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3ー015 ~ 大したことのない攻略

 進むか戻るか、それが問題だ。

 なんて格好つけたところで、とりあえずはここにじっとしている訳にはいかないので、進むことにした。


 どうせセンサーに引っかかったんだから、もう天井のセンサーの下を通ってもいいんじゃないかな、ってね。

 ミリィはその部分を通り抜けるとき、『うー、うるさいかな!』って叫びながら両手で耳をふさいで俺の上着のポケットにもぐりこんでた。


 縦穴の周囲にぐるっとある通路は、足元に白く光っているランプと赤く光ってるランプがあり、消えていた箇所は2箇所を除いて全て点灯していた。

 手すりを持ってぐぐっと力を込めて安全かどうかを確認してから、ちょっと穴の下を覗き込むと、ずっと聞こえていた金属音と低音ノイズはかなり深い下のほうが発生源のようだった。反響もしていたし何の音かはわからない。

 この縦穴はさっきまで居た廊下よりも魔力感知が邪魔される感じがしたので強めにやってみた。工事現場で話し声が聞き取りにくくなるようなもんだからね。


 この縦穴は石と金属と樹脂の層でできているようで、天井まではこの足場からだと20mほど、底までは50mほどあるようだ。どうして層がわかったかというと、一部樹脂が()がれて金属も錆び、石が見えている箇所がいくつかあったからだ。


 天井も亀裂があったり、何かの部品がぶら下がっていたりと、廃墟っぽい雰囲気がしていたが、この通路から上には明かりがないのでぼんやりとしか目では見えないのが少し不気味な感じがした。

 底のほうでは工作機械らしきものがいくつか動いていて、組み立てなのかメンテナンスなのかは分からないが太いパイプらしきものが繋がっているところで動いているので、金属音はその工作機械がだしているのだとわかった。ついでに魔力の濃度もそこそこあるようだ。だから見えにくいんだけどね。

 低音ノイズは底全体から響いているように思えたが、よくわからん。

 アーレナさんの地図には、ここは縦穴としか書かれていなかったし。


 とにかく地図を見て、当初の予定通りエネルギー発生装置の場所へと繋がる左側の通路に進むことにしようと思ったが通路が無い。

 代わりに扉があり、その扉の横には『スパイダー』に付いていた窓の上下ボタンと同じ形の三角形。これってエレベーターってことだよな。押していいのかな?

 そこにボタンがあるんだから押してみるべきとか、そういえばネリさんが言ってたな。

 同じレベルにはなりたくないが、とりあえず下向きの三角形(▼)を押してみたが何も変化が無い。


 地図ではここに通路があって、進んだ先を曲がって少しすすんで十字路の先にエネルギー発生装置の区画に繋がるように書かれてるんだけどな…。どうしようか。

 とりあえずこの縦穴の壁に沿ってぐるっとある通路を回ってみたが、他の2箇所の通路は少し先のところで埋まっていたし、地図にも先に何があるのかは書かれていなかった。


 こんな序盤でいきなり地図が当てにならないとは…。


 来た道を戻って交差路を行くのもちょっと考えたが、別の区画に行ってしまうようだし…、もう縦穴を下りるほうがいいような気もする。


 よし、降りよう。


 いつもの飛行魔法で、魔砂漠から脱出した時のように集中して縦穴の壁の近くに沿うように降下していく。

 途中、壁に沿った通路が10mごとにあったが、気にせず底まで下りることにした。

 底に近づくと、上から感知で見えていた工作機械は2台あり、片方は操作盤のようなパネルの前に居てじっとしていたが、もう片方は何本かのアームで壁の穴から部品を取り出して、床の穴に入れていた。


 何か有害放射線とか電流とか無いだろうな?、と少し心配になったので浮いたまま、上にあったのと同じデザインの、エレベーターらしき扉からすぐの通路へと入った。


 通路に入るとまたパッと天井の照明がついて明るくなった。


 人感センサーなだけなのかな?、でも赤いランプも()くんだよなー…。


 なんて思ってたら、正面からさっき居た工作機械の少し小型のものが4本あるアームのうち2本の先をスタンガンのようにバチバチ言わせながら近づいてきた。


 これは、侵入者を排除しようとしてるロボットか?

 どうも円柱形に細長い腕が4本ついてるフォルムで、あまり緊張感がないんだよこれ。

 とりあえずさっきの縦穴に戻り、あのアームが届かないぐらいの高さに浮いて様子を見てみよう。

 待ってると出てきたそいつは、俺を探してきょろきょろするようなそぶりを見せると、また通路に引っ込んで行った。


 そしてもう一度俺が通路に入ると、くるーっとゆっくり反転してまた2本の先をバチバチ言わせながらこっちに向かってきた。

 よくわからないけど、たぶん警備ロボットなんだろうという事にして、レンズっぽいところを狙って鉄弾を撃ち込むと停止した。


 うーん…、警備ロボットだとして、こんな弱くていいのか?

 都市防衛システムの配下だよな?、これ。大丈夫か?

 と、何だか心配になりそうな初戦だけど、こんなのが相手なら楽でいいなと思うことにしてポーチに回収した。






 そこから階段室に入ってさらに下り、廊下を戻るように進んで分厚い扉を強引に動かして開けると熱気が感じられた。魔力の濃度もかなりあるので、魔力感知では見えにくいったらない。見えないわけじゃないけどね。


 ここまでに同じような仮称警備ロボットは2台遭遇した。ゆっくり迫ってくるだけなので難なく倒して回収した。


 位置的には縦穴の底の下のあたりだろうか。アーレナさんの地図は全く当てにならないのでたぶんそうだろうぐらいの感覚だけどね。低音ノイズが同じで大きいからあってるはず。


 「何だかちょっと暑いかな…?」


 ああ、そういえばミリィも居たんだった。

 ポケットからひょっこり出ているミリィは、何だか頭がぼーっとしているのか顔も少し赤い。暑いからなのか、魔力が濃いからなのかはわからないけど。


- この先もっと暑くなりそうだけど、うるさい音はどう?


 「あれからも時々あったかな」


- 聞こえたら教えてよ?


 「タケルさんが壊してたかな?」


 え…、ここまでに壊したのは仮称警備ロボットだけだから、それも発生源だったってこと?

 ポーチから倒した仮称警備ロボットを取り出して見せた。


- 壊したってこれのこと?


 「うん、たぶんそれがうるさかったかな。タケルさんが結界張ってるとだいぶましになるかな」


- 天井や壁には無かったってこと?


 「通り過ぎたかな」


- えー、ちゃんと教えてよ…。


 「結界があると、近くじゃないとわかんないかなー」


 ああ、それだともう引っかかってるか。

 でも一応心構えができるから教えてもらったほうがいいよな。


- それでいいから、聞こえたら教えてね。


 「はーい」


 残骸を収納し、結界を維持したまますぅーっと進んでいく。

 暑いっていわれたし、俺も暑いと思ってたから結界内部の温度は少し下げた。






 そのまま少し進むと低音ノイズが大きくなり、目の前には太いパイプがいくつも繋がったものがゴオオオと音を立てている。

 縦穴の底だと思っていた場所と同じように操作パネルのようなところに1台居た。

 見上げるような大きさなんだけど、これがもしエネルギー発生装置だとすると、これを停止させるのがミッションなんだが…。


 でもこれ…、適当にぶっ壊したら爆発したりしそうだよな…。


 あのパネルの前にいるやつを撃ち抜いて壊し、パネルを操作して停止…、できるのかな。

 とりあえずそれでいくか…。


 やってみたら、操作パネルにそいつは繋がっていたようで、パネルの光っていた部分が消えた。パネルには文字のような模様が描かれていたが、当然そんなもの読めるわけがない。

 ゴオオオと言う音が次第に小さくなり、通路に戻って少し様子を見ていたら音が消えた。

 壊さなくてもよさそうで安心した。






 分厚い扉のところまで戻り、かすかに低音ノイズが聞こえる別の通路に進んだ。

 途中崩れかけた通路を越えて進むと同じような扉があったが、こちらは開いたままだった。

 そのまま進んでまた同じようにパネルの前にいたアーム付きロボットを撃ち抜いて倒し、回収。

 音が消えたのも同じ。


 戻ってくるとまた低音ノイズが聞こえるほうに進むと、最初に強引に開けた扉がある。


 あれ?、これさっきの扉だよな?、と思いつつ進むと操作パネルの前にアーム付きロボットがいたので撃ち抜いて回収。音が消える。


 何となく気になったのでそこで壁際に寄り、結界の内側に小さいテーブルを作って飲み物をポーチから出して少し休憩しながら待っていると、壁のところがすっと開いて操作ロボットが1台でてきて、操作パネルの前に行き、アームの1本を操作パネルの穴に差し込んだ。パネルの何箇所かが点灯し、またゴオオオと音がし始めた。


 予備が居たのか…。


 テーブルを片付けようとしたらコップにミリィが(もた)れてた。


 「自分だけずるいかな」


 膨れてらっしゃる。


 ごめんごめんと謝ってミリィ用の中ジョッキを渡し、別の器に同じ飲み物を入れようとしたら俺のコップから汲んでいた。それ、まだ飲むんだけど…。


 操作ロボットは襲ってこないからいいけどさ…、と、一応周囲を警戒しながらミリィがその小さな中ジョッキで2杯分飲むのを待った。


 操作ロボットが出てきた場所をスパッと切ってみると、あと1台居るのが見えた。

 そいつは動き出さないのでさくっとポーチに収納して、パネルの前のを撃ち抜いて倒し、回収。そしてついでに操作パネルの穴のところを土魔法で埋めて固めておいた。

 これで復活しないだろう。


 もう片方も同じようにして、残りの通路のほうへ進んだ。






●○●○●○●






 そして崩れかけた通路を何箇所か進み、大まかな位置関係だけは合っているアーレナさんの地図を頼りに、そして低音ノイズを頼りにして、さらに2箇所の機械を停止させた。


 そして、時々やってくる仮称警備ロボットを倒したのが20体を超えたところで、廊下に明かりがない区画に入り、地図によると防衛システムの中枢がある場所だと説明された広い空間に出た。


 その部屋の中央には高さと1辺がそれぞれ4mぐらいのL字型が4つあり、そのL字の内側には台座があって8面体の透明な石が金属で支えられており、細い線がかなりたくさん突き刺さるように付けられていてL字型の内側に接続されているように見えた。

 明かりがないので見えにくいが、4つある8面体はそれぞれ淡く光を放っていて、少しずつ色が違うように見える。

 それと、支柱があって直接には見えないが、4つの装置の中央にはミドさんの所やダンジョンで見たのと似たような装置があった。


 俺が歩いて近づくと、突然、上から直径5cmぐらいの丸いものがぼたぼたと落ちてきた。天井までの高さは8mぐらいあるのですぐに気付いて通路まで戻った。


 一番近くに落ちてきたものをよく見ると、吸収と放出をする粒子を固めた周囲に反射粒子が層になっている物体のようだ。

 それが床にべたっと、まるで丸いお餅を平たいところに落としたように、転がらずくっついていた。


 やりにくさを感じつつも魔力感知でよく見ると、いくつかは臨界近くまで吸収し終えていて、あと少しで放出のターンに入るだろうという状態だった。


 いやちょっとこれはシャレにならないぞ…、こんなのが天井裏に用意されていたなら、そりゃ精霊さんたちじゃどうにもならないよな。道理で魔力感知で見えにくいわけだよ。魔力の濃度が濃い場所だからなんとかなっているようなものだ。


 あ、だから臨界近い饅頭がいくつもあるのか…。


 幸い数はそれほど多くはなく、1m間隔ぐらいに1つずつある。

 でもこいつは外を散ってる粒子の純粋な塊のようなものだ。

 つなぎになっている金属はあるが、外の砂や石などに含まれているのとは密度が桁違いだ。


 まだここは端だからなんとか結界を維持できているが、部屋の中央近くでは魔法を使うのにかなり気合が要りそうだぞ。

 魔法を使わずに、か…、ちょっと一旦引いて考えようか。


 あの饅頭は動かないみたいだし。転がる形じゃないからね。追っては来れないだろうし。


 とりあえず背面の扉をひっぺがして開放状態にし、そのまま直線の通路部分まで下がった。

 そこまで下がればそれほど気合を入れなくても魔法が使えるだろうと思い、鉄弾を撃ってみたがあまり効果がない。

 通路から見えているL字型の表面には刺さったようだけど、何だか狙った位置よりかなり下にズレていた。


 威力が削がれるのかな?、じゃあ多少削がれてもいいようなものを撃てばいいんじゃないかな?


 ポーチから倒した仮称警備ロボットを2体取り出して、溶かして成型してみた。

 それで射出用の砲台のようなものを作っていく。素材はそこそこたっぷりあるからね。

 あの饅頭の近くで魔法を使うのはいくら『気のせい』とか『騒音の中で歌うようなもん』と言っても妨害が激しければ大変になるのは同じなので、消耗が激しくなるのは簡単に予想がつく。

 単純に、あの防衛機械を破壊するだけでいいんだから近くで魔力が介在していなければいいわけだ。威力が減らされるなら、その分増やして射出すればいい。


 言ってみればレベルを上げて物理で殴るようなやり方だね。


 元の世界の人間が考えたものであれば、分厚い金属やコンクリートで物理的な衝撃をとことんまで防御するようなものに囲まれているだろう。

 でもここの都市防衛システムは、元々あまり物騒な事なんて考えもしないような精霊さんたちが作ったものだ。


 アーレナさんの地図にも中央制御室やそのコアがある場所は、魔力的な防御力は高いが、物理的な面では地下深くにあるというのと構造上それに耐えるだけのものでしかないと書かれていたし、彼女もそう説明してくれた。

 ついでに資料が残っていたと言って見せてくれたが精霊語なんて読めないので見せてもらってもさっぱりわからん。


 とにかくそういうわけで、でっかい砲台と弾つくってドカドカ撃てばどうにか壊せるんじゃないかな?

 あとは、射出するこっち側も相当な衝撃や電磁波が発生すると思われるので、自分の安全は確保できる範囲で、だけどね。


 時々やってくる仮称警備ロボットを倒してまたそれを素材にし、となかなかヒマがかかる。


 そろそろお腹が空いてきたな…。

 などと考えながら10台つくり、海岸で作った砂を固めたでっかいブロックに少し埋め込んで風属性の魔力を込めてでっかい弾頭を順番にぶっ放した。

 いつもの飛行魔法で扱いにも慣れていたので問題なく…、とは行かないぐらいの衝撃と音がして、ポケットからミリィが『ひゃあああ!』とか言っていたが、俺も耳がバカになっていて途中から音が聞こえなくなった。


 全部射出してからミリィと俺の耳に回復魔法を使い、結界を何重かにして衝撃をやわらげていたのにくらくらする頭が治まるまで座って待つ。






 ミリィの事を考えるとあまり饅頭に近づけたくないので、ここで待っていてもらおうと声をかけたが返事がない。もしかして?、と思ってテーブルを作ってから、ミリィをポケットから取り出すと気を失っているようだった。

 ポーチからタオルを出して置いてその上にミリィをそっと横たえておいた。


 そして饅頭がごろごろしている部屋の近くまで行く。

 L字のどころか真ん中にあった空間維持装置らしいものまでぶっ壊れていて、攻撃は成功したようだが、また転移か!?、と一瞬焦ったが大丈夫っぽくて安堵した。


 この魔力妨害饅頭、何かに使えればいいんだけどね、ポーチに入れたらどうなるか分からないし、持って帰るにもミリィには良く無さそうだから諦めよう。


 とりあえず透明な8面体は資源になりそうなので、破片も含めて拾えるものはポーチに収納しておいた。


 タオルの上に寝かせているミリィのところに戻り、そのままそっとくるむように持って帰ることにした。






●○●○●○●






 そろそろ半壊して埋まりかけていた箇所につくはずなんだが、開けて通ったような気がする扉を抜けたのに、全く見覚えの無い雰囲気の場所に出てしまった。

 どうやらどこかで勘違いして間違えたっぽい。


 言い訳をすると、あの中枢の近くまでは廊下の明かりが点灯していたのに、それが消えてたせいで見た目の印象がだいぶ違ったんだよ。それで似たような扉が少し開いていて、確かこんなところを抜けたよな、なんて思いつつ進むと非常灯程度の光が見えたのでそっちに進んで来たら、地下倉庫っぽい広いところに出てしまったってわけ。


 ミリィはまだ意識が戻らないし、ここには仮称警備ロボットも居ないみたいだから、とりあえず小屋を作って結界を張って休憩することにした。


 軽く食事をして、少し仮眠しよう。何気に結構疲れた気がするし。






 頬がこそばいので()いたら『きゃっ!』と悲鳴が聞こえて飛び起きた。

 どうやらミリィごと掻いちゃったらしい。


 「潰されるかと思ったかな!」


- ごめんごめん、そんなとこに居るとは思わなくて。


 どうやらケガは無いようだ、良かった。


 「お腹が空いたかなー」


 それで起こそうとしたのか。


- はいはい。


 食事の支度をして、ミリィと食べた。

 しかし何時とか全然わかんないな、ずっと地下だしさ。

 それに、中心部は時間の進み方が違うらしいし、もし時計を持っていたとしても当てにならないだろうから、地上を抜けて上空に出たほうが良さそうなんだが…。


 仮眠する前に小屋を作ったとき、あまり妨害された感じは無かったので、このへんは妨害粒子の濃度が低いのかも知れない。この倉庫っぽい場所の端には階段があるので崩れたりしてなければ上に出られる可能性がありそうだ。


 ミリィに行くよと告げて階段を上ると、2階分ほど移動したところで微弱だが魔力を感知した。何かが潜んでいるかも知れないと思い、慎重に階段を上ろうとしたらミリィがポケットから飛び出た。


 「こっちからピーピー音がするかな」


- ピーピー?、あのうるさいって言ってたのじゃなく?


 「もっと可愛い音かな、呼んでるみたい」


 え?、呼んでる?

 と、聞き返そうとしたらミリィがすーっと廊下に進んで行く。


- 弱いけど魔力が感じられるから、何か居るかもしれないよ?


 「大丈夫かなー、こっちかなー」


 先導するミリィに付いていくと、ノブのない扉があり、その前でミリィが止まった。


 「この中かな」


 まるで電源が切れた自動ドアのような重さの扉をぐいーっと開けると、下の倉庫の半分ぐらいの広さの部屋になっていて、ベッドサイズのカプセルのようなものが並んでいた。

 そのうちのひとつが稼働中のようだった。


 透明になっている部分から覗き込むと、(かど)が丸い虎のような形の黒い耳が頭にある少女が中に寝かされていた。肩のあたりまでが見えているが、服を着ていないように見えた。

 横にある四角い表示は背景が赤っぽい色になっていて文字が表示されており、点滅している。

 こういう色と標示で点滅って、何かまずいってことじゃないのかな?


 俺がそれを見ていると、ミリィがその表示に近づいた。


 「これ、何て書いてあるかな?」


 と、そのちっさい手でぺちぺちっと叩くと点滅が止まり、カプセルから『ゥウウウ』と機械の音がし始めた。


- あ…。


 「あ、触っちゃダメだったかな…?」


 やっちゃったものは仕方ない。

 逃げる事を一瞬考えたが、それはそれで人道的にどうなんだってね。

 だってもしこれが、中の人を覚醒させるものだったら、この子すっぽんぽんで放置されるって事になるし、それはあんまりだ。

 あ、下着ぐらい着けてるかも知れないけどね。


- まぁしょうがないよ。


 とりあえず適当にシャツとズボンと毛布を用意して、どうなるのか待つ事にした。

 覚醒するのじゃなければ、放置して帰ればいいし。

 でもだいたいこういう時って、プシューとか言ってカプセルが開くんだよね?


 ……ほらね、開いた。


 あ、やっぱりすっぽんぽんじゃん。

 この子の意識が戻る前に急いで着せてやろう。






次話3-016は2019年11月08日(金)の予定です。


20191107:言い換えや誤字その他を訂正。ルビ追加など。

     だと ⇒ によると

     拝啓 ⇒ 背景 ほか。

20201214:今頃になって名前が間違っているのを発見してしまったので修正。何てこと…。

     アーレスさん ⇒ アーレナさん




●今回の登場人物・固有名詞


 タケル:

   本編の主人公。12人の勇者のひとり。


 ハツ:

   なんと現状では両性だった可愛い子。

   このままだと良くないらしい。

   アーレナさんの特訓生活。


 ミリィ:

   食欲種族、有翅族(ゆうしぞく)の娘。

   意外と役に立つ…、のか?


 ウィノアさん:

   水の精霊。ウィノア=アクア#$%&。

   水の精霊アクアとはこの存在(ひと)のこと。

   ついにタケルに置いて行かれてしまって不貞腐れ中。


 リンちゃん:

   光の精霊。アリシアの娘。

   今回も略


 ドゥーンさん:

   大地の精霊。ドゥーン=エーラ#$%&。

   ほっほ。


 アーレナさん:

   大地の精霊。アーレナ=エーラ#$%&。

   ハツにキュンで師匠になった。


 カプセルにすっぽんぽんで寝かされている黒い耳の子:

   誰だ、脱がせたのは!?



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2019年05月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
なるほど。わかりません。
2020年01月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
同じやん。なるほど。やっぱりわかりません。
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