3ー027 ~ アンデッド騒ぎ2・ハニワ兵たち
背後の結界にへばりつくように絡み合うアンデッズを乗せて、いつもよりちょっと大きめの飛行魔法で母艦の着陸指定場所、オレンジの3重丸の真上にきて、ゆっくりと降下していく。
近くの柱のてっぺんの光が赤い点滅になっていたが、着陸する機体、じゃないけどそれがあるっていうサインだと思うことにして着陸をした。すると3重丸の2番目の円が点滅を始め、リフトが降下を始めた。後ろで手が抜けないだの骨が外れただのとギャーギャー言っててすごく騒がしいが無視しておく。
リフトが降りていき、下の格納室が見えると大勢の出迎えがいた。
ここで、歓迎されてるなぁ、なんて暢気に思えるほどではないので、まぁたぶんアンデッズを連れて来たからこその警戒態勢なんだろうと思う。
降下中のリフトから見える光の精霊さんたちは、最初は警戒心たっぷりの雰囲気だったんだけど、絡まっているのが解けていくアンデッズ、とくにスケルトンたちが見えるに従って、警戒心よりも驚きと…、ん?、何だあの表情、まるで笑いを堪えているかのような…?
「兄貴、兄貴、何かすっげぇ人が居るんですが、大丈夫なんですか?」
後ろからリーダーゴーストが話し掛けてきた。
彼らの声は魔力だけなので分厚い結界があっても聞こえるのがいいね。
- 大人しくしていれば大丈夫。
たぶんね。捕まったり消されたりはしないだろうと思うよ。そこは言わないけど。
「怖いですぅ~兄様~」
「めっちゃ見られてんぞ」
「俺たち捕まっちまうのかな…」
「だ、大丈夫、タケルの兄貴を信じるんだ」
「「リーダーぁ…」」
スケルトンの表情はわからないが、ゴーストたちは、不安そうな面持ちで立っていた。
そう言えばこのゴーストたちって、移動するときも飛ばずに歩いてたよなぁ、地に足がついている幽霊っていうか、あの地下での広間のところで高い位置に移動する時飛んで行ったのが、俺が見た初めての幽霊らしい行動だったような気がする。
現在はゴーストたちは特に、ドゥーンさんからかけられた浄化魔法のせいでコントラストがはっきりしていて、よく見ないと透けているのがわからないぐらいなんだよね。光ってる事を除けばだけど。だからスケルトンたちが一緒じゃなければもしかしたら普通の人に見えたかも…、無いか。ここ母艦って言ってたしセンサーぐらいあるはずだもんね。判らないわけが無い。
とにかく警戒されるってのは予想していたのでそれはいいんだが…、あ、天井が完全に閉じた。リフトの結界はまだ解除されていないが、周囲を取り囲む人たち、まぁ腰に剣や短剣を装備してるひとばかりなのでたぶん兵士なんだろうけど、見た感じだいたい半数が口を両手で塞いでいて目に力が入っているのは、これ、やっぱり笑うのを我慢しているのではないだろうか?
でも腰に剣って、そこだけ普通にファンタジーなんだな、光の精霊さんたちって。
そしてリフトの結界が解除された。
複雑な表情をしている人が『タケル様、結界を、』と叫んでから目線を下に逸らして一度呼吸を挟み、『解除して下さい!』と言った。何その間…。
言われたように結界を解除すると、その妙な間をとったひとが取り繕ったような表情になって言う。
「タケル様、そちらの方々は、アンデッドのように見えるのですが…」
俺が返事をしようとしたとき、
「アンデッド、なのか?」
「…っぶー!」
「っく…」
「「あっははは」」
「もう、あっははは、ダメっははは」
「おい!、お前たち!、っけ警戒態勢だぞ!、に任務中だぞっ」
「隊長も笑ってるじゃないですかっははは」
と、笑いの渦になってしまった。
今ならわかる、アオさんみたいなのが半数近くいるんだろうね。
見ただけで光属性だと判断ができるけど、見た目はアンデッド。それが光ってるわけで。やっぱり光の精霊さんたちには、この聖なるアンデッドたちは笑いのツボなんだよ。
「兄貴ぃ、もしかして俺たちを見て笑ってるんですかい?」
「歯が欠けてる骨が面白ぇからじゃね?」
「もう生え揃ってるよ!」
「「ほんとだ!」」
「「あっははは」」
全くこいつらは…w
体感で1分ぐらい、周囲が笑いまくっている中で俺だけが半笑い状態でいたが、向こうのほうから車輪の無いオープンカーのようなものが来るのが見えて、それに気づいた兵士さんたちから笑いが止んでいった。
「整列!」
という号令が響き、そちらの方向がざっと開くように移動し右手を胸にあてて直立不動の姿勢をとる兵士さんたち。
さすがにそこでは緊張した雰囲気が流れた。笑顔のままの人はいるが声を出す人はいなかった。
オープンカーと便宜上呼ぶが、それが停止し、近くの兵士さんが駆け寄ってドアを開いてファダクさんとリンちゃんが降りた。
あれ?、リンちゃん格納室に入っちゃダメって言われてたよね?、良くなったのかな。
ファダクさんはこちらに向かって歩き始めたが、途中で『なるほど…』と呟いたようだった。
そして俺から5mほどの距離、オレンジの3重丸の一番内側の円のところで立ち止まった。
「おかえりなさいませタケル様。よもやアンデッドをお連れするとは思いませんでした」
- ただいま戻りました、この人たちは、
「詳しくは別室で。安全な方々であることは見ればわかりますので」
弁明しようとしたら遮られた。
でもそうだよね、見ればわかってもらえるんだよね。元々それが狙いでアンデッドだと言わずに連れ込んだんだしさ。
- はい。
オープンカーの後ろに例の学校教室サイズの座席と手すりがついた移動台が到着していて、『タケル様とお連れの方々はこちらへどうぞ』と言われ、アンデッズに合図をしてぞろぞろと兵士さんが直立不動している間を通って乗り込んだ。
アンデッズはそれぞれがこわごわという感じを出しながら俺に続いて台の上にあがり、俺を真似たのか同じように座席に着いて手すりを持った。雰囲気が厳粛なのを察してか、誰も何も言わなかった。『大人しくしていれば』って言ったからかな。
ファダクさんとリンちゃんはまたオープンカーに乗ったようだ。
全員が乗り込んだのを見てか、合図が出たのかすぅっと移動し始めた。
●○●○●○●
ぞろぞろと別室に通されたが、そこは広い空間のやや端寄りのところに4人掛けのテーブルがあり、端のほうに椅子が寄せられている部屋だった。見たところ、椅子は動かせるがテーブルは固定のようなので、何か仕掛けがあって片付けられるようになっているんだろう。案内に従ってテーブルに着いたのは、ファダクさんとリンちゃん、向かいに俺とリーダーゴーストだ。
他のアンデッズは壁際に整列という程ではないが寄せられていた。よしよし、ちゃんと大人しくしているようだ。
移動している間、ときどきスケルトンの誰かのアゴが動いて歯がカタカタ鳴っていたけど、怖がってるんだろうと思ってそっちを向いて微笑んで頷いたら静かに頷いてくれたので、少しは安心してくれてたらいいな。
何度も言ってるけど、表情がわからないから伝わったのかどうかがわからないんだよ。
着座してリーダーゴーストを紹介し、彼には前の2人とさっき大笑いしていたひとたち全てが光の精霊であることを伝えた。それで彼が『それでここに来てから不安もありますが何故か心地良い感じがするんですね』と言って2人を拝むという事もあったが、落ち着かせてからファダクさんが俺に尋ねた。
「さてタケル様。どちらでこのような方々とお知り合いになられたのですか?」
あー、まずそこからか。
- このひとたちを見つけたのは偶然だったんですよ。ご存知かどうかわかりませんが、僕は大地の精霊ドゥーンさんとアーレナさんから依頼されて魔砂漠地下の調査に赴いていたんです……
と、そもそもの切っ掛けからアンデッズを発見するに至った経緯を丁寧に説明した。
ファダクさんは合間合間に無言で頷きながら聞いていた。
リーダーゴーストは大地の精霊から依頼されての所では驚いたようにこちらを見たが、そこからは真面目に座ったまま姿勢を正してじっとしていた。
「なるほど、経緯は理解しました。我々の知る通常のアンデッドとは異なることも理解しています。ですが属性が善であっても、性質、いえこの場合は性格と言うべきでしょうな、その性格が善であるとは限りません」
ここでひと呼吸おいた。俺が『はい』と頷くと彼が続けた。
「タケル様、リン様が以前、人種の勇者たちを連れて里の転移場を経由し転移したことがあるのです。それは勇者が人種の括りにある存在であり、そして人種と我々が認めた種族は、一部の例外は存在しますが、保護されなければならないという我々の不文律があるからです」
そういえば俺がダンジョン崩壊でラスヤータ大陸に行ってしまったとき、どうやって帰ったのか聞いてなかったけどそうやって帰ったのか。
リンちゃんをちらっと見ると薄く微笑んで小さく頷いた。
「ですが現状、こちらの方を含めて彼らを人種だと認めることはできないのです。加えて肉体が無くほぼ魔法的な存在ですので、里を通すというのはその位置その他の情報がどのように漏れてしまうかわからないという危険性も孕んでいるのです。ご事情は理解致しましたが、そのあたりをタケル様とリン様、そしてリーダーゴースト様以下の方々にはご理解して頂きたいのです」
- なるほど、理解しました。
とても丁寧でわかりやすい説明だと思った。と同時にこれは無理だなと。ドゥーンさんたちに保険をかけておいて良かったかもと。
「つきましてはおひとりずつ、少々お時間はかかりますが面接をして判断したいのですがよろしいでしょうか?」
え?
あれ?、まだ道が残ってるってことかなこれは。
- あ、それはこちらからお願いしたいぐらいですが、ファダクさんのお時間はいいんでしょうか?、その、ご多忙では…?
「タケル様、お忘れでしょうか。我々光の精霊にはタケル様に多大な恩があることを」
横でリンちゃんが大きく頷いている。えー?、またあの話になるのか…。
居心地悪くなるからイヤなんだけどなぁ…。
「ご自覚が無いご様子ですが、それだけではありません。この地、禁忌の地と言われた我々光の精霊にとっては負の遺産とも言うべき問題の地。その解決の切っ掛けとなりました此度のタケル様のご活躍。もはや単純に恩などという言葉では言い表せないほどなのですよ。それに報いるためであれば私の時間など小事に過ぎません」
あー、止めるタイミングを逃してしまった。
何だかなぁ、今回のは目的は達せられたかも知れないけど、俺的には最後に予想できなかった大爆発に巻き込まれちゃったし、失敗したと思ってるだけにそうやって持ち上げられるとむず痒いっていうか、やっぱ居心地悪いんだよなぁ…。
- あっはい、そういう事であればよろしくお願いします。あ、このひとたちの待機場所ってここになるんですか?
「もちろんお時間がかかることですから、お部屋はご用意いたします。この後すぐ係の者に案内させますので、それから面接に取り掛かりたいと考えております。よろしいでしょうか?、リーダーゴースト様」
「は、はい!、よろしくお願いします!」
という事になった。
断られるかと思ったのに、何だか上手く運びそうな気がしてきた。
そして案内のひとがきて、リーダーゴーストが他のアンデッズたちに説明をしに行き、彼らは案内の人に従ってぞろぞろとこの部屋を出て行った。
それを横目で見ながら俺とリンちゃんはファダクさんと一緒に司令室?、管制室?、わかんないけどそんな部屋に戻ることになった。
が、俺はまた下に用事があるわけなんだよね。
「いやしかし驚きましたよタケル様、私もそこそこ長生きをしてますが、まさかあのようなものが存在するとは思いませんでしたな、はっはっは」
急に態度が砕けた。ちょっとびっくりだ。
- お手数をお掛けします。
「いえいえ、ところでタケル様のお部屋はどう致しますか?、彼らの面接はすぐには終わりませんぞ?」
- いつぐらいに終わりそうですか?
「そうですなぁ、彼らには少々悪いのですが観察のための時間もありますから、もちろん面接も行いますが、3日は見て頂いたほうが良いでしょう」
なるほど、観察か。それはしょうがないよな、一応あれでもアンデッドに分類されるわけだし。
- そうですか…。
「タケルさま、お食事はどうされます?」
「おお、それであればぜひここの食堂をご利用下さい、マヨでしたか、それも完備しておりますぞ?」
俺が返事する前に割り込まれた。宣伝か。小声で『あれはいいものです、うんうん』と笑顔で言ってるし。何だ、ただのマヨラーか?、まだそこまででは無いよな?
- えっと、まだちょっと下に用事がありまして、すぐに降りたいんですが…。
「え?、タケルさま?」
「ふむ、それでしたら案内の者を呼びましょう。同じ第8飛行甲板でどうぞ」
「ファダク様!」
「タケル様がご用事で下に降りたいと仰るのですから、ご希望を叶えるべく行動するのが我々の務めですよ、リン様」
「それはそうなんですが…、うぅ、酷いですタケルさま、あたしは下に行けないんですよ…?」
- ああ、ごめんね、リンちゃん。また待たせちゃうけど。
甘えたような声で言うリンちゃんに、ファダクさんは少し目を見開いてから微笑んで温かい目になった。
「案内の者が来たようです。ではタケル様、お早いお戻りを。リン様はこちらへ」
「はい…」
リンちゃんは渋々といった様子で肩を少し落としてファダクさんについて行った。
「タケル様、どうぞこちらへ」
俺のほうは、呼ばれた案内のひとに従って移動した。
●○●○●○●
最初に降下したときと同じように、でも今回は2度目だしあれこれ見ないで急いで飛んで降りた。もちろんいつものように索敵魔法を使うのは忘れない。
途中、塞いでいた箇所を開けてまた塞ぐというような作業はあるが、アンデッズと出会ったあの不気味な空間へと到着した。
メイリルさんらしき肖像画があったと言っていたゴーストに言われたように、広場で沼の反対側、その一番大きな家に入る。
その家は入ってすぐに2階部分まで使った贅沢な空間になっていて、元は丸かったらしい欠けたテーブルと、割れてないテーブルや椅子がいくつもあり、左手にはカウンターらしい作り、階段があって上は四角いテーブルと椅子というような、酒場か何かの多くの人が利用していたような場所だった。
2階に上がって奥の扉を開け、廊下の左手にある部屋だと聞いていたのでそこに入ると、色褪せた絨毯やソファーがある応接室のような部屋だった。
石造りの暖炉が奥に見え、その飾り棚の上に肖像画が飾られていた。
いくつか飾られている肖像画だけど、右側にある中ぐらいのものと飾り棚の上に置かれている絵が、メイリルさんが描かれていると言われていたものだ。一番大きいのは絵が半分ぼろぼろになっていて、人物画だってことぐらいしかわからない。
それ以外のものは、表側にガラスが張られているので劣化しにくかったのだろう。
肖像画は、確かに似てるんだけど、よく見ると別人だった。
まず髪の色が違うんだよ。メイリルさんは黒っぽい青っていうか濃紺みたいな色だけど、この絵のは茶色なんだよね。ああ、ひとりだけの絵のほうね。複数、家族っぽく描かれている絵はひとりだけ茶色で、他はクリーム色みたいな柔らかい黄色。いわゆる金髪の家にひとりだけ茶色が生まれたって感じ。犬とか猫だとそういうのよくあるみたいだけど、獣人族の場合はどうなんだろうね。
元の世界でそういうのあったらまず家庭問題になったりして朝ドラや昼ドラのネタになりそうだけど。ありきたりかな?
でもまぁ、髪色を無視すればホントよく似てる。一応持って帰ってメイリルさんに見せたほうがいいか。
元来た道を急いで戻りながら、さっき肖像画を飾ってあった部屋のことを考えていた。
そうなんだよ、こういうのってどっかで見たような気がするんだけど、どこだったかなぁ…。
結構大きな家の応接室…、あ、エクイテス商会だ。
あの時は棚に飾られていたものに気を取られてたけど、逆側の暖炉のあるほうの壁には確かに肖像画がいくつも飾られていたっけ。
メイリルさんは確か、後継者争いのようなものから逃げてきたんだっけね。それも100年ぐらい前に。
もしかしたらエクイテスさんなら、何か手がかりになる事を知っているかも知れないな。その当時を直接は知らなくても、商人だったらそういう歴史を知っている可能性があるからね。
今は空が少し明るくなろうとしてるとは言え、ちょっと朝というには憚られる感じで、まだ夜は完全には明けていないので、こんな時間に行くと迷惑だろうからあとにするけど、メイリルさんは…、たぶんまた眠っちゃったかな。ドゥーンさんとアーレナさんは起きてると思うけど。ってかあの精霊さんたちって眠るのかな?
何か最近こんなのばっかし…。
●○●○●○●
魔導師の家の前に着地して、近距離のほうの索敵魔法を使い、ドゥーンさんがこの敷地を包んで張り続けている結界の内側を走査しておいた。
なぜかと言うと、アンデッズを連れてきたときに人数以上の魔力を感知してて、ちょっと気になってたんだよ。あの時は島にいた有翅族5人がここに居るって知らなかったんで、ミリィからそれを聞いて『ああそれでか』と納得してたんだけど、よくよく思い返せば反応があった数と比べると合わないなって。
ここに居るのは魔力の強い順にドゥーンさん、アーレナさん、俺が置いてったウィノアさんの首飾り分体、ディアナさんたち5人、ミリィ、メイリルさん、ハツの10人+1体で、あとは魔道具なんかの反応のはずなんだけど、もうひとつ、ウィノアさんの首飾り分体ぐらいの魔力反応があって、人種にしては大きくて精霊さんにしては小さいようなそんなのが居るのかあるのかなってね。
まぁたぶんドゥーンさんたちがでっかい魔道具でも置いてるんだろうとは思うんだけどさ。だっていまやってみた反応ってこれ、この家の地下にあるし相撲の土俵ぐらいの大きさがあるんだもん、いま知ってなんだこれ、って思ったよ。ははは。
あ、ちなみにウィノアさんの分体はあの時は省魔力モードだったから反応も小さく抑えられてる。元気な時は反応すっごいよ?、だから実は邪魔とかは絶対に言えないけど、慣れてしまってからは無視できるのでどうってことない。今も装備してるけどここだとその省魔力モードだ。
まぁその土俵サイズの魔道具については覚えてればあとで聞いてみるとして、どうやらドゥーンさんは起きているみたいで良かった。アーレナさんの反応が無かったからたぶん出かけているんだろうね。他の面々はやっぱり寝てるっぽい。
入ってすぐの部屋、もうここ旧診察室でいいよなぁ、居間兼キッチン兼応接室兼診察室兼病室、ってもう何と言えばいいのかよく判らない多目的ルームだけどさ、とにかくその部屋の中ほどにドゥーンさんが立っていた。
- ただいま戻りました。えっと、何してるんです?
「おかえり。儂ぁ今この部屋に来たところじゃよ、そこにお前さんが帰ってきただけじゃ。まぁ留守番のようなもんじゃがな、ほっほ」
そう言いながら手洗いをしてお茶の用意をするドゥーンさん。俺も何となく続いて手洗いをして近くのテーブルに着いた。
- あ、そうだったんですね。あれからメイリルさんは大丈夫でしたか?
「そうじゃな。不安そうにはしておったが、眠気のほうが勝ったようじゃった。ときにお前さん、外の土人形はどうするつもりなんじゃ?」
メイリルさんの様子がそれほど深刻なものじゃなくて良かった。んじゃ単純に幽霊を怖がってたほうが大きかったんだな。肖像画の話で家族の不幸を思い出して顔色を青くしていたんじゃ無いならいい。
ドゥーンさんは大きい急須っぽいものとお寿司屋さんにあったようなでっかい湯のみを置き、俺用の普通の茶碗を棚からとって置いた。専用湯のみか。側面に何かの模様が描かれていた。
で、土人形ってーと、あ、ハニワ兵か。
- あ、そういえば忘れてました。海藻採ってきて干してましたっけね。
「そうじゃが、それを持って来よった時にハツがの、魚獲りの網を渡してのぅ」
扱えるのか…、高性能すぎるだろ。
「数日はそれを使ぅて魚を獲って来とったんじゃがそのうち止まってしもうての」
- あー、魔力切れ…。
「そうじゃ。それで儂らが補充してやろうとしたんじゃが受け付けんでの、お前さんが戻ったら尋ねんといかんと思うとったんじゃよ」
- そうでしたか、ならあとで回収しておきます。
「回収…?、するとやはりあれはお前さん専用に作られたものなんかの?」
ん?、あ、もしかして便利だから使いたいってことかな。
いいのかな、まぁ、精霊さんだし問題ないだろう。
ハツたちももう見てるし、それにここってもうドゥーンさんたちの拠点になってるよね?、だったら別に4つぐらい渡してもいいかな。数えてないけど皮袋にごちゃっと入ってるぐらいあるし。
- いえ、最初に人形を作って魔力が残っているうちにコアを埋め込めば、そのひとに従うって聞いてます。魔力の補充もそのひとだけみたいですね。
「なるほど、そこで物は相談なんじゃが、その、光のにお前さんからあれと同じ魔道具を幾つか分けてもらえんか頼んでみてくれんかの?」
- ああ、それならたくさんもらってますんで、えーっと、4つ、これでいいですか?
ポーチから取り出してテーブル向かいのドゥーンさんの前に置いた。
ピンポン球よりはちょっと小さいかな、それぐらいの球体なので転がらないように軽く支える。
「おお、ええんかの?」
- たぶん大丈夫でしょう。あ、それたぶん人形がちゃんと作れないとまともに動かないので注意してくださいね。
「ふむ、すると儂ら2人ぐらいじゃの、使えるのは」
- ええ。だったら問題ないと思います。
「ハツに使わせようかとおもったんじゃがのぅ…」
- んー、食料調達ですか?、まぁここで使う分には構わないんじゃないでしょうか。
ハツなら精霊の欠片が混じってるらしいし、それにアーレナさんが指導してるんだからそのうち使えるようになるだろう。
「うむ、まぁそのうち使えるぐらいにはなるじゃろうの」
ドゥーンさんも同じように考えたようだった。
それからドゥーンさんには起動や停止魔法の説明と実演をして伝えた。『なんじゃ詠唱は無いのか』と文句も言われたが、できないもんはしょうがない。でも俺の他の勇者にでも覚えられるぐらいの簡単な魔力操作なんだから、それほど難しいコマンドではないので覚えてもらった。
外に出て、ハニワ兵を探したら2体しか居なかった。少しだけ魔力をチャージすると、慌てたように海を指差して、2体が海から戻ってないってことをジェスチャーで伝えようと頑張っていた。
ちなみに、ハニワ兵の手はキッチン用品『鍋つかみ』のような形をした手なので、指差す指は親指だ。器用だなぁこいつら。
- ああうん、わかってるから落ち着いて。ちゃんと探しに行くからさ。
そう言うと、右手を胸にあててお辞儀をした。
先にこの2体を回収しようかと思ったんだけど、何となく全員揃ってからの方がいいかなって思って待機を命じ、いつもの飛行魔法で水面上を飛んで探し始めることにした。
そろそろ日が昇るのか、そこそこ明るくなってきている早朝の穏やかな海。その上で索敵魔法を使ってまず周囲を確認。
すると沖に出て行くというか、もう出ているというか、3艘の漁船だろう船がいるのが見えた。
だったら海上を飛び回ってるのを見られるのはあまり良く無さそうだな。
なら、浅いこの辺りには居ないようだし、岩がぽこぽこあるところから潜ってみるかな。
できるかどうか少し不安があったけど、空中を飛ぶよりも浮力のせいでかなり魔力を消費するが、できなくはないようだった。まるで全周囲ガラス張りの潜水艇だな。すっごいきれいだ。
海底に近いとまだこのあたりは魔砂漠から飛来して底に溜まってる魔塵の影響がある。それも合わせて水の抵抗やら浮力やらであまり速度は出せないようだ。
索敵魔法を使ってみると、外よりは減衰が大きいようであまり遠くまでは感じ取れないが、大まかな海底の形や魚の存在がわかった。魚は移動するから今は無視だ。
それでも目で見える以上の範囲が探せるのは助かる。
そうして移動しながら海の底を探していると、海底に近いところで揺れているでっかいものを見つけた。
目で見える距離まで近づくと、網に引きずられている2体のハニワ兵だった。なんだそりゃ。丈夫な網だなぁ、引きずると言うほどには移動してないけど、網にかかった魚たちが逃げようとして方向を変えるので動いているように見えるんだとわかった。
とりあえず目の前まで移動して、結界をちょっと変形してそれ越しに触れ、海底で網を腕に絡めて妙なポーズになって転がっている2体に魔力をチャージした。
だって結界に穴あけたら水が入ってくるじゃんか。空気は俺を包んでる分しかないんだから、穴あけたらヤバいだろ?、ここ、海面から20mぐらいあるし。
動き出したハニワ兵は、起き上がろうとして俺に気づいたようで、両腕に網を絡ませたまま首だけで俺を見て(?)頷き、お互いに目線を合わせて(?)頷き、2人して俺に網ごと差し出そうとし始めたので、『いや、ここではムリだから、浜で待ってるよ』と言うと、伝わったのかどうかわからないが、網を引っ張って海底を歩み始めた。
何度見てもシュールだなぁ、と思いつつ水面にそっと出て周囲を確認し、漁船が見えなかったのでそのまま空中へ飛び上がってささっと浜へ戻った。
うん、やれなくはないってことがわかったけど、水中は結構疲れるな、やっぱり。
完全に日は出て明るくなった浜に戻ると、待機と言っておいたはずの2体がまるで何か嘆いているようなポーズで砂浜に膝をついていた。
何をやってるんだろうと近づくと、なるほど、採っておいた貝が全滅してたってわけか。そんな芝居がかったポーズで訴えなくてもいいのに。
そりゃまぁ水が全部蒸発しちゃったら貝もたまんないよね。低温だと何日かは持ったんだろうけど、ここは温度がなぁ…、そもそも砂を吐かせるために作った水槽だからね、長持ちさせるためじゃ無い。
- いいよいいよ、死んでたやつは海に捨てれば。
と言うとてきぱきと前に作って置いてあった桶に貝を全部いれて磯のほうへ持って行った。
切り替えが早いな。清々しいほどに。
残った俺は、水槽を作り直して海水を汲んできて入れ、土魔法で熊手やスコップを作って地味に潮干狩りのようなことをして待つことにした。今度の水槽は底をぎざぎざの筋にして、吐き出した砂をまた吸い込まないようにしておいた。本当ならザルの上に貝を置くのがいいらしいけどね。
しかし貝だけど結構いるもんだね、こういう誰も採ってない浜って。ちょっと熊手でほじくると面白いように見つかる。そう言えば前んときに砂やらの素材をポーチに入れるときにも大量に貝が出たんだった。あの時は波から少し離れていたのに結構居てびっくりしたよ。まぁそれほど貝なんて必要じゃなかったので少し採っただけで逃がしたけど。
と、考えている間に30個も採れた。地味だけどこれだけさくさく採れると楽しいね。
水をかけながらじゃりじゃりこすり合わせて表面を洗ってから、砂抜き用の水槽に入れて待つ。
椅子を作って凭れていると、朝のそこそこいい風と波の音で眠く…。
肩を揺らされて目を開けると、ハニワ兵が俺の顔を覗き込んでいた。びっくりするじゃないか。一気に目が覚めたよ。
見るとすぐそばに2体。1体は波打ち際で木の枝を持っていて、砂浜に四角い線がひかれていた。んー?、何々?、そこに生簀を作れって?、ああ、獲ってきた魚の分か。んで魚は?、あっち?、ああ、網もって海んとこに立ってんのね。それで4体か。なるほど。
納得はしたけど、どうして主である俺がハニワ兵に命令されてるんだろう、と釈然としないまま生簀を作ると桶に海水を汲んできてざばざば入れていた。そして全員で網を持ち上げてもってきて生簀に魚を入れていた。
生簀が無かったときはどうしてたんだろう、と呟くと、またジェスチャー。網のまま持って行ってたらしい。なるほど。そりゃそうだよね。
で、魚を入れ終わると海藻を干していたでっかい台の上に網を広げて干していた。
- えーっと、キミタチはここでの任務を終える事になりました。
言うとささっと整列するハニワ兵4体。1体はまだ肩から例のきれいな帯をつけたままね。
- 新たにドゥーンさんにコアを4つ渡しておいたので、それがキミタチの仕事を引き継ぐ事になると思います。今までご苦労さまでした。
右手を胸にあててお辞儀をする4体。もうそれ定着しちゃったね。
すると頭を上げた帯付きのハニワ兵が、ジェスチャーを始めた。
えーっと?、口の近くで手をパクパク?、話す?、自分が?、話す?、うーんわからん。
隣のハニワ兵に合図をして、まず最初のが自分の胸を指差してから、隣に向いてパクパク。そして次のが同じようにしてさらに隣のにパクパク。
- あー、引き継ぐって言っちゃったから。申し送りがしたいってこと?
頷く4体。
うーん…、もしかしたら作業のノウハウを伝えるほうがいいってことなんですかね?、これ。もう、なんなんだよ。はぁ…、一応確認するか…。
- 引継ぎはコアだけ持ってくればいいの?、それとも人型に組み込んだ起動状態で?
起動状態じゃないとダメらしい。
- それは他の人が作ってもいいの?、俺が作ったものがいいの?
それはどっちでもいいらしい。
- 引継ぎの時と、体の大きさが違っても大丈夫?
いいらしい。
んじゃあれか、別の4つのコアに引き継がせて、それをドゥーンさんに渡したのと交換してもらえばいいか。
というわけでポーチから作っておいたハニワ兵の体を4つと、コア4つを取り出し、え?、何?、でっかい?、建物?、家?、の、コア、はいはいホームコアね。
というような受け答えで何とか言いたい事がわかった。
ホームコアがあるとコアネットワークが使えるので、ノウハウの蓄積がそちらで行えるから、両者起動状態での引き継ぎは不要、ってことだそうだ。
用語は俺が知ってる言葉に当てはめてるので、元の世界っぽい用語になってるけど、意味はだいたい合ってると思う。
何て言うか、音声会話とまでは言わないけど、せめて俺が使ってる人種の言語で記述ができるようにしてもらわないと、向こうからこっちの意思疎通が大変疲れる。これ絶対リンちゃんに伝えようと思った。
- はい、起動。ではどうぞ。
すると4体同士が向かい合ってじっと見つめているという、何とも不思議な事になった。やっぱり顔をハニワにしたのは失敗だったかなぁ、こういう真面目な雰囲気にはとことん合わない。でもちゃんとした顔にするのも不気味だしなぁ、もうハニワ顔で慣れちゃったし…。慣れててもシュールなのは変わらないけどね。
終わったらしい。肩の飾り帯を取り外して畳んで渡された。
1体ずつ停止命令を無詠唱魔法で送り、コアを取り出して水魔法で軽く洗い、体を一旦砂に戻してまた作り、ポーチにしまう。コアは上着のポケットに。
その間、新しいほうの4体は並んで胸に右手を当て、直立して見送っていた。
つまり古いほうの4体は、コアを他とは別にしておかなくちゃいけないって事だよね。と、適当な布を出して、ポケットのコアをひとつずつ包んでポーチに入れた。一応、布には1~4まで番号を焼き付けておいた。
そして新しいほうも手招きをして停止命令をだしてコアを取り出し、体はポーチに、コアはポケットに入れた。
魔導師の家に戻ると、もう皆は起きたようで朝食の支度をしているところだった。口々におはようと挨拶をしてから、座っているドゥーンさんに事情を説明すると、呆れながらもコアの交換に応じてくれた。
「食料調達の手際が引き継げるというのならありがたいんじゃがな、何とも言いがたい魔道具じゃの、これは」
と言って笑っていた。『便利なのは確かじゃがの』とも言っていたが。
それで時間的にもさっき採った貝の砂吐きが終わってるんじゃないかなと思って、一旦外に取りに行った。居眠りしちゃってたからね。
「あ、貝を採ってきたんですか?、今から朝ごはんなんですけど」
桶に入れてもってきた貝を見たハツが言う。
- あ、外の浜辺に生簀を作っておいたよ。そこにあの人形が獲って来た魚を入れてあるから、お昼にでも食べてね。
「ありがとうございます。人形ってしばらく見てなかったんですけど、生きてたの?」
「あたしお刺身が食べたいかな!」
- え?、あ、ミリィはちょっと待って。ハツ、人形は魔力切れで止まってたみたい。
「そうだったんだ、よかったー」
ほっとした表情でふにゃっと笑った。
久々に見るこの破壊力。
- でももう体のあちこちが傷んでたから、分解して回収したよ。
「え…?」
そんな哀しい顔をするなよ、悪い事をしたような気分になるじゃないか。
- コアはドゥーンさんに渡しておいたから、頑張って人形を作れるようになってね。
「えー?、ボクが作るの?、」
「ああ、できるようになるまでは儂が代わりに作って指示を出すからの、早うできるように頑張ればええ。ほっほ」
「そんなぁ…」
ハツは情けない顔をしていたが、確かにハニワ兵に起動・停止をするよりも、ハニワ兵自体を作れるようになることが第一関門だよね。
第二関門はドゥーンさんによると、音声に魔力を乗せることができないと、身振り手振りでしか指示を出せないという事だそうだ。俺は何故か無意識にやってるらしいと以前リンちゃんが言っていたが、それができるようになるとミリィたちにも言葉が通じるようになる。はず。
ちなみに前にも言ったけどミリィたちの言葉を理解するほうは魔力感知ね。
まぁそのへんは俺から言わなくても、追々ドゥーンさんやアーレナさんから教わるだろうね。いま伝えてハードルを上げなくても良さそうだし。
- アーレナさんからいろいろ教わってるんでしょ?、そのうちできるようになるよ。
「うん…、ほんと?、じゃあ頑張るよ…、自信無いけど」
「素質はあるんじゃから励むとええ」
「はい、ドゥーンさん」
さてこっちは片付いたっぽいので、ミリィのほうだけど、お刺身って言ったよね?
- で、ミリィお待たせ。お刺身が食べたいって?
「うん!、ダメ…、かな…?」
おや、珍しくしおらしい態度じゃないか。
でも朝食ってハツとメイリルさんが作ってたよね、さっき。
今から外の生簀へ行ってお魚もってきて捌いて、ってのはなぁ。
それに俺は貝が食べたいんだよ。
- んー、今はこのもってきた貝を調理してしまいたいんだけど…。
「お刺身って時間かかるの?」
- それなりに。
「その貝の料理は?」
- わりとすぐ。ここに置いてない調味料を使うから美味しいよ?
「「そうなの!?」」
「ほっほ、それは楽しみじゃのぅ」
「楽しみです」
お、さっきまでずっと黙ってたメイリルさんが。
でもまぁそんな特殊なものを作るわけじゃなく、ここにはバター(っぽいもの)が無いってだけで、実は元の世界でいう、あさりのバター酒蒸しのようなものを作るつもり。
何よりも俺が食べたいんだよ!
というわけで魔法でささっと平たいフライパンを作ってポーチからダシ汁とお酒とバターいれてフタをして加熱。
そうしている間にトマトみたいな野菜やピーマンみたいな味のする野菜、あとは香りのいい野菜と酢とオリーブオイルみたいな植物油を容器に入れて、え?、『みたいな』ばっかじゃんって?、そりゃだって元の世界の食材とは違う食材なんだからしょうがないだろ。名前知らないしさ。
とにかくそれから例の光の精霊さん直伝、風魔法ミキサーで軽く細切れにしたドレッシングを作り、塩やらで味を調えた。これは貝じゃなくてサラダ用ね。ツナ缶じゃないけど川魚の身をほぐしたやつを乗せて上からかけるわけ。
もうテーブルの上にでているサラダはあるけど、それはハツが作ったサボテンっぽい植物の身らしい。ほんのり甘くてちょびっと塩ふって食べるだけでいいものだ。どちらかというとサラダじゃなくてデザートかもね。
そして皆の痛いほどの期待を込めた視線を背中に感じつつできあがった。ほんの数分だけど『お待たせ』、と言ってテーブルに載せた。
「わぁ、いい香り!」
「美味しそうかな!」
「おお、これは美味そうじゃ」
そして俺も着席して、『いただきます』をして食べ始めた。
「このパンに合いますねー、おいしいです」
ハツは自分が作ったスープは置いといて俺が作った2品をそれぞれパンというか例の小麦粉練って焼いただけのものなんだけど、それに乗せて食べては笑顔で美味しいって言ってた。ほほを膨らませてもぐもぐしてるのが小動物っぽい。可愛いすぎだろこいつ。
「見た目がこんななのに美味しいかな!、もっと取りやすくしてほしいかな!」
まぁ確かに貝ってアップで見たらグロいよね。ミリィは小さいからそれはしょうがない。取りやすくってのは難しいよね、貝柱がさ。
だから身を取ってやったら喜んでぱくぱく食べていた。俺が食べるヒマがないぐらい。しかし貝の身を齧って食べるのは大きさからしょうがないけど、ペースが速い。食欲種族なだけはあるな。噛む力が強いのかな。
「これは酒が欲しくなるのぅ、ほっほ」
といいつつポケットから出して飲んでるのって、それお酒だよね?
「あとで作り方を教えてください」
メイリルさんは上品に、取り皿にとってから小さくちぎったパンに乗せて食べていた。表情からすると口に合ったようでにこにこしている。
育ちからすると料理なんてしそうにないのに、ハツの手伝いをしてたし意外と家事するほうなのかな。あ、教会に預けられてたとか言ってたっけ。そこで家事もしてたのかな。興味があるなら教えるのにやぶさかではないので頷くと嬉しそうだった。
「おおっ、妾たちの分はないのかや!?」
そこにディアナさんを先頭に5名が扉を小さくあけて飛んできた。
あ、忘れてたよ…。
次話3-028は2020年01月31日(金)の予定です。
20200125:接続詞が2度連続した文は語感がよくないので訂正。
(訂正前)すると沖に(~中略・改行~)すると海上を飛び回ってるのを
(訂正後)すると沖に(~中略・改行~)だったら海上を飛び回ってるのを
20200125:同様に、「生簀を」、「生簀が」と2文が連続しているので追加。
(追加文)納得はしたけど、どうして主である俺がハニワ兵に命令されてるんだろう、と釈然としないまま
20200125:衍字削除…。 ご希望にを ⇒ ご希望を からは潜って ⇒ から潜って
●今回の登場人物・固有名詞
タケル:
本編の主人公。12人の勇者のひとり。
ハツ:
この3章でタケルが助けた子。可愛い。
表情がころころ変わって可愛い。
まだ両性だしまさに天使。
ミリィ:
食欲種族とタケルが思っている有翅族の娘。
身長20cmほど。
ミリィは事故で翅がもげているが、
この種族は翅で飛ぶのではなく魔法で飛んでいるので
翅がないミリィでも宙を飛ぶ。
メイリルさん:
昔の王女らしい。
まだちょっと精霊様の前では緊張気味。
起きてからごはんが美味しいのが救い。
ラスヤータ大陸:
この3章の主な舞台。
ウィノアさん:
水の精霊。ウィノア=アクア#$%&。
『#&%$』の部分はタケルには聞き取れないし発音もできない。
一にして全、全にして一、という特殊な存在。
また今回ちょっと話に出た程度の扱い。
でもラスヤータ大陸のこの地方では力を発揮できないので仕方ない。
リンちゃん:
光の精霊。
アリシアの娘。タケルに仕えている。
置いていかれてしょんぼり。
ファダクさんがちょっと苦手だけど言えないジレンマ。
アリシアさん:
光の精霊の長。
全精霊中最古というような存在。実は凄いひと。
再登場はいつなんだろう。
ファダクさん:
光の精霊。
アリシアの配下。航空母艦アールベルクでの統括責任者。
結構長生きしてる。
マヨラーになる日も遠く無さそう。
母艦アールベルク:
光の精霊さんが扱う何隻かある航空母艦のひとつ。
艦長はエナールさん。
本文では省略しているが、
魔砂漠の正常化作業は交代制で休み無く行われている。
ドゥーンさん:
大地の精霊。
世界に5人しか居ない大地の精霊のひとり。
ラスヤータ大陸を担当する。
湯のみの模様は担当地域の簡略図。
それがシンボルマークになっている。
アーレナさんのは島々が描かれている。
実は酒好き。アーレナさんが居ないときには飲むらしい。
でも今回飲んだのバレたらまずいのでは?
アーレナさん:
大地の精霊。
ラスヤータ大陸から北西に広範囲にある島嶼を担当する。
魔砂漠正常化作業を地下から手伝っているので今回出番無し。
ディアナさんたち:
3章008・9話に登場した、有翅族の長老の娘。
と、その仲間たち4人。
「起きてくるのが遅いからかなー」
「女性は準備に時間がかかるのじゃ」
「あたしも女性かなー」
という会話があったとか。
アンデッズ:
明るいアンデッドを目指す変な集団。
タケル曰く『聖なるアンデッド』。
母艦に連れられてきて不安もあるが、
光の精霊さんたちがいるので心地いいらしい。