4ー058 ~ クリス救出・隠れ家へ
さて、ここにあるはずのクリスさんの身体が収められている箱はどこだと、小さな灯を浮かべたところ、この部屋には書類や道具類を納めている棚と、大きな箱が4つあるとわかった。
まず一番大きな箱だが、部屋の隅に立てられていて、両開きの扉が無理やり開けられたように片側の扉が外れて倒れていた。もう片方は開かれているし今は灯があるので中がよく見えた。
箱の大きさは学校教室の隅にある掃除用具入れの倍ぐらい、両開きの洋服ダンスのような感じといえば伝わるだろうか、抽斗はついていないが、取っ手らしきものが中央部分に2つ付いている。
中には身長180cmぐらいの人型の窪みがあり、要所だろうか、何となくそう感じる位置に金属らしい端子のようなものが見えていて、そこから細い金属線がごちゃっと毛のように生えている。
そう、テンちゃんが入ってすぐにこじ開けて壊した魔道具がこれで、無理やりこじ開けられ中心部分にあった核だろう中身を壊されて、そこに封じられていたんだろうクロマルさんを引っ張り出されたものだ。
さらにその核を引きちぎられて、床に叩きつけられ、クロマルさんの依り代部分だけが現在テンちゃんのポケットにあるってわけだ。
残りの箱3つのうちひとつは、その隣にぴったりとくっついていて、大きめの棺のような感じだ。棺に見えたのは表面に文様が掘られていて、上面がやや湾曲しているからだ。継ぎ目が見当たらないように見えたけど、光を近づけてみると上から5cmぐらいのところに薄く線が見えた。おそらくこれが継ぎ目だろう。この箱は壁にぴったりとつけられていなくて、向こう側に少し隙間がある。
この棺のような箱だけがまだ動作中のようで、魔力感知的には、ん?、テンちゃんが壊したはずだけどまだ動作しているように見えるな…、じゃあ2つが動作中って事か。
それら以外の箱は、調べてみたが中に魔道具が収められている棚と、書類が収められている棚だった。どっちも簡単な鍵がついていたが、まぁそれくらいならちょちょいと開けられる。布のかたまりもあったが衣類だろう、そんな感じで畳んだものが積まれてあった。
「これはどうやって開けるのじゃ?」
そうして部屋を物色していると、テンちゃんが棺の、って言っちゃってるけどまぁ形状はそれっぽいからもう棺って呼ぶけど、その前にしゃがみ、クロマルさんが宿った黒い石を、さっきポケットに入れて間もないのに取り出して尋ねていた。
そんでもって呼びかけに応えて石から靄のように湧き出てきたクロマルさんをさっと握るテンちゃん。
『ぐぇっ』
「ぐぇっでは無いのじゃ、早く答えるのじゃ」
『制限感の道具感が破壊感でございますので、固定感が解除感なのですよ主様』
「ふむ。という事はゼロ、其方があの黒鎧を制御していたというわけか?」
『制御感は不能感ゆえ制限感でございます主様』
わかりにくい…。
「つまりはどういう事なのじゃ」
『正常時感の動作感では黒鎧の使用者は自由感の意思感で使用感を停止可能感でございます。それを制限感で封印感でございました』
んん?
「其方が黒鎧から使用者を戻れなくしていたという事か?」
『クロマルの意思感ではありません、主様が破壊感の魔道具が目的感でした』
「其方、ごまかしておるのではあるまいな?」
『クロマルが主様に虚偽感の報告感は致しません』
「む、そうじゃったな、其方、嘘は無かった」
『ご理解感に感謝感でございます』
「じゃが丸っきり嘘でもないようなごまかしは多くあったように思うのじゃ…」
『主様はクロマルの事を本当感によくご理解感で嬉し感で涙感でございますよ』
「ああもうよい、こういう奴だったのじゃ。それで其方はどうして出られなんだのじゃ?」
『主様が破壊感の部分感に妨害感で脱出感が不能感で――』
「そのカンカン言うのをやめよ、さっぱりわからんのじゃ」
『と仰られましても…』
「確か昔は普通に話す事ができておったはずなのじゃ、命令なのじゃ、普通に話すのじゃ」
『クロマルは内側に封じられておりましたので、完全に把握感…把握しきれてはおりませぬ。知り得た事だけでよろしいでしょうか』
「構わぬ」
『では――』
と、クロマルさんがカンカン言うのを訂正して詰まりつつも話してくれた。
本来なら使用者は自分の意思で黒鎧から戻る事ができるけど、クロマルさんが囚われていた魔道具によってそれが阻害されていた、というのがまずひとつ。
クロマルさんのほうは、魔道具から出られなかったので、連動して魔力的につながっている黒鎧が壊されると出られるようになるんじゃないかって考えてたってわけだ。
「それは違うのじゃ、ゼロよ」
これの説明が終わってから、テンちゃんが『ふむ…』と少し考えてから言った。
「其方が宿っておったのは、外部から干渉して黒鎧から戻れなくするためのものであって、言わば後付けなのじゃ。因って黒鎧側が壊れようがどうなろうが、其方が居ったあの魔道具には影響は無いのじゃ。魔道具の存在意義が無くなる程度なのじゃ」
という事らしい。
クロマルさんの勘違いって事だろう。
まぁ内側から、ヒースなんとかさんが持っていた魔道具のインターフェイスがクロマルさんの居た魔道具に装着された時に限って、外との会話ができたらしくて、それだけしか情報を得られなかったんだから勘違いがあったとしても仕方がないだろう。
まぁもうどっちもテンちゃんが原因でぶっ壊れてしまってるんだけどね。ヒースなんとかさんが持ってたコンパクトタイプの魔道具のほうは故意じゃないけど、クロマルさんが宿ってた方は無理やりぶっ壊したようなもんではあるが。
でもクロマルさんを救出(?)するにはそうする他無かった、って事にしておこう。
『ではクロマルが脱出感、脱出するにはどうすれば良かった感で、良かったのでございますか…』
「じゃから無理やりひっぺがしたではないか」
『それにつきましては主様に感謝感、感謝でございますが…』
「今となっては壊れておる故、それ以外の脱出方法などわからんのじゃ。もう出たのじゃ。気にするで無いのじゃ」
と言ったところでテンちゃんの目の前の棺から魔力反応が増大したのがわかった。
それだけじゃなく、人型の窪みのあるほうの箱からも同様の反応があった。
『ふむ…、これはあの黒鎧に宿っておった意識体が戻ろうとしておるのじゃな…』
テンちゃんは特に驚いた様子もなく、棺の上面で薄く光っている文様を目で追いかけるような首の動きをしてから立ち上がり、そう言った。
使用者であるクリスさんは死んでいるわけではないので、機能解除されたなら自然と身体のほうに意識体が戻るって事かな。
白銀の鎧のほうの機能は壊れていないが、制御機械があってこの棺に安置されている場合、黒鎧に意識が宿って動かせる、と。
そしてしばらく待っていると、蓋がすっとずれてから奥側にゆっくりと開き、そのまま奥に沿うように完全に開いた。
「黒いのじゃ」
『使用者の魔力感が浸透感で外観感が変化感のようでございます』
現在はクリスさんの魔力で染まっているため、白銀の鎧が真っ黒になってるという解釈でいいのかなこれ。
あの黒鎧のような、胸のところに紋章のようなものが刻まれている以外はつるんとした外観では無いし、装飾らしい部品もついている。
さらに聞くと、黒く染まるのは別に誰の魔力であっても同様なんだそうだ。赤や青になったりはしないんだってさ。
そのクリスさんらしき白銀の鎧ではない真っ黒の鎧姿の人物が、棺の中に横たわっていた。
魔力感知的には、棺にも鎧にも魔力信号らしきものを感じ取れたので、起こしていいのかどうかがわからず、しばらく様子をみる事にした。
とりあえずぼーっと立って待っているのも何だし、部屋の隅に寄せられていた机と椅子の埃を払って、テンちゃんとふたりで壁に向かって並んでお茶を飲んで喋っていると、クリスさんに変化があった。というか起きようとしてるんだろう、微かに声がした。
「…うぅ…、あえ…か…」
- あっはい、クリスさんですよね?、大丈夫ですか?、起きられますか?
「…す…い…、えん…を…あけ…く…か…」
ものっそい掠れ声で、苦しそうだった。声というよりは内緒話のような、囁き声だ。何を言っているのかわからないけど、とりあえず背中を起こして面頬を上げればいいかな。そうしないと水を口にさせることもできないしさ。
- わかりました、背中を支えますがいいですか?
わずかに少しだけ首を動かして頷いたのがわかった。
そっと首の後ろに手を差し込んで背中を起こし、もう片手で面頬を持ち上げて驚いた。
頬はこけ、目元は落ち窪んでいる。まるでミイラのようだった。目も閉じたままだ。
と言うか、これで生きているのが不思議なぐらいだ。
- 面を上げましたよ、クリスさん?
「くあい…、いえ…あい…、えん…を…」
と囁くように言ったところでクリスさんが強めの魔力に包まれて消滅した。
- え…?
中身が無くなって軽く…、と言う程には軽くはなって無いけど、軽くなり支えが無くなった全身鎧の兜と胴、腕などの部品が棺の中にごとごとと落ちた。
「転移魔法なのじゃ」
- 転移…?、あ、勇者の転移……。
って事は、クリスさんは身体に戻ってすぐ死んじゃったってこと?
いあまぁ完全に死んだわけじゃなくて、死ぬ寸前になったので『勇者の宿』への帰還魔法が発動しちゃったって事かぁ…。
「ふむ…、鎧やその箱からも魔力を持って行ったようなのじゃ。相当な距離を転移したのかも知れんのじゃ」
- あー、ここからホーラードにある『勇者の宿』までですからね、それなりに魔力が必要だったと思いますよ。
「ほう?、タケル様、其方は転移魔法の行き先まで感知できるのか?」
- あ、いえそうじゃなくて、クリスさんは勇者なので、そうじゃないかなって。
「なるほどなのじゃ、あれがリンから聞いておった勇者固有の転移なのじゃな」
うん、と頷いておいた。
俺だってそんなの目の前で見たのは初めてだし、自分自身に起きた転移は2度あるけど、客観的に見たわけじゃないからね。自分の時だってめちゃくちゃ焦ってたし観察する余裕なんて無かったしさ。
- そう言えばテンちゃん、
「ん?」
- クリスさんが入ってたこの箱のほうは、どうして無理やり開けたりしなかったの?
「むぅ、無理やり開けて良いものかどうかぐらいの判断はできるのじゃ…」
- あ、そっかごめん、そういう意味で尋ねたんじゃないんだけど。
「なら良いのじゃ」
- いやほら、クロマルさんの時は無理やり開けて引っぺがしてたでしょ?
「あれの扉はただの蓋なのじゃ、壊しても問題無かろうと思ったのじゃ。ゼロについては後付けの付属品である事はすぐにわかったのじゃ。あの場合、壊さねば取り出せなかったのじゃ」
- なるほど。そういう事だったんだ。じゃあ用も済んだし、出ましょうか。
「うむ」
テンちゃんの返事を聞いてから、何となくそうしたほうがいいような気がして、クリスさんの鎧を回収し、コップやらを片付け、外に出た。
開けっ放しだった入り口の扉の外側に、リンちゃんだろう、魔法による障壁が張られていたが、俺たちが出るとすっと障壁が消えた。
外では不機嫌そうな見知らぬひとが数人、リンちゃんたちがお茶を飲んでいるテーブルの隣に立っていた。
一応、入り口はちゃんと閉めて、南京錠は元通りかけてから、そっちを見ると同時に甲高い声が聞こえた。
「畏れ多くも王姉殿下の管理地であるここに入り込んで白昼堂々と盗人のような行為、とても見過ごせません!、早くこの束縛を解きなさい!」
束縛…?
よく見るとキンキン声の中年女性と、そのやや斜め後ろの男性2名は、直立不動なのではなくて、そういう状態でリンちゃんが固定しているようだった。なるほど、確かに束縛だな。
「それはさっきも聞いたわ。全くうるさいわねぇ…」
「んまぁ!、盗人猛々しいとはまさにこれ!、勝手に入り込むだけで無くお茶会をするなんて、んまぁ!、全く、んまぁ!、ほんとに!、んまぁ!」
あーこれは確かにうるさい。
「それも聞いたわ。ンマーンマーとまるで『ウゼー』という魔獣のようね…」
「んまぁ!、魔獣に例えるなんて失礼にも程があります!」
「…はぁ、いい加減黙らないとまた口を閉じさせますよ」
「んむっく…」
リンちゃんに冷たい声で言われて、やっと黙ったようなので、近寄って話を聞くことにした。
- えっと、これどういう状況?
「待っている間にお茶してたら来たのよ…」
ロミさんはげんなりした表情で言い、
「あまりにもうるさいので動けなくして黙らせたです…」
リンちゃんも同様。
このふたりがこんな表情をするくらいなんだから、余程うるさかったんだろう。
「す、すごく怖かったです…」
オーリエさんはロミさんの椅子の後ろにしゃがんでいた。
位置的に、後ろからキンキン声でがなり立てられて逃げたんだろう。
- それで、また喋れるようになってたのは?
「戻られたので、話ができないと状況がわかり難いかと思ったんですよ…」
「そしたらまたこれだもの…」
- はぁ、何となくわかりました。
それで俺はキンキンさんに向き直った。
- 僕たちは事情があって名乗れませんが、ここは無人だと王姉殿下やクラリエさんたちから聞いていたんですよ。貴女方はここの関係者の方々でしょうか?
「んまぁ!、名乗れない者を信じろとでも言うのですか!?、殿下や王宮筆頭魔導士様の名を言えば――」
- 黙らせて。
とリンちゃんに言うと、リンちゃんがひとつ頷いた。
「んぐっ…」
キンキンさんは鼻息荒くふすーふすーと息をするだけになった。
すごいな、これも回復魔法ってカテゴリーらしいけど。
とりあえずこのひとには喋らせちゃダメだな。うるさすぎるし話が通じない。
後ろのふたりを見ると、ひとりは腰の剣を抜こうとしてか、柄に手をやったまま固まっていて、すごい目で俺を睨んでいた。ついでに鼻息も荒かった。口が開けないからしょうがないね。
関係ないけどこれ、鼻が詰まってるひとだと窒息するんじゃないか?、この3人は大丈夫っぽいからいいけどさ…。
もうひとりはでっかいスコップだろうか、まるで小さな有翅族がティースプーンをもっているかのような…、そのままティースプーンを大きくしたようなものを両手で持ち、背中にはでっかいフォークを背負っていた。
うん、農具を武器にしてるんだろうけど、スプーンとフォークのセットってのが何とも…。
このひとは俯き加減だけどちょっと目が泳いでいるっていうか、俺と目を合わせようとしないな。
よし、このひとにしようか。
- こっちのスプーンもってるひとを喋れるようにしてあげて。
「はい」
うわー、他のふたりの鼻息と目がすんごいな。そのうち目から何か出るんじゃないか?
首が動かせないのか、俺がスプーンさんに近寄ると眼球だけが動いて…、瞬きぐらいすればいいのに…。
- とりあえずスプーンさんとお呼びしますが、
「お、俺は言われて付いてきただけで何も知らねぇ、か、帰してくれ、帰して下さい!」
- 2・3、質問に答えてくれれば無事にお返ししますよ。
「ほ、ほんとか!?、ほんとですか!?」
めっちゃ怖がられてるなぁ…。
「(ふふっ…)」
あ、ロミさんが笑いを堪えてる…。まるで悪人みたいなセリフだとか思ってそうだ。
全く、何だよいい気なもんだなぁ…。
- ええ。まず、ここは無人と聞いていたんですよ。なら、貴方たちは何なのか、王姉殿下にもご報告しなければなりませんので、そこを聞いておきたいんです。
「お、俺はお庭の果樹園の面倒を見てる者で、リンゴーっていいます。か、家族ですぐそこの家に住んでる、住んでます。で、殿下に聞いてもらえりゃわかるだ、わかります。こっちの剣もってるのは俺の兄貴で、ヤンゴーっていいます。このうるさい女は知らねえ、です」
最初にちらっとこっちを見たっきり、視線を一切合わさずに、まるで地面に何かを探すように視線を彷徨わせているけど、もとからやや下を向いていて、首が動かせないからこっちを見られると上目遣いで見られているようだし、話が通じてるっぽいから、まぁそれでいいか。
- リンゴーさんに、ヤンゴーさんね。わかりました。では殿下やクラリエさんに報告しなくてはなりませんので、これで失礼しますね。
「か、帰してくれるんじゃなかったのか!?、ですか!?」
- ああ、もちろん解除します。僕たちが去ったらね。
「そん…」
あ、リンちゃんが黙らせてくれたようだ。
見るとテーブルと椅子が片付けられていた。
- じゃ、行きましょうか。
と言うと、右腕にテンちゃん、それより早く後ろにしがみついたリンちゃん、オーリエさんを引っ張って俺の左側に寄り添ってきたロミさん、というフォーメーション(?)になったので、テンちゃん式の飛行結界をさっと張り、すっと浮き上がってから一旦停止。
「……!?」
ん?、まぁいいか。
- あのひとたちを解除してあげて。
「…はい」
背中に横顔を押し付けて目を閉じていたリンちゃんが小声で返事をした。
上昇加速を再開すると、リンちゃんが俺の腰に回した腕をきゅっと締めた。
「ひぁあああああ!、っむーんーんー」
あ、さっきのはオーリエさんの声にならない悲鳴だったのか。目隠しするの忘れてたよ。この悲鳴はオーリエさんか。そんで途中でロミさんがオーリエさんの口を塞いだんだ。
そりゃ真横で悲鳴を上げられちゃうるさいもんね。
さっきまでキンキンさんで辟易してたわけだし。
その連中はどうしたかと眼下を見ると、リンゴーさんが地面にへたり込み、ヤンゴーさんが剣を抜いて構え、キンキンさんが正面を指差して何か叫んでいるんだろう様子が小さくなって行くのが見えた。
ああそっか、あの場で消えたようにあのひとたちには見えたから、正面を向いてやってるのか…。ま、もう会う事も無いだろうし、どうでもいいか。
●○●○●○●
俺たちが向かったのは、ヒースなんとかさんたちの居る小屋だ。
行きと同じように、テンちゃん、リンちゃん、ロミさんの3名を、宙に浮いた状態の飛行結界で待ってもらい、オーリエさんだけを連れて小屋の前に降り立った。
そのオーリエさんだが、最初は悲鳴こそ上げたものの、ロミさんに口を塞がれ、軽く小声で『悲鳴上げないなら手を放します』と脅され、頷いて手を放されると、反動なのか何なのかわからないけど、両手を広げて前に駆け出し、結界に頭をぶつけて盛大にひっくりかえった。
結界の前部は尖っている構造になってるからね。流線形ってやつだ。
「全く、何をやっているのよ…」
くすっと笑いを漏らしてからロミさんに起こされ、『首が…』って言いながら起き上がって頭をさすりながら首を回すという器用なことをしてから、おそるおそる立ち上がって両手を伸ばし、『見えない壁があります…』と言ってぺたぺたと触りながらうろちょろし始めた。
- オーリエさん、できればじっとしてて欲しいんですが…。
「あ、すみません、前が見えなくなっちゃいますよね…」
そうじゃないんだが、まぁそれでもいいや。
今回はもう目的の方向もわかっているし、行きに比べて速度も控えめだからいいけど、限界飛行とか、曲芸飛行とまでは行かなくても方向を変えたりする場合、結界内部でうろちょろされるとバランス操作に影響が出るんだよ…。
と、詳しく言ってもしょうがないからね。
- ええ、まぁ…。
「でもまるで夢のようです、空を飛んでるんですよね?、これ。神殿の本にあった、竜の背中に乗って飛ぶ英雄ってこんな感じなんでしょうか?、雲の上ってこんななんですね、あ、でも全然風を感じませんね!」
「其方、オーリエと言ったか」
「はい!」
「気持ちはわかるが、少し黙るのじゃ、落ち着いてこの雄大で壮大、そして美しき世界を堪能すれば良いのじゃ。飛行しておる時間は限られておるのじゃから」
テンちゃんに言われ、むぐっと口を噤んでこくこくと頷き、ロミさんの隣にもどって彼女の左腕を両手でしっかりと握った。
ロミさんはそれにちらっと視線を送ってから、しょうがない子ね、とでも言いそうな表情で小さく息を吐き、右手を俺の左腕に絡ませて頭を肩にこてんと寄せた。
それ以降は、誰もが黙っていてくれたが、雲の下と上を行き来する時と、縦に積みあがっている雲を抜ける時だけは、感嘆の溜息と小さな声が漏れた。
行きはこのあたりは、高高度からでも地形が見えていたんだ。でも今はそれと比べて雲が多いので、どうしてもそうなっちゃうんだよ。
その時に作っておいた縮尺の大きな地図を見ながら方向修正をするんだけど、索敵魔法だけじゃなく目視でも確認したいし、それには雲の下まで降りないと見えないからね。
まぁそんなわけで、帰りは行きの3倍ぐらいの時間をかけた。
おかげで到着した時には日が沈んで間もない時間になってしまった。
そして入り口の布の前でひと声かけて『どうぞお入りください』と返事を聞いてから、布を手で寄せて中に入った。
「おかえりなさいませ、タケル様、実は問題が…、あ!?」
整列して立って迎えてくれた7名を代表してヒースなんとかさん、王姉殿下が言って途中で固まった。
「りゅ、「竜の巫女!?」」
「じゃ、邪神教!?」
え?、今『邪神教』って言った?
同時にお互いを見て驚いたように言うからよく聞き取れなかったよ。
あっちのほうが人数多いし。
「タケル様!、どういう事でございますか!?」
「タケル様!、どうしてこのひとたちが!」
あーもう、同時に言わないでくれないかな…。
- あの、落ち着いて下さい、とりあえず席に着いて、話を聞いて下さい。
「わかりました…」
「わかりました」
とりあえず座ってもらい、まずは双方黙って話を聞いてもらうように言ってから、こうなった経緯を話した。
その途中で俺から尋ねたんだけど、リンゴーさんは確かにその両親の世代からあの屋敷の果樹園を世話してくれている農夫だということがわかった。現在はリンゴーさんの母と妻と子供3人で果樹園の管理小屋で生活をしているんだそうだ。ヤンゴーさんについては一瞬首を傾げたが、クラリエさんが『ああ、王都に出て衛兵になったという…』と、思い出したようだった。
キンキンさんについては、屋敷の管理を頼んでいる家令の奥さんじゃないかという話だった。
「名前は失念しましたが、ガーレイの連れ添いが甲高い声をしていたように記憶しております」
との事。
まぁ全員の身元が判明しなくても、2名までが関係者っぽいなら別にいい。
山賊とかが住み着いているというので無ければね。
それでも俺は特に困らないけど。
ああそうそう、経緯を話したと言っても、ご神体をすり替えたとか、光の精霊さんたちが登場して、とかそういう話は一切していない。ただオーリエさんを救出したのと、王姉殿下が管理している屋敷の倉庫に寄り道したという事だけだ。
そして、彼女たちには、オーリエさんはもう竜の巫女じゃないという事と、ご神体の声なんて嘘で、教祖による命令に従っていただけだという事を話し、そんな嘘でのし上がった竜神教の教祖に全部ひっかぶってもらいましょうという計画を話した。
まぁ、計画という程のものでもないし、俺が表立って面倒を見れるもんでもないので、あとはこのひとたち次第なんだけども。
この話にクラリエさん以下6名がやたら乗り気になった様子なので、任せちゃってもいいかなーなんて思ったのもある。
で、だよ。
さっきちょっとオーリエさんが気になる事を言っていたのでこそっと尋ねてみた。
- オーリエさん、さっき邪神教とか言ってませんでした?
「え?、は、はい、えっと…」
「構わないよ、竜神教が私たち光闇教の事をそう呼んでいる事は知っているからね」
ヒースなんとかさんがオーリエさんの様子に気付いてそう言った。
「はい…、先ほどは失礼致しました。私を匿って下さる方々に愚かな事を申しました。殿下ならびに筆頭魔導士閣下、皆様にお詫び申し上げます」
「私は構わないと言ったんだ。タケル様がお尋ねなんだ、私たちに済まなく思うなら、正直にお答えするんだね」
「わかりました、あの…、タケル様と仰るのですね、知ってしまって良かったのでしょうか…」
- ああうん、それはもういいよ。最初は隠すつもりは無かったからね。
ロミさんは名前を知られるとちょっと都合が良くないかも知れないから隠したわけで、俺やリンちゃんは別に知られたところで問題無いと思う。テンちゃんについては…、ここのひとたちとの兼ね合いがあるからあまり知られるのは良くないかも知れないけどね。
- それで、邪神教というのは?
「はい、私たち竜神教は、精霊信仰の事を邪教と呼んでいるのですが、中でも光や闇の精霊を信仰している光闇教の事を邪神教と呼び、それぞれの精霊を邪神と言っているんです」
えー?、邪神か…。
あー、そう言えばそんな伏線あったわー、あったわあったわ。
でもテンちゃんにそれを言うと泣くだろうなぁ…。
言わないようにしないと。
「私どもベルクザン王国では、大小幾つもの宗教を許容しております。その上で際限なく紛糾してしまう恐れのある宗教対立や宗教論争は、それが例え酒の席であっても厳しく禁じているのでございます。よって、幾つかの宗教ではこのように、他教を否定し貶めたりする者が居るのです。そういった事が積み重なると、隣国アリザンのように国民を歪んだ教育によって他国の宗教を否定し、ひいては戦争の理由に――」
俺の表情に出ていたんだろう、ヒースなんとかさんが説明をし始めたが、ここでそういう講釈を始められてはたまらない。
- あーっと、ちょっと待ってください。
「はい」
- 事情はなるほどわかりました。ご不満があるのもわかります。けど、ここでそのような話をされても困ります。
「申し訳ございません」
ヒースなんとかさんが頭を下げたのを見て、オーリエさんが目を丸くした。
- そういえば最初何かを言いかけてませんでした?、問題がとか。
「あ、そうでございました。クラリエ」
「はい、あ、黒鎧でございますが、反応が無くなってしまいまして、どうしたものかとお伺いしたく思っておりました」
黒鎧、つまりクリスさんの事か。
- あ、それならこちらで対処します、どこに寝かせているんでしたっけ?
と、立ち上がると、クラリエさんもそれを見て立ち上がった。
「こちらでございます」
案内され、寝室のベッドをひとつ占領している黒鎧の横に来た。
うん、クリスさんの魔力がほとんど抜けてるね。ただの人形のようだ。
遠隔操作の人形なんだけども。それに機能的にはほとんど壊れているみたいだし。
- なるほど、じゃあ回収しますね。
と、黒鎧人形の手からポーチに突っ込んで回収した。
「そ、その、大丈夫なのでございますか?」
焦ったように言うクラリエさん。
- はい。中身はもうここには居ません。今頃は帰還して快復までお休みしているでしょう。
「…はっ、そ、そういう事でしたか」
- 状態があまり良く無かったんで、場合によっては数年かかると思われますが、彼は回復時間がやたらと早いと聞いてもいますので、もしかしたらもっと早く戻って来れるかも知れません。
ミイラみたいに痩せこけてたもんなぁ…、あれって普通に回復させるのってどれぐらいかかるんだろうね?、元の世界の医学だと、栄養点滴やら輸血やらリハビリやらでとんでもない時間がかかりそうだ。
「そうですか…」
- 僕も一度様子を見に行ってみますので、ん?、クラリエさん、どうかしましたか?
「あ、いえ、その、実は黒鎧が直ることを計画に入れて考えていたもので…」
- ああ、最強の勇者ですもんね。
「ご存じ…、あ…、はい、そうです」
えー、何その、貴方様は御神様の使徒だから知ってても当然でしょうとでも言わんばかりの納得顔。
- んー、こう言うのはどうかと思いますけど、彼に恨まれているとは思わないんですか?
ちょっと意地悪かな?
でも、そこは少し覚悟しておいてもらったほうがいいかも知れないからね。注意を喚起しておこうと思ったんだよ。
「……そう…ですね、その可能性も考えておくべきでした。ご忠告に感謝します」
クラリエさんは少し固まってから2・3度瞬きをし、素直に言って頭を下げた。
虎の威を借る狐じゃないけど、テンちゃんの威を借りたみたいな恰好になっちゃってるな、俺…。
リビングというか食卓のある部屋に戻ると、声を荒げているわけでは無いけど、あまりいい雰囲気の会話とはいい難い状況になっていた。
「だってこの女のせいで!」
「やめないか、タケル様も居られるのだぞ?」
「ですがおひい様」
「私は、やめないかと言ったぞ」
「はい…」
俺としては関わりたく無いんだけど、何でか皆がこっちを見るんだもんなぁ…、何か言わなくちゃダメかなぁ…?、もう帰りたいんだけど。
- えっと、今後の事で建設的な意見を交わすのはいいと思いますよ。できれば仲良くしてもらえると、僕も助かります。はい。
こんな風にしか言えない自分が情けなくもある。
「タケル様、実はその、サラドナの実家、パーガル家は竜神教の神殿近くに王都で店を構えていたのですが、竜神教の教祖に注文を受けて商品を納入した際、神殿長と肩書を書いてしまい不興を買ってしまいまして、不心得な信者たちに店を壊されたのでございます」
クラリエさんが後ろからこそっと事情を説明してくれた。
それはまた気の毒な。大変だったとは思うけど、俺にそんな事情を知らされたところでどうしようも無い。
「ただの神殿長だったのに、教祖などと名乗りよったのです。それもこの、竜の巫女が現れてからなのです!」
オーリエさんを指差して言っているのがそのサラドナさんだろうか。
「わ、私は教祖様の言う通りにしただけで…!」
「やめないか!、見苦しい。タケル様、申し訳ありません」
- あーはい、えっと、サラドナさん?
「は、はい!」
- 僕が言わなくてもいい事だと思うけど、このオーリエさんも抵抗する術もなく、言われるままただ利用された被害者だって知っておいてね。悪いのはその教祖。いいかな?
「はい…」
- じゃあ僕は行くんで、あ、その前に食料とか物資の追加をしておかないとね。
と、ポーチから追加のタオルやら石鹸やら食料やらを食卓の上に積んでいった。
「ありがとうございます。大切に使います。それと、できればで結構でございますが、筆記用具などもありましたらお願いしてもよろしいでしょうか?」
そう言われたので筆記用具も出しておいた。今度はちゃんと羊皮紙とペンとインクを出したよ。どれもリンちゃんのだから光の精霊さん産のだけども。
これは川小屋に置いてあるのと同じ物のはずだから大丈夫だろう。
「上等な品々…、感謝申し上げます」
ヒースなんとかさんがそう言って全員が頭を下げた。オーリエさんもだった。
- じゃ、今度こそ行くんで、また何日かしたら様子を見に来ますね。
「はい」
何となく照れ臭くなって、振り返らずに俺は小屋を出た。
次話4-059は2021年05月07日(金)の予定です。
20210430:1箇所、句点が改行になっていたのを訂正。
訂正操作ミスで一部消えていたのを復帰。
(復帰前)つるんとした外観では無いし、
(復帰後)つるんとした外観では無いし、装飾らしい部品もついている。
助詞ミスを訂正。 俺を目を合わせようと ⇒ 俺と目を合わせようと
20210507:誤字訂正。 銅 ⇒ 胴
(あっれー?、執筆時に変換候補をしっかり選んだはずなのに…、うーん…)
●今回の登場人物・固有名詞
お風呂:
なぜか本作品によく登場する。
あくまで日常のワンシーン。
また入浴シーンが無いぞ…?
主人公より前に記述してるのに…
タケル:
本編の主人公。12人の勇者のひとり。
柄に合わない事をしている自覚はあるようです。
リンちゃん:
光の精霊。
リーノムルクシア=ルミノ#&%$。
アリシアの娘。タケルに仕えている。
相変わらずですね。デスモードじゃないのは疲れたから?
テンちゃん:
闇の精霊。
テーネブリシア=ヌールム#&%$。
後ろの部分は精霊語のため聞き取れない。
リンの姉。年の差がものっそい。
どうやって掴んでるんでしょうね?
ウィノアさん:
水の精霊。
ウィノア=アクア#$%&。後ろの部分は精霊語。
一にして全、全にして一、という特殊な存在。
今回は出番なし。というかここんとこしばらく出番ないですね。
アリシアさん:
光の精霊の長。
全精霊中最古というような存在。実は凄い精霊。
だいたい名前くらいしか登場しませんが一応。
ミリィ:
3章と4章前半に登場した有翅族の女の子。
身長20cm弱。かわいいね。
この話の時点では、川小屋でピヨというでっかいひよこの
お相手をしている。
川小屋:
2章でリンが建てた、現在はバルカル合同開拓地にある、
カルバス川分岐のところの小屋。
光の精霊のホームコア技術で守られていて、
まるで現代日本と変わらない暮らしができてしまう家。
小屋というよりはちょっとした民宿ぐらいのサイズ。
ミリィやピヨのほか、サクラやネリ、シオリが利用している。
ちょくちょくリンが補給物資を届けている。
ミリィやピヨの食事はサクラかネリが用意している。
ネリはよく、ミリィやピヨと会話の練習をしているようだ。
ハルトさん:
12人の勇者のひとり。現在最古参。
勇者番号9番。オオミヤ=ハルト。
ハムラーデル王国所属。
およそ100年前にこの世界に転移してきた。
『フレイムソード』という物騒な剣の所持者。
今回出番なし。
カエデさん:
12人の勇者のひとり。
勇者番号10番。シノハラ=カエデ。
この世界に転移してきて勇者生活に馴染めず心が壊れそうだったが、
ハルトに救われて以来、彼の元で何とか戦えるようになった。
勇者歴30年だが、気持ちが若い。
でも言動はタケルからするとちょっと古臭い。
お使いで走ってます。
ゆえに今回もまた出番無し。
ハルトもですが、そのうち出て来るのでここに残しています。
ロミさん:
12人の勇者のひとり。
勇者番号2番。マサダ=ヒロミ。
現存する勇者たちの中で、3番目に古参。
現在はアリースオム皇国皇帝を名乗っている。
今回も世話係でしたが、それも今回まで。
クリスさん:
12人の勇者のひとり。
勇者番号5番。クリス=スミノフ。
現存する勇者たちの中で、4番目に古参。
黒鎧への封印がようやく解除されました。
自分の身体に戻ったら戻ったであれではね…。
哀れです。
ちなみに、今話のセリフは、
「うぅ…、誰か…」
「…済まない…、面を…上げてくれないか…」
「暗い…、見え…ない…、面…を…」
でした。わからなくても問題ないですが、一応。
アリースオム皇国:
カルスト地形、石灰岩、そして温泉。
白と灰の地なんて言われてますね。
資源的にはどうなんですかね?
でも結構進んでる国らしい。
勇者ロミが治めている国。
トルイザン連合王国:
ハムラーデル王国の東に位置する連合王国。
3つの王国があり、数年ごとに持ち回りで首相を決めていた。
外国から見ると、それぞれの王族はトルイザンの王族とも言えます。
クリスという勇者が所属している。
3つの王国は西から順に、アリザン・ベルクザン・ゴーンザンと言う。
今回で竜神教のご神体強奪作戦終了ですね。
クリスもとりあえず救出はできたという事で。
救出と言えるんだろうか…。
アリザン王国:
アリザンはイアルタン教ではない精霊信仰で統一されている国です。
他教を許さない宗教ですが、例外的に、
同じ教えが多くあり、経典が同じイアルタン教の存在を許しています。
ゆえに、イアルタン教の勇者であり古参のハルトに対しては、
尊敬と信頼があります。
まだアリザン王国に情報が届いていないので、動きはありません。
ベルクザン王国:
宗教はいくつもあって、複数所属してもよいという国。
そのせいで、アリザン王国から目の敵にされています。
ゴーンザン王が病床に就いていたため、規定によりベルクザン王が
2期連続で首相となり統一王の肩書きをもつ事となった。
アリザンはその意味でも不満をもっていた。
まる投げでいいのか?、主人公よ。
おひい様と呼ばれる女性:
ベルクザン王姉。
ヒースクレイシオーラ=クレイア=ノルーヌ=ベルクトス。
タケルはついにこのひとの名前をちゃんと憶えなかった。
ヒースなんとかさん。
クラリエ:
ベルクザン王国、筆頭魔道師。
クラリエ=ノル=クレイオール。
容姿の揃った5人の女性:
ベルクザン王国魔導士会所属の魔導士たち。
クラリエの部下。
アリエラ=ノル=バルフカガー
イイロラ=ノル=ジールケケナーリ
セリオーラ=ノル=パハーケサース
サラドナ=ノル=パーガル
チェキナ=ノル=ネヒンナ
『ノル』というのは、魔導士に登録され、元の家の継承権を
放棄したという意味で付くものです。
継承権を放棄していない魔導士も存在します。
サラドナだけセリフがあったね。
オーリエさん:
竜の巫女。オーリエ=ゴットー。
もう竜の巫女をやめたつもりなので、『元』がつきます。
飛行を楽しめるひとその4?
竜神教関係者:
教祖ゲイル=ディマッシュ。
大司教、その他司教たちと司祭か助祭たち。
大司教は4名、司教数名は執務室に席があります。
それぞれ担当が決まっているのは普通ですね。
悪玉扱いですね。まぁほぼそうなんですが。
クロマルさん:
闇の眷属。テンのしもべ。
試作品零号らしい。
カンカンうるさい。
テンのポケットに居る。
リンゴー、ヤンゴー:
キンキン声の女性と一緒にリンたちに文句を言いに来た。
リンゴーは果樹園の管理をしている農夫一家の代表。
ヤンゴーはその兄らしい。
天気予報は関係ない。
ちなみに果樹園は柑橘類なのでリンゴは関係ない。
と言うかこの世界にリンゴなんて名称の果物は無い。
ウゼー:
ロミは魔物と言ったが、実は魔物では無く、ただの害獣。
特に名称が決まっているわけではないが、
地元で『ウゼー』と呼ばれている、牛の2倍ほどの大きな草食獣。
繁殖可能になった雌は『ンマー!』、雄は『ンモー!』と鳴き、
子獣は『ウゼー』と鳴く。
よく聞くと『ンゼー』なんだけど、
『ウゼー』に聞こえない事も無い。
子獣はエサを求めるためなのか、はたまた別の理由からかやたら鳴く。
故にこの獣はしょっちゅう聞こえるその鳴き声から
『ウゼー』と呼ばれるようになった。
無害だと思われていたが、害獣と認定された。
そのへんの話もあるので、そのうち出てきます。
※ 作者補足
この登場人物・固有名詞紹介の部分全ては、
あとがきの欄に記入しています。
本文の文字数にはカウントされていません。
あと、作者のコメント的な紹介があったり、
手抜きをしたり、詳細に書かれているけど本文には
無関係だったりすることもあります。
ご注意ください。