1ー012 ~ 地図作り
グリンさんについていって、地図を何枚かもらい、お礼を言って森の家まで帰った。
これ、羊皮紙だからかさばるなー、大きさ揃ってないし。
だから丸めて保管とかなんだろうけどさ。
ま、俺にはリンちゃんという強い味方がいるので、預かってもらえばいいさ。
他の勇者ってどうしてるんだろうね?
あ、街の地図の裏面、これ注意書きか。
といっても大したことが書いてあるわけじゃないな、
・地図に記されている治安の悪い地域には近寄らないほうがよい。
・下手な娼館では病気の怖れがあるので地図にある優良店を利用すること。
・病気の治療は教会で。しかし高額なので覚悟しておくこと。
・いい顔して近づき耳ざわりの良いことを言う人物には気をつけろ。
・財布は小分けして持て。
・ひったくり、置き引き、スリには注意。
・街道にはまれに盗賊がでることがある。移動には充分注意すること。
・冒険者ギルドや傭兵ギルドで仲間を募ることができる。
・雇った仲間には給与を支払うことになるので金銭トラブルには注意すること。
・冒険者ギルドでは登録をして、他の冒険者とパーティを組むこともできる。
・その場合には稼ぎの分配でトラブルが起きないように注意すること。
うん、普通だね。
あれかな、先輩勇者方の経験と教訓かな?
やっぱり騙されたり病気もらったりで酷い目にあった先輩がいたってことかな。
「タケルさま?、娼館に行かれるのですか?」
食卓のテーブルに広げて読んでたら、横から同じように読んでたリンちゃんが眉を寄せつつ俺の腕を両手でぎゅっと掴んで問いかけてきた。
- え?、行く予定なんて無いよ?
って言うしかないよね、この場合。実際行かないけどさ。
え?、魅惑のバストがどうとか言ってたじゃないかって?、あれはものの例えだってば。
「そうですよね?、あたしが居ますもんね」
いやキミ魅惑の…、あっ、なんか掴まれてる腕が痛い痛い、ちょっと緩めてくれませんか。だいたい子連れで行く所じゃないでしょ痛い痛い痛い
- り、リンちゃん腕痺れてきたんで手ぇ離して。
「あっ、ごめんなさい、つい」
つい、じゃねーよ。結構力あるなこの子。手ちっちゃいのに。
- リンちゃんが居るしなぁ、仲間とかも要らないから、ギルドに用事もないし…
「そうですよね~、あたしが居ますもんね~」
よかった、機嫌直ったみたいだ。
でも実際、蓄えはある程度あるけど、雇うほどの稼ぎはないので、仲間を雇うのはできないね。リンちゃんのことどう説明すればいいのかもわかんないしさ。
- あ、でも冒険者ギルドに登録して依頼をこなしていくのもいいらしいよ。2人でパーティってことにして一緒に依頼をこなそうか。
「あっ、はい!」
- でもその前に、東の森のダンジョンを制覇しよう。
「はいっ!」
●○●○●○●
ダンジョンの制覇、っていうと元の世界でゲームしてたときのように、
1)ダンジョンボスを倒す
2)全ての宝箱を開ける
3)全ての通路や部屋を踏破する
というのが考えられるだろう。
このうち、(1)は必須として、(2)をするには結局全ての場所を踏破する(3)をやることになるが、ゲームのようにオートマッピングされるわけでも視界の右上にミニマップが表示されるわけでもないこの世界でのダンジョンだと、自分で書くわけだから手間も時間も相当なものになる。
書かなきゃ迷うんだよ。仕方ないじゃないか。
ここだとほぼ一本道みたいなもんなんだけどさ、分岐あっても行き止まりだし。
でもずっと同じような景色なんだぜ?、現在地がいくつ目の小部屋なのかわかんなくなっちゃうんだよ、だからちゃんと書いている。
結局ボスがどこにいるかなんて分からないし、宝箱なんてものがご丁寧に設置されているわけでもないのだから、迷ったりしないように書きながら進むしかないのだ。
と、自分に言い聞かせるようにぶつぶつ言いながら、リンちゃんとも話したり、魔法について教えてもらって練習しつつ、書いては進み、進んでは書いているわけなんだが…。
思いのほか、魔力サーチって便利だったりする。
今までは、これぐらい歩いたからこれぐらいの距離だろう、って結構いい加減に書いてたんだが、例のアクティブソナーで、感覚的にかなり正確な距離や形がわかってしまうから、そのまんま描けばいい。
ただし、描く腕が伴ってないので…、
- んー、何か違うな、ここんとこがもうちょっと…、こんな感じか?
「タケルさま、何か芸術家みたいです」
- せっかくさ、正確にわかるんだからちゃんと描きたいなって…
「だからってそこまで拘る必要は無いのでは…?」
ですよねー。
見たまんま、思ったまま、想像したまま描けるなら、みんな画伯だよね。
- あーあ、紙に写し取れる魔法があればなー
「ありますよ?」
- えっ!?、あるの?
「はい。検知したイメージを魔力操作で紙に焼き付ければいいので」
- で、できるかな?
「タケルさまならできます!」
が、がんばろう。
ってかリンちゃん、そーゆーの早く言ってよね?
やってみた。できた。
何枚か加減できなくてムダにしたけど、踏破するつもりでたっぷり買って来たから大丈夫。だと思う。
なんせ魔法の袋があるからねー、嵩張ろうが何だろうが余裕余裕。
スゲー詳細なのも作っちゃったけど、さすがにこんなの他人に見せられないので少し雑にしたものを定番のマッピング魔法ってことにして練習したよ。
ん?、そうなんだよ。地図書いたとこは、できるなら提出してくれるとありがたい、って言われたんで律儀に渡してるんだ。
兵士のひとたちがせっせと書き写してから、返してくれるんだけどね。
だから宿に荷物置いてたりするわけなんだけど、今は全部リンちゃんがもってる。
そんなわけで、マッピング魔法が使えるようになったから、攻略ペースがぐっとUPだよ。
見つけた小鬼を倒すのも、リンちゃんと半々でやってる。
だいぶ使えるようになってきたんだぜ?、攻撃魔法。
あまり強いのは洞窟だから使ってないけどな。
しかし、ゲームだとMPとかがあって、魔法使うのにも限りがあるもんだけどさ、数値的に見えるもんが何もないせいか、今のところ上限が見えないんだよね。
強敵と戦ってる途中で枯渇しちゃったりしたらヤバいので、早めにそのへんの限度ってもんを知っておいたほうがいいんじゃないのかなー、って思ってるんだけどさ。
リンちゃんに訊いたんだけど、『タケルさまならまだまだ大丈夫です』ってさ、いやそうじゃなくて、限度を知っておいたほうがね。
あ、それと水の精霊様が設置してくれた水道だけど、なんか頑張りすぎじゃないですかね?、ウィノアさん。
今んとこ全部の小部屋に設置されてんだけど…。
いや、便利で助かってるよ?
いいのかなぁ…