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2ー103 ~ 回収と分配

 少しペースを上げるためにさらにハニワ兵の数を増やしたが、やっぱり俺も椅子やテーブルを解除してハニワ兵たちと移動しながら回収作業をした。

 そして前線拠点の隊長さんに言われた通り60体だけ引き取ってもらったんだが、やはり並べていくにもそれなりに時間はかかる。


 直後に鍛治職人の親方さんが追加注文しておいた分の(たま)を納品してくれたのは嬉しかったんだけど、急いでいたので午後に取りに伺いますと言っておいた。

 親方さんは、『勇者様ってのはあちこち飛び回って大変だな』と言って苦笑いをしていたけど、勇者全員が空を飛べるわけじゃないからね?、そのうち全員飛べるようになるかも知れないけどさ。


 終わったときには日は中天に到達し、少し過ぎてしまった。

 大岩拠点と国境防衛拠点のところにもっていくのは昼食後にしよう。


 急いで川小屋に戻り、中に入るとシオリさんたちも戻っていた。


 「おかえりなさい、何かあったのですか?」

 「あ、やっと帰ってきたー、お腹すいたよー、あいたっ!」


 まずサクラさんが心配そうな表情で言い、ネリさんがふくれっ面で子どもみたいなことを言ってぺちっと軽く(はた)かれた。


 あ、そうだった、昼食はリンちゃんが居ないから俺が作るんだった。

 と言っても下拵(したごしら)えしてあるものを仕上げるのと、パンや揚げ物など出来合いのものを出すだけなんだが。


- すみません、遅くなりました。急いでお昼の用意をしますね。話は食べながらでも。


 と言って台所に入ろうと向きを変えたところで手前のほうに座っていたメルさんに呼び止められた。


 「待って下さい、タケル様、そのまま厨房(ちゅうぼう)に行かれるのですか?」


- え?


 と思って改めて自分の手足を見てみると、結構土埃(つちぼこり)で汚れていた。

 あと、汗も結構かいたし、トカゲ(くさ)いというかトカゲの死体臭いというか生臭いことにも気付いた。

 野営など、野外で調理するなら手を洗うぐらいでいいが、リンちゃんがいつも清潔にしている調理場に汚れたまま入るのは良くない。ちょっと迂闊(うかつ)だった。


- あ、確かに良くないですね、ちょっと洗って着替えてきます。


 そのまま脱衣所に直行した。

 ネリさんがぶーぶー言ってたけど、急ぐのでもう少し待って欲しい。






●○●○●○●






 食事をしながら、ハムラーデル前線拠点にトカゲ軍およそ500体が迫りつつあったことを話した。


 「そんな暢気な話じゃないじゃないですか!、拠点の人たちは無事なんですか!?」


- 大丈夫です、皆さんに被害はありません、落ち着いてください。


 「どーせ全部タケルさんが倒しちゃったんでしょー?」

 「え?、全部って、500体のジャイアントリザードよ?」

 「カエデだって見てたでしょ、スパスパ石弾撃って倒してたのを」

 「あの凄い音がしてたあれ?、あの時の事はそれぐらいしか覚えてない…、かな?」

 「あー、あっはは、タケルさんに抱っこされてたんだっけ」

 「あれは!、一瞬だけだったから!、すぐ降ろしてもらったよ!、でもその、戦ってるところはあまり見てないから…」


 そう言えばカエデさんには俺が倒してるところを見せてなかったような気がする。

 一緒にダンジョンに入っても、俺だけ分岐のほうへ行ってたりしてたからね。その『抱っこ』の時もカエデさんが兵士の誰かに話している間だったりするし。


 「へー、とにかくタケルさんが帰ってきてのんびり食事してる時点で、もう残ってるトカゲは居ないの。だから座って」

 「そう…、なの?」


 と、カエデさんが俺も含めて皆を見回し、全員がうんうんと頷いたのを見て、すとんと椅子に座り直した。


 「それで、どうなったのです?」


- はい、竜族と鳥を含めて538体、全て倒して回収しました。それで前線拠点で60体のトカゲを引き取ってもらって、急いで帰って来たんです。


 「「鳥!?」」

 「鳥…、というのも魔物ですか?」


- はい、今まであまり気にしてなかったんですが、どうやら連絡や斥候の役割をしているようでした。


 「そんなのまで居るなんて…」

 「今までのダンジョンに居ました?」


- いいえ、ダンジョン内では見てませんね。鳥は今まで外に居たのは居たんですが、まさか魔物で、それも偵察や連絡役をしていたなんて思いませんでしたので、索敵のときも無視していたんです。


 「それが、実は重要な役割をしていた、ということですか…」


- はい、魔物って、こっちを見つけたら真っ直ぐに襲ってきますよね?、それが鳥の場合は襲って来ないんですよ、だから魔物だとは思わなくて…、まぁ、言い訳ですが。


 「今回は襲ってきたんですか?」


- あ、今日は襲ってきました。昨日までは襲っては来ませんでしたが、中央東9と10ダンジョン周辺で飛んでいたのと、竜族と一緒にダンジョンから出てきたのを見て、もしかしたら使役されている魔物なのでは?、と思って倒したんですよ、そしたら小さい角がぽろっと取れたのを見てわかったんです。


 「なるほど…」

 「どうして偵察や連絡をしていると分かったんです?」


- 最初は東9の入り口付近にいたのが、飛び立ったのを見ただけだったんですが、飛んで行った方角が東10のある方向だったのと、トカゲ軍の上空で頻繁に鳴き声を出していたんです。で、怪しいので竜族を最初に倒すついでに倒してみたところ、残ったトカゲたちが無秩序状態になったんで、そういうことか、と。


 「よくそんなの全部倒せたねー」


- こっちのほうが上に居たからね、それにこっちのほうが速いし。


 「竜族も飛んでいたんですよね?」


- はい、でも竜族ってあまり高度がとれないみたいで、せいぜい10mぐらいまでしか飛ばないんですよ、こっちは数百mの高さから撃ち下ろすだけなので、空中戦という程のものじゃないです。


 「なーんだ、余裕じゃん、いてっ」

 「竜族には破壊魔法があるんだから、危険なことには変わりないだろう」


- 破壊魔法は有効射程が魔法と同じなので、だいたい200mぐらいなんですよ。だからそれ以上距離をとっていれば安全、だと思います。もちろん撃ってきたのは全部避けてますが。


 「撃ってきたんですか!?」


- はい、初撃で倒し損ねた数体と、飛べない竜族が地面から、そりゃもう息をするような頻度でズバズバ撃ってきました。


 「うわー」 「えー…」


- なのでそれが届かない高さから攻撃して、撃ってくるのがいなくなったら、もうあとは端から順番に全部石弾を撃つだけの作業ですから。


 まぁ余裕と言っていいかどうかは分からないけどね。

 一応、破壊魔法は届かないと分かっていても、正面から撃たれるのは気分的にもちょっと怖いので、回避するように飛び回りながらだから、魔力制御が結構大変だった。

 それもまぁ、もっと練習して慣れていけば余裕もでてくるとは思うけど。


 「飛べない竜族も居るのですね…」


- あっはい、翼の小さい個体は飛べないようでした。でも弱いながらも破壊魔法を撃ってきたので、今後は注意したほうがいいですね。


 「わかりました。ところでその破壊魔法ですが、どう対処すればいいのですか?」


- 対処方法、ですか…、今のところは距離をとるぐらいしか試してないんですよ。


 「結界や障壁の魔法はどうです?」


- 距離を取って逃げ回ってたので、試してません。試せば良かったですね、すみません。


 せっかく試すチャンスだったのに、思いつかなかったよ。

 それだけ俺に余裕がなかったってことなんだろうね。


 「あ、いえ、タケル様の飛行魔法がどれぐらい高度なことをされているかは多少なりとも理解しているつもりです。増してや回避行動をしながら攻撃をしているのですから…、こちらこそ僭越(せんえつ)でした」

 「しかし姉さん、対処方法が無いとなると、竜族を相手するのはタケルさんにしかできないという事になりますよ?」

 「土壁や障壁でどの程度耐えられるか、というところでしょうね」


- あ、前に、えーっと、中央東8だったかな、ハムラーデルの兵士さんたちが先に入っちゃってたときに、


 「あ、カエデを抱っこしたとき」

 「それはもういいから!」


- はい、その時、厚さ2mの土壁で通路を(ふさ)いでおいたんですが、しばらくして竜族が到着したのか壊された音がしてました。


 「厚さ2m?、それが壊されるんですか!?」


- 作って間もないので、まだ定着してなかったんでしょうけど…。


 「魔力が残っている壁を壊すほうが大変でしょう。そうすると障壁もダメということになりますね…」


 そうか、そういう考え方もあるか…。


 「そもそもどういう仕組みの魔法なんです?」


- あれは呪文や詠唱じゃないですし、一瞬で構成しているので魔力の流れを観察する余裕がないんですよ、なのでわかりません。


 光の精霊さんたちがもしかしたら仕組みを解明してくれるかも知れないけどね。


 「タケル様でも分からないのですか…」

 「対処方法がない、距離を取るしかないとなりますと、兵を前に出せませんね…」


- そうですね、それだから急いで飛んで行ったんですよ…。


 「それで、昨日今日とかなりの数になっていますが、まだダンジョンには居そうですか?」


 あ、そこまで頭が回らなかったな。


- さぁ、中央東9と10の規模が分からないので何とも…、さすがにもう残り少ないと思いたいですね。


 「竜族がどういう考え方をするのかは分かりませんが、人間の軍ですとある程度消耗したら撤退しますし、全滅しても尚また繰り出して来るというのは考えにくいのですが…」

 「昨日全滅したのにまた出てきたんだから、人間とは考え方が違うんじゃないかな?」

 「そんじゃまた出てくるってこと?」

 「残ってればだけど」


- あ、中心となる竜族は今回倒したと思うんですよ。


 「と思う、ってタケルさんにしては曖昧(あいまい)な表現ですね」


 そこでその、指揮をしていた1体の竜族が、倒したはずなのに死体がなかったことを話した。杖だけが残っていたと。

 一応回収して少し見てみたが、魔法杖ではなくただの硬い木の杖だった。


 「死体が消えたって、まるで勇者みたい…」


 こういうところはさすがネリさんだね。妙なところで鋭い。


 「勇者みたい、ってあんた、トカゲだよ?」

 「そんなの、あたしたちだけだって根拠ないじゃん」

 「それはそうかも知れないけど、『勇者の宿』にトカゲ居ないじゃん?」

 「トカゲにはトカゲの『勇者の宿』があるかも知れないよ?」

 「まぁまぁ2人とも、仮定の話なんだから」

 「んー…、竜族に勇者の可能性、ですか…」

 「姉さんまで…」


- まぁ、あくまで可能性の話ですから。


 「そうですね…」


 まだちょっと日本語のカタカナで少しだけ話、と言えるような内容でもないが、やりとりがあったことは内緒だ。


 「もしトカゲの勇者だとして、やっぱりあたしたちみたいに別の世界から来たのかな?」

 「あんたね、そんな話してどうすんのさ」

 「え?、もしそうだったら話し合いとかできるのかなって…」


 な?、こういう風に考える人もでてくるんだって。


 「有り得ませんね、過去ここにあった国が滅んでいるんですよ?、人ですらなく、魔物を使役して人や村を襲う時点で話し合いなどという次元の話ではないのですよ」


 そうだよね。

 まぁ俺の場合は少しやりとりをしたのもあるから余計にシオリさんの意見に同意するんだけどさ、戦うしかないってね。


 「それはそうなんだけど…」

 「ネリ、こちらだって多くの竜族やトカゲを倒してここまで戦線を押し上げてきたんだ。仮に話ができる相手だとしても、だったらどうして100年前に話し合いが無かったんだ?、向こうはこちらを殲滅(せんめつ)したいだろうし、こちらは向こうを殲滅したいんだ、相容れない相手だとわかるだろう?」

 「だいたいほとんどが魔物なんだからさ、共存の道なんて無いって」

 「場所を区切って住み分けるとか…」

 「末端の魔物にそんな頭ないから無理無理」


 ネリさん以外になら、カタカナでのやりとりについて話をしてもいいかも知れないね。やる事は変わらなさそうだし。

 でももしそれで何とか意思疎通の手段を講じてみよう、なんて事になると危険度は跳ね上がるのでやっぱり話すことはできないな。少なくとも破壊魔法を無力化できる手段が見つからないことには近づけないからね。






●○●○●○●






 その後は少し飛行魔法について話をして、俺はそれぞれの拠点にトカゲの死体を引き取ってもらってきますと言って出た。


 飛行魔法の話になったのは、やはり距離をとって撃ち下ろす方法が俺以外にも使えると安全に対処ができるからという事なんだが、ただ飛ぶだけじゃなく攻撃もしなくちゃいけないので、そこがネックになっているようだった。

 それに、まっすぐ飛ぶだけではもちろんダメで、回避行動を取らなくてはならないのも難易度が上がる要因だ。


 驚いたのは、ただ浮いて移動するだけならメルさんとネリさんにはできたということ。と言ってもメルさんは15m、ネリさんは5m飛んだだけでバランスを崩して転がってしまった。


 メルさんは結界で包むのが不完全だったのか地面に転がったときに地面を削り、中に土が入って土(まみ)れになったし、ネリさんはバランスを崩した拍子に結界まで解いてしまって地面をごろごろ転がってあちこちすりむいていた。『おーいてー』とか言いながら自分で回復魔法をかけてたけど。


 でもそこまでできているなら、あと少しだと思う。空気じゃなく直接物体を操作する風魔法もちゃんとできていたし、床面部分に土魔法の重力制御を混ぜるのも少し淀みはあるができていた。このまま訓練して慣れていけば移動するだけならすぐできるようになれそうだ。






 そして俺は、まず前線拠点で鍛治の親方さんから弾をどっさり受け取り、大岩拠点で死体を受け取ってもらい、さらに国境防衛拠点でも同様に残りの分を受け取ってもらった。

 カエデさんに(あらかじ)め聞いていたように、国境防衛拠点は東西あったのだが、現在は西側は十数名が国境警備で残っているだけで、商人などはもう他の拠点に移動したか引き上げてしまっており、死体を処理できるほどの人員が居ないとのことで、東側だけに引き取りをお願いした。そこでは、皮や爪などは素材として確かに役立つし肉は食べられないこともないので、寄付じゃなければ受け取ってもらえないような感じだった。


 でもせっせと並べていくと、だんだんと横で記録と計算をしていた係の兵士さんの顔色が変わっていき、100体を超える頃には青ざめていた。

 俺としては毎度のことなので、気にせず見ないふりをして並べていたんだけども。


 途中から『人員の手配を…』とか、『加工業者に連絡を…』とかぶつぶつ(つぶや)いていたのが聞こえたが、これも聞いていないフリでスルーした。


 だって俺はこれが終わったらティルラ拠点やロスタニア拠点で同じようにトカゲの死体を引き取ってもらう作業を続けなくちゃいけないんだぜ?、いちいちそんな呟きに構ってられるかってんだ。


 なので、並べ終えたら『以上です、では!』って言って係の兵士さんの引きつった表情を見ないようにしてささっと助走して飛び去った。


 『え!?、あ、え!?』とか聞こえた気がしたけど、気のせいだろう。

 何せ寄付なんだ。数がどうのとか関係ないからね。毎度の事だけども。






 そしてティルラだけど、現在ティルラ拠点は絶賛引越し中というか拠点構築中なので、新拠点にいるオルダインさんに少し話して、何十体か引き取ってもらおうかなーなんて思って寄ってみたが、オルダインさんは川小屋のほうに行ったらしい、入れ違いになってしまった。

 それでも残っていた兵士さん、中隊長らしいけど、彼に話をしてみると『寄付して頂けるのでしたら20、いや30体ぐらいならいいですよ』との事で、喜んで引き渡した。


 聞けばだいぶ前からホーラード国内やティルラ国内から開拓支援やら復興支援だので建築業者や商人、ひいては商品を束ねる商会を(つの)る動きがあったようで、今後この新拠点だけじゃなくティルラの拠点がある場所は流通の中継点となる予定なんだそうだ。


 「ただ、この季節ですから、肉などの傷みやすい部分は大半が処分することになるんですけどねー」


 と言っていたので、だったら氷室(ひむろ)みたいに倉庫の中に氷を作ってでっかい冷蔵設備でも作っておけば役立つかなと、ちょっとサービス精神が湧いてしまい、広場の片隅に土魔法で倉庫を作り、そこに氷をこれでもかと並べてみた。

 一応ちゃんと排水できるように縁の下を作って排水路までつけてみた。


 「これは凄いですね!、魔法ってこんなことができるんですか…!」


 とめちゃくちゃ感心して喜ばれた。

 最近こういう素直な反応がなかったので、ちょっと嬉しかった。


 それで、もしかしてハムラーデル側もそういうのがあったほうがいいのかな、って思ったので、わざわざ戻って、同じような氷室倉庫を作ったら、そちらでも大好評で凄く感謝された。

 何だ、だったらもっと早く気付けば良かった。






 そしてロスタニアの国境拠点に行くと、何だか(あわただ)しく荷造りをしている人たちがいた。それと、前に来た時よりも人数が大幅に増えていたので、本陣で尋ねたらロスタニア東5と6のダンジョンがあった場所に拠点を構築するための準備中なんだそうだ。

 そう言えばそういう話だったっけ、と思い出した。


 そんな時に大量のトカゲの死体を引き取ってくれなんて言いづらいなー、と思いつつも話したら、『まだそんなに寄付して頂けるんですか!』と食い付きがやたら良くて驚いた。

 何でも、シオリさんから前回、『今回で最後だそうです』と伝えられていたそうで、『加工業者を呼んできます!』と近くに居た兵士さんが凄い勢いで走って行った。


 まぁ引き取ってもらえるのなら俺としては喜ばしいので、反応がいいならそれに越した事は無いのだ。


 それで他のところと同じように氷室倉庫を作った方がいいなと思い、場所をどこにしますかと訊いたら、地下水をくみ上げて流し、小屋全体を冷やす仕組みがあるんだそうだ。

 そしてその中に小さいけど氷が置かれていて、神殿から術師が定期的に来て氷を作るんだとか、さすがはシオリさんが所属する国だなとちょっと感心した。


 で、その小屋を見せてもらったけど、めちゃくちゃ小さかった。肉や野菜が冷やしてあったが、たぶん3畳分もないんじゃないかな。これじゃあ足りないと思うので、やっぱりその隣に他と同じような氷室倉庫を3つ作った。

 どうして倉庫が3つかというと、ロスタニアは他と違ってここにまとめて引き取ってもらうわけで、その数300体以上なんだよ。


 まぁ俺のほうのは氷が溶けたらそれで終わりだし、数日もてばいいというものなのでそれを一応説明はしておいたが、『それでも凄く助かります!』とにこにこ笑顔で言われた。

 そんな事をしていると手の空いている人たちがいつの間にか集まって来ていて、『魔法であんな家が一瞬って凄いな』、に始まり、


 「ジャイアントリザードか?、こりゃまたきれいに倒したもんだな」

 「前もこんなのだったぞ」

 「前は全部寄付だったが今回もか?」

 「そうらしいぞ」

 「するとまた振る舞い酒が飲めるな!」

 「まず解体してからだけどな」

 「今回も角イノシシや角ニワトリはあるのかな」

 「無くても振る舞い酒は出るだろうさ」


 と、(おおむ)ねいい反応だった。

 残念ながら今回イノシシやニワトリは無いけどね。


 並べていくと、すぐに順番に運ばれて行き、広場に並べきれるかなぁ?、なんて考えていたが杞憂(きゆう)だったとわかった。数は横で記録していってくれているし、ポーチの残りは手を突っ込めば分かるようになっているので問題ない。


 そのうち周囲に集まってきていた人たちも自主的になのか手伝い始め、並べる尻からどこかへと運んで行く。他と違ってなかなか手際がいいなと思った。

 最後のほうになると、防水布を敷いてその場で解体作業が始まったのには閉口したが、おそらく持っていく場所がもう無くなったんだろう。仕方がない。


 鳥型の魔物のときは、どうやら羽が矢羽根になったり羽根飾りなど有効に使えるものらしく、これも喜ばれた。他の所ではそんな反応無かったのに…。


 とにかくそうやってあちこち行ってティルラ分以外は全部引き取ってもらえた。


 そしてすっかり夕暮れになっていた。






 川小屋に帰り、ハムラーデルとロスタニアに300体以上ずつ引き取ってもらえましたと報告したら、カエデさんには普通に、シオリさんにはとても丁寧にお礼を言われた。

 普通に、じゃないか、カエデさんはちょっと引きつってたかも知れん。


 あ、ロスタニアにあった冷蔵小屋だけど、地下水を汲み上げて壁の内側を循環させるための魔道具があるんだそうだ。何でもロスタニアの都市や村などにはたいていあるようで、豊富な地下水を使って噴水などで涼をとったり、冬季に雪を溶かす仕組みなどに使われていたりするものらしい。すごいな、ロスタニア。


 それでその隣に3棟の氷室倉庫を作っておいたって言ったら、すっごい微妙な表情をして呆れられたが、とりあえずという感じでお礼を言われた。


 その時に聞いたんだけど、ロスタニアの神殿では水系統の魔法を中心に教えていて、神官はだいたい氷ぐらいは作れるんだそうだ。もちろん治癒(回復)魔法もね。

 なのでイアルタン教の、ロスタニア系の神殿や教会の役付きの人たちはなかなか多忙で、そしてそれだけ毎日のように魔法を使う機会が多いので熟達している人が多く、だからロスタニアではイアルタン教以外の宗教はほとんど無いんだとか。


 「と言ってもタケル様ほど魔法が使えるわけではありませんよ」


 と言われたが、溜め息交じりだったのであまり褒めているようには聞こえなかった。






次話2-104は2019年06月26日(水)の予定です。


20190630:表現を変更。

 (変更前)少しペースを上げるためにさらにハニワ兵の数を増やしたが、さらに椅子やテーブルを解除して俺もハニワ兵たちと移動しながら回収作業をした。

 (変更後)少しペースを上げるためにさらにハニワ兵の数を増やしたが、やっぱり俺も椅子やテーブルを解除してハニワ兵たちと移動しながら回収作業をした。

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2019年05月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
なるほど。わかりません。
2020年01月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
同じやん。なるほど。やっぱりわかりません。
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