1ー018 ~ 光のくに
どこにあるのかなー、ひかりのくに。
それはキミたちの心の中にあるんだよ。
光の国、ってなんか3分しか戦えない戦士たちのなんとか、みたいだよね。
おふざけはこのへんにして、光の精霊の里。
たぶん転移魔法だろうなーなんて思ったらやっぱりそうでした。
いつの間にか外んところに仕込んであったようで、何を、って転移陣の石板ね。
リンちゃんがいつもやってるみたいに、みんなで抱きついて押し競饅頭状態かな、いいのかな、でへへへとか言っちゃダメだからポーカーフェイス進行で、饅頭の大きいのや小さいのが押し付けられたりするのかな、とかちょっと期待してたんだけど、全然そんなことありませんでした。
モモさんからペンダントみたいな、直径3cmぐらいの、んー、ガラスに封入されたメダルみたいなの、ああ、レジンっていうんだっけ透明な樹脂。あれみたいな感じの手触りで、中にメダルが入ってるやつ、そんでヒモでペンダントにしてる。それを渡されて、首からかけるだけ。あとは代表してモモさんが詠唱、15秒ぐらい?、で、シュバふわ。終わり。
予め連絡が行ってたようで、アリシアさんを先頭に、大勢の、ざっとみて1500人ぐらい?、が並んでたよ。みんな髪きらっきらしてる。やっぱりサングラスが欲しい。
服装はだいたい同じで生成りのワンピース。ズボンの人もいるね。
俺の足元は転移陣がうっすらと描かれてるんだろう、薄く模様が入ってる石舞台の上だった。石舞台の周囲には8本の石柱が立っていて、柱の天辺には籠のように金属で囲んである中に乳白色の石があった。
柱の向こう側には壁があり、壁の上にはその向こうの森?、の木々が見えている。
精霊さんたちの集団の向こう側には門が見える。あの奥が精霊さんたちの街かな?
この舞台は正面に石段が10段ぐらい、それが2段あって、かなり高い位置になっている。石舞台の周囲は、白い花が咲いてる植物がうえてあって、とても清涼な香りと雰囲気になっていた。
モモさんを先頭に、石舞台から降りていく。4人が降りたらリンちゃん。俺は最後尾だ。
アリシアさんに先頭のモモさんから挨拶をし、最後に俺。
- このたびはお招きに預かり、緊張と期待で胸の鼓動が今朝から落ち着きません。
『ようこそ勇者タケル様。我々光の精霊一同、あなた様を歓迎いたします。』
アリシアさんが言う。
後ろの精霊さんたちが口々に「タケル様!歓迎します!」とか、「素晴らしい燻製をありがとう!」とか、ただ単に「ありがとう!」とか「歓迎しますよー!」とかすごい歓声だ。
モモさんが隣で片手を軽く上げた。皆が徐々に静まり返る。
あ、モモさんたち腰にそれぞれ異なる形のポシェットをつけてる。
あれも魔法の袋だったりするのかな。
『歓迎の準備は整っております。ではこちらに』
アリシアさんが踵を返すと、精霊さんたちがさーっと左右に分かれて道が開ける。
向こうから何か馬車?、馬か?あれ、馬だな、半透明でうっすら光ってるけど、そんな幻想的なのに牽かれたオープンな馬車が来た。
え、これに乗るのん?
●○●○●○●
パレードだった。うん。俺別に大したことしてないのに、パレードだったよ。
「タケルさま、適度に片手をあげて笑顔で声援に応えてあげてください」
とか言われてさ、恥ずかしかったけど、開き直ってどーにでもなれ状態で、ずっと手を振って笑顔つくってたよ。あはは。人間やりゃあできるもんだな。
もう腕あがんないよ。
え?、強化魔法?、忘れてたよそんなの!
アリシアさんの家?、家だよね?、これ。長だから領主の館みたいなもんかな。
そこに到着して、馬車をおりて玄関から入ったら、なんか俺だけ別のとこに案内されたんだけど、え?、着替えですか?、あっはい、確かにしょぼいですよねこの格好、それでパレードで手を振ってたんだけどよかったんですかね?、今更か。いいや。はい、着替えます。
なんか濃い灰色の服が用意されていた。
そんで着替えをしてくれようと待機してる2人の精霊さんがいてさ、ちょっと困った。
上はいいんだけど、下は実はズボンの下がノーパンなので、ちょっと隅っこに行ってズボン脱いで下着とズボンだけは自分で履いた。だって恥ずかしいじゃん?、くすくす笑われちゃったよ。
上は肌着のシャツと、チュニックみたいなゆったりした長袖の服。襟ぐりのところに刺繍がしてあって、胸にポケットがついてる。そんで腰んとこを軽く布の帯で縛るようになってて、あ、サッシュみたいな?、そんな感じ。
そして前綴じのない上着を着せられて終わり。
人に着替えをしてもらうなんて初めてだから、やりにくかったんじゃないかな、あのお手伝いしてくれた精霊さん2人。
途中で、『少し右手を上げてくださいますか?』とか、『はい、降ろしてください』とか、『足を肩幅に開いて』とか、細かい指示されちゃったよ、あはは。
終わってから、『不慣れでごめんなさい、ありがとうございます』って言ったら2人ともくすくす笑ってたけど。
そんで謁見の間みたいなとこに通されて、途中で教えてもらった型どおりに印のあるところまで出て、片膝をついたら、式?、が始まった。
両側にはずらっと精霊さんたちが並んでて、あ、もしかしてさっき並んでた1500人の前の方に居た人たちかな?、ちょっと見覚えあるかも。
『改めてようこそお出でくださいました、勇者タケル様。まずはご挨拶に、こちらの品をお受け取りください』
と言って隣にいた精霊さんが、四角いお盆の上に布敷いてあってそのうえに、腰につけるポーチ?、だよね、精霊さんたちがみんなつけてるやつ。それが乗ってるのを両手で持って、こちらに近づいてきた。
その精霊さんは目の前でこそっと、
「もう立ち上がって結構ですよ」
と言ってくれたので立ち上がって受け取る。
「こちらのベルトを袋の後ろの、そうですそこを通して、はい、お腰につけてください」
- はい、こうですか?
このベルトいいな。ベルトはバックル部分がつや消しの黒の、なんだろうこれ何でできてるのかな、ちょっとわかんないな。で、ベルト自体は革製かな、たぶん。茶色いし。
袋もこげ茶色の目立たない感じだし。フラップみたいなフタがあってボタンで留めてある。
『その袋は容量拡張魔法が込められた、光の精霊一族が皆もっているものと同じものです。タケル様の今後の旅にお役立てください』
- このような貴重なものを…、ありがとうございます。
そうお礼を言うとアリシアさんは笑みを浮かべ、
『精霊以外の外部の者がこの里を訪れるのは凡そ300年ぶりなのです。夜は晩餐会がございますが、それまではご自由に過ごしてください』
と言い、俺が『はい』と返事をすると、『ではまた後ほど』と正面横の扉からお付きの精霊さんたちと一緒に退室して行った。
んじゃ俺はとりあえず、のんびり街でも観光してみようかな。
●○●○●○●
腰に剣がない状態で出歩くのって、こっちに来てからは無かったもんだから、何となく不安みたいな感覚がある。
変だよね、元の世界ではそれが普通だったのにさ。まだ1年も経ってないのに、すっかりこっちの生活に慣れたんだなぁ、と思うと少し感慨深い。
あ、せっかく頂いたんだから、って嬉しがって元の服とか装備とか全部ポーチに入れちゃったよ。スコスコ入るんだよね、リンちゃんので知ってたし、出し入れさせてもらったこともあるから、分かっちゃいるんだけどさ、何か自分のもの、ってなると、それと見掛けのサイズが小さいからね、嬉しがって何度も出し入れしてみたりしてさ。ははは。
で、街にでようと思うんだけど、お小遣いもらえないかな?、いや、だって今全部リンちゃんが持ってんだよ、俺の財布。
貨幣とかたぶん違うだろうし、両替とかあるのかどうかもわかんないしさ、そうするとほら、街で困るじゃん?、だからお金貰わなくても貸してもらえないかな、ってさ。
と、思って部屋付のメイドさん?、じゃないか、仲居さん?、まぁいいや、待機してるひとが扉の外にいたんで訊いてみた。
「こちらがポーチに入っている品のリストです。お渡しするようにと」
と、渡された紙に、財布があったよ。お金の単位がゴールドじゃないみたいだけど、えっと100万?、いやこれ多いんだか少ないんだかわかんないけど多いよね?
たぶんここでしか使えないお金だから、まぁいいか。
というわけで途中、会釈はあっても誰何されたりすることもなく、正面玄関を抜け扉を開けて出て、ああ、門まで結構あるなぁ、なんて思いながら歩いて、門を出てみたよ。
通りがそのままで、パレードで通ってきた道なんだけどね。ああ、道で声援をくれた人たちは、いろんな色の服だったよ。髪はそれぞれ光ってたけどさ。
太陽――たぶんw――の光が反射してるのもあるから、光ってるのか反射なのかよくわからなかったけど、明るい色の髪ばかりだからね。
逆に俺みたいな、黒髪なんて珍しいほうってかたぶん居ない。
だからほら、すぐさっきのパレードで手ぇ振ってたひとだってバレる。
あ、手を振り返しておこう。
腰のポーチから地図を取り出して、行きたかった筆頭の、魔法店を探す。
おお、あった。意外と近いな。
よし、行くか。
店構えは別に普通だった。扉の横に壁から垂直にちょっと出てる金具に看板がついてて、棒の先が光ってるみたいな絵があって、魔法店って書いてあるらしい。
いあ、だって文字読めないもん。地図のは読める字で書いてあったから、ここが魔法店だってわかるってだけで。
今度は気負うことなく普通に入ってみる。
- こんにちわー
「いらっしゃいませ、勇者様」
おおう、周知されてんのね。
- ここはどういった商品がありますか?
「はい、当店では魔法に関する商品を取り扱っております。こちらに並んでいる書物には、魔法を扱うための理論や実践、導くための呪文や魔法陣に関してといったものがございまして、入門書から専門書まで幅広く取りそろえております。
そして、こちらは、いわゆる魔道具でございます。
指輪などのアクセサリーであったり、小型のスティックタイプであったりと形もいろいろございますし、用途も日用品として生活用品的なものから、護身用にも使えるもの、狩りに使えるもの、などがございます。
こちらのケースに並んでおりますのは、いろいろなタイプの杖でございます。
杖は魔法の発動補助道具でございまして、使われている素材によって、魔法属性にそれぞれ影響がございます」
- なるほど、ありがとうございます。僕も一応魔法が使えるのですが、杖を使わずに練習してきました。やはり杖はあったほうがいいのでしょうか?
「タケルさまは今はまだ魔法の基礎を覚えている途中なので、属性に偏りのある杖は使われないほうが良いかもしれません」
うぉ、リンちゃんいつの間に隣に。びっくりしたぁ。
「そうですね、杖は発動体としてどうしても素材の影響がありますので、偏りは必ず生じます。そういう事情でしたら、今は杖を選ぶ必要はないでしょう」
- すると、今必要なのって、入門書とか基礎学習本とかそういうもの?
「そうなりますね、でもタケルさま、精霊語読めませんよね…?」
- あー…、そうですね。勉強して覚えても…。
「はい、タケルさまではたぶん発音できないかと」
- あうぅ…、そっかそんな罠が…。あ、だからリンちゃんが教えてくれるときには魔力の流れや操作を感じ取って、それを模倣してから自分のものにする方法でやってくれてたんだ。
「はい。その通りです」
んじゃ本買ってもしょうがないのか…。がくっ。
「勇者様はそのようにして魔法を覚えられたのですか、それはすごい事ですよ、我々精霊でも、他の者が使っている魔法が、どのような魔力操作をしているのか、どのような魔力の流れや変化を与えているのかは、なかなか正確に感じ取れるものでもございません。仮に感じ取れたとしても、ましてやそれを模倣して自分のものにする、ですと?、いやはや参りました。恐ろしい才能をお持ちですね、さすがは勇者様と言われるだけのことはございます」
いやいや、そんなに褒めないで。
- いえいえ、そんな直ぐにはとても…、リンちゃんに何度も使ってもらって、何度も練習をしてやっと、ですよ?
「それでもそんな方法で使えるようになるには、私ならおそらく1つの魔法につき5年、いや魔法によっては最低でも10年はかかることでしょう」
「そうなんですよ、タケルさまはスゴいのです。教えたことをすぐ感覚的にご理解されちゃいます。それでちょっと練習するだけですぐ使えたりするんですよ、あたしも毎回びっくりです」
すぐ、って程じゃない様な気がしてたんだけどなー…。
でもほんと、なんか褒められすぎて居た堪れないからそれぐらいにして。
- そんなに褒めちぎられたら居た堪れないのでそれぐらいで…、あ、前に聞いた、麻痺や毒に耐性がつく魔道具ってのはありませんか?
「耐性、というのは特殊でございまして、属性防御として服や鎧などにはついていることがあるのですが、魔道具としては耐性ではなく、麻痺解除や毒分解の魔法を登録しておいたもの、というのが定番でございます」
- なるほど、定番ってことはお店で扱っている、ということですね。
「はい、そうですね、こちらが麻痺解除のペンダントで、こちらが毒分解のペンダントでございます。どちらもペンダントタイプなのは、体の中心に近い位置に置くほうが効果範囲が決めやすいから、という理由によるものでございます」
- ほう、両方つけていても問題ないものですか?
「この2品でございましたら相互に干渉いたしませんのでひとつのひもでまとめても大丈夫でございます」
- おいくらですか?
「麻痺解除が8000ルーメン、毒分解が6000ルーメンとなっております」
- では両方ください。えっと、これかな?、リンちゃん
「はい。そこから赤いお金を1枚、金色のお金を4枚だしてください」
- おお、これか、どうぞ
「はい、確かに。ひとつにまとめますので少々お待ちください」
- はい。
お金の価値がまだよくわからないけど、額面的に大きな買い物しちゃった気がする。
魔法店、本が残念だけれど、これから先のことを考えると麻痺と毒のことはこうして備えておいたほうがいいし、ここで入手できたのは大きいと思う。
そして思ってたのとはちょっと違うけれど、魔法店で買い物ができた。
なんかちょっと感動。
20180521 文言修正。





