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4ー027 ~ 精霊災害

 アリザン軍の生き残り2人はあれから丸1日目が覚めず、起きても身体に力が入らないらしくて休んでいる。話をする事はできるみたいなので、ハルトさんたちが詳しい話を聴取したみたいだけど、あの時以上の情報は得られず、とにかく今は身体の回復が重要という事で完全介護状態のようだ。


 あの時そこそこ動けてたよね?、と、夕食時にその話を天幕小屋でリンちゃんに言ったところ、『当然ですよ』と言われた。


 「あれは回復魔法で無理やり動かしたようなものなのじゃ。(しぼ)りかすをさらに搾ったのじゃからその分普通に動けるようになるまで時間がかかるのは仕方ないのじゃ」


 搾りかすってw

 何故か説明がテンちゃんで、俺は左右反対だからこっちみて、そっち見て、と食べる手を止めざるを得なかった。


 「回復魔法ですよね?」


 カエデさんが言い、


 「回復魔法ですよ?」


 リンちゃんが答えて、


 「え?」

 「?」


 ふたりとも小首を傾げてる。

 メルさんの手も止まってる。様子を窺っているのでは無く、何を言えばいいのかわからないんだろう。

 あ、テンちゃんもどう説明したもんか、みたいな顔してる。


 でも、俺には何となくわかった。

 精霊さんたちにとっては、回復も強化も麻痺も同じカテゴリーなんだ。

 アリザンの2人にかけていた魔法は、俺が理解できた部分だけでもその3つが絡み合っているように見えた。言ってみりゃ身体操作系という感じかな。

 元々の魔力容量や素質ってものもあるし、枯渇しかかってて死ぬ寸前だったって言ってたから、搾りかすをさらに搾りきったって表現をしたテンちゃんは正しいんだろう。


 今回のように、強化だけ、傷を癒しただけ、では無い場合、ひっくるめて回復魔法って言うんだろうね。


- 回復魔法って対象の回復力を補助して治すのが基本なんですが、身体強化魔法も対象を補助してるのは同じなんですよ。


 「同じなんですか」

 「はい」

 「基本的には同じなのじゃ」


- 身体強化ってかなり個人差がありますよね?、大きな傷を治すとき一気に治せない事があるのは、対象の回復力と魔力も関係してくるからなんです。強化も同じですね。


 「あ、従軍司祭が何度も分けて回復するのはそういう意味だったんですか」


- それもあると思いますけど、術者の魔力量的な理由のほうが大きいんじゃないかな。


 「あ、そっか…」


- メルさんが前に、体内魔力が枯渇しかかってた事がありましたよね?


 「は、はい」


- 身体強化するなって言われませんでした?


 「はい、リン様に言われました」


- もちろん自分で(セルフ)強化するわけですから調整すると思いますけど、メルさんの場合、いつもの感覚で強化していたらまた気を失っていたかも知れません。


 「そうだったのですか…」


 それを、アリザンの2人には気を失わないように無理やり動けるようにしたって事だ。そりゃ後が大変になるのもわかるね。

 メルさんの場合はその2人より体力も魔力容量も回復力もあるし、搾り切ったわけじゃないから比較的すぐに復活できたんだけど、あの2人は見たところ普通のひとだからなぁ、そりゃすぐに復帰できないだろうね。






 ところで黒甲冑のほうだけど、ハルトさんが言うにはその2人を追ってやって来ないとは限らないので警戒を厳重にしている、という事だった。


 そこで俺にも協力を、というわけで、ダンジョンからの魔物を警戒するついでに、アリザン軍が通ってきた洞窟や、テンちゃんが言ってた山の上を少しだけ調べてみたんだけど、誰かが居たという痕跡ぐらいしか見つからなかった。


 詳しく調べていないのは、遺品回収や遺体処理をハムラーデルの兵士さんたちが頑張っているので、その間は上空から周囲の警戒をしていたからだ。

 雲の上で待機しているようなもんなので、すっごく退屈だった。


 何で俺が雲の上なのか、それは下が地獄ってぐらい凄惨な有様(ありさま)だからだ。


 下で作業しているひとたちには本当に申し訳ないとは思ってるよ?

 ひとの死体にまだ慣れていない若い兵士さんが涙目でゲーゲー言ってたりしてて、俺が下に居たら同じようになってただろうし、近くで見たらしばらく眠れなくなるかも知れない。(にお)いも酷いなんてもんじゃ無いだろうし。


 分厚い雲の下、そんな所で黙々と遺品を回収して記録し、ハルトさんが魔法で掘ったでっかい穴に死体を運んで行く処理をしてる兵士さんたちと、それを警護する兵士さんたち…。

 ハルトさんとカエデさんは交代でそことダンジョン周囲を警邏(けいら)しててさ、俺みたいに飛べないから地上を走って移動してるんだけど、その地獄模様にも上から見た感じでは動じている様子も無く、ところどころにでっかい穴をあけたり、死体を検分している兵士さんに話を聞いたり、周囲を警戒している兵士さんと話したりしていた。


 夜に天幕小屋でカエデさんは『ただいまー、はー、疲れたー』って言ってお風呂に入り、普通に食事したりしてるのを見ると、見直すってのも俺が言うのはおかしいんだけど、改めて勇者歴の長いベテランなんだなって思った。


 アリザンの2人がまだ起きてない初日の作業が終わった夕食時、普通に食べてるカエデさんに感心してたら、


 「え?、何ですかタケルさん。そんなにじっと見られたら照れちゃいますよー、あ!」


 と言ってスプーンを置いてポケットから布を出して顔を拭い、『取れました?』って言ってちょっと顎を上げ気味に左右を見せるようにするもんだから思わず笑ってしまった。

 ハルトさんは入浴だけして、『食事は向こうで取る』と言い残して戻ってったんだけど、入浴時間なんと3分だった。髪が短いから早いんだってカエデさんは言ってたけど、そんなレベルの話じゃないね。


 最初は夜間の警戒も兵士さんたちとハルトさんがやるつもりだったみたいだけど、テンちゃんが『(われ)に任せるのじゃ』と言い、俺が『鳥の処理を始めた頃からしてくれていたんですよ』と説明をすると、夜間に処理をしたって報告した事があったのを思い出したのか、『助かります』とテンちゃんに頭を下げていた。

 それで夜間は拠点での通常時の見回りだけに留めることになった。






 ダンジョンはというと、1層だけ地図を作成してある。

 魔物の出入りで踏み固められた部分以外の周囲に潅木(かんぼく)が少しあり、地面に斜めに開いた、幅が2mちょいの入り口から50mほどのトンネルを抜けると、中は楕円形の大きなドーム状の森になっていた。索敵魔法で見たところ縦が1km、横が500mなのでだいたい40haヘクタールぐらいか。中心よりやや右手奥には池があり、草と泥に囲まれていて、左から右へと流れる川がある。踏み固められた獣道(けものみち)が木々の間と壁沿いにあり、左右の境界門へと繋がっていた。川も境界門から来て境界門へと抜けているのは初めてのパターンだった。


 その1層の空間には魔物は居なかったが、何というか俺には耐えられない(にお)いだったので、すごすごと退散した。情けない話だけど、絶対あれは有害だと思う。


 一緒に入ったリンちゃんたちがトンネルの途中で、皆が皆、堪らない表情で俺にしがみつき、テンちゃんが口と鼻を両手で覆って『早く結界を張るのじゃ』とくぐもった声で言ったし、俺もこのまま進むのは辛いと思ったので一旦引き返したぐらいだ。


 留守番がイヤだとうるさかったミリィがダンジョンの外にでた瞬間、ポケットの中から臭い臭いと(わめ)き立て、外に飛び出したのであわててキャッチしたのを外の兵士さんたちに見られていなくて本当に良かったと思う。


 それで飛行結界を張って俺とテンちゃんとポケットに押し込んだミリィだけで中に入り、1層だけ調べてすぐに出てきたってわけ。


 魔物は全く居なかったけど、境界門の向こうも居ないのかどうか、たぶんほぼ居ないんじゃないかって思うんだけどね。もし居たら1層に来ていてもおかしくないし、外に出てくるだろうからね。


 報告をしたらハルトさんとカエデさんも数人を連れて中に入ってったんだけど、トンネルの途中で引き返してきた。出てくる時の表情が皆おなじでちょっと笑える。そんでもって外に出たら深呼吸する。ダンジョンの外にはあの悪臭が漏れて来ないのが不思議だけど、どうなってるんだろうね?、トンネル内部では徐々に臭くなってて明確な境界線があるわけじゃ無さそうなんだけども。

 まぁそんな事を考えてもしょうがないので、現在の入り口は丸太を組んで蓋をされていて、周囲には網が張られ、警戒用の拠点が少しずつでき始めている。


 それがある程度形になってきて、アリザン軍の遺体処理が無事に終わり、生き残り2人が動けるようになって、彼らを送り届けるのをどうするかという話を翌日に控えた夜、事態は思ってもいなかった方向に動いた。






●○●○●○●






 その夜、また強引に俺の入浴に突入してきた精霊姉妹が、『アクアを()び出すのじゃ』と真面目な顔で言ったので仕方なく従った。


 例によって精霊語で話し始めたので、『僕にもわかる言葉でお願いします』と言うと、一旦それぞれ顔を見合わせてから、頷き、普通に話してくれた。


 それはダンジョンの処理についての話だった。


 まずテンちゃんがやると、外との接続が切れて元の場所に戻り、境界門どころかあの空間を支えている魔法そのものが解除され、1層自体が崩壊するらしい。

 元の場所が地表にあるのなら崩壊しないとテンちゃんは言うけど、地表にあるのか地下にあるのかは判別できない。リンちゃんが言うにはその空間を管理している転移装置を分析しなくてはわからないんだそうだ。そりゃそうだよね。


 仮に、境界門を保護しても、ダンジョン入り口を保護しても、1層の外壁を保護しても、1層を支える魔法への影響があるんだそうで、保護のやり方によっては空間断層を安定保持する魔法と拮抗してえらい事になるんだそうだ。収束がどうのとか拡散がどうのとか詳しく言われたけどさっぱりわからなかった。リンちゃんが言うには、簡単に言うと(いず)れの場合もこのあたり数十キロが消滅します、だそうだ。テンちゃんは、『う、うまくやれば大丈夫なのじゃ』って反論してたけど、リスクが高すぎるので却下、って言ったらしゅんと肩を落としていた。

 その時ふよんと湯面で揺れた胸をつい見てしまって、テンちゃんがすぐ復活、『にひひ』とは言わなかったけどそう言いそうな表情で俺に一歩近寄って来たところでリンちゃんがさっと鷲掴みにしようと手を出したので、テンちゃんが胸を両腕で隠すように押さえて下がった。


 次に、ウィノアさんがやるとなると、大量の水が必要となる。

 そこで、ウィノアさんが言うには、『上にたくさんあるではありませんか』との事。

 つまり、季節的なものなのか、ここ連日どんよりと曇っている空の雲の事だ。そいつをダンジョンにぶち込めばいいという話だった。

 以前、カルバス川から水を連続転移でドドドドって放水して送り込んだのと同じかな、って思ってたら全然違った。


 あの時は単純転移――なのか?――で良かったらしいけど、雲の場合はそうは行かないんだってさ。

 で、どうやるかって言うと、風属性魔法で空気のトンネルを作って流し込む、らしい。膨大な魔力が必要になるんじゃないのかと心配したけど、ウィノアさんたちにとっては大した事では無いんだそうだ。


 それでいけるならそれでいいじゃん?、なんて思ったら、やっぱりと言うか事はそう単純な話では無いらしく、問題があるらしい。


 例によって説明されたけどよく解からないので、具体的に例をだしてと言ったんだ。


 「そのように自然の(ことわり)に反する事を行う事で予想を上回る事象が発生すると思われます」


 と、リンちゃんが前置きをして言ってくれたんだけど、とにかく酷い事になりそうだって事だけはわかった。何でそうなるのか説明を聞いたけど全くわからない。


 『自然の(ことわり)』って、魔法で土壁つくったり穴掘ったりもダメってこと?、って尋ねたらそれは魔力が介在してるからいいんだってさ。よくわからん。

 俺が思ったのは、何事にも限度ってもんがあるんだろうって事。結局どこまでが自然の(ことわり)なのか、どこからが反してるのかがさっぱりわからなかった。ちゃんと理論的に証明されてるらしくて公式もあるんだとさ。人種(ひとしゅ)の言葉にできないみたいだったけど。


 それでわからんもんはわからんので、わからんなりに予想される例をきいたんだけどさ…、ひとつは、送り込むチューブ周辺に激しい雷が発生するってこと。それによってダンジョン入り口が持つかどうかわからない。下手すると周辺の地形が破壊されて、入り口の接続が崩壊し、空間接続を安定させる魔法と干渉することで周辺数十キロが消滅する危険があるらしい。

 他の例もだいたいそんなのだった。


 結局全部爆発オチじゃん、って思って聞いてた。


 ウィノアさんは淡々と、『ほんの数十キロ程度、大した事ではありませんよ』って言ってたのがちょっと怖い。この精霊さん(ひと)って惑星規模でものを考える事があるよね。


 この近辺には川が無く、地下に水脈はあるけど平たくて、集まってる箇所までは遠いし、そんな所から大量の水を吸い上げたら大災害になり兼ねないらしい。そりゃそうだろうね。


 もう雨でも降ればいいのにね、って呟いたら、3人が同時にさっと俺を見たのでちょっとビビった。な、何?、って言おうとしたらさっと戻って話を始めた。


 「多少時間はかかりますがそれが一番被害が少なそうですね」

 「うむ。このあたりの地形は仕方ないのじゃ」

 『では私は補給と水の誘導に努めます』


 ここでウィノアさんの上半身が湯面に沈んだ。首飾りがあるので湯にはウィノアさんの魔力があるいつもの状態だけど。


 「あたしはアリシア様に連絡をしてミド様に協力を依頼してきます。お姉さま、タケルさまの事をお願いします」

 「任せるのじゃ」


 テンちゃんが笑顔で俺に近寄ろうとしたのに割り込み、ぐいぐい押して端まで行き、湯船から腕を引っ張って出し、そのまま脱衣所へ連れて行った。


 「くれぐれも余計な事をしないで下さいね?」

 「よ、余計な事とは何じゃ?、こ、これ、手を離すのじゃ、歩き難いのじゃ!」


 と言っていた。テンちゃんはひょこひょこと横歩きにしてリンちゃんに引っ張って行かれたんだけど、バランスを取るためかあいている方の手をわたわたと振りながらなので、とにかく複雑に揺れていた。あ、うん、直接は見てないよ!?、直接はね。


 はー、っと大きく息を吐いて、ひさびさにひとりでのんびり湯に浸かれるなーと思ったんだけど、ふとさっきの精霊さんたちの会話を思い出した。


 さっき、『このあたりの地形は仕方ない』って言ってたよね?

 ミドさんに協力を依頼、って言ってたよね?

 爆発オチは無さそうだけど、これって、結構ヤバくね?


 一体何が起きるのかもうちょっと聞いておかないと!

 と、急いで脱衣所へと行った。






 「あれ?、タケルさま?、ごゆっくりなさってて良かったんですよ?」

 「ふふふ、私が全身優しく拭いて、あっ!、いつの間に!?」


 テンちゃんの片足にバスローブの帯だろうか、それが脱衣所中央の台の足と結び付けられていた。


 「はい、タケルさま」


- あ、ありがとう。


 バスローブ姿のリンちゃんがバスタオルを差し出してくれたのを受け取った。


 「こ、こんなに堅く結びおって、(ほど)けないのじゃ…」


 台の向こうに座って悪戦苦闘しているテンちゃん。

 スパッと切ってしまいそうだけど律儀に解こうとしてるのが可愛らしい。

 俺はせっかくバスタオルを受け取ったんだし、身体を拭きながらリンちゃんに尋ねることにする。


- 結局さ、雨を降らせるってことになったんだよね?


 「はい、そうですよ?」


- それってどれぐらい続くの?


 こんな平地続きの場所で『地形は仕方ない』って言うほどなんだから、どうなるのか想像もつかない。


 「とりあえず、7日7晩でしょうか」


- え?


 聞き間違いかと思って手を止めてリンちゃんをじっと見た。


 「はい?」


- えっと、大雨が?


 「はい」


- 7日7晩?


 「はい」


- それってこのあたり水没しない?


 「大丈夫ですよ、ほぼ全部流し込みますから」


- んー…、それってダンジョンに?


 「はい」


 ダンジョンまで川ができるんじゃないだろうか…。


- 地表が水でえらいことになるんじゃない?


 「なりますね」


 なるのか…。


- えっと、ハムラーデルの人たち、避難してもらった方がいいかな?


 「あ、そうですね」


- いつから大雨が降るんだっけ?


 「もう降り始めてます」


- え?


 「早めにお伝えしたほうがいいですね。あ、ダンジョン入り口を塞いでいるのは撤去した方がいいと思います。タケルさま、お手数ですがお願いしていいですか?」


- あ、うん、じゃあ撤去してくるよ。カエデさんに大雨が続くから避難してって伝えてもらえばいいかな?


 「はい、あたしはこの家の撤去作業が終わり次第、里に移動します。砦まで避難すればおそらく大丈夫だと思いますが、浸水しない場所にあちらの石版を設置して下さい」


 そう言って俺の着替えが入ってる籠の手前、床のところに立てかけて置かれている石板を手で示した。


- ああ、うん、わかった。あ、あのさ、


 「はい」


- 今から7日7晩だと『勇者の宿』に戻る日になっちゃうんだけど。


 「あ…、そうでしたね…、どうしましょう?」


 どうしましょう、ってw


- リンちゃんはいつ戻ってくるの?


 「そうですね…、ミド様のご都合がわからないので何とも言えないのですが、一旦明日のお昼頃戻ってきます」


- わかった。それまでに砦に部屋作って石版を設置すればいいんだよね?


 「はい、お願いします」


 と言うとリンちゃんは俺の腕に手をそっと添えた。


 「ご不便をおかけしますが、お姉さまの事、よろしくお願いします」

 「やっと解けたのじゃ、あっ、何をしておるのじゃ!、いい雰囲気になりおって!」


 テンちゃんが立ち上がったと思ったら台の上によじ登って這って来た。

 バスローブが肌蹴(はだけ)ていろいろ丸見えだ。急いで反対を向いた。


 「お姉さま!?、はしたないですよ!?」

 「む、確かに」


 と言って台の上で膝立ちになり、バスローブを脱いだ。


 「どうして脱ぐんですか!?」

 「中途半端に着ておるからはしたなく見えるのじゃ」

 「どういう理屈ですか!、ちゃんと着て下さい!」

 「邪魔するでないのじゃ!、私もいい雰囲気になりたいのじゃ!」


 テンちゃんが脱いだバスローブで、俺とテンちゃんの間を遮るリンちゃん。

 台の上ですっぽんぽんの膝立ち状態で、リンちゃんが掲げるバスローブをどけようとしているテンちゃん。何故かバスローブ越しに互いの手を握りあってるようだ。


 俺はその隙にささっと回りこんで足元の石板をポーチに突っ込んでから脱衣かごを抱え、リンちゃんの後ろに戻ってズボンを穿いた。


 「ああっ、手を離すのじゃ、タケル様が、タケル様が、」

 「ダメです、行かせません!」

 「ふぬぬ、」

 「うーんー」


 急いでシャツを着てベルトを締め、上着に片袖を通したとき、『あっ!』と2人の声がしてぼてっと音がした。つい見てしまったが、テンちゃんが膝を滑らせたのか、台の上で横倒しになり、片足が天井に向いていた。一応、2人の間にあるバスローブで胸は隠れてるし、広げた足のところはこちらからだとリンちゃんの身体で直接には見えないんだけどね。

 ひどい格好だなぁ。


 見なかった事にして、上着をちゃんと着て、そそくさと脱衣所から逃げた。


 「に、逃げられてしもうたのじゃ」

 「もう、余計な事をしないで下さいねって言ったじゃないですか」

 「其方が居らぬ間のタケル様のお世話は任せると言ったではないか」

 「お手伝いの事です!、お世話なんて言ってません!」

 「優しく拭く手伝いをしようとしただけなのじゃ」

 「全裸で迫るのはお手伝いじゃないです!」


 脱衣所の扉を閉めても聞こえるんだよなぁ…、魔力乗せすぎだよ2人とも。


 口の周りにクリームがべったり付いてるミリィがふよふよと飛んできた。


 「あたしもタケルさんのお世話するかな、にっひひひ」


 ほら、ミリィにも聞こえてんじゃん…。

 あっ、袖で拭いちゃダメだってば!






●○●○●○●






 リビングで話していたメルさんとカエデさんに、7日7晩大雨が続く事を伝え、この天幕小屋は撤去して砦へと避難する事と、カエデさんには本部の人たちに伝えてもらうようにお願いをした。


 ミリィと同じように口の周りにクリームが付いたまま、カエデさんが動きを止めて1秒。


 「え!?、えええ!?」


 ソファーから立ち上がった。危ないからフォークは置いてくれないかな。


 「カエデ様、どうぞ」

 「あ、ありがとう」


 メルさんが差し出したタオルで口元を拭ったカエデさんが一旦座る。


 「7日7晩って言いました?」


- はい。大雨だそうです。


 「た、大変じゃないですか!」

 「大変ですね」


- 大変なんですよ。


 「早く報せてこなくちゃ!」


 と、食べかけだったケーキを頬張り、タオルで拭ってからコップの水をぐいーっと飲み干し、立ち上がって入り口まで早足で行き、布を片手で寄せて『うわー、雨じゃん雨!、すごい雨!、雨すごいー!』って言いながら走って行った。

 何なんだ…。


 「タケル様はどうされるのですか?」


 それを見送って、くすっと小さく笑ってからメルさんが問いかけた。


- あっはい、僕はダンジョンのところに居る人たちに報せて、入り口の蓋を撤去してきます。


 「なるほど、水攻めというわけですか」


 察しがいいな。


- 時間はかかるらしいですけどね。


 「お供します」


 と、立ち上がってにっこり。


- ここ、撤去するらしいので、荷物の整理を、


 「私に荷物なんてほとんどありませんよ?」


 あー、そうだった。小さめの背嚢1つだけだった。あと、物騒な槍ね。


- ダンジョン周りの避難を見届けたら戻ってきますので、それまでここに居て下さるほうがいいんですが…。


 「…そうですか…、わかりました、カエデ様のお荷物もありますし、」


 一瞬考えてから話しだしたが、その途中で脱衣所の扉が開いて、テンちゃんが出てきた。バスローブ姿で。

 それを見たメルさんはほんの一瞬だけ表情を引き締めた。苦手意識を持っちゃったのかな?


- リンちゃんは?


 「ん、中で片付けをしておるのじゃ」


 と、俺の隣に座ろうとしたのでさっと立ち上がって押した。


 「な、何なのじゃ?」


- 服、着ようね?


 そう小声で言いながらテンちゃんを押して部屋のほうに誘導した。


 「…わかったのじゃ」


 テンちゃんはちらっとメルさんを見てから素直に従ってくれた。

 部屋に誘導して扉を閉めたら、メルさんが小さく息を吐いたのに気がついた。

 やっぱり苦手意識があるんだろうなぁ、いつもの服を着ていないテンちゃんは特に。ちょっとしたことで魔力が強くなるもんね、メルさんも魔力感知が成長してるせいか、そういうの敏感になってきてるし、耐性が無いんだから仕方ないんだけど。

 あ、それでさっき『お供します』って言ったのかな。


- メルさん、大丈夫ですか?


 「え?、あ、はい、大丈夫です」


- やっぱり一緒に行きます?


 「あたしも行くかな!」


 いや、キミには聞いてないんだって。あ、また袖で拭いてるし!

 袖がクリームでしっとりべったりじゃないか、それ1着しか無いんだからさー…。


- ミリィはダメ。


 「えー、何でかな!、冷たいかな!」


 と、テーブルの上から飛び上がって俺のポケットに近づいたのでさっと腰から下を掴んだ。


 「あっ、いつもと違う掴み方かな!、優しくないかな!」


 俺の手をクリームまみれの手でぺちぺち叩いた。

 ああクリームが付く。


- ミリィの袖、クリームまみれでしょ。そんなのじゃポケットに入れられないよ。


 「へ?、あれ?、ほんとだ。何でかな?」


 口んとこをいちいち袖で拭くからだよ!


- キレイにしてないと連れてかない。


 「う、わかったかな、洗ってくるかな」


 解放してやると脱衣所のほうへと飛んでいった。

 テーブルを見ると、きっちりケーキは食べ切ってんのね。


 まだ箱には3つ残ってるけど、それは俺とリンちゃんとテンちゃんに残しておいてくれているつもりなのかな…?


- それで、メルさん、どうします?


 「ふふっ、ミリィちゃんの事もありますし、カエデ様が戻ってきた時に困るでしょう?、ここでお待ちします」


- そうですか、じゃ、行ってきますね。


 「はい、お気をつけて」






 薄暗いというかほぼ闇の中、低空飛行でダンジョン近くの拠点へと行くと、油を燃料とするランタンを手に何人ものひとたちが慌しく荷物をまとめている様子が窺えた。どうやら彼らは彼らの判断で、一旦本部に戻ろうとしているんだろう。


 水が周囲から集まってきていて、流れがいくつもできていた。このあたりはもう冠水状態だ。思ったより早い。


 普通なら道の部分は低いのでそこに流れが集中しそうなものだけど、ウィノアさんが調整してくれているのか、荷車が通れるだけの幅は水が流れていない。

 これならここの人たちの避難は何とかなりそうだ。


 俺はそのままダンジョンの入り口へと向かった。


 拠点からほんの200mのところにあるその入り口付近は、冠水なんて生易しい状態じゃ無く、池のようになっていた。蓋をしている丸太が並べられた隙間からごぼごぼと水が流れ込んでいた。普通に流れ込むより多いのはきっと、ウィノアさんがやってるからだろう。そうじゃなきゃ泥や落ち葉などでとっくに詰まってたと思う。


 水は泥水なので底は見えないが、魔力感知で位置や形状はわかる。

 俺は丸太についてる運搬・固定用の金具についてるロープをスパッと切ってそれぞれに結びなおし、ポーチに突っ込んで収納した。


 収納して隙間が開くと貯まってた水が猛烈な勢いで流れ込んでいく。

 これ、足場が作れないと無理だよね。ポーチが無いとそもそも無理か。


 『タケル様、助かりました。どうしたものかと思っていたのですが、そのうち水圧でどうにでもなるだろうとそのままにしていたのです。ところで、流れが早くなってしまいましたが、あちらは大丈夫でしょうか?』


 首飾りから聞こえるウィノアさんの声、と、水面から生えた手が指差すほうを見ると、ランタン片手に背嚢を背負った3人のうちひとりがちょうど足を滑らせたのが見えた。


 「おわっ!」

 「カルダー!」

 「つかまれ!」


 ばしゃっと倒れた人が泥水の流れに押されて流されたようだ。

 膝下ぐらいの深さだと思って渡ろうとしたのかな。泥水の流れを甘く見すぎだよね。


 「た、助け!、ばぼっ」


 後ろのひとりが差し出した棒を掴み損ねたカルダーと呼ばれた人は、そのまま泥水に飲まれてしまった。

 あ、ヤバそう。


- ウィノアさん、ちょっと緩めてもらっていいですか?


 『そうすると流れが変わって無事な者たちが次々と流されますよ?』


- あ、それはまずいですね。こっちで何とかします。


 『はーい』


 しょうがないな、まだ丸太全部撤去してないんだけど。

 すいっと位置を移動して網目状の障壁を大きなスコップのように設置し、掬い上げるようにして持ち上げた。

 息はあるかな?、無かったら面倒なんだけど。


- 大丈夫ですか?


 あー、返事がない。

 屋根部分を維持したまま横に降り、脈と呼吸をチェック。脈はある。呼吸がない。外傷をスキャン。大丈夫っぽいな。んじゃ逆さにして押すか。

 全部結界操作でやってしまったけど、ちゃんと呼吸が戻った。ついでに飲んだ泥水も吐き出させた。雑とか言うなよ?、水魔法で洗浄までしたんだからサービスいいと言って欲しいね。


 げほげほと四つんばいで網目障壁の上、俺の足元で咳き込んでるカルダーさんを、そのまま本部近くのところまで運び、木の根元に下ろした。


 「あり、が、」


- 無理に話さなくても構いません、落ち着くまでここに居れば避難してきた人が来るはずです。


 頷く彼を置いて、また俺はダンジョン入り口へと飛んだ。






 残りの丸太を撤去している間に、さらに2人流されてきたが、さっきのひとほどじゃなく普通に助けて網状障壁の上で座って待ってもらった。


 一応上には屋根代わりの障壁を張ってあるんだけど、流されてきてたひとは当然全身ずぶ濡れなので、屋根は無くても良かったんじゃないかとちょっと思った。泥だらけだし、雨で流れたほうがきれいになったんじゃないかってね。


 また流されてきた人が居た時のために水面から斜めのままにしてたんだけど、撤去完了までにはそれ以上流されてくるひとは居なかった。


 「なぁ、あれって勇者様だよな?」

 「あ?、ああ」

 「何してるんだ?、あれ」

 「さぁ?、ランタン消えちまったし、暗くてわかんねぇ」

 「この床も網みてぇになってるしよ、どうなってんだ?」

 「勇者様にきけよ…」


 と、何か話しているようだったから、そこそこ元気なんだろう。

 丸太の撤去が終わり、安定して、ってのも変だけど、渦を巻いて流れ込んでいる泥水を見下ろしてから、彼らのところに戻った。


- 道を辿(たど)って戻りますけど、大丈夫ですか?


 「お、俺たちここからどうやって帰ればいいんですか?」

 「置いて行くなんて言いませんよね!?」


 縋り付かれた。気持ちはわかるけどね。わかるけどね。


- もちろんちゃんと本部までお連れしますから。じっとしてて下さい。


 「はぁ、お願いします」

 「お願いします…」


 安心したのか、ズボンから手を離してくれた。

 あ、砦まで運んだほうがいいのかな…?

 でも途中で遭難?、じゃないか、木に引っかかってるひとが居たらアレだし、ちゃんと見て行くか。


 あ、一応索敵魔法を使いながら行こう。






 やっぱり居た。木に荷車ごと引っかかってる3名が居た。

 荷車は車軸が折れて車輪が欠けているように見える。暗いから感知でね。


 何と、ロープで荷台と木を結びつけて固定し、身を寄せ合って防水布に(くる)まれて震えていた。ランタンが消えた闇の中でよく頑張ったもんだと思う。


 小さな光球を浮かせて近づき、声をかけたら驚いたのかパニックを起こしかけた。俺のほうがびっくりした。いやほんと心臓に悪い。


 とりあえず彼らが落ち着くまで荷物をポーチに収納していった。先に助けた2人の背嚢もポーチに入れてある。

 その2人が小さな光球の下で、彼ら3人に声をかけ続け、やっと落ち着いたようだ。


 「勇者様、ありがとうございます」

 「「ありがとうございます」」


- ここから本部へ行くより、直接砦へお連れしたほうが良さそうですね。あ、怪我とかどこか痛いとかあります?


 「あ、ペイジの腕が動かねぇそうです」


- 痛みはありますか?


 「動かそうとすると痛いです。今はじっとしてれば我慢できます」


- 診せてもらっていいですか?


 「はい…」


 スキャンしてみると、肩が外れてるんだとわかった。これ、嵌めるとき痛いんだっけなー、もう片方もスキャンして、正常な位置を覚えてから…。


- あ、あれって何ですか?


 と、ペイジさんの目の前で何も無い方向を指差した。


 「「え?」」

 「あがっ!」


 全員がそっちを見た隙に嵌めて、回復魔法で周囲の組織を正常化した。


- 痛かったですか?


 「急に何するんですか!」

 「お、おい」

 「ペイジ…」


- ついでに内出血も治しておきました。まだ痛いですか?


 「え?、あ、腕、なんとも無い」

 「「え?」」


- 肩が外れてたんですよ。暗くて判りにくかったんでしょう。下手に触ると痛いですし。もう大丈夫そうなので、移動しましょうか。


 「え?、あの、荷物は…」

 「大丈夫だ、勇者様が魔法の袋に入れて下さったんだ」

 「え!?」


 もう俺が説明しなくても良さそうなので、手招きをして障壁の床(木目調を投影してみた)に誘導し、壊れてるけど荷車も収納、他に遭難者も居ないようなので、浮かび上がって砦までひとっ飛びだ。


 砦の中庭、邪魔にならない所に彼らを下ろし、預かった荷物と壊れた荷車を並べて『じゃ』と言って飛び立った。お礼やら何やらいろいろ言っていたようだったけど、あまりのんびりとはしていられないからね。それに、照れくさいしさ。


 昔、映画で見た、胸にSの字をつけた赤と青の派手な服のヒーローや、クモの巣マークの覆面ヒーローは、救助したひとたちにあまり多くを語らないんだよね。ああいう風に上手くできればいいんだけどね…、かっこよく飛び立ってたしさ、でも俺は立ったまま浮かび上がって移動だし、ポーズつけるなんて恥ずかしくてできない。

 どうも締まらない気がするね。まぁいいんだけどさ。気にしてもしょうがない。






●○●○●○●






 天幕小屋にはまだカエデさんは戻っていないようだった。感知によると本部あたりを走り回っているのがわかったので、そちらへ行く事にした。


 あれほどたくさん並んでいた兵士さんたちの天幕は全て撤去作業が終わっているようで、荷車に荷物が積まれ、積み終わったものからどんどん移動が始まっていた。

 さすがは訓練の行き届いた兵士集団だよね。


 このあたりはまだ普通に大雨の地面という感じで、あちこちに水溜りはあるが、ダンジョン周辺のような冠水や流れは無かった。ちょっと安心。


 商人さんたちが居る区画はまだ撤去が遅れているようで、荷物も多いし作業が大変そうだ。


 俺は本部だけがまだ残っていて、ひっきりなしに兵士さんたちが出入りしているところにゆっくりと降り立って、中へと入った。


 中はむんむんと湿度が高くて、何とも言えない匂いがした。冬の雨の日、満員電車の扉が開いて一歩中へ踏み出したときに一瞬『うっ』となる時のような匂いだ。ちょっと懐かしいって思ってしまった。

 俺はハルトさんが立っている作戦台へとひとをかき分けて進んだ。

 しょうがないんだよ、ここの兵士さんってだいたい俺よりでかいんだよ。


 「タケル殿!、カエデから聞いたが報せてくれて助かった!」


- 何とかなりそうです?


 「ああ、兵士たちはな。商人の一部が砦ではなく村や町への移動がしたいと言い出してな、こちらも強制はできんので困っている」


 あー、しまったな、雨の範囲を聞いておくんだったか…。いや、ウィノアさんに訊けば…って、ここじゃまずいか。


- 困ってるって、あ、もしかして商人の移動に護衛の兵士さんが付かなくちゃいけない規則でもあるんですか?


 「その通りなんだ。こういった天候の場合は、途中の道がどうなっているかわからんからな。斥候隊からも人を出さねばならん。通常ならそれでもいいが、避難命令が発動されている。商人の荷も多い。そこにこの天候だ。道がぬかるんでいると立ち往生する可能性もある。それと、ペントス村へ行くほうは砦からも近いからまだいいが、ニーズニエに向かう場合はここに小川があり木造の橋が架かっている。こちらは石橋だが増水時は通行禁止だ。この雨がもし、この地方一帯に降るなら、両方の橋は使えないのだ」


 使えない?、増水時に浮くものか、抵抗を減らした設計で橋が流されないようにするものか、どっちかかな。

 作戦台を指差して言ってくれたハルトさんには悪いんだけど、この地図は俺が作ったものじゃ無いし、ニーズニエ方面は俺の知らない方角だ。ということは少なくとも25km以上離れているって事だ。ペントス村は来る途中に記した地図に含まれているので何となく覚えている。砦からほんの5kmの集落だ。


- ちょっと奥の部屋を借りていいですか?


 「ん?、構わんが…?」


 戸惑い気味のハルトさんの横を抜けて後の部屋へと入った。

 ここは誰かの執務室なのか、奥に机があって手前にはローテーブルがあった。

 開いたままだった扉を閉め、ウィノアさんに呼びかけた。


- ウィノアさん、雨の範囲ってわかります?


 『人種(ひとしゅ)が決めた名称はわかり兼ねますが、ダンジョンを中心とした半径25kmに降らせております。半径20kmから先は濃霧です。おそらく出入りは困難かと』


- そうですか。ありがとうございます。


 『礼には及びません』


 部屋を出ると、ハルトさんが片膝をついていた。


- わ、ハルトさん、大丈夫ですか?


 「大丈夫だ。先ほどの気配は精霊様だろう?」


 と、立ち上がりながら小声で俺に言った。


- はい。雨の範囲を尋ねたんです。


 「そうか…、有難い事だ。タケル殿にはもっと敬意を示すべきかも知れんな」


 それは困る!


- やめて下さいね?、大先輩から敬語だなんて勘弁して下さい。そんな事されたらもう手伝いませんからね?


 「ははは、それは困るな。敬語にならぬよう努力しよう」


 努力しないと敬語になるのか…、マジで勘弁して欲しい。


 ハルトさんは笑いながら俺の肩をバシバシと叩いた。


 痛いっての!、そこは加減してくれよ…。






次話4-028は2020年10月02日(金)の予定です。


20200925:訂正。 向かいなら ⇒ 向かう場合は

20200926:脱字訂正。 『(にお)い』 の 『い』が抜けていました。

20201217:助詞抜け訂正。 (いず)れ場合 ⇒ (いず)れの場合

20220131:転移石板についての描写を追加。

20220524:被ってた表現を削除。

 (訂正前)手招きをして障壁の床(木目調を投影してみた)に手招きをして誘導し、

 (訂正後)手招きをして障壁の床(木目調を投影してみた)に誘導し、



●今回の登場人物・固有名詞


 お風呂:

   なぜか本作品によく登場する。

   あくまで日常のワンシーン。

   最近テンちゃんの胸ばっかだね。

   他のも描写しないとね。

   でもタケルの注意がそこばっか向いてしまってるんだよね…。


 タケル:

   本編の主人公。12人の勇者のひとり。

   やっぱり自覚が薄いね。


 リンちゃん:

   光の精霊。

   リーノムルクシア=ルミノ#&%$。

   アリシアの娘。タケルに仕えている。

   働き者ですね。


 アリシアさん:

   光の精霊の長。

   全精霊中最古というような存在。実は凄い精霊(ひと)

   だいたい出番なし。名前だけ登場。


 テンちゃん:

   闇の精霊。

   テーネブリシア=ヌールム#&%$。

   後ろの部分は精霊語のため聞き取れない。

   リンちゃんの姉。年の差がものっそい。

   膝立ちじゃすべるよね。

   この精霊(ひと)も実は凄いはずなんだけどね…。


 ウィノアさん:

   水の精霊。

   ウィノア=アクア#$%&。後ろの部分は精霊語。

   一にして全、全にして一、という特殊な存在。

   ひさびさの大活躍!


 ミリィ:

   食欲種族とタケルが思っている有翅族(ゆうしぞく)の娘。

   身長20cmほど。

   また(はね)が無い有翅族(ゆうしぞく)に。

   しっとりべっとり。


 メルさん:

   ホーラード王国第二王女。いわゆる姫騎士。

   メルリアーヴェル=アエリオルニ=エル=ホーラード。愛称がメル。

   騎乗している場面が2章の最初にしかないが、騎士。

   剣の腕は達人級。

   『サンダースピア』という物騒な槍の使い手。

   身体強化に関しては現状で人間種トップの実力。

   実は『サンダースピア』が使い難い雨天は苦手。


 ハルトさん:

   12人の勇者のひとり。現在最古参。

   ハムラーデル王国所属。

   およそ100年前にこの世界に転移してきた。

   『フレイムソード』という物騒な剣の所持者。

   バッシバシ


 カエデさん:

   12人の勇者のひとり。

   この世界に転移してきて勇者生活に馴染めず心が壊れそうだったが、

   ハルトに救われて以来、彼の元で何とか戦えるようになった。

   勇者歴30年だが、気持ちが若い。

   でも言動はタケルからするとちょっと古臭い。

   雨やわ雨、雨よぅ降ってるわ、雨。(関西弁風に言うとこうですか?)


 天幕小屋:

   ハムラーデルのトルイザン連合との国境防衛地に作った小屋のこと。

   平屋の5LDKという贅沢な天幕(笑)。裏庭もあるよ。

   シンプルだけどすごい洗濯機がある。

   あと、お風呂が広い。

   撤去されるらしい。


 トルイザン連合王国:

   ハムラーデル王国の東に位置する連合王国。

   3つの王国があり、数年ごとに持ち回りで首相を決めていた。

   クリスという勇者が所属しているらしい(2章後半)。

   3つの王国は西から順に、アリザン・ベルクザン・ゴーンザンと言う。


 アリザバ:

   トルイザン連合王国のひとつ、アリザン王国の首都。

   余談ではあるがベルクザンの首都はベルクザバ、

   ゴーンザンの首都はゴーンザバという。

   わかりやすい。


 保護された2人:

   アリザン軍の指揮官と補佐官。

   出番なし。


 名前は出たけど助けられたひとたち:

   まぁ、どうでもいいですねw

   あ、助かって良かったね。


 謎の黒いヤツ:

   勇者クリスだともうバレバレですが、今回出番無し。


 クリスさん:

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号5番。クリス=スミノフ。

   今回出番なし。


 ロミさん;

   12人の勇者のひとり。

   勇者番号2番。マサダ=ヒロミ。

   現在はアリースオム皇国皇帝を名乗っている。

   今回出番無し。


 名前が出た村と町:

   今後出るかは不明なので別に覚えなくてもいいです。



 ※ 作者補足

   この登場人物・固有名詞紹介の部分全ては、

   あとがきの欄に記入しています。

   本文の文字数にはカウントされていません。

   あと、作者のコメント的な紹介があったり、

   手抜きをしたり、詳細に書かれているけど本文には

   無関係だったりすることもあります。

   ご注意ください。



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2019年05月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
なるほど。わかりません。
2020年01月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
同じやん。なるほど。やっぱりわかりません。
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