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1ー008 ~ 茶ローブ

 結局、気休め程度に丈夫さ+《プラス》みたいなのがあったので買ってきた。


 ああ、プラスってのは気分的なものであって、魔法のエンチャントがかかってたわけじゃない。ほら、あるじゃん?、ちょっと生地が丈夫そうなのって。それよそれ。


 色はなんだか茶色っていうかラクダ色?、で染められてるけど均一じゃない。まだらというほど差があるわけじゃないけど、濃淡がちょっとある。でもどの服もそんなもんなんだよ。


 元の世界とは違うんだから仕方ない。


 だいたい灰色系統か茶系統か緑系統ぐらいしかない。もしくはそれらが混ざってるやつとかな。

 いいんだよ、目立たないようにするためなんだから。


 で、やっぱりリンちゃんにはでかい。ダボダボだ。


 裾だけふんずけないように腰んとこで余らせて、ついでに買ったヒモで帯みたいに縛れば、目立たないリンちゃん茶ローブ仕様のできあがりだ。


 まぁひじょーに格好悪いが今は仕方ない、宿に帰ってから何とかしようね。


 とにかく今は定食屋へゴーだ。






●○●○●○●






 開けっ放しの入り口から2人で入った瞬間、


 「お昼は終わりだよ!」


 え!?、って思って立ち止まったら、


 「おや、燻製の兄ちゃんじゃないかい。売りに来たのかい?、おや、兄ちゃんにも仲間ができたのかい?、ずっと独りぼっちだったから心配してたんだよ。まぁ、あまり詮索しないのがここいらのルールってやつだから言わなかったけどね。そうかそうかいめでたいねぇ、大事にしてやんなよ」


 燻製の兄ちゃんて…、そして最後のは何だか意味深だなオイ。

 いやもちろん大事にするけどさ。


- あの、何か食べようと思って来たんですが。


 「ああお昼は終わっちまったよ。もっと早く来てくんなきゃねぇ、でもまぁ兄ちゃんには世話んなってるし、有り合わせでよかったら適当に座って待ってくれるかい?」


- あっはい、助かります。






 食べながらリンちゃんと話す。


 え?、どんなメニューだって?、有りあわせって言ってたろ?、煮物と塩ふって焼いた肉の串だよ。味?、普通だよ普通。腹減ってっから美味かったけど。

 いーじゃねーか、苦手なんだよ、そんな食レポみたいなの。


 あれか?、素材とか焼き加減とか分析して、『このまったりとしてしつこくない味が口の中で渾然一体となって奥深い風味を作っている』とか言うのか?、無理無理。

 そいやこれ、何の肉だろうね?






- ところでリンちゃん、精霊さんって眠るん?


 「眠りますよ?、眠らずに過ごすこともできますけど、普通は眠ります、どうしたんですか?、急に」


- いやほら、今晩は宿に泊まるわけだしさ、リンちゃんの寝るとこどうしようかなって。


 「タケルさまのお側に居ます」


 えー、だってベッドで眠ってるよこでじーっと立って、別に立ってなくてもいいんだけど、怖いだろ?、絵面として。何のホラー映画だっての。


- って、何だって?


 「タケルさまのお側に居ます」


- 部屋を別に取ろうかなって思ってたんだけど。


 「タケルさまのお側に居ます」


 あ、こりゃダメだわ、説得できる自信ねーわ。表情固いし。しょうがない、リンちゃんにベッド使ってもらって、俺適当に布とか敷いて床で眠ろう。そうしよう。


- そっか。わかった。


 って言うしかねーじゃん?、ほら、表情戻ってにこにこだよ。






 店を出て、リンちゃんにも尋ねてみた。


- どうだった?、食事。


 「普通でした」


 ほらな?


 「あっ、でもタケルさまの燻製肉のほうが美味しいです」


 取って付けたように言わなくても…、本当だったら嬉しいけどさ。






●○●○●○●






 宿の部屋で、リンちゃんのローブ大改造計画発動中。


 って大げさなもんじゃねーんだけどな。袖とか裾んとことか切って端っこ縫って、腰んとこ留めるヒモつくって、あとはフードの調整ぐらいかな。

 あとは両脇にポケットぐらい作ってやるか、みたいなさ。


 「タケルさま、器用ですね」


- そりゃリンちゃんが出してくれた裁縫道具がいいんだよ。


 この世界に来て半年ぐらいか?、もうちょっとか?、まぁいいか、そんで服の穴だのやぶけたとこだの繕ってるうちに手際もよくなったもんだけどさ、裁縫道具がひでーんだよ。

 針とかスゲー太いし、長いし、なんだこの火箸!?、みたいなさ、いやそこまで長くないけどさ、子供用の箸ぐらいのサイズなんだぜ?、はさみとか全然切れねーの。

 そんでもって糸だってスゲー太い。元の世界にタコ糸ってあんじゃん?、あれぐらいですら無い。細めの毛糸?、ぐらいのやつが糸なんだよ、こっちでは。

 しかも太さが一定じゃない。でかい街とか行けばあるのかもしんねーけど、ここいらじゃそんなもんしか手に入らねーの。


 「メイドのたしなみだ、ってお母様がくれたんです」


- そうなんだ、ありがたいね。


 元の世界の、いやそれよりもなんか洗練された裁縫道具をリンちゃんが鞄――でいいよな、もう。『淡いピンクの小さなリュックサックみたいな魔法の袋』って毎回言うのも何だし――から出してきたときはびっくりしたよ。


 重箱みたいになサイズで、黒檀みたいな黒さ。

 表面には彫刻がびっしり、あ、これモチーフはアリシアさんかな。精緻だなこれスゲー。

 そんで開くと中の小物の棚が斜めに展開すんの。んで中身が見やすくて使いやすいようになってた。使うのが恐れ多いみたいな感じ。


 うん、使ってるけどさ。


 でも見たこと無い知らない道具?、とかあんのね。

 なんせ裁縫なんて小学校んときの家庭科以来、と言いたいところだけど実は家の前の公園にある集会所で必要に駆られて時々やってた。といっても子供んときに母親がやってたやつの見よう見まねとか、その家庭科で覚えたこととか、町内会のおばさんから教えてもらった程度で本格的に勉強したわけじゃない。家庭科は一応成績は良かったんで、返し縫いとかいろいろ覚えてるにしても、ね。


 まぁ、今回は大半、リンちゃんがやってるんだけどな。


- リンちゃんのほうが上手いじゃん。


 「お母様とお付きの方々に手ほどきを受けましたので」


- それって例の『再教育』で?


 「はい」


- そっか。


 なんかスゲーな、光の精霊さんたち。






 おお、なんか思ってたより良くできたな。


 「どうです?、似合いますか?」


- 色はアレだけどな、上手くできたな、似合う似合う


 元がいいからな、元のだぼだぼみたいなのじゃないなら、何だって似合うさ。

 うん、裾のスリットも、元のサイズがでかいおかげでうまく重なっていい感じに隠れてるし、フードんとこにボタンもつけたから調整もできる、ポケットにもフラップ?、っていうんだっけ、フタとボタン付けたし、リンちゃんもご機嫌だ。


 これ、そのうち色違いでもう何着か作ってやってもいいな。


 あ、あと俺の分のこと忘れてたわ。




20191031:誤字訂正。 自身 ⇒ 自信

     まだこんな誤字が残っていたなんて…。

20201110:タケルの裁縫について、訂正と補足をしました。

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2019年05月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
なるほど。わかりません。
2020年01月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
同じやん。なるほど。やっぱりわかりません。
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