2ー096 ~ 鉱石と謎
砦の入り口から入ると、中はひどい有様だった。
落雷で破壊された箇所は、通路がどこなのかぱっと見てもわかりにくい。
そしてトカゲが飛び散ってるのがなかなかグロい。そこに肉が焦げた臭いにが混じった生臭さが加わっている。ついでにまだ息のあるトカゲの呻く声が小さく聞こえてきたりして、凄惨な雰囲気に一役買っていた。
前回と同じように、そのまだ息のあるトカゲのトドメを差してまわっている3人の戦闘民たち。
惨状といい臭いといい、みんなよく平気だな…。
俺とリンちゃんは損傷の少ない死体を回収してるだけ。それも呼ばれたら行く怠け具合で。
途中でネリさんに『槍で突き刺すのが楽かも』、なんて言われたのでメルさんが鷹鷲隊から貰ってきてた一般兵用の槍を渡したら、サクラさんにも『私にも下さい』と言われたので渡した。2人とも倒れてるトカゲに容赦なく突き刺してた。
起き上がる元気があるやつや、新たに走ってくるのには石弾を撃ったり剣ですぱっとぶった斬ったりしていた。
訓練の成果か、以前より剣に纏わせている魔力がきれいで安定しているように見えたので、おそらく切れ味もだいぶ良くなったんだろう、全く危なげがない。
しかし毎度の事ながら、よくあんな自分よりもでっかい魔物が襲い掛かってくるのに向かって突っ込んで行けるものだな。慣れというやつなんだろうけど、俺はまだトカゲのそういうのにはちょっと自信がない。
以前、熊や猪を剣で倒したりしてたけど、まず前者は前足を使うために近くにきたら立ち上がるんだよ。で、こっちは身体強化してるのでそんな動作の隙に攻撃すればいいってわけ。少し下がると移動するのにまた四つん這いになるからね。
猪のほうはまっすぐ突っ込んできて、急には曲がれないので避けてから少し追いかければ方向転換してくれるのでそこを攻撃すればいいだけなんだ。側面の急所を晒してくれるので楽なんだよ。
もちろんそんなの身体強化も魔法も使えない状態だと、恐ろしくてやってられないけどね。元の世界でだったら命がいくつあっても足りないね。まずそんな危険な場所に行かないからそんな状況にはならないけどさ。
で、トカゲのほうは困ったことに四足走行のまま噛み付いて来ることもあるし、尻尾で低い位置をなぎ払ってくることもある。立ち上がった状態でも走れるし、前足や尻尾の攻撃も、もちろん噛み付きもある。パターンが多いんだよ。だから近接戦闘したくない。
そこをサクラさんたち3人はちゃんと見切って仕留めてるんだよね…。
チーム『鷹の爪』の4人は、ジャイアントリザードを2・3体までなら同時に相手できるとか言ってたけど、仮に1体でもひとりで対処せずに複数で当たると言ってたっけ。そういうのを考えると、やっぱり勇者ってのは凄いんだなってことが良くわかるね。
まぁ、俺も勇者なんだけどね。もう魔法メインで楽することを覚えちゃったからなぁ…。
あ、メルさんは勇者じゃないけど達人級だからまた話は別なんだろうね。
サクラさんたち3人はまるで冒険者パーティのように一緒に移動をし、戦闘時には分担をしてその場所のトカゲを処理して回っているようだ。もうみんなある程度の索敵ができるので、敵が残っている場所を正確に把握しながら効率よく移動している。
俺はその後からついていって回収作業と、壁の淀みポイントを地図に記したり、この層全体の索敵警戒を行ってる。
淀みポイントは、遠くからでもわかるものと、ある程度近くまで寄らないと判りにくいのがあるんだよ。今回で言うと、入り口から向かって砦の向こう側の壁は、入り口付近からではよくわからなかったからね。こうして砦の奥側まで来るとわかるんだけどさ。
もちろんパッシブじゃなく、トリガーの反射で判別するから索敵魔法を使うことになるので、それが全体の警戒にもなるって寸法だ。
それにしても、まだ動けるトカゲがこっちにも来るかなって思っていたのに、3人がうまく処理して回ってるからか、全く来ないな…。まぁ、いいことなんだけどさ。
そんなこんなで砦内部はどんどん処理と回収が進み、さらにまた、前の砦と同じように鉱石が集められている倉庫のような部屋が見つかった。例によってネリさんが『金っぽい鉱石があるよ!』、と呼びに来たんだけどね。
- またですか?
「だからちゃんと『ぽい』って付けたでしょ?」
- ごめん。あ、素手で触ったりしてませんよね?
「へ?、触ってないけど、触っちゃダメだったりする?」
- うん。色がきれいでも、中には猛毒だったりするのがあるから。
「……マジで?」
- うん、マジで。
砒素などの化合物があるかも知れないからね。前回のには無かったけど、いつもそうとは限らないので注意喚起しておかないとね。
鉱石がどっさりある部屋で、ハニワ兵を作って仕分け作業だ。
便利なもので、色や形を教えるとその通りに仕分けしてくれるので、鉱石には触れずに済む。でもこいつら、形はいいとしても色なんてどうやって判別してるんだろう?、謎だ。
部屋には黄鉄鉱が少量、手前のほうにまとめて置かれていて、その他は赤錆色の鉄鉱石が奥側にどっさり積まれていた。付着している土石の質が異なることから、おそらく違う場所を掘って出たものだろうか…。
それにしても、屋根が大半残っていたから攻撃目標にしちゃったせいで、鉱石の山の上に崩れた屋根の破片がたくさんあって、それを移動させる作業が増えちゃってるんだよね…、しまったなぁ、まぁしょうがないんだけども。
ハニワ兵がそういう作業をしているのを横目に見ながら、土魔法で手頃な大きさのハンマーと台を作り、試しにいくつかの足元に転がってるというか半分地面に埋まってる鉱石を叩いてみた。妙な匂いがしたりはしなかったので砒素に関してはたぶん大丈夫だと思う。
鉄鉱石のほう、叩いて癒着している土石を落としたとき、ふと、この層の地面と似ている気がしたので、以前火の精霊ウーミリスさんだっけかに教わってから何度も練習した精錬魔法で成分を分離してみた。
付着していた土と比較してみたが、少し違う。似てはいるんだけど…、と。そこで、もしかしたらこの層の空間か近くの層なのかも知れないと考えた。
地図をよく見てみると、この層にはそういう箇所は無さそうだが、ひとつ前の3層の形に少し歪なところをみつけた。
調査に来た時には気付かなかったが、今日3層で索敵魔法を使った時、低い位置にまだ水分がしっかり残っている泥が溜まっている箇所があったなと思い出した。
つまりそこは保水力があるということで、例の水攻めによって深い穴が泥で埋まってしまった場所の可能性があるってことだ。
ならちょっと行って見て来るか。
いくつかある淀みポイントを崩す作業をサクラさんたちにしてもらうことにしようかな。そう思って後ろで待機しているリンちゃんに、ポイントを記してある地図を渡して伝えてもらう事にした。
「この大量の鉱石は全部持っていくのでしょうか…?」
- あ、いや全部は無理でしょ、時間が掛かり過ぎるよ。あそこに置いた箱の分だけでいいよ。
と言いながら瓦礫を取り除いたあとの鉱石を運ぼうとして苦労しているようなハニワ兵の動きを見て、『おや?』と不思議に思って呟いた。
「わかりました。タケルさま?、どうかしました?」
どうやら鉱石がこの場所に積まれてからかなりの年月が経過していたようで、山と積まれた裾のところは気にならなかったんだけど、積みあがってる部分は癒着というかくっついて塊になってしまって運び出しにくくなっているようだ。
- リンちゃん、ツルハシかスコップ無いかな?、ハニワ兵が苦労してるみたいだから。
「スコップはわかりますが、ツルハシとは何でしょう?」
そこでリンちゃんに渡した地図の1枚を返してもらって裏にツルハシの絵を焼き付けて説明をした。
「あ、ピックアクスですね、はい、こちらでいいですか?、タケル様から渡して使えと命令してくださいますか?」
- なるほど、ありがとう。
そうか、ハニワ兵を作ったのが俺だからか。
4本のピックアクスを受け取って、ハニワ兵を呼び、言われたように『これを使え』と命令した。
それで通じるんだから高性能だよね。すげー。
そういえばハニワ兵には親指しか無いんだよ。
んと、台所用品の鍋つかみ、ミトンみたいな感じ。物を握ることはできるけど、指先が器用なわけじゃ無い。
指をちゃんと作ったらそれなりに動くらしいけども、武器を持たずに殴って攻撃をするので、ミトン型のほうが都合がいいんだってさ。だからそう作ってる。
さっきその不自由な指先で、鉱石を拾おうとして塊になってて取れずに、ほじくろうとしてたからね。一瞬何やってるんだろうって思ったよ、ははは。
ひょいっと飛んで3層へ移動し、索敵しながら目的の泥沼の近くに下りた。
これ…、どうしようかね?、泥だけ除去ってどうやればいいんだろう?
ちょっとずつ凍らせて…?、あ、どうせ飛行魔法のように重力操作するんだったら、結界でごそっと汲んで土魔法で囲ったでかい枡に移すか。
で、やってみたが…、これ泥だけじゃなく瓦礫やトカゲの腐りかけな死体が混じってるぞ!?、うわー…。
不幸中の幸いなのか、泥まみれで見た目のグロさは半減してるけど、臭いが酷い。たまらん。
消臭魔法って無いのかな…。よく『生活魔法』なんてのがある世界の物語だと、デオドラントとか言って都合よく消臭してたりするんだけど。
死体は燃やしてしまえばいいのかもしれないけどさ、広いとは言っても閉鎖空間なわけで、煙とか燃やした臭いとか、今度はそっちが問題になりそうだし…。
とかなんとか泥と瓦礫と何かをせっせと移動させていくと、でかい穴が斜めになってて、奥まで続いているのがわかった。
自分を結界で包んで飛行魔法で入り込むと、その穴はほんの20mほどで行き止まりになっていた。坑道かと思ったけど違うっぽい?
土魔法で壁と行き止まりをレンガサイズ分削り取ってみると、なんだか質が違うような気がする。
穴の外に出てその2つの表面を水で洗い流してみたら、色が少し違うようだ。どういうことなんだろうか…?
うーん、考えてもわからんな、こりゃ。
この3層の遺跡だけど、この穴の近く、と言っても50mほど離れてるけど、レンガ造りだったような建物が石壁の内側にごちゃっと崩れたような感じなってたんだよね、さっき飛んで上から見て思ったんだけども…。何か関連性あるのかな。レンガ工場だったとか?、うーん…。
これもよくわからん。
あまりここでぐだぐだ考えてても仕方が無いので戻るとするか。
飛んでそのレンガっぽい遺跡部分の上を越すときに、瓦礫の隙間に色の違う部分があることに気がついた。
そこに下りてよく見てみたが、瓦礫の下は黒っぽく固まっている土の山、にしか見えない。
レンガが崩れている内側も、黒っぽいというか黒い。何だ?、火事でもあったのか?
…あ!、これ炉じゃないか!?、かなり年月が経過してるみたいだから崩れすぎてて原型がどんなだったかわからないけど、レンガで何重も包んである内側が黒いってのは、炉だよね。ここで金属を溶かして精錬してたってことだろう。
ってことは黒く固まってる土山は、炉からでたスラッジを置いてあったところ、と推察できそうだ。
んじゃあの穴は、やっぱり坑道だったってことか?、でもめっちゃ短いよなぁ…。
やっぱよくわからん。ただのゴミ捨て場だったのかもしれないし。
まぁいいか、戻ろう。
戻ると、ちょうどリンちゃんたち4人も砦から出てきたところだった。
- 終わったんですね、ご苦労さま。
「あれ?、タケルさん?」
- ちょっと3層のほうで調べ物をしてたんです。そろそろお昼かなって思って切り上げてきたんですよ。
「そうでしたか。こちらはトカゲの処理が終わってリン様のところに戻ったら、砦の外でお昼にしましょうと言われて出てきたんです」
- そうですか、リンちゃん、ハニワ兵は?
「まだ作業中です。もうしばらく掛かりそうですよ」
というわけでいつものようにテーブルと椅子を作り、少し離れたところに土台の上に枠を作って水をどばーっと入れ、手前に水を受けて流す台をつくり、穴を開けて水をちょろちょろ流してみた。
- んじゃ手を洗って食事にしましょうか。
「はーい」
「またそんな凝ったものを作って…」
「まぁいいではないですか。手を洗いやすいですし」
「それはそうなのですけど…」
ここには居ないけど、シオリさんが見たら『魔力の無駄遣い』って言われるんだろうね。
食事中、サクラさんから尋ねられた。
「タケルさん、ここも埋めてしまうのですか?」
- 鉱石がまだたくさんありますので、埋めずにロスタニアに引き継いでもらえばいいかなって思ってます。
その後は埋めるというか崩すというか、ロスタニア次第だね。
崩して埋めるという選択をしたなら、もちろん俺がやろうと思ってるけど、これだけの地下空間を崩すのはなかなか骨が折れそうだ。
「あ、そうですね、言われてみればここはロスタニア側でした」
「たk…、ハニワ兵が鉱石を箱に入れてたけど、ロスタニアに黙ってとっていいの?」
今、タケル人形とか言おうとしたろ…?、全くもう。
- 鉱石調査、ってことで少し分けてもらえればいいかなって思ってさ、後から分けてくれって頼むよりも、調査で少し貰いました、って言ったほうが受け入れてもらいやすいかなって。
「ふふっ、悪知恵ですね、タケル様」
悪知恵って…メルさんから言われるとは思わなかったよ…。
- まぁそう言わないで下さいよ。ハムラーデルの大岩拠点のところの鍛治職人さんたちに少しお世話になってるんで、それのお礼にほとんど渡しちゃう積もりなんですよ。
「ああ、そういうお考えだったんですか、失礼しました」
「ほとんど、ということは手元に少し残すのですか」
- はい。前に精錬魔法を教わったんで、せっかくだから練習しておかないと。
「なるほど」
「あ、あたしも精錬してみたい!」
「あ、私も少し興味があります」
ネリさんは勢いよく手を挙げて言い、メルさんはそれを見て小さく手を挙げて言った。
- 精錬魔法って、4属性全部同時に使うんですけど、やってみます?
「「え…?」」
- まぁ、興味があるなら川小屋に戻ってからでもお話しますよ。
「う…、なんか思ったより難しそう…」
「ま、まだ聞いてもいないうちから諦めてはダメですよ」
「でも4属性全部でしょ?、あたしまだ飛行魔法のその2までしかできないよ…」
お?、ネリさんその2までできるようになったんだ。
「私もその2まででしたら…、あ、タケル様、その次は周囲に水球をぐるぐると回せばよいのでしょうか?」
「あっ、タケルさんが前にやってたやつ?」
- ええ、まぁ、その2までであとは応用なので、その3というわけじゃないんですが、同時展開操作の訓練という意味なら、そうですね。あとは水球の数を増やすとか、温度を変えるとか、土球も混ぜて回すとか、そういったことです。
「それができれば4属性同時展開の訓練にもなるというわけですか…」
「って、精錬魔法って飛行魔法より数段難しいってことじゃんー!」
「まぁまぁ、落ち着けネリ」
「うー…、前に見たとき簡単そうに見えたのに」
簡単そうに見えたのなら、精錬中の俺の魔力操作をちゃんと感知できてなかったってことだ。
「見たって、タケルさんが精錬していたのをか?」
「うん、ほら、ガラスの置物作ってくれた時の。あれって精錬魔法なんでしょ?」
- はい。精錬魔法の応用です。
「また応用…」
「その基礎が、飛行魔法その2からの展開ということですか…、精進せねば…」
メルさんはやる気充分だなぁ、拳を握って言ってるし。
それに対してネリさんはやる気が感じられないな。最初の勢いはどこに行ったのやら。
でもメルさんがやり始めると、対抗意識が出てきてやる気になるんだから面白いね。
- ちなみに、ピヨは土球と水球をこういう風にぐるぐる回しながら川を泳いでましたよ。
「え!?」 「ピヨちゃんが!?」
「って、ピヨちゃんは精霊様みたいなもんじゃん…」
「あ、そう言われてみればそうですね」
あら。発奮材料にはならなかったか。
「それにピヨちゃん飛行魔法普通に使ってるし」
「そうですね、普通のヒヨコなら飛べませんね」
む、リンちゃんが何か言いたそうな微妙な表情をしてる。
きっと『精霊だからといって誰でも飛べるわけではありませんよ』ってところだろう。
でもそれを言うとピヨを『半精霊』って言ってる手前、光の精霊さんたちの立場がないから言えなくなってるんじゃないかな。
話を変えておくか…。
- サクラさん、鉱石の話は別にして、埋めると何か問題があるんですか?
「あ、いえ、何かに使えないかなと思ったのですが…」
- あ、天罰魔法で塔が2つとも折れちゃいましたね…。
「しかしこのような場所に砦があっても使い道が無いのでは?」
「ええ。そうなんですが、わざわざ埋めてしまうのも大変だと思いまして…」
うん。メルさんの言うように砦だけこんな奥にあってもどうしようもないね。
かと言って、地下資源が採掘できるわけでもないし…。
そのために採掘調査をして理由を探すってのも本末転倒だよね。
とか言いつつさっきちょっとそういうのを期待して調べてきたんだけども。
古い精錬所跡はあったけどそれだけだったし、謎は残るけど、んー、何て言うか、これ以上は俺の仕事じゃないような気もする。
●○●○●○●
砦のある4B層を終えて、3層と4A層を通り抜ければ街のある仮5層だ。
街と草地が丘の斜面にある、そんな風景なんだけどね。ここがダンジョン内じゃなければ。
調査のときにも言ったけど、まるで斜面の箱庭だ。
トカゲが2・3体ずつ、街らしき部分のあちこちをうろついていた。
草地の部分には角イノシシの集団とトカゲがまるで羊飼いのように数体付き添っているのが索敵魔法でわかった。
まぁ屋根の残っている家屋の中まではわからないし、狭く細い入り組んだ部分もわかりにくい。そこはもう少し近寄って索敵魔法を調節しなくちゃわからないんだ。
簡単に言うと遠距離レーダーか、近距離センサーか、って感じだ。
実際はもうちょっと段階的な調整もできるんだけどね。もう何度も使ってるんで、周波数(波長)的にも慣れたやりかたでやってるから、2種類を使い分けてる形だ。
実は、ダンジョンを埋めるときに土属性魔法で似たようなことをやってる。
でもその場合、共振現象を応用しているので崩そうとする対象次第で当然ながら周波数が変わる。そこを毎回調整して変化させながらやってるので、索敵魔法でももしかしたら最適な周波数ってのがあって、ちゃんと調べて試していけば効率なども良くなるのかも知れない。
とりあえず使えてるので面倒だからやってないけども。
で、だ。
戦闘民3名は、まるで食後の腹ごなしだとでも言わんばかりにこの層に入ってすぐに駆け足で殲滅戦闘をやってる。
俺はリンちゃん抱えて飛んで、斜面の上のほう、高い建物の残骸の上から見下ろすようにして、彼女たちをフォローしてるってわけ。
具体的には、彼女らが囲まれたりしないように、適当に瓦礫を飛ばしてトカゲを牽制したり……、したいんだけど、あの戦闘民たち近距離だと索敵できるので、少々囲まれたところで魔法だって使えるし、全然危険でも何でも無い。
だからただぼーっと見ているだけ、みたいになってる。
時々、戦闘が終わって損傷の少ないトカゲの死体を回収しに飛んで行くぐらい。
あ、ちゃんと足場にしてるところは土魔法で補強して崩れないようにしてるよ。
そこでいつものようにテーブルと椅子つくって、リンちゃんとのんびりお茶してるんだけどね。
しかしこの層って、本当に街みたいなんだよね、作りがさ。あちこち崩れたりしてるし、さっきの3層にあった炉の残骸と同じぐらいの年数が経過してるんだろうな、とは思うけど。
上から見てる限りでは、ちょくちょく家具らしき残骸があるのが垣間見えるんだよね…、書物とか日用品とか残ってないかな?、あとでちょっと探してみようかな。
おっと、また回収してこなくちゃ。
3人の戦い方を見てると、どうやら前衛がサクラさん、後衛がネリさんで遊撃ポジションがメルさんという形に落ち着いたようだ。
まぁ妥当な分担だよね。
向かってくるトカゲの進路を障壁や土壁で妨害したり石弾を撃って牽制したりと、なかなか考えて魔法を使ってるネリさん。普段の様子からは想像できないぐらいちゃんとやってるなーって感心した。
サクラさんはそれで誘導された敵を一撃ですぱっと倒してるし、踏み込みの速度といい足捌きといい、以前見た時よりもずっと洗練された身体強化効率によって、もともと身体に染み付いた動きが冴え渡っていて、とても美しいと思える。
ちょっとマネできないなーあれは。
俺だとたぶん、似たような速度で無理やり動くことはできても、すぐに身体の動きに無理がでて破綻しそうだ。
メルさんはそのどちらの仕事もこなせるようで、声は聞こえないけど指差したりする動作から、2人に指示を出す指揮官的な立ち位置で戦っているようだ。索敵担当ってことかな、それで指示を出しながらあれだけ魔法に近接にと戦えるんだからすごいもんだ。
うん。たまにはこうして先輩方の戦いを見るのも勉強になるなぁ…。
まぁ近接とか、もうやる気ないけどね。
身のこなしが全然違うんだもん。訓練が圧倒的に足りてないって自覚したね。
いいんだよ、俺は魔法でいくんだから。見習い勇者だしな!
あ、でも剣の訓練もちゃんと続けるよ?
毎日じゃなくなったけどね。
そう言えば毎日やること、って勇者の宿んとこの隊長さんに言われてたんだった。
ま、まぁ、今更だな!
「タケルさま?、あちらでメルさんが呼んでるんじゃないですか?」
- え?、あ、ほんとだ。行ってくる。
「行ってらっしゃいませ」
回収しにいかなくちゃね。
次話2-97は2019年05月08日(水)の予定です。
20190506:表現を変更。
(訂正前)かなり年月が経過してるから崩れまくりだけども、
(訂正後)かなり年月が経過してるみたいだから崩れすぎてて
20191124:「- 精錬魔法って、」の前に改行をひとつ追加。