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4ー057 ~ 神殿後編・スケールがおかしい

 オーリエさんが花を摘み(用を足し)に行きたいと言い、ロミさんも小さく手を挙げて『私も』と言った。俺も行きたかったので、オーリエさんに案内してもらう事になった。

 でも男女で場所が違うらしく、彼女は残念ながら女性用の場所しか知らなかった。


 ってかね、そういうのは部屋を出る前に言って欲しい。


 探し回るのも何だし、我慢できない程では無いので仕方なく部屋に戻る事にした。


 「タケルさま?」

 「何じゃ、早いのじゃ」


- 場所がわかんなくてね……それ、何?


 リンちゃんが両手で抱えている、モップのお化けというか、ごちゃっとしたチューブっぽいのやドレッドヘアみたいなのの束が生えてる柄がリンちゃんの胴ぐらいある両手槌みたいな、わけわからんな、とにかく見た感じそんなのを見て尋ねた。


 「ここが不衛生なので少しお掃除をしようかと」

 「小腹が空いたのじゃ」


 ああ、食事をしようにも不衛生だからまずはお掃除って事ね。


- それ、掃除用具なの?


 「はい、なのでお姉さまに外に出て下さいと言ったところ、タケルさまが戻られたので…」


 なるほど、お掃除の邪魔と。

 でもその道具が一体どんな風に掃除するのかちょっと気になるね。


- そうだったんだ、じゃあテンちゃん、ちょっと出てようか。


 「うむ」


 テンちゃんを手招きしたらその手を握られたので、今さっき入ってきた扉から一緒に出た。リンちゃんはゴンっと床にその掃除用具を立てて置き、しゃがんで操作をし始めたようだ。


 出ると、扉が内側からぐっと押さえつけられたみたいな音がした。

 その瞬間、扉の隙間から水蒸気?、じゃないな霧みたいな水しぶきが吹き出して、すぐにおさまった。ジョワッ!って音がしたんだけど…。続いてゴワーとも何とも表現しづらい雑音が部屋から聞こえてくる。

 一体どんなお掃除なんだ…。


 「のぅタケル様よ」


 握っている手をちょいちょいと揺らされた。


- はい?


 見上げているテンちゃんの表情が不安そうな色だった。


 「また下に降りて、戻ってくるのであろ?」


- うん。


 片膝をついて、視線を合わせた。


 「なら、私はこの部屋で待っておっても良いじゃろうか?」


- うん、いいけど?


 と、少し覗うように尋ねると、テンちゃんは俯き加減でその理由を話してくれた。


 「寮の子たちのように若い者はいいのじゃが、あの作業員たちの世代は私を腫物(はれもの)のように扱うのじゃ…」


- そっか…。


 そう言われてみると、ニュータイルさんもだけど、こっちを全然見ようとしなかった。あれはテンちゃんを見ないようにしていたのか…。仕事に集中してるんだと思ってたよ。

 あ、それでリンちゃんが不機嫌さを隠してなかったのか…。


 なので、片膝立ちのように姿勢を伸ばし、テンちゃんの手をちょいと引いて抱き寄せ、あやすように背中を軽く…。


 「終わりましたよ、…何してるんですか…」


 というところで扉が開いて、リンちゃんと目が合った。


 お掃除、早すぎじゃね?






 中に入ると、さっきとは打って変わって白かった。

 扉なんて、外側と色が違うんだよ。まるで新品の白木のような内側と、使い古した木材のような外側。

 何だこれ…、どうなってんのよ。いいのか?、勝手にそんな事しちゃって。


 壁も同様で、木のとこは白木のように輝いていて、石の部分もまるで大理石かってぐらい白くなってた。床は石材と木材の部分があったけどそれも同様。ちらかっていた布やごみもきれいさっぱり無くなっていた。ついでにオーリエさんを寝かせていた長椅子や、端にあった木の机も無くなってて、代わりに土魔法でリンちゃんが造ったんだろう椅子とテーブルがあり、テーブルクロスが掛けられていて、花瓶に花がもさっと活けられいい香りが漂っていた。


- 綺麗になったね…?


 「はい、頑張りました」


 まるで別の部屋じゃんって思いながらもそう言うと、リンちゃんは振り返ってにこっと笑顔で返した。

 テンちゃんは手近な席に着き、俺もその隣に座ると、リンちゃんがおしぼりをエプロンのポケットから取り出して手渡してくれた。

 そして俺とテンちゃんが手を拭いている間に軽食とお茶を並べ、リンちゃんも俺の隣に座り、同じメニューをもぐもぐと3人で食べていると、食べ終わったタイミングで、扉がすっと開いた。


 「あ、間違えました」

 「待って、間違えてないから、ここで合ってるから」


 オーリエさんが扉を開けて、また閉めようとしたのをロミさんが慌てて止めた。






 一応、手洗いをしてもらった方がいいかなと思って、床の上で悪いけどと言って、土魔法でさくっと桶を作って水を貯めたものを用意し、ふたりに手を洗ってもらい、その間にリンちゃんが彼女たちの分をテーブルに並べた。


 「一体何があったらこんなに真っ白になるのかしら…」

 「部屋を間違えてしまったと思いましたよ…」


- お掃除をしたんですよ。


 「お掃除?」

 「……」


 言うと、部屋を見回すふたり。

 うん、まぁ気持ちはわかるよ。


- 食事をするのに相応しくない部屋だからなんだってさ。まぁ、どうぞ。


 と、手で示すと、オーリエさんは竜神教の作法だろうか、手を組んで祈り始めた。それでも俺たちに遠慮してか、声に出さずに微かに口元を動かす程度だった。


 ロミさんはそれを横目で見て待ち、祈りが終わったのを見てから手を合わせて『頂きます』と小さく言った。妙な表情なんてせずに真顔だった。そういうところはさすがだと思う。


 「わぁ、このパン、すごく柔らかいです。いいのでしょうか…」


 と、確認するような目線で俺を見たので頷くと、隣のロミさんがそのままかじっているのを見て、同じように食べ始めた。


 軽食だからね。小さなパンを切って具を挟んだだけのものだ。それが2つだけ。

 イメージ的にはツナサンドとポテサラサンドだ。素材からして元の世界とは違うんだけどね。まぁそんな感じ。


 ツナサンドは川魚の燻製と香辛料をマヨで()えたもので、そこにレタスっぽい野菜とキュウリっぽい野菜のスライスと一緒にパンの切れ込みに突っ込んであるものだ。

 ポテサラサンドに至っては、ポテトというか芋なんて使われてなくてあれは何かの豆だ。それを他の野菜類のみじん切りと香辛料と一緒に、別の素材で作られたマヨで和えたものを、同じように野菜と以下略だ。


 どちらもマヨだけど、油や酢や卵が違うらしくて風味が全然別なんだそうだ。

 光の精霊さんってそういうのが好きみたいで、マヨはもう100種類以上のバリエーションがあるらしい。凄すぎて言葉もないね。


 もちろん、どちらも素晴らしく美味しい。もっと欲しくなるぐらい。

 でも夕食には早すぎるんだよ、おやつの時間にはちょっと遅いけどね。

 まぁこのペースだと、夕食の時間がちょっと遅くなりそうだから、小さなパン2つ分ぐらいでいいと思う。


 オーリエさんは欠食児童かってぐらいの勢いで食べていた。そんなに急いで食べなくても、誰も取らないよ?

 それに対して、ロミさんは上品でゆっくりと優雅に…、でも何だかペースが早かった。隣に釣られたのかな?


 まるで、『もう無いんですかご主人さま』とおかわりをねだるかような飼い犬の目で、でも遠慮しているんだろうね、言い出せない、そんな雰囲気を隠さずにしているオーリエさんを無視して、下に行ってくる事と、テンちゃんがここで待ってるって事を話した。


 「なら私もここで待ってるわ。だってあの階段を往復するのは大変なのだもの…」


 ああ、確かに。身体強化してないと辛いよね。俺だって素の状態であれを往復することを考えたらいい顔はしない。


 それに、ロミさんもここに居てくれるなら、オーリエさんの相手をしてもらえる。テンちゃんだけだとちょっとね…、何かまずいってわけじゃないけどさ。逆に、何かあってもテンちゃんなら対処が…、あー、それはそれで大事(おおごと)になりそうな予想しか出てこないな…。

 まぁでも、この状況で何かあったらそれはもう最初から大事(おおごと)だろう。そう思えばいい。






 というわけで、そろそろ1時間になりそうだから下に降りておくかというところでリンちゃんが連絡を受けたようで、俺に合図をしたので、リンちゃんと2人だけで部屋をでて階段を降りて行った。


- リンちゃん、そうくっつかれてると歩きにくいんだけど…。


 「たまにはいいじゃないですか」


 あ、ちょっと頬が膨れてる。可愛い。

 つつきたい衝動を抑えながらお姫様抱っこをした。


 「あっ、タケルさま…」


- これならいい?


 「はい…」


 抵抗されたら下ろそうと思ってたのに、何故かしおらしくなり、俺の服の胸元をきゅっと掴んで胸に頭を預けられてしまった。

 やばいな…、めちゃくちゃ可愛い。

 ちょっとふざけたつもりが…、でももう引き返せないのでこのまま降りて行こう。


 階段の段差で揺れるリンちゃんの髪やら足やら、腕にかかる重みやら感触やら。

 そういうのを意識しないようにしてるのに、時々見上げるリンちゃんの吐息が首筋にあたるんだよ…。


 って、リンちゃんが両手を伸ばして俺の首の後ろに回し、べったり抱き着いてしまった。

 いつぞやに、落とさないように抱っこしたメイリルさんを思い出すね。あれも大概まずかったんだけども。


- …リンちゃん?


 「こ、このほうが安定します」


 それはそうなんだけども…。

 まぁいいか…。あと半分、頑張って降りよう。






 開けっ放しにしていた扉の手前でリンちゃんを下ろしてから扉をくぐると、ニュータイルさんが駆け寄ってきた。


 「作業が完了致しました」


 と言って片膝をつき、頭を下げた。


 「追加情報はありますか?」


 と、リンちゃんが問いかけると、『はい』と顔を上げた。


 「天井に取り付けられている(あかり)を操作する仕掛けがありましたが、原始的なもので、大した仕掛けではありませんでしたので、そのままにしてあります」


- (あかり)を操作?


 「はい、そちらの――」


 彼が氷像をライトアップしていた照明器具を手で示した。


 「――強弱と、天井の(あかり)を収束する仕掛けです。それぞれ、壁と床に伝達線(ケーブル)が埋め込まれておりまして、操作盤はあちらの囲いにありました。質の悪い魔石でも動作する程度でございますし、既に人種(ひとしゅ)に伝わっている技術ですので回収するほどのものではありません」


 そうなの?

 と、リンちゃんを見る。にこっと笑顔。

 いや、そうじゃないんだよリンちゃん。癒されるけど。


 「あの、回収したほうが良かったでしょうか?」


- あ、いえ、そういう事なら問題ありません。ご苦労様でした。


 そう言って立ち上がるように手で示し、先ほど俺が造っておいたままになっている模型のところに歩いていくと、ふたりとも後ろからついてきた。

 別についてこなくてもいいんだけど…。


 ぽっかりと空いた場所。

 ついさっきまであのでっかい氷漬けの恐竜(オブジェ)があった場所だ。


 そこにさっき造った小型の氷像を参考にして、ポーチから取り出した絵を見ながら、元の位置に同じ氷像を造り上げた。

 ニュータイルさんと、まだ残っていたひとたち数名は『おおおぉ』と言って目を丸くしていた。


 表面の形状や曇り具合もばっちりだ。

 部屋の温度もそれに伴って急激に冷えた。こりゃ寒いわ。


 いそいそと、魔道具のあった場所にもそれらしい物体を作っておいた。

 文様はみたままを写し取った模型から写し取ったんだけど、もしかしたら細かい傷なんかは消えてしまってるかも知れない。


 そこはちょっと不安要素でもあるけど、まぁ、すり替えられたとバレたところで、誰がとかどうやってとか、そういうのは光の精霊さんたちでもなければわからないだろうと思う。だから割り切ろう。


 氷像の中身は土というか泥が凍ったようなものなので、そのうち溶けるだろう。もう今でも氷の表面が溶け始めていて、床に溶けた水が少し垂れてきているようだし。

 重さによる融解もあるのかもね。

 とにかく、これでここでの用事は済んだって事だ。


- こんなもんかな?、じゃ、撤収しましょうか。


 「「はい」」


 振り向いて言うと、リンちゃんとニュータイルさんが返事をした。


 「ではタケル様、リン様、失礼致します」


 そう言うと、リンちゃんが置いた転移石板の近くへと集まりつつある作業員さんたちに駆け寄っていき、転移の指示を出した。見ていると、来た時と同様に4名ずつ転移をしているが、それぞれ1名ずつボストンバッグのような大きさの手提げかばんを持っているようだった。


 「機材や、回収したものが入っているんです」


 隣で俺の左腕をそっと抱えたリンちゃんがそう言った。

 いつもなら左後ろに立ってるけど、今日はやけにくっついて来るなと思って見ると、にこっと微笑んで見上げた。


 「久しぶりにふたりきりですから♪」


- う、うん。


 まだ向こうで転移撤収中だけどね?


 さっきの階段での抱っこからゴキゲンだなぁ、やっぱりたまにはああいう風にしたほうがいいんだろうか…、ついふざけてやってしまった感があるんだけども…。


 ごまかすようにあちらを見ると、ニュータイルさんの組、つまり最後の4名がお辞儀をして転移して行ったところだった。


 「石板を回収してきますね」


 そう言ってすっと離れ、駆けていくリンちゃんを見送り、俺は紙を畳んでポーチにしまい、模型を分解処理した。






●○●○●○●






 神殿のみならず周辺の住民までもが一斉に危機感を覚え、取るものも取りあえず全員が全員、神殿から一定の距離を取るところまで避難した。

 その距離まで来てようやく、一体どうして自分たちはそんな事をしたのか、危機感の原因は何だったのかと不安を隠せずにいたところ、私たちが遅れてやってきたので、縋るように私たちへと群がり、不安を訴え、理由を尋ねた。


 そして往来ではあるが、後から集まってきた者たちにも見えるように座るよう指示をし、竜神様がお怒りであったのだろう事、竜の巫女が鎮めるためにひとり残っている事を伝え、私たちはあなたたちを安心させるためにやってきたのだと言うと、民衆はそれぞれ安堵した。


 そこに何事かとやってきたベルクザン王国第二騎士団にも同様の説明をし、隊長格の者だろう、彼が伝令を走らせるのを見てから、私が臨時に竜神教の故事を説き始めたのだ。


 通常の礼拝時は、私は挨拶をする程度であるが、今回は特別にと私から直接説話を始めたので、信心深い者たちは涙を流さんばかりに感動し、宗教的な姿勢に変えて聞く体勢になった。

 そういった者たちは通常なら前列を占めるが、今回は集団にまばらに居たようで、そのおかげか、釣られ従う者たちが多かったのもあり、この場を御しやすくなったのが助かった。


 第二騎士団もそれを咎めず、あとからやってきた者に指示をしたり、私に拡声用の魔道具を貸してくれたのも功を奏し、往来はひとで埋め尽くされたが通れる場所を作るなどの整理も担当してくれており、混乱とはほど遠い集団となった。


 時間を持たせる意味でも私のあとは、大司教の面々も順に説法を行ったところ、私を入れて3人の説話がちょうど終了したとき、神殿からのいやな感じが消えた。


 「竜の巫女が竜神様を鎮めたようです」


 私がそう言うと、どよめきと安寧の溜息が波のように広がった。


 前列から順番に戻って行くように指示をし、騎士団も協力をしてくれたので、私たちも神殿へと戻る事にした。騎士隊長が、あとで事情を聞きに来ると言っていたが、それまでに竜の巫女と話を合わせておかねばなるまい。


 「一体何だったのでありましょうね、教祖様」


 神殿の門をくぐると、すぐ隣を歩いていた大司教が尋ねた。


 「とにかくすぐに地下へ赴き、竜の巫女の無事を確認し、現状を調べて来るのです。警備の者らと手分けして、異常が無いか調べさせ、すぐに報告に来るように」

 「「はい」」


 執務室に入る前にそういうと、追従してきていた者たちは早足で散って行った。






 「竜の巫女が消えた?」

 「はい、扉には爪と血の跡があり、床には割れた爪の欠片と血の跡などが残されておりました」

 「部屋を出た形跡は?」

 「ありません。扉の施錠はされたままでした」

 「他に変わったところは?」

 「それもありません。ご神体もそのままでした」

 「そうですか…」


 一体どこに…。


 「生贄になったと言っている者がいましたが…」

 「妙な噂を広めないように注意しておきなさい」

 「はい」


 まさか本当に生贄になったわけでは…。


 「教祖様!」


 急いで飛び込んで来たのは警備担当の司教だった。


 「何だ!、騒々しい!」


 注意をしたのは大司教のひとりだ。


 「地下入り口の控室が、き、きれいに!」

 「は?、何を言っているんだ」


 他の皆も同じ気持ちなのか、疑問を浮かべていた。


 「と、とにかく見ればわかります!」

 「わかりました、行きましょう」

 「教祖様!」

 「大慌てでやってくる程きれいだと言うのなら見てみるしかないでしょう」


 私は立ち上がってそう言い、警備担当司教の後に続いた。






 「こちらです」


 案内された地下入り口の警備員控室の前は、警備員や他の者が鈴なりになっていた。

 その人垣を分けて、内側に開け放たれた部屋の前まで来ると、中はがらんとしていたが、まるでそこだけ新品の資材で新たに作られたかのように美しい部屋となっていた。

 きれいだと言ったのも頷ける。


 「これはまた…、何とも…」

 「この者が最初に発見しまして」


 振り向いて頷くと、続けて話し始めた。


 「棚に置いていた着替えや、他の荷物などもきれいさっぱり無くなっていたそうです」

 「それだけじゃありません、机や長椅子があったはずなんですがそれもです」

 「ふむ…」

 「あと、いつもならこの部屋は汗臭かったりするんですが、何だかいい匂いがしてました…」

 「いい匂い?」

 「はい、何かの花のような…」


 そう聞いて私が中に入ると、ぞろぞろと後ろからもついて入って来た。

 そのせいで、彼らの(にお)いが部屋に充満し、花の匂いとやらはわからなくなった。


 「…執務室に戻りしょう」


 咎めるわけにもいかず、そう言う他は無かった。






 執務室に戻ったが、他に変わったところは見つからなかったようで、新たな報告は無かった。


 広範囲に危機感が広がった事。

 消えた巫女、きれいになった控室…。


 一体何が起こったのか、皆目見当もつかなかった。


 そこに、地下へと赴いていた大司教が息を切らせて戻ってきた。


 「きょ、教祖様大変です…」


 息を整えながら、顔中の汗を手布で拭っていた。


 「今度は何です」

 「ご神体が、と、溶け始めています」

 「な、何だと!?」


 全員でぞろぞろと長い階段を降り、急いだせいか私も少し息を切らせ、足の痛みを無視して到着すると、入り口は警備の者が4名で護られていた。


 「開けなさい」

 「はっ」


 私が言う前に比較的若い司教が命じ、警備の者が扉を開けた。

 ひんやりとした空気が扉の床を這い襲ってきた気がした。


 これほど寒かっただろうか?


 それとも、汗をかき、温まった身体だからそう感じられたのだろうか?


 「どうぞ教祖様」


 足元がひやりとした広い空間、『竜神の寝所』と我々が名付けたこの場所に入り、怪しげな文様が表面に描かれた大きな直方体の岩を回り込むと、足元2方向から照らされた威容を誇るご神体が見える。


 一見、変化が無いように思えたが、近づくにつれて氷の表面を伝い降りて来る冷気と、ご神体の足元、そこが濡れている事に気が付いた。


 「なるほど、溶け始めているというわけですね…」

 「はい、あれだけの氷が溶けるとなりますと、ここが水浸しになると予想されます」


 うん、と頷きながらご神体の足元の水を見回した。

 そこは既に足元の(あかり)近くまで水が広がっていた。


 「教祖様、ご神体は一体どうなるのでございましょう?」


 大司教のひとりがそう尋ねた。

 そんなもの、私だってわからない。

 竜の巫女を立てた都合上、ご神体は生きているという設定ではあるが、仮に本当に生きていて、氷が溶けて息を吹き返した場合、こんなものと会話ができようはずもないし、勝手に動かれては大変な事になるだろう。


 故に、生きて復活されては困るのだ。

 もし生きかえりそうならその前に何とかして息の根を止めねばなるまい。


 竜の巫女が居たなら、最後のお声を聞いたとでもして適当な言葉を言わせて置けばよかった。だが彼女は現在のところ行方が知れない。


 「氷が溶けるのを食い止める事は可能ですか?」


 この『竜神の寝所』の管理を任せていた大司教に尋ねた。彼はこの寒い室内で汗を拭きながら答えた。


 「恐れながら、それは不可能に近いと思われます。まず、このような大きさの氷を維持できる術者がおりません。複数の術者を同時に手配するとしても、交代で事に当たらせるほどの人数を確保できませんし、外部に情報が漏れてしまう恐れがあります」


 なるほど。と頷いた。

 確かに、温度を上げる火属性魔法の術者はそれなりに居ても、温度を下げる方についてはほとんど居ない。噂ではホーラード王国の魔法学院でそれに関する研究発表があったらしいが、我が国にはそのように優秀な術者は居ないし、大抵は邪教に身を置いている。我が竜神教においては魔法に詳しい者がほとんど居ないというのが現状だ。

 唯一、魔法が少し使えて、研究をしていた者がいた。それがこの大司教だ。


 「では溶けるに任せるしか無いという事ですね」

 「申し訳ありません」

 「貴方が謝る必要はありませんよ。此度(こたび)の異変は竜神様の(おぼ)し召しなのでしょう。ご神体の氷が維持限界に来たという報せだったのかも知れませんね」


 そう言って見上げた私の目には、灯の魔道具に照らされ、氷像が冷気を纏って睥睨(へいげい)している様子が見えた。


 「執務室に戻りましょう。今後の事を考えねばなりません」


 後ろに居た者たちが下がって頭を下げる。その間を通りながら善後策へと思いを巡らせた。






●○●○●○●






 神殿を出て、6箇所に設置した魔道具を逆の順番に回収して最後に神殿の裏にあたる位置から、クラリエさんたちから教わった場所へと向かった。


 その際、元『竜の巫女』であるオーリエさんに飛行魔法やら何やらで騒がれても困るので、タオルで目隠しをしてもらった。


- 不自由でしょうけど、我慢して下さい。


 テンちゃん式の飛行結界で包んだあと、リンちゃんに椅子を2つ出してもらい、オーリエさんとロミさんに並んで座ってもらった。


 「はい、あの、とても座り心地の良い椅子ですが、馬車で移動するのでしょうか…」


- まぁ…そのようなものです。不安でしたら隣の者の手でも握っていて下さい。


 「は、はい…」


 ロミさんにちょっと睨まれたが苦笑いをしているようだったので、一応許してくれたようだ。


 そしてふわっと浮き上がって上空へと加速し、俺が作った地図とクラリエさんたちが描いた地図と記述を見比べながら、王都の外れにある屋敷の倉庫へと向かった。

 オーリエさんが『ひゃぁっ』と言ってロミさんの腕にしがみついてから、『す、すみません』と謝っていた。

 最初に飛んだ時はそうなっただけで、それ以後の回収中は黙っていた。慣れるのが早いのか、我慢強いのか…。


 でもまぁ予想はしてたからね。こっちでもリンちゃんが俺の腰に回した手をきゅっと締めて背中に頭か横顔を押し付けてたし。毎回。


 それで回収後の目的地だけど、ヒースなんとかさんの話によると、その屋敷は今は使われていない王族のための離宮だったらしい。

 王の側室のためのもので、管理はされているが、使われてはいないんだってさ。


 現在の王様、ヒースなんとかさんの弟さんだけど、その人には正妻である正妃の他には妻が居ない。子供はまだ小さいが2人の王子が居て、将来的にも安泰なんだとさ。


 そういうわけで、王子が育つと自分は王城から出なくてはならず、その屋敷が候補のひとつだそうで、だからヒースなんとかさんの管轄になってるとか言ってた。


 そんな事を少し考えながら傾いた日の差す雲の上を飛んでいると、その屋敷が雲間に見えてきた。

 今回はそれほど高度を取って無いんだけど、午後になって雲が増えてきたのかな。明日あたり雨になりそうな感じだった。


 雲の下に降りて、眼下に広がる果樹園だろうか、整然と植えられている広大な敷地を見ながらその屋敷へと近づいた。


 「…ん?」


- どうしたの?


 「いや…、今少し…、よくわからないのじゃ」


- そう?、何か感じ取ったら言ってね。


 「うむ」


 そして、地図に記された、屋敷の裏手の倉庫の前に降り立った。


 「…妙な気配がするのじゃ」


 あ…、そういえば言って無かった。闇の精霊がどうのって、確か、ゼロとかいうのが居るんだっけ。オーリエさんから離れたら言わなくちゃね。


- えっと、悪いけど、一旦ふたりで入ってみるよ。ここで待っててもらえるかな?、何かあったら呼ぶので。


 名前を呼べないと不便だな。

 そう思いながらリンちゃんに言った。


 「はい、わかりました」


 少し不満そうなリンちゃんに頷いて、テンちゃんの手を引いて倉庫入り口に近づいた。


 あれ?、これ、でっかい南京錠ついてんじゃん…。

 鍵なんて預かってないんだけど。






●○●○●○●






 リンちゃんがやっていた開錠魔法?、いやまぁそんな大げさなもんじゃなくて、単純に結界操作で鍵を開けただけなんだけど、そういやリンちゃんのは風魔法の応用で開けてたっぽかったっけ。

 まぁいいや、とにかく鍵を開けて、中に入り、聞いていたように本棚をずらして地下室の入り口のある部屋に入り、そこから薄暗い中、階段を降りて扉を開け、廊下を進んで一番奥の部屋に入った。


 なんで明かりも無いのかというと、階段を降りた時にテンちゃんが『明かりは少し待つのじゃ』と言って俺の前に出たからだ。


 そして、部屋に入るとすぐにテンちゃんが、何やら魔導機械らしき物体の前に行き、その蓋をこじ開けたような音がして、ずるっと何かを引っ張り出したのが魔力感知で見えた。


 『この魔力感は…!、ああぁ、懐旧感です』

 「む…?、誰ぞ其方、何なのじゃ(まと)わりつくで無いのじゃ、気持ち悪いのじゃ」


 と、テンちゃんが靄のようなのを掴んでいる。手袋越しだけど。

 そしてその手袋越しに腕に纏わりついた黒い靄を、テンちゃんはぶんぶんと腕を振って振り回した。


 『ああん、この冷たい感じ、ご無体感、ご無沙汰感でございます(あるじ)様』

 「何なのじゃカンカンと…、はっ、其方ゼロか」

 『はい、貴女様の第一感の下僕(しもべ)零号、クロマルでございます』


 あ、中に入ったらテンちゃんに言おうと思ってたの忘れてた。

 鍵開けたり本棚ずらしたりしてたせいだ。


 「久しいが、其方連絡もせずどこに行っておったのじゃ?」


 テンちゃんが靄のようなものの首?、を右手で掴んでいるように見える。


 『それはその、(あるじ)様のため感で各地の情報感を収集感でして、自由感を満喫感というつもり感では決して』


 つまりテンちゃんのために情報収集というタテマエで、自由を満喫してたってことね。

 カンカンいう部分を抜いて言い訳してると思えば逆にわかりやすいかも知れない。聞き取りにくいけど。って、魔力音声か。音じゃ無いなこれ。なのにカンカン言うのか…。


 「ああ、思い出してきたのじゃ、こういう奴だったのじゃ。勝手に出て行って戻って来なかったのに、よくもまぁ言うものなのじゃ」

 『それがその、外出感が解放感でしたので、勢い感で時間感をうっかり感になりまして、朝日感が恐怖感ですので、焦燥感で潜伏感を捜索感しましたんですよ。そしたらなんと船上感で海上感で驚愕感ですよ。もう大変感で報告不能感でした』


 ホント、カンカンうるさいひと(?)だなぁ…。これ文字にすると『感』って字がゲシュタルト崩壊しそうだ。

 それはそうと、『恐怖』ってそもそも感じるものなので、それに『感』つけるのっておかしくね?

 クロマル(ゼロ)さんの場合はただの口癖っぽいけども。


 「ああもう良い、とにかく連絡も移動もできずにいたという訳か。それにしては期間が(いささ)か長すぎるように思うが、どうせ其方の事じゃ、開き直ってそのまま放浪していたのじゃろう」

 『(あるじ)様は聡明感でゼロの事を良くご理解感で喜び感の嬉し感でございますよ』


- テンちゃん、それ、クロマルさん?、でいいのかな、


 『先程感から気掛かり感でしたが好感の魔力感の持ち主よ、気軽感でゼロの名をぐぇっ、(あるじ)様、ご無体感…』

 「うるさいのじゃ、タケル様に無礼は許さないのじゃ」

 『はい…』


 靄みたいなのが『ぐぇっ』って、やっぱり首なのか?、テンちゃんが握ってる部分。

 確かに魔力感知では首っぽい感じはするんだけどね。ただでさえ靄みたいな身体(?)なのに、ここって暗いから肉眼では全然わからない。


 「タケル様よ、気にする事は無いのじゃ。此奴(こやつ)の事はゼロでも『それ』でも好きに呼び捨てるが良いのじゃ」


 いやまぁそういう訳にも…。


- そのクロマルさんが、その魔道具に入ってたんですか?


 「入っていたというか、魔道具の核が依り代というか、依り代を核に加工されてしまったと推測するのじゃ」


 なるほど…?


 「それで出られなくなっておったのを、いま(われ)が引き剥がしたのじゃ」


- なるほど。


 そこから事情をいろいろ聞いていき、スケール感が狂いそうになったので概要だけ言うと、こういう事だった。






 まず、1万年ぐらい前、まだテンちゃんの眷属(クロイチ、クロニー、クロミ、クロッシ)4名が居なかった頃の話だそうだ。


 もうここで既に時間的スケールがおかしいが、そこはスルーするとして、光の精霊さんたちとの共同研究中、何かの拍子に偶然、闇属性魔力の塊に自我が生まれてしまったんだそうだ。


 魔力の塊に意識が宿るというのはよくある話だそうで――いやよくあるのか?――、でも大抵は一瞬で消えてしまうんだそうだ。


 クロマルさんの場合は珍しいケースで、一瞬ではなく少し長かった。そのまま消えてしまうのは何だか惜しいと考えたテンちゃんたちは、水や風の精霊という存在を参考に、その存在を留めるように工夫をしたらしい。

 そのある意味試作品が、このクロマルさん、通称ゼロさんなんだってさ。


 その後、教育するなどの間にも研究が進み、クロイチさんをテンちゃんの侍女として作り出し、クロッシさんまでの4名ができたんだと。

 その途中で、クロマル(ゼロ)さんがどっか行っちゃって、探したんだけど見つからなくて、これは消滅してしまったんだと諦めたみたい。


 さっきちらっとそれらしい事を言ってたけど、クロマル(ゼロ)さんは日光の下では徐々に消えてしまうそうで、そうならないようにどこかに憑依というか、依り代を見つけて隠れなくちゃいけないんだと。


 で、たまたま隠れた物品が、昼の間に船に乗せられて持って行かれたってのがさっきの話だね。


 んでだ。


 テンちゃんもそうだけど、このふたりの言う、眠って起きるという時間間隔は、普通の感覚ではないので、起きて船の上だったから眠った、イコール、それから何年も、場合によっては何十年って経ってんだよ。


 最初、それがわからなくて、何で?、って疑問だったけど、この点に気付いてやっとパズルのピースが嵌ったように理解ができた。


 なので、隠れて宿った物品が、半日で船に運ばれたわけでは無いし、気付いたら船の上だったからまた眠り、それから起きたら全然知らない場所で、外は明るいし出られないのでまた眠った、という時間も同様に何年何十年、下手すると何百年って間があいているんだ。


 な?、スケールがおかしいだろ?


 起きたら明るいから出られないとか、それでまた恐ろしい年数スケールで眠るんだからもうわけがわからない。


 そんでもって、嵐の剣(テンペストソード)の例を思い出して欲しい。


 あの剣は、おそらくウィンディ、当時はまだ名も無き風の精霊だったけど、彼女が宿る前は、ちょっと風属性に適正があるだけの剣だったろう。それが、精霊が長く宿っていたために依り代として適した物品へと変化した。風の精霊ファーさんの言葉を借りれば『居心地の良さそうな』剣になったってわけだ。


 それと同じ事が、クロマル(ゼロ)さんが憑依していた物品にも起きたと考えられる。


 クロマル(ゼロ)さんは、外が明るいので出られずにいた、というのと、出たけど外が明るいので戻った、っていう二つの表現をしていたので、室内だとか箱だとかに安置されていた期間もあったんだろうね。


 そんでもってそれが魔道具の一部となり、出られなくなっていたのを、さっきテンちゃんがひっぺがした、って事か。


- それでテンちゃん、見たところクロマル(ゼロ)さんが入ってたモノって壊れてるみたいだけど、何か代わりのものを用意しないとクロマル(ゼロ)さんを連れて行けないんじゃない?


 「ん?、ああ、壊れているのは此奴(こやつ)を封じていた外側の仕掛けだけなのじゃ」


 と言ってクロマル(ゼロ)さんを片手に掴んでぶら下げたままだった腕を下げ、『ぐぇ』とか時々言ってるように聞こえるけど、だらりとなったぬいぐるみでも持っているような感じで魔導機械の所に行き、もう片方の手で壊れている毬みたいな核を取り出した。つながってたらしい配線だろう金属製の糸がぶちぶちと切れる音がした。


 「これの事を言っておるのじゃろ?」


- う、うん…。


 それだったのか?

 これの事と言われても、そんなもんわかるか、と思った。


 するとテンちゃんは、『ガワが分厚いのでわかりにくいのじゃ』と言いながら床に叩きつけた。


 え?、大丈夫なのそれ?


 と思っているとテンちゃんがしゃがんで残骸の中心にころんとあった、見たところガラス質の黒い塊を拾い上げた。大きさはゴルフボールよりちょっと大きいぐらいかな。でも球体では無い石ころみたいな形だ。


 「また逃げられても面倒なのじゃ、ゼロよ、しばらくここに入るのじゃ」

 『ま、また入るのでございますか…』

 「つべこべ言わず入るのじゃ」


 と、その黒い石ころを靄の頭部(?)だろう場所にぐいっと押し付けた。


 『ご無体感なぁぁぅぅ…』


 クロマル(ゼロ)さんはそう言いながらしゅるっと入って行った…、ように見えた。魔力感知では。

 肉眼ではさっぱりわからないからね。真っ暗だし。


 「ふぅ、全く、手のかかるやつなのじゃ」


 そう言って俺にその黒い石ころを差し出した。


- え?、それ僕が持つの?、ポーチに入れられないよね?


 「ん、それもそうじゃな、仕方ないのじゃ」


 と言ってスカートのポケットに入れた、ように見えた。


 ってかそのスカート、ポケットあったんだ…。






次話4-058は2021年04月30日(金)の予定です。


20210429:テンのセリフが1箇所だけ二重括弧になっていたのを通常括弧に訂正。



●今回の登場人物・固有名詞


 お風呂:

   なぜか本作品によく登場する。

   あくまで日常のワンシーン。

   また入浴シーンが無い…。


 タケル:

   本編の主人公。12人の勇者のひとり。

   忘れっぽいにも程がある。


 リンちゃん:

   光の精霊。

   リーノムルクシア=ルミノ#&%$。

   アリシアの娘。タケルに仕えている。

   姉の居ぬ間にタケルにべったり。

   もちろん階段をのぼる時も抱っこを要求しました。


 テンちゃん:

   闇の精霊。

   テーネブリシア=ヌールム#&%$。

   後ろの部分は精霊語のため聞き取れない。

   リンの姉。年の差がものっそい。

   ご神体の件では関わってなかったけどね。

   闇の精霊を名乗る存在、ってったら当然、関わってますよね。


 ウィノアさん:

   水の精霊。

   ウィノア=アクア#$%&。後ろの部分は精霊語。

   一にして全、全にして一、という特殊な存在。

   今回は出番なし。というかここんとこしばらく出番ないですね。


 アリシアさん:

   光の精霊の長。

   全精霊中最古というような存在。実は凄い精霊(ひと)

   だいたい名前くらいしか登場しませんが一応。


 ニュータイルさん:

   本文にもありましたが、急遽編成されました遺産処理班の班長。

   左官屋さんでは無い。

   彼を筆頭に、転移してきたのは40名ほど。

   もちろん全員光の精霊さんです。

   今回で出番終了かもです。


 母艦エスキュリオス:

   光の精霊さんが所有する、いくつかある母艦のひとつ。

   ニュータイルさんはそこで働いている士官のひとり。


 ハルトさん:

   12人の勇者のひとり。現在最古参。

   勇者番号9番。オオミヤ=ハルト。

   ハムラーデル王国所属。

   およそ100年前にこの世界に転移してきた。

   『フレイムソード』という物騒な剣の所持者。

   今回出番なし。


 カエデさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号10番。シノハラ=カエデ。

   この世界に転移してきて勇者生活に馴染めず心が壊れそうだったが、

   ハルトに救われて以来、彼の元で何とか戦えるようになった。

   勇者歴30年だが、気持ちが若い。

   でも言動はタケルからするとちょっと古臭い。

   お使いで走ってます。

   ゆえに今回もまた出番無し。

   ハルトもですが、そのうち出て来るのでここに残しています。


 ロミさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号2番。マサダ=ヒロミ。

   現存する勇者たちの中で、3番目に古参。

   現在はアリースオム皇国皇帝を名乗っている。

   今回は世話係のようになってますね。


 クリスさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号5番。クリス=スミノフ。

   現存する勇者たちの中で、4番目に古参。

   黒鎧には意識が封印されている状態。

   その鎧が壊れかけているため、思うように動けない。

   今回は登場せず。


 アリースオム皇国:

   カルスト地形、石灰岩、そして温泉。

   白と灰の地なんて言われてますね。

   資源的にはどうなんですかね?

   でも結構進んでる国らしい。

   勇者ロミが治めている国。


 トルイザン連合王国:

   ハムラーデル王国の東に位置する連合王国。

   3つの王国があり、数年ごとに持ち回りで首相を決めていた。

   外国から見ると、それぞれの王族はトルイザンの王族とも言えます。

   クリスという勇者が所属している。

   3つの王国は西から順に、アリザン・ベルクザン・ゴーンザンと言う。

   今回で竜神教のご神体強奪作戦終了ですね。

   そしてクリスの身体を確保しに行きました。


 アリザン王国:

   アリザンはイアルタン教ではない精霊信仰で統一されている国です。

   他教を許さない宗教ですが、例外的に、

   同じ教えが多くあり、経典が同じイアルタン教の存在を許しています。

   ゆえに、イアルタン教の勇者であり古参のハルトに対しては、

   尊敬と信頼があります。

   まだアリザン王国に情報が届いていないので、動きはありません。


 ベルクザン王国:

   宗教はいくつもあって、複数所属してもよいという国。

   そのせいで、アリザン王国から目の敵にされています。

   ゴーンザン王が病床に就いていたため、規定によりベルクザン王が

   2期連続で首相となり統一王の肩書きをもつ事となった。

   アリザンはその意味でも不満をもっていた。

   さてどうなることやら。


 おひい様と呼ばれる女性:

   ベルクザン王姉。ヒースクレイシオーラ=クレイア=ノルーヌ=ベルクトス。

   名前の欠片だけ登場。


 クラリエ:

   ベルクザン王国、筆頭魔道師。

   クラリエ=ノル=クレイオール。

   今回名前だけ登場。


 容姿の揃った5人の女性:

   ベルクザン王国魔導士会所属の魔導士たち。

   クラリエの部下。

   アリエラ=ノル=バルフカガー

   イイロラ=ノル=ジールケケナーリ

   セリオーラ=ノル=パハーケサース

   サラドナ=ノル=パーガル

   チェキナ=ノル=ネヒンナ

   『ノル』というのは、魔導士に登録され、元の家の継承権を

   放棄したという意味で付くものです。

   継承権を放棄していない魔導士も存在します。

   今回出番無し。


 オーリエさん:

   竜の巫女。オーリエ=ゴットー。

   もう竜の巫女をやめたつもりなので、『元』がつきます。

   目隠しされて、完全に誘拐事件ですよね、これ。


 竜神教関係者:

   教祖ゲイル=ディマッシュ。

   大司教、その他司教たちと司祭か助祭たち。

   大司教は4名、司教数名は執務室に席があります。

   それぞれ担当が決まっているのは普通ですね。


 クロマル(ゼロ)さん:

   闇の眷属。テンのしもべ。

   試作品零号らしい。

   カンカンうるさいね。



 ※ 作者補足

   この登場人物・固有名詞紹介の部分全ては、

   あとがきの欄に記入しています。

   本文の文字数にはカウントされていません。

   あと、作者のコメント的な紹介があったり、

   手抜きをしたり、詳細に書かれているけど本文には

   無関係だったりすることもあります。

   ご注意ください。



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2019年05月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
なるほど。わかりません。
2020年01月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
同じやん。なるほど。やっぱりわかりません。
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