4ー010 ~ テンちゃん・闇の眷属
『タケル様!、お姉様!、お待ちを!』
同じ経路から1階ホールへ、舞台袖から入ってステージに戻るとすぐにリンちゃんの鋭い声がした。魔力が乗っていてよく響き渡る声だった。見るとリンちゃんが皆の座っているテーブルの前に立っている。
「それ以上こちらに近寄らないで下さい」
言われたテンちゃんはショックを受けたようで、繋いでいた俺の手にきゅっと力を入れた。見ると不安そうな表情で俺を見上げていた。
さっき聞いたテンちゃんの過去の話。
闇の精霊ってことでやっぱり悪い事は全部彼女に起因しているんだと、証拠もなく無責任に良からぬ事を吹聴する者たちが一定割合で存在したようで、イヤな思いをしたことが何度もあったんだそうだ。
と言っても光の精霊さんたちなので、元の世界のように暴力に晒されるとか危険物を送りつけられるとか、過剰で酷い中傷されたとかでは無い。
近寄ってもらえず平伏されるんだと。
こちらから近づくと所構わず平伏され、顔を上げないそうだ。
そんでもって災いを避ける聖句をずっと唱えられるらしい。もちろんどこからそんな聖句が生まれたのかはアリシアさんにもわからなかったみたいだが、当然ながら根拠も効果もあるはずがなく、いや、テンちゃんにだけは効果があったんだろう。今でも夢にでるんだそうだ。
話しかけても全く聞いてもらえず、とにかく災いを忌避するために畏怖するような、彼女がまるで災神であるかのような扱いだったんだそうだ。
だから、テンちゃんにとって、『近寄るな』と言われるのはとても辛い事なんだ。
もちろん俺には闇属性は魔物や竜族とは無関係だってことはもうわかってる。
だから心配ないよ、テンちゃんの思う意味じゃないからね、と、しゃがんで目線を合わせて笑顔で言った。
信じたいけど信じていいのか迷っているような不安さが表情に出ていたのでもう少し詳しく言う事にした。
- 魔力が強すぎるせいだからね、テンちゃんが嫌いで言ったんじゃないから。
無言で俺を見るテンちゃんは、その潤んだ目だけで『本当?』と尋ねているようだ。
- テンちゃんは魔力を抑えるのってできる?
「こ、これでも抑えておるのじゃ…」
目をレースの手袋をした手で擦ったのでまたポーチから新しいタオルを出して手渡した。レースの手袋で目なんて擦ったら痛いだろうにね。
- 強すぎるみたいよ?
と言うとちょっと下を向いて呟いた。
「……昔はできたのじゃ…」
- 今は?
「必要がないので使わんでおったら忘れてしもうたのじゃ…」
まぁ、わからんでもない。何せ年数がとんでもないからね。
- 思い出せそう?
「何か切っ掛けがあれば、思い出せるかも知れんのじゃ…」
という事らしいので、今はリンちゃんに頼むしかなさそうだ。
だって精霊さんのそういうの俺にはわからないからね。ウィノアさんはなんか違うタイプっぽいから今回は除外。喚び出すのは面倒な事になる予感しかしないからね。
そうそう、さすがに肩車のまま皆のところに出るのは何だか躊躇われたので、降りてもらったんだよ。
俺の首筋もテンちゃんの内腿と股間も汗でしっとりぬるぬるだし、お互い気持ち悪いよね?って言ったんだけどさ、『其方は私が気持ち悪いのか…?』と魔力的な悲壮感を漂わせてもぞもぞぬるぬる動かしながら言ったので、暑いし汗を拭いたいんだよとつい言ってしまった。
すると寂しそうに『じゃあ降りる…』と言って俺の頭をぎゅーっと抱きしめるんだもんなぁ、降りる気がないんだよね、これ。
しばらく説得して、両手で持ち上げて降ろし、ポーチからタオルを出して首を拭ってたら、テンちゃんも渡してあったタオルを、もう片手で軽く持ち上げたスカートの中につっこみ、自分で覗き込むようにしながら足を広げて股間のあたりを拭いていた。ちょっとそれはどうなんだ、と思ったが見ないふりをした。
しょうがないので別のタオルを湿らせておしぼりにして渡し、俺も手を拭っていたら、そのおしぼりでもまたやってた。いや、手を拭えって意味で渡したんだけども…。そんで俺におしぼりを返しながらもう片手でスカートをばっさばっさやってた。あのなぁ…。
そして歩き出すと俺の手を握ってきたんでそのままステージに出たってわけ。
しかしそれにしてもリンちゃん、もうちょっと言い方ってものを考えてくれればいいのに…、と思いながら、ステージに最初から設置されている黒いテーブルセットのところにテンちゃんを誘導して座らせた。
- テンちゃん、ちょっとここで待っててくれるかな?
「私を置いて、行ってしまうのか…?」
- すぐ戻ってくるから安心して。
「…うん」
何だか子供っぽさが出るようになっちゃったなぁ…、最初のアレは一体何だったんだ…、と思いながら頭をちょっと撫で、繋いでいた手を離してリンちゃんの、皆が居るテーブルのところへと駆け寄った。
- リンちゃん、わかるけどもうちょっと言い方を、
「タケルさまは平気でしょうけど、魔力が強すぎです。姉さまも姉さまです、あのまま近づかれるとこちらの者たちが意識を失いますよ?」
ちらっとテーブルの3人を見ると、テーブルに肘をついて項垂れていた。結構辛そうだ。
- あれでも抑えてるみたいだけど、ちゃんと魔力を抑えるってことを忘れたんだってさ。
「は?、姉さまがですか?、そんなことって…」
- 何かいろいろ忘れてるみたいだし、リンちゃん、ちょっと教えてあげてくれない?
「え…、でも…」
- 僕じゃ精霊さんのそういうのわからないしさ、ね、リンちゃん。
「わかりました。でもできればタケルさまも一緒に…、あ…」
リンちゃんは俺を見てそう言ってから、小さく気付いたように3人を見た。
そうか、リンちゃんが護ってるんだこれ。
- あ、えーっと、ちょっと待ってね…
遮断は厳しいけど、魔力の流れを遮ればいいんだよね、今日見せてもらった検査具の箱とか、ウィノアさんの張る結界(構築途中まで)を参考にして…、こうかな?
- これでいい?
と、テーブルの3人を包む結界を2重に張って3人を順に見た。楽になったようで、顔を上げてこっちを見た。完全に遮断できているわけじゃないんだけど、かなり減衰はできた。よかった。
ネリさんが何か喋ってるみたいだけど、2重にしたせいか聞こえない。向こう側だけでも開けておいたほうがよかったかな?
「…タケルさま、どこでこんな…、いえ、助かりました」
リンちゃんに頷き、ポーチから植物紙を1枚取り出して『そのまま待ってて下さい』と書いてというか焼き付けて3人に見せる。頷いた3人を見てから、リンちゃんの手をとってテンちゃんのところへと小走りで行った。
改めてもう一度同じことを尋ねてみる。
- テンちゃん、魔力を抑えられる?
「それがのー、昔はできたのじゃ。でもやり方を忘れてしもうて…」
ほらね?、とリンちゃんを見たら、『やっぱりあたしが教えるんですか…』みたいな顔でこっちを見た。リンちゃんには頷いてから、テンちゃんの席の横にしゃがんで言う。
- リンちゃんにやり方を教えてもらって欲しいんだ。それで思い出してくれないかな?
「…其方がそう言うなら…」
- うん、そうしないとあっちに居る他のひとたちが耐えられないみたいなんだよ。
テンちゃんはちらっと彼女らのほうを見て、リンちゃんを見て、視線を下げ、
「(私はママと其方だけでいいのじゃが…)」
そう小さく呟いた。
聞こえたけど、リンちゃんも居る前でそれを注意するのはなぁ、それに俺について来るらしいからそのうち解かってくれればいいんだけど…、うーん、ここはわざとらしく言ってみるか。
- じゃあ僕は帰るけど、テンちゃんはずっとここに居たままでいいんだね。
「そ、其方は私を置いて出て行ってしまうのか?、一緒に居てはくれぬのか…?」
- 僕は外ですることがたくさんあるからね。魔力を抑えてくれないと、そのままじゃあ連れて行けないなー。テンちゃんを置いて行くのは残念だなー。
と、ちょっと棒読みっぽく言うと、
「わかったのじゃ、ではそのやり方を、り、リン、リンちゃん、教えるのじゃ」
「お願いします」
「何?」
「お願いします、ですよお姉様」
「うぅ…、タケルぅ…」
「タケル様、ですよお姉様」
「う……」
リンちゃんが厳しい。でも『お姉様』って言ってるしなぁ、こういう時どっちかの肩をもつとあとがめんどくさいんだよね。
- じゃ、僕はあっちの3人が心配だからあっちに居るね。テンちゃん、ちゃんと教えてもらってね、リンちゃん、もうちょっと優しくね。よろしく。
と早口で言ってダッシュで皆のところに逃げた。
後ろで2人が『あっ…』って言ったけど聞こえないフリで。
●○●○●○●
結界を4分の1球状に張りなおしてから、反対側にまわって椅子を作って座り、ポーチからコップと水筒を出して水を注いで飲んだ。
「タケルさん…」
不安そうなネリさん。
- 大丈夫ですか?
「うん、何とか。ねぇ、リン様も魔力を抑えないとあんななの?」
- あんな、ってのはテンちゃんみたいな?
「テンちゃんとはあのお方のことでしょうか?」
と、メルさんが言う。
- はい、リンちゃんみたいに呼んで欲しいって頼まれたんですよ。
「そうでしたか…」
「ねぇ」
- ん?、ああ、あんなって言うけどあれでも結構抑えてたんだよ。
「えー…」
「あれで、ですか…」
- で、リンちゃんが魔力を普通に解放したのを見た事が無いから何とも。
「そうですか…」
とサクラさん。
やっぱりこういうのは想定してなかったんだろうなぁ…。
そう言えばこの3人は精霊さんの強い魔力を感じた事ってこれが初めてなのかも。
ウィノアさんは顕現してもかなり抑えてくれているし――それでもそこそこ威圧的だけど、今日のテンちゃんほどでは無い――、リンちゃんは言わずもがなだ。以前ハルトさんの『フレイムソード』の時に顕現した火の精霊たちは、あれは剣に宿ってる分と呼ばれた(と勝手に解釈された)少量の魔力分でしかないらしいので大した事はない。
だからか、何だか皆、ついてきたのは失敗だった、みたいな雰囲気になってるんだよなぁ…。もうちょっと何とかならないもんか…。
しばらくするとリンちゃんとテンちゃんが並んでこっちにきた。ちゃんとテンちゃんも魔力を抑えているようなので結界は解除した。
でもお互いに手を伸ばしても届かないぐらいの間があいている。まぁいきなり仲良くしろって言われてもね、2人とも見かけとは無関係に長生きしてるし。
って考えてみりゃ年の差がすんごい姉妹だな…。
- リンちゃんありがとう、テンちゃんもね。
と言うと2人ともテーブルに近寄ってきたので2人の距離が少し縮まった。
「いえ。タケルさまがお礼を言うことじゃないです。この寝ぼけ姉が悪いんですよ、全く人騒がせな」
「ね、寝ぼけ姉と言うたな!、すぐに思い出せたんじゃからええじゃろうが!」
「ああはい、そうでしたね、お・ね・え・さ・ま」
「ぬぁぁ、何という妹なのじゃ、もちっと可愛げというものを備えていてもええと思うのじゃ」
「そうですね、お姉さま、アリシア様のことをママと呼ぶことから始めましょうか」
「ママをママと言って何が悪いのじゃ!」
おっと、そろそろ止めよう。
- テンちゃん。リンちゃんも。
ぷいっとお互いに逆方向に顔を向けて2人が黙ったので立ち上がり、2人のほうに行って並んでいる2人の間の半歩後ろからテンちゃんを改めてサクラさんたち3人に紹介した。テンちゃんと呼んでもらっていいよね、って言うと頷いたが、3名は『テン様』と呼ぶことにしたようだった。リンちゃんを『リン様』って言ってるからね。そのほうがいいだろうね。
テンちゃんの魔力が抑えられて威圧感が無くなったからか、さっきよりは雰囲気がほんのりとマシにはなったが…、ふとネリさんを見ると、何か聞きたそうな表情で俺を見ていた。言ってもいいのか許可を求めている感じがしたので頷いた。
「あのね、気になってたんですけど、テン様、最初見たときより小さくないですか?」
ああ、見た目の印象ってのもあるのか、と納得していると、テンちゃんが答える前にリンちゃんがさっと言った。
「元に戻る方法を忘れたそうですよ。寝ぼけて胸だけ戻したせいでこんなことに」
「あっ、全部言わなくてもええではないか!?」
「寝ぼけてたって寝ぼけ姉さまが言ったんじゃないですか」
「ああっ、また寝ぼけ姉って言った!」
「寝ぼけてやらかしたんだから間違ってませんよ」
「んぐ…、何と性格のきつい妹なのじゃ…」
「だいたいどうしてあたしより小さくなってるんデすか、なのにそこだけ大きくて、」
「それはさっき、」
「何デスかこれ!、何デスか!、嫌味デスか皮肉デスか!、ちょっと分けて下さいよ!」
「こ、これ、服が、痛い!、やめるのじゃ、いたたた!」
リンちゃんがテンちゃんの胸を掴んでる。
おおっと、これは止めないと!
- ちょ、ちょっとリンちゃん!?
手首を右手で掴むと力を抜いたのか、テンちゃんが離れて俺の後ろに回り込んで抱きついた。あ、いやちょっと胸をぐにぐにと押し付けないでくれないかな。
リンちゃんはリンちゃんで俺の右手を両手で抱くようにして目を閉じた。
「…はぁー…、すみません、見ていたらつい…」
「何と恐ろしい妹なのじゃ、おー痛かった、もがれるかと思ったのじゃ…」
俺の腰に胸を擦り付けてるテンちゃんを見ているサクラさんたちの目が丸くなってる。だからというわけじゃないが、テンちゃんを剥がそうと思い、俺の腰をつかんで胸を押し当てているその左手を軽く持って腰から外した。
「おお、ちょうどいいのじゃ」
やけに抵抗なくすっと離れたなと思ったら、その俺の手を逆に取り、手のひらを胸に押し当てて俺の手ごと痛かったらしい箇所を擦り始めたんだが、ぐにぐにやってるんで揉んでる感じになってるけど、リンちゃんが俺の右腕を離さないので体勢的に無理がある。
「わ、すご…」
とネリさんが言ってるけど、俺はそれどころじゃない。
後ろ手になって動かされたら感触なんて考える余裕が無い。
- いててて、テンちゃん!
「痛かったか?、なら私が擦ってやるのじゃ」
と、捻っていた手の角度を変えて伸ばし、腕に抱きついて優しい手つきで擦った。
「お姉様!、調子に乗りすぎです!」
リンちゃんが俺の右腕をしっかり掴んで引っ張りながら言った。
「おお怖、タケルよ、妹が怖いのじゃ」
リンちゃんの目線から隠れるようにぎゅっと俺の左腕ごとまた腰に抱きつくテンちゃん。
- テンちゃん、そのへんにしようね。
「…わかったのじゃ」
と、すっと離れてくれた。でも俺の袖をちょこんとつまんでた。まぁそれぐらいならいいか。リンちゃんも引っ張るのをやめてくれた。
「ねぇ、じゃあさっき大きかったのは幻影だったってこと?、ですか…?」
言うタイミングを見計らっていたかのように、ネリさんがテンちゃんに質問をした。
自然に視線が集まったから丁寧に言い直したのかな。
「まぁそんなようなものなのじゃ」
テンちゃんがネリさんの方へすっとその大きな胸を張った。
「そうじゃなきゃ格好が付きませんからね」
そこにリンちゃんがテンちゃんの方を見もせずに言い放つ。
「ええではないか!、(最初くらい格好つけたって…)」
と、俺の身体を盾にするようにリンちゃんを覗き込むようにして反論。
「格好つけるにしても何が『闇に誘われし勇者よ』ですか、光がー闇がーっていい年して何やってんですか全く」
リンちゃんも今度はテンちゃんを見て言う。
言葉ではリンちゃんは丁寧に言ってるから姉に対する気の強い妹という構図なんだけど、テンちゃんのほうがちょっと小さいし俺を盾にしてるっていう態度で、どっちが姉なんだかわからない。
でも俺を挟んで言い合いするのは困るんだが・・・。
「ああっ!、言うてはならん事を!」
「何がですか、年ですか?、古の精霊が年を気にしてどうするんですか」
「うぅ…、タケルぅ…」
「またタケルさまを呼び捨てにして…」
それにしてもこの姉妹…、顔だけ見れば双子かってぐらい似てるんだけどね、色違いで。そんでもって同属嫌悪じゃないけど、お互いに思ってたのと違う、っていう感じなんだろうか?
でもさっきから見てると嫌っているわけじゃ無いと思う。魔力的な雰囲気での判断だけどさ。
「あ、そうなのじゃ、タケル…様よ、其方、先ほど『そのままでは連れて行けない』と言っておったように聞こえたのじゃが…」
- え?、うん。
聞くのが怖いのか、少しもじもじしながら。
「私を外に連れて行ってくれるのか?、外に出てもええのか?」
- うん、テンちゃんがそれを望んでいて、僕と一緒ならね。
「そうか!、其方と一緒なら…」
といって俺に抱きつき、顔を埋めて『今日は善き日なのじゃ…』とくぐもった声で言った。
「はぁ…、やっぱりそうなりましたか…」
と、リンちゃんが呟き、サクラさんたちは無表情で互いに顔を見合わせていた。
何だろう、やっぱり不安なのかな…。
「あの…、タケルさん」
サクラさんが小さく手を挙げてというかほぼただの合図だな、それでちらちらと俺に抱きついてぐすぐす言ってるテンちゃんの様子を見ながら言った。
- はいはい?
「先ほどリン様から、闇属性の事は外では内緒と伺ったんですが、その、テン様の事を外でもし尋ねられた場合、どうすれば…?」
- あ、それね。光の精霊だって言えばいいみたいですよ。さっきテンちゃんから聞いてたんですけどね、リンちゃんのお姉さんだし、それでいいと思いますよ。
「わかりました。言われてみればそうですよね」
と、サクラさんはちいさくふんふんと頷いた。
リンちゃんが何も言わないのは、特に言う事が無いってことなのか、あ、もしかして事前に聞いていた事なのかもね。
「テン様は外に出ても大丈夫なんですか?」
- え?
「だって、闇属性なんでしょ?、その、弱ったりしないのかなって…」
「大丈夫ですよ」
と、今度はリンちゃんが答えた。
「我々精霊は、別にその属性しか扱えないわけではありませんし、光の精霊だからと言って暗闇で弱るわけではありませんよ」
「あ、そうでした、ごめんなさい」
確かに、リンちゃんはダンジョンにも一緒だったし、弱っている様子なんて全然なかった。それに土属性魔法をしょっちゅう使ってる。ウィノアさんだって水属性以外を扱ってた。以前火の精霊さんに金属の精錬魔法を教わったときも火以外の属性をめっちゃ使ってた。
「いいえ、謝ることではありませんよ。そういう勘違いはよくある事ですから」
「眷属や妖精種にはそういう性質を持つ者もおるのじゃ」
「お姉さま?」
「ん?」
「話がややこしくなるだけでは?」
「こうして実例を見せればわかりやすいと思ったのじゃ」
テンちゃんが両手をふわりと肩幅ぐらいに広げたその中心に黒い靄が生まれてそれが丸っこい子猫の姿を取ったように見えた。一瞬の出来事だった。魔力の動きを見る余裕すらなかった。
「猫?」
「猫ちゃん」
「可愛い黒猫ですねー」
その子猫がひょいっと重さを感じさせない身軽さで跳んで音も立てずテーブルの上に降り立ち、優雅に尻尾をゆらしながらネリさんの前に行って座った。エジプト座りって言うんだっけ?、犬のお座りみたいな形のやつ。それで右手じゃなくて右前足を差し出したように見える気がするんだが、何だか輪郭がはっきりしないな。
「うわぁ…可愛い…。これって握手していいのかな?」
ネリさんを見ている子猫が頷いた。
「うわぁ、頷いたよ!?、いいってことよね!?、ね!?」
「ネリがしないなら私が」
「ダメですよサクラさん!、あたしんとこに来たんですから!」
と、ネリさんがその差し出された右前足を取ろうと右手を伸ばした瞬間、その子猫はさっと足を引いてぷいっと後ろに向いてメルさんのところに行き、姿勢正しく座っているメルさんのひざの上に降りて丸くなった。
「えー…」
「ほら見ろ、ぐずぐずしてるから」
「そんなぁ、わ、メルさんいいな、いいなー」
「こ、これは、撫でてもいいのでしょうか…?」
立ち上がってテーブルに身を乗り出してメルさんのひざの上を覗き込むようにしているネリさんに、ひざを動かさないようにかちこちになって両手を少しあげて迷っているメルさん。
- 実例ってあれはテンちゃんの眷属ってこと?
「そうなのじゃ。できたてほやほやなのじゃ」
- できたて?
「でもあれには与えた分しか時間がないのじゃ。直に薄れて消えるのじゃ」 「え!?、消えちゃうんですか猫ちゃん」
「そんなのって…」
「儚いのですね…」
メルさんが慈しむようにひざの上の猫か何かもうわからないものを撫でた。
なんか3人とも目が潤んでいる。
「ここは明るいから消えるのも早いのじゃ、ただの闇属性魔力の塊なのじゃ」
「でも猫ですよね?」
近いところに座っているからか、サクラさんが問いかける。
「そう見えておるのは其方らの錯覚なのじゃ。タケル様にはどう見えておった?」
と、こっちを見た。
- 最初は猫っぽいなと。途中からもう輪郭がはっきりしなくなりましたね。
「え?」
と言ったのはサクラさんかな?
「やはり其方にはわかるのじゃな、闇属性魔力というのはそういうものじゃ。ひとを惑わし、惹きつけ、恐れを抱かせる。どうじゃ?、恐ろしかろ?」
にやりと笑うテンちゃん。でも俺には得意げには見えなかった。というか俺の袖をまたきゅっと摘んでいるその手がね。
「もう、お姉さま、そういう事を言うから誤解されるんですよ。何度もつらい目に遭ったんでしょう?、また繰り返す気ですか?」
「でも、」
「でもじゃないですよ、」
- リンちゃん、大丈夫だから。
と、テンちゃんを引き寄せて背中を撫でた。
「タケルさま…」
「タケルぅ…」
「また呼び捨てに…」
- ところであれはどういう事?
メルさんはさっきの慈愛の眼差しで自分のひざと太ももを撫でているし、ネリさんはいつの間にかメルさんの横にしゃがんでメルさんの太ももを同じように撫でている。
サクラさんはその2人を不思議そうに見ていた。
「あ…」
とリンちゃんが言って両手をパンと打つと、光属性の軽い衝撃波が広がった。
「あれ?」
「あれっ?」
メルさんの太ももを撫でていた2人が正気に戻った。
「どうして私の脚を撫でてるんですかネリ様」
「メルさんだって撫でてたじゃないですか」
そりゃまぁそうなるよなぁ…。
これ、笑っちゃダメだよね?、やっぱり。
「私の脚ですから」
「さっき猫ちゃん居なかった?」
「え?、何を…、あ、そう言われてみれば猫ちゃんを撫でていたような…」
「2人とも、猫を撫でていたと思ったのだが…」
サクラさんは猫の事を覚えていて、ネリさんはすぐに思い出したようだ。
メルさんは言われてやっと思い出したっぽいな。
何か違いがあるんだろうか?、いま考えてもわからないからいいか。
「サクラさんそこからメルさんのひざの上って見えます?」
「見えないな…、しかしなぜ猫を撫でていると思ったのか…、何だか記憶が曖昧なような…」
マンガやアニメなら3人の頭の上に『?』が浮かんでいる場面だろう。
「ほらお姉さま、話がややこしくなっただけじゃないですか…」
呆れたように言うリンちゃん。
「体験してもらったほうが説明しやすいと思ったのじゃ…」
「でもこれどう説明するんですか、光と闇の混合属性魔法なんて面倒なものを…」
ああそうか、仮初の命を与えるには光属性が必要ってことなのかな…。
「じゃが眷属の事を知ってもらうには、」
「その眷属の話を出さなければこんな事にもならなかったんですよ?」
「う…、悪かったのじゃ…」
こっちは段落したみたいだけど、テーブルの3人は不思議そうな顔でこっちを見たままだ。放ったらかしじゃないか。全く、しょうがないな…。
- あー、さっきの猫は、まぁ言ってみれば幻覚のようなものと思って下さい。実際はかなりややこしい話なので、今はわからなくてもいいと思います。僕も詳しくはわかりませんし。
「えっと、テン様はそういう不思議な魔法が使える、ということでしょうか?」
とりあえずサクラさんはわからないなりにまとめようとしてくれているんだと思う。首を少し傾げながらも言ってくれた。
- そうですね。
「くれぐれも、外で闇属性の話は出さないようにお願いします。お姉さまも、軽々しく使わないで下さいね?」
リンちゃんが人差し指を立てて念を押すようにいい、皆も「はい」と神妙に頷いた。
「わかったのじゃ…」
テンちゃんはちょっと寂しそうだ。
まぁね、水の精霊に水魔法を使うなって言ってるようなもんだからね。存在意義とまで大げさに考えていいのかどうかはわからないけど、それに近いのかも知れない。
でも、闇属性が誤解を招きやすい属性で、一般的には無い事になってるってことをテンちゃんも理解しているはずだし、そこらへんは水属性を例にするのは何か違う気もする。
それからは、テンちゃんとリンちゃん、それと俺もいれて6人で席に着き、リンちゃんにお茶を淹れなおしてもらって、俺がさっきテンちゃんとかくれんぼをして移動した3階のでっかい木の話や、3階と4階から見える景色の話をした。
それらを聞いたネリさんが見てみたいと言ったので、サクラさんとメルさん、それとリンちゃんの4人で見てくる事になった。
俺はというとテンちゃんの荷物を取りに地下へ行くのに付いてきて欲しいと言われたので、別行動だ。
リンちゃんは地下に入れないらしい。禁止されてるってあとでテンちゃんが言ってた。
●○●○●○●
テンちゃんに連れられ、舞台袖の右側じゃなく左側から出て、廊下の先にある階段から地下へおり、凝った意匠が彫られている黒い壁の前で立ち止まった。
どうするのかなーって見ているとテンちゃんがその壁に手を触れ、すぅっと壁が消えてさらに下へ向かう階段が見えた。手を引かれてそこに踏み入るとすぐに後ろにまた壁が現れて、俺の目には何も見えなくなった。
魔力感知で周囲はわかるし手を引かれているままなので問題無く歩けるが、やっぱり明かりがあったほうがいいと思って光球を浮かべようと考えたら、テンちゃんが光球を頭上に浮かべてくれた。
「明かりがあったほうがええんじゃろ?」
と、何だか楽しそうに言うテンちゃんに頷くと、また階段を下り始めた。しばらく下ると階段が終わり、さっきと同じような壁の前で立ち止まった。これも同じようにテンちゃんが手を触れたが、今度はその壁の先は廊下になっていて、すぐ突き当たりにどこかで見た事のある下向き三角が扉の横についていた。
それはやっぱりエレベーターで、ここからはSF混在かーなんて思いながらテンちゃんがボタンを押して扉が閉まるのを見ていると、テンちゃんが隣で何か言いたそうに俺を見上げていた。
- どうしたの?
「其方は驚かないんじゃな」
- うん、あれ?、ここに来るのってアリシアさんぐらいなんでしょ?
「そうなのじゃ、ママが用意してくれたここに私が来てからこの昇降機に乗るのは其方で3人目なのじゃ」
- じゃあ前に驚いたひとって、テンちゃん?
「し、仕方ないのじゃ、私はこういう設備ができる前からほとんどずっと隔離されておったのじゃぞ?、驚くのも仕方ないのじゃ」
テンちゃんは少し恥ずかしそうに言った。
- あ、そっか、ごめんね。僕は他の場所でこれと同じようなのを利用したことがあるからね。
「人種の国にあるのか?」
- あー、乗ったことがあるのはこの世界に転移してくる前で、見た事があるのは魔砂漠の地下施設でかな。
「ああ、そうなのじゃ、其方ら勇者は特殊な存在だったのじゃな」
- うん。あ、知ってるんだ。
「ママからタケルのことはいろいろと聞いたのじゃ」
- なるほど。
そこで到着したのかすっと扉が開いた。テンちゃんがずっと握ったままの俺の手を引いて歩き出した。
母艦にあったエレベーターもそうだったけど、慣性が魔法で中和されてるせいで動いたとか止まったっていう感覚がしないから不思議な気分だ。せめて到着したら音ぐらい鳴らしてくれてもいいのにね。
あ、母艦にあったものに乗ったことがあるって言えば良かった。
「魔砂漠の事は聞いておるのじゃ。其方が大活躍をしてくれたとママが喜んでおったのじゃ」
- んー、結果的にはそうだったんだけどね、僕としては失敗して死にかけたから、どうも複雑なんだよ、それ。
「そうなのか?、さて、ここからが私の住まいなのじゃ」
と言って扉の前で立ち止まり、光球を消した。
テンちゃんが扉に触れるとすっと開き、薄明かりにぼんやり照らされた中の広い空間が見えた。
が、目の前に4人の黒い人?、が左右に2人ずつ居てお辞儀をしていた。
「おかえりなさいませ、ヌル様」
右側手前のひとりが言った。まだ頭を下げたままだ。
「うむ。こちらは私の運命の人、タケル様じゃ。失礼の無いようにするのじゃ」
「かしこまりました」
そこで全員が頭を上げた。が、真っ黒で立体的な影に目がついてる。ってかよく見ると顔がある。白黒反転したみたいな感じの顔がうっすらと見える。何だか目がおかしくなりそうだ。ここ薄暗いし。
「其方はそこで座って待つのじゃ。私は着替えを持ってくるのじゃ、クロッシ、手伝うのじゃ」
「はいヌル様」
クロッシと呼ばれた小柄な影の子がテンちゃんについて行った。
俺は言われたように見え難い床に置いてあるソファーのところまで行って座った。
何度も言うが、魔力感知的には見えているので歩けるんだけど、目で見えている風景が黒い床に黒い調度品と、黒ばかりなので目に頼ると遠近感がおかしくなる。
後ろから3人の黒い子がすすっとついてきた。さっきのクロッシさんもそうだけど、この子たち足音がしないんだよね。あ、テンちゃんと俺は足音がしてたよ。
しかし何だな、黙ってじっと傍に立って見つめられると居心地悪いな。
シルエットと髪型的に、たぶん全員女性っぽい。ロングスカートにフリル付きのエプロン?、のように見えるんだけどメイド服なんだろうか?、これ。
まぁ、とりあえず話しかけてみるか。
- えっと、さっきテンちゃん、あ、ヌル様だっけ?、についてったのがクロッシさんで?、貴女は?
「はい、私はクロイチと申します。こちらがクロニー、その隣がクロミです」
クロイチ、クロニー、クロミ、クロッシ。1234か。わかりやすいな。
クロイチは真面目そうな肩までのボブカットのような髪型(の影)で身長170cmぐらい。体型は細め。
クロニーはポニテっぽい髪型でクロイチより少し身長が高く、凹凸がある。
クロミはふわふわな髪型でゆったり2つに分けて肩から前に垂らしてるっぽく見えて、クロイチより少し低いぐらいの身長、横幅が少しある。ぽっちゃり型と言えるかどうかぎりぎりのところか。
クロッシは身長が低いけどテンちゃんよりは高い150cmほど。ストレートのセミロングっぽい。目の上ぎりぎりで前髪が揃っている、ように見える。
テンちゃんを入れて身長順で言うと、クロニー、クロイチ、クロミ、クロッシ、テンちゃん。
とある順で言うと、テンちゃん、クロミ、クロニー、クロイチ、クロッシだな。何とは言わない、察してくれ。
1階ホールでテンちゃんが生み出した猫っぽい何かとは違って、この子たちは輪郭がはっきりしているし、ちゃんと存在感もある。これが本当の眷属なんだろうか?、それとも別の何か?
テンちゃんもさ、もうちょっと何か説明してくれてもいいと思うんだけど。
- そう。よろしくね。そこでじっと立ってるのも何だし、座ったら?
「いえ、私たちはこのままで」
- そう?、良かったら飲み物を出すので一緒にどうですか?
「いえ、私たちは飲食ができません。そういう事情ですのでお客様にお茶をお出しできないのです。申し訳ありません」
- あ、そうだったんだ、こちらこそ知らないとは言えごめんね。
「いえ、タケル様が気にされる事ではございませんので」
- じゃあ勝手に飲み物を出すけど、いいかな?
「どうぞ。私どもに構わず」
まぁ、別に飲み物を出さなくてもいいんだけどね。
薄暗い中で、ただ待ってるってのがね。
と、どうしようもなくちびちび飲んだ果実水が無くなったところでテンちゃんとクロッシさんが2人で白っぽい大きな袋を抱えて戻ってきた。
「おまたせなのじゃ。其方、光のポーチを持っておるな?、すまぬがこれを預かってくれんか?」
- あっはい、いいですよ。
テンちゃんたちがそっと俺の横に置いて、でっかい袋の口を閉じているヒモをテンちゃんが持って差し出した。それを受け取ってポーチにずるずるっと入れた。
「ありがとうなのじゃ。ママが言うには其方が外に連れて出てくれるなら、ポーチを用意するという話なのじゃ。だからしばらく預かってくれると助かるのじゃ」
- なるほど。それで一応訊くけど、このひとたちは?
「ああ、私の眷属たちなのじゃ」
眷属だった。
- へー…。
「昔、いろいろやってて生まれてしまったのじゃ。それからずっと一緒なのじゃ」
なんだそりゃ。
- じゃあ一緒に外に?
「それが、この者らにはママの許可が無いのじゃ」
- え?、じゃあ置いていくの?、大丈夫なの?
「大丈夫なのじゃ。私も時々戻って来れるし、そのうち連れ出す許可も出る気がするのじゃ」
と、自信満々に胸を張って言った。
クロイチさんたちは僅かにも反応すること無く、無表情のままだったが。
いや、薄っすらと見えている顔は無表情じゃなく、三日月より細い薄笑いで揃って俺を見ていた。
…ちょっと怖い。
次話4-011は2020年06月05日(金)の予定です。
20200529:助詞訂正。 2人も ⇒ 2人が
20201109:衍字削除。 俺にの目には ⇒ 俺の目には
●今回の登場人物・固有名詞
お風呂:
なぜか本作品によく登場する。
あくまで日常のワンシーン。
今回入浴無し。
タケル:
本編の主人公。12人の勇者のひとり。
忘れっぽい。
リンちゃん:
光の精霊。
アリシアの娘。タケルに仕えている。
姉にずけずけと突っ込むのは、これでも3人に気を遣っての事。
アリシアさん:
光の精霊の長。
全精霊中最古というような存在。実は凄い精霊。
だいたい出番なし。今回も名前が出たぐらい。
テンちゃん:
闇の精霊。
テーネブリシア=ヌールム#&%$。
後ろの部分は精霊語のため聞き取れない。
リンちゃんの姉。年の差がものっそい。
眷属の話を出したのは、地下住居でタケルに会わせる前振り
のつもりだったのか?
ひかりのたま:
アリシアからテンに与えられた、
一定距離までを見ることができる魔道具。
音声は伝わらず映像のみ。試作品らしい。
やみのころもを掃う機能は無い。
今回そこまで話が進まなかった。
ウィノアさん:
水の精霊。
一にして全、全にして一、という特殊な存在。
今回は名前のみの登場。
サクラさん:
12人の勇者のひとり。
ティルラ王国所属。
シオリに勇者としての指導・教育を受けたため、
シオリの事を『姉さん』と呼び、頭があがらない。
さすがの苦労人。
ネリさん:
12人の勇者のひとり。
メルの次にタケルたちから魔力の扱いについて指導を
受けたため、勇者の中では比較的魔力の扱いが上手い。
ティルラ王国所属。
魔法に関してタケルを除いて一番上達している。
外の景色がいいといわれて見に行ったのは、
気分転換がしたかったから。
メルさん:
ホーラード王国第二王女。いわゆる姫騎士。
騎乗している場面が2章の最初にしかないが、騎士。
剣の腕は達人級。
『サンダースピア』という物騒な槍の使い手。
ネリと仲がいい。
魔法に関してはネリと同程度使えるようになっている。
身体強化に関しては現状で人間種トップの実力。
ネリに太ももを撫で回されたのが妙な気分。
シオリさん:
12人の勇者のひとり。
『裁きの杖』という物騒な杖の使い手。
現存する勇者たちの中で、2番目に古参。
サクラに勇者としての指導をした姉的存在。
ロスタニア所属。
今回も出番なし。しばらく出番なさそうだが…。
ミリィ:
食欲種族とタケルが思っている有翅族の娘。
身長20cmほど。
ピヨはミリィが気軽に接することのできる精霊様という感じ。
今回出番なし。
ピヨ:
風の半精霊というレア存在。見かけはでかいヒヨコ。
川小屋に住む癒しのヒヨコ。メルたちに癒しを与える。
今回出番なし。
川小屋:
2章でリンちゃんが建てたタケルたちの拠点。
ロスタニアから流れてくるカルバス川本流と、
ハムラーデル側から流れてくる支流が合流するところにある。
ミリィとピヨがお留守番をしている。
ホームコア技術で護られているため、許可がある人物以外は
入り口の布を避けて中に入ることができない。
ここの浴室は広い。
島:
バルカル合同開拓地の西にある、アーモンド形の島。
島の北部に光の結界柱が見え、その色が変化することから
昔は畏れられ『魔王島』と呼ばれていた。だが魔王など居ない。
南西部に小さな入り江があり、洞窟がある。
その他は本文参照。
今回も引き続き、ここの結界柱の内側にある遺跡が舞台。
テンちゃんの眷属たち:
4名おり、クロイチ、クロニー、クロミ、クロッシと言う。
それぞれの特徴は本文参照。
テンの身の周りの世話をする。
黒い。