど、風の精霊さんです。本物の。
「うむ。正真正銘、風の精霊なのじゃ」
正真正銘って言葉、何かひさしぶりに聞いた気がするなぁ…。
「そうなんですか…、もしかして風の精霊様って、皆様あのような恰好を…?」
「踊り子のような恰好をしている者も居るが、全部がそうでは無いのじゃ。というよりあれはあれの個性なのじゃ」
「ふぅん、そうなんですね…」
そう言ってロミさんはもう一度ちらっとファーさんを見て、正面のテンちゃんの服装に目をやった。
ファーさんのほうは、リンちゃんから今後のあれこれ、まぁたぶん注意事項とかだろう、そういうのをレクチャーされているようだった。リンちゃんが腕を組んで人差し指を振りながら言ってるからね。ところどころ聞こえてくるし。
「む、ロミよ、何か言いたい事があるなら言うが良いのじゃ」
「あ、いえ、精霊様は個性豊かだと思っただけですよ」
「この服はいろいろ理由があるのじゃ」
- あー、ロミさん、テンちゃんの服は事情があって、高度に複雑な魔法が付与されているんですよ。
「え、そうなの?」
「うむ」
- それで黒いほうが都合が良くて、あちこちひらひらしてるのもそれに関係しているので、他の服装を選べないんです。
「そうでしたのね、失礼しました、テン様」
「うむ、わかれば良いのじゃ」
「じゃあリン様がいつもメイド服のような服装なのも…?」
- あー、あのエプロンは確かに理由と言えば理由になっちゃってるんですけども…。
「あれはタケル様に仕えるという意味が大きいのじゃ」
「なるほど…」
- んー、リンちゃんにいろいろと教えた精霊さんの趣味も入ってるかもね。
「そうなのか?」
- うん、そう聞いた覚えがあるかな…。でもまぁエプロンのポケットが大きいのも都合が良かったみたいですし、やっぱりそれが理由と言えるんじゃないでしょうか。
「ふむ」
「ファーさんの服装って、露出度がすごいわね…」
- そうですね。
「タケルさんは何も思わないの?」
- え?
だって個人の趣味じゃん?
「え?、って、タケルさん、あの子、風の精霊様って知らないひとたちから見るとどう見えるかわかってないの?」
- どう見えるかって、踊り子さんに見えるんじゃないんですか?
「はぁ…、やっぱりわかってないのね。いい?、リン様の場合は、見てすぐわかるような上質な布で作られている侍女服に見えるの。それは貴方の服装も品質が良くて仕立てもいい、だから釣り合っているし、それはテン様の場合も同様なの。ここまではいい?」
- はい。
「リン様も所作が洗練されているし、それはテン様も同じ。だからリン様の場合は身分の高い家の娘を預かっているように見えるの」
- はい。
なるほど。そう見えるのか。
「テン様の場合は貴方の身内に見えるわ。髪も瞳も同じ黒だもの、兄妹のように見えるわね」
「そうかそうか」
テンちゃんが嬉しそうだ。
- なるほど。
「でもあのファーさん、って言ったかしら?、あの子はそうは見られないのよ。それは遠目からでも品質の良さそうな薄布よ?、でもね、誰が見ても踊り子。これがまずいのよ。あんなに透ける布を纏った踊り子を連れていると、専属の娼婦を雇っていると見られても仕方がないの」
「ふむ。一理あるのじゃ」
- そうなんですか…。
「そうなんですよ、タケルさま。ですからこの者には早急に衣装を仕立てなければならないんです」
リンちゃんがこちらに近づきながら力強く言った。
- 仕立てるって、どこで?
「もちろん『森の家』で、ですよ」
- あ、そうなんだ。
良かった、光の精霊さんの里にとか言われたらまたややこしくて面倒な事になりそうだった。ただのカンだけども。
あー、そう言えばアオさんがお裁縫技術がすごいんだっけ。
「ですから、ここでする事がしばらく無いのでしたら、『森の家』に行きましょう」
- 僕も行くの?、リンちゃんが連れて行くって話じゃなくて?
「何もここには戻って来ないわけじゃありませんし、あ、あの剣の鞘ですけど、処理が終わって『森の家』に届いているんですよ」
- え?、なんであっちに?
「タケルさまはご存じ無いかも知れませんけど、里からここに直接物品を届けているわけじゃないんです。川小屋でもそうですが、どこも『森の家』を一旦経由しているんです」
- あ、そうだったんだ。
「そしてモモさんが検品してから送って下さっていたのですが、そのモモさんは今、里の方で用事がありまして…、ぶっちゃけますと例の品評会関係で多忙なんです。それで、あたしが取りに行くのであれば、ついでにこの者の服をアオさんにお願いしようかと思いまして」
品評会かー、リンちゃんも出席する話になってるみたいだし、それでモモさんが付き人なのかな?
- なるほどね。
「のぅリンよ、」
「あ、お姉さまちょっと待って下さい」
何か言いかけたテンちゃんに手のひらを向けて遮るリンちゃん。
「むぅ」
テンちゃんは不満そうに了承したみたい。
その様子に少し驚いたような表情になったファーさん。
でも何も言わずに黙ってリンちゃんの後ろに控えている。ちょっと意外。
「それで、あちらでテストがしたいので、あの風の剣、あ、嵐の剣でしたね、それをタケルさまにここから借りてきて欲しいのです」
- あー、そういう事ね。じゃあ、早速借りてくるよ。
やっとつながった。何で俺も?、ってずっと思ってたよ。
残っていた水をぐいっと飲み干してから席を立つと、リンちゃんが手をちょっと上げて合図をした。
「タケルさま、くれぐれも」
- うん、名前つけたりしないし、魔力を与えたりしないから。
「お願いしますね」
頷いて入り口から出るとき、後ろで話の続きだろう、それが聞こえた。
「ではお姉さま、品評会への参加についてのお話ですか?」
「う、うむ」
ああ、ヴェントスさんから話が出たとき、テンちゃんがちょっとそわそわしてたね。
そりゃ大好物の妖精蜜、それも最高級品が試食できる機会なんだから、行きたいって思うだろうね。
もし行けるなら行かせてあげたいもんだ。
次話4-061は2021年05月21日(金)の予定です。
●今回の登場人物・固有名詞
お風呂:
なぜか本作品によく登場する。
あくまで日常のワンシーン。
また今回入浴シーン無し。
タケル:
本編の主人公。12人の勇者のひとり。
また問題児が…、って思ってる。
リンちゃん:
光の精霊。
リーノムルクシア=ルミノ#&%$。
アリシアの娘。タケルに仕えている。
また仕事が増えてますね。
テンちゃん:
闇の精霊。
テーネブリシア=ヌールム#&%$。
後ろの部分は精霊語のため聞き取れない。
リンの姉。年の差がものっそい。
ヴェントス印の妖精蜜が大好物。
ウィノアさん:
水の精霊。
ウィノア=アクア#$%&。後ろの部分は精霊語。
一にして全、全にして一、という特殊な存在。
今回は名前のみの登場。
アリシアさん:
光の精霊の長。
全精霊中最古というような存在。実は凄い精霊。
だいたい名前くらいしか登場しませんが一応。
モモさん:
光の精霊。
『森の家』を管理する4人のひとり。
食品部門全体の統括をしている。
それ以外にも、リンの付き人役をしたりもする。
アオさん:
光の精霊。
モモの補佐、主に機械や魔道具関係を担う。
お裁縫が得意。
タケルの服をデザインし最初の1着を作成したのはアオの師匠。
それ以外の着替えはアオが作った。
リンのリュックについているタケル人形は、
アオの指導でリンが作成したもの。
その他、リンのエプロンドレスや、制服以外の『森の家』幹部の
服装など、アオが手掛けた服はいくつもある。
ハルトさん:
12人の勇者のひとり。現在最古参。
勇者番号9番。オオミヤ=ハルト。
ハムラーデル王国所属。
およそ100年前にこの世界に転移してきた。
『フレイムソード』という物騒な剣の所持者。
今回出番なし。
カエデさん:
12人の勇者のひとり。
勇者番号10番。シノハラ=カエデ。
この世界に転移してきて勇者生活に馴染めず心が壊れそうだったが、
ハルトに救われて以来、彼の元で何とか戦えるようになった。
勇者歴30年だが、気持ちが若い。
でも言動はタケルからするとちょっと古臭い。
お使いで走ってます。
ゆえに今回もまた出番無し。
ハルトもですが、そのうち出て来るのでここに残しています。
ロミさん:
12人の勇者のひとり。
勇者番号2番。マサダ=ヒロミ。
現存する勇者たちの中で、3番目に古参。
現在はアリースオム皇国皇帝を名乗っている。
これでも内心では結構緊張続きなんですよ。
あれこれ好奇心が先にあって、楽しいから耐えてますけど。
クリスさん:
12人の勇者のひとり。
勇者番号5番。クリス=スミノフ。
現存する勇者たちの中で、4番目に古参。
黒鎧への封印がようやく解除されました。
現在快復ターン中。
アリースオム皇国:
カルスト地形、石灰岩、そして温泉。
白と灰の地なんて言われてますね。
資源的にはどうなんですかね?
でも結構進んでる国らしい。
勇者ロミが治めている国。
クロマルさん:
闇の眷属。テンのしもべ。
試作品零号らしい。
カンカンうるさい。
テンのポケットに、カッティングが複雑で綺麗な石に宿っている。
どうしてマルなのかがわかりましたね。
今回はテンのポケットの中で大人しくしてます。
前回怖い目に遭ってましたからね。
ファーさん:
ゼファーリィ=ヴェントス#$%&。
風の精霊。
有能だけどポンコツ。
実は結構な存在のはずなんですよ?、これでも。
踊り子からメイドへのクラスチェンジか!?
真っ白のでっかいイケメン:
ヴェントス様、の分身でした。
テンからはヴェスターと呼ばれてます。
テンの言動が丸くなったのを最も実感したひとり。
実は分身と娘を失う覚悟で急いでやってきたんです。
※ 作者補足
この登場人物・固有名詞紹介の部分全ては、
あとがきの欄に記入しています。
本文の文字数にはカウントされていません。
あと、作者のコメント的な紹介があったり、
手抜きをしたり、詳細に書かれているけど本文には
無関係だったりすることもあります。
ご注意ください。