2ー055 ~ 魔物侵略地域の昔と他の勇者たちの話
それからこの魔物侵略地域の昔の話になり、シオリさんも当時の人から聞いた話だけどという前置きで、ここにあったバルドアという国のこと、魔物が襲来したときのことなどを話してくれた。
ロスタニアにはバルドア北部であるバルデシア地方から多くの人や家畜が避難して行ったそうで、今もその子孫がロスタニアには多く住んでいるそうだ。
それでロスタニアが兵を出したのが他の国々、ティルラ王国とハムラーデル王国よりもかなり遅かったんじゃないかという話になり、ロスタニアは疑い深い国民性があるのではないかとサクラさんが言ったところ、
「確かにティルラに対しては昔から対抗心のようなものがあるのは否定しないわ、でも近年それが顕著になったのは、ティルラが年に数回送ってきた連絡隊の質が悪かったせいでもあるのよ?」
と反論された。
「確かにあの星輝団はひどいと思いますが…」
うん、俺もそう思う。あれは騎士団じゃなく盗賊団の類だろう。
ネリさんは苦労したんだろうなぁ…。
- それで僕の話もまともに取り合ってもらえず、言葉は丁寧だけれどあんなに一方的な言い方をされたんですか…。
「あっ、それはその、ダンジョンの処理をですね、ティルラ側やハムラーデル側を先にしたでしょ?、それで不満だったらしいのよ。ロスタニアを後回しにした、って思っていたみたいなのですよ」
どうもまだ俺に対して敬語にすればいいのかどうかに迷いがあるシオリさん。
ロスタニアでは怒って出てきちゃったもんなぁ、怒らせないように、って気を遣っているようだ。
でも正直なところ、ロスタニアを後回しにしたのは確かなんだよね。
- んー、後回しにしたというのは本当のことですから、それで気分を害されるなら仕方ありませんね。国境を割られたり勇者が帰還したりしていて、現状苦しんでいるほうから手助けするものですし。そのこと自体には悪いとは思っていませんので。
だってロスタニアは国境を割られてないし、対処に困っている様子もなかったんだもん。
「そ、そうですよね!、タケル様は悪くありません!、私がロスタニアに戻ってよく言い聞かせておきますので、どうかお怒りにならないでくださると幸いでございます!」
がくっ、何?、俺そんな恐ろしい存在なの?
- あ、いえ、怒ってませんよ?、それでその後、どうなったんです?、バルドアの話ですが。
「はい、それでですね……」
シオリさんはこれも当時の兵士から聞いた話ですけど、と前置きをして続きを話してくれた。
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昔のその後。
魔物が襲来した日から数日は、ツーラ村から近かった部族のところまで侵攻した後、その周辺から動かなかったらしい。
ツーラ村から近かった部族は、魔物の襲来で家畜を多く残したまま逃げていたので、それらの魔物化をしていたとされている。
もちろんそれもあるが、おそらくカルバス河口から10kmほどそれぞれ北東と南西にある2つのダンジョン、それが最古とされているので、そこを発見して最初の拠点となるダンジョンを作っていたのだろう。
そしてそれが定着、つまりダンジョンになり始めたのを皮切りに、侵攻が始まったと思われる。
それが、魔物たちが動かなかった期間、凡そ2ヶ月だったんじゃないだろうか。
そしてじわじわと魔物は全体数を増やしつつ、大型の亀が前進を始めた。
海側はもう誰も見る人が居ないので、海側から魔物の援軍が来たのかどうかは、わかっていないんだそうだ。
前半部分が妙に詳しいのは、それを記した手記がいくつか見つかっていて、ロスタニアやハムラーデルに届いており、それを元に書き直したり補足脚色したりした書物が存在しているからだそうだ。
道理で村人の会話や総首長の会話などまでシオリさんが話してくれたわけだよ。
しかしよく覚えてるなこの人。記憶力良すぎ。
だってシオリさんが読んだり当時の人たちから聞いたりしたのって、7・80年前だぜ?、勇者って老化が遅いから記憶も持つのかな…?、ちょっと俺は自信もてないなぁ…。
そして後半部分は、派兵された人たちから聞いた話が主体だから、前半部分とは違って客観的になった。
バルドス地方、王都ドドーンドから出動した騎馬隊40騎は、もう漁村には行けそうにない状態だと途中で判断し、防衛しながらあとから到着する馬車に難民をのせて退却した。
カルバス川の北側、バルデシア地方では逃げるガダ族と少数生き残ったニーア族を、デーバ族が騎馬や荷馬車などで拾いながらロスタニアへと撤退を続けていた。
(※ バルデシア地方では、西からニーア族、ガダ族、デーバ族が生活していて、デーバ族がその3族の中では一番規模が大きい)
南部の首都へと逃げようとする者らは少数だが居たので、それは南北の連絡をする者らが見つけ、使っている渡し舟や荷船を使ってなんとか救出したらしい。
とにかく魔物が動かなかった2ヶ月間で、首都から西には人が残っていない状況にはなったんだそうだ。
魔物が動き始めたのが分かったのは、斥候隊によるもので、発見した位置と日時から遡れば、2ヶ月間動かなかったのだということがわかったが、それがどういう事なのかを考える時間的余裕は、人間側には無かった。
大型の亀の歩みにあわせて進軍してくる魔物たち。
当時誰もそのような大型の魔物と戦った経験のある者などこの国どころか近隣には居らず、どう戦えばいいのか、弱点はどうなのかという情報や手がかりがなかったのだ。
達人級の人間も現在のようには洗練していなかったし、達人級という言葉すらなかったらしい。
そしてティルラとハムラーデルから兵士たちが到着したとき、首都の物見台から大型の亀が見えた。
首都に残る者は、兵士とそれを養う食料を運んだり加工したりする者と一部の商人ぐらいだった。
それら非戦闘の人々すら逃がそうという動きになったようだ。
それほどまずい状況が予想されたのだ。
これから戦うのに、士気など最低と言ってもいいぐらいで、少々鼓舞するような演説をしたところで戻る士気などなかった。
むしろ誰もが、少しだけ戦ってみて、撤退をすることが前提だと感じ、実際の命令もそうだった。
ありったけの遠距離攻撃手段をぶっ放したら、撤退する。そんな作戦とも言えないような作戦となった。
空堀は西方向にだけ堀り、その西側には掘った土で壁を築いたが、大型の亀には障害ともならず簡単に崩されてしまった。
それを見た兵士たちは、この首都の壁も同じようになるのだろうと悟ったらしい。
ぶっぱなした矢や投石器によって、亀以外の魔物をある程度減らすことができたが、肝心の亀の数が減らなければ進軍を遅らせることなどできない。
勇敢な兵士の一団が亀に挑んだが前足に少し傷を負わせた程度で、周囲にいる他の魔物の対処もあって、数人があっけなくやられてしまい、撤退した。
防衛側にいい情報もある。空堀は有効だった。だが空堀の大きさに対して、亀の数が多すぎた。
空堀に突っ込んで斜めになった亀を、後ろから来た亀が押し、それで壁が破壊されたのだ。
それを見た兵士はもう殿部隊のようなものだが、もう首都を棄てて逃げるしかなかった。
首都を落とした魔物たちは、それから10年間はそこから東に侵攻しなかったそうだ。
今思えばその間に拠点となるダンジョンをせっせとこしらえて居たんだろうね。
首都ってのが、今ある大岩のあたりだったらしいので、今後処理するダンジョンは、古いダンジョンばかりということになるね。
中央東8も途中のままだし、今後は今までのように簡単には行かないってことだろう、効率のいい方法を考えておいたほうが良さそうな気がする。
人々はその間、首都を奪還しようとはしたようだが、やはり亀と魔物のコンビネーションには勝てず、首都の東に砦を築いたり拠点を作ることはできたが、それも亀が侵攻してくれば下がるしかないような規模でしかなかった。
そして10年後、再び魔物が侵攻を開始した。
亀対策として大きな穴を掘り、油を落として火をかけるなどで、一進一退の攻防が年に数度の頻度で起こったようだ。
その頃はまだ現在のように散発的な襲来ではなく、トカゲが統率する亀とその他の魔物が、ある種の軍のような動きをしていたらしい。
とは言っても、部隊を分けたりするようなものではなく、揃って前進、後退が出来る程度でしかなかったらしいが。
それでも揃ってやってくるのは大変な脅威だった。
ただ年に数度だったのが幸いだったのだろう。
まだ国境を割られるようなこともなく、犠牲者は出たが、なんとか耐えていただけだったが。
そのうち魔物軍からトカゲが姿を消し、統率が無くなった魔物は散発的に襲来してくるようになる。
そしてホーラード王国の辺境に勇者の宿が出現し、その東にダンジョンが発生、勇者が育って国境防衛で活躍するようになり、現在のような形に落ち着いたんだそうだ。
魔物が侵略してきたとき、逃げることができた旧バルデシア・バルドス地域の住民たちは、それぞれロスタニアやハムラーデルに、また、東端に近いところに居た者らはティルラへと逃げた。
ロスタニアが旧バルデシア地域の地図を――正確なものではないが――所有していたのは、ロスタニアに逃げのびたバルデシア地域の住民たちが伝えたからだそうだ。
もともと人数もそれほど居なかったが、人間よりも家畜の数のほうが多かった地域だ。全ての家畜を養えるほどの草原など、3つの国それぞれには無い。結果、多くの家畜を見捨てることになった。
それが野生化し、さらには魔物化した、と言われている。
現在のような防衛体制で落ち着いた頃には、それら角ヒツジや角イヌ、角イノシシが多かったらしい。
困ったことに、ヒツジにはもともと角があり、魔物化の証である角は体毛に隠れて見えないのだ。そして群れるし角イヌがまるで牧羊犬のように統率したりする。
しかも見える距離なら真っ直ぐに襲い掛かってくるはずの魔物が、近距離まで反応しないのだ。これによって多くの犠牲者がでた。
そして次第に角イヌや角ヒツジが減り、元々はバルドアに居なかった角サイや角サルというような魔物が増えていったということらしい。
サイやサル、と呼んでは居るが、以前すこし触れたように元の世界のサイやサルとは似ているけどだいぶ違う生き物だ。
まぁ俺だって元の世界のサイやサルについて全ての種類を知っているわけじゃない。
小学生ぐらいの頃に動物園で見たとか、テレビで動物を扱った番組で見た程度でしかないんだから、それとは違うなーってぐらいしか分かってない。
それでそのサイやサルはどこから来たんだろう、どこに居た動物なんだろうって話になったが、ウィノアさんはそんなことにそもそも興味がないらしく、『北は万年雪がある高い山脈があるから南のほうじゃないですか?』とどうでもいいような返事だった。
シオリさんも、そういう研究がなかった訳ではありませんが、と前置きしてから、サルは南部沿岸あたりに樹海と言われている鬱蒼とした森林があって、そこに生息していたものではないかということらしい。
サイはハムラーデルの西部のほう、つまり樹海の切れ目になっている丘陵地帯を南に抜けるとハムラーデル王国の領土らしいが、そこは草木が少ない砂漠気候の荒野となっているらしく、サイはそこから来たのではないか、そこにいた動物が魔物化したものではないか、という説が有力らしい。
現在では、そのハムラーデルの荒野地域――ハムラーデル王国は国土の半分以上がそうした砂漠気候の荒野だそうだ――には砂漠の塔と呼ばれる古代遺跡と、炎の洞窟と呼ばれている熱風が吹き出る洞穴があり、そこにはそれぞれ強力な魔物が生息しているんだそうだ。
昔は勇者ヨーダと勇者カナの2人がその周辺の魔物を討伐して数を減らしたこともあったそうで、現在は勇者番号3番のジローさんが冒険者の一団を率いてそのあたりの魔物を減らす任に就いているんだそうだ。
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ジローさんの話が出たついでに、他の勇者さんたちの話を聞いてみた。
でもここまでで結構な時間をとらせてしまったこともあって、簡単になら、といいつつ少しだけ話してくれた。
「タケルさんたちが会ったことのない勇者というと、クリス、ロミ、コウ、トール、ジロー、カズの6人でしょうか?」
- そうですね。
「そのうち、クリスはトルイザン連合に行くまでの幼かった時期のことしか知りません。最初のうちはヨーダやハルトによく懐いていたし、普通によくいる強さに憧れる子でしたね。確かロシア人とのハーフだったと思います」
シオリさんは昔話をするときの癖なのか、時折左手の人差し指を立てて顎の左に添えたりつんつんとつついたりしながら、少しだけ斜め上を見上げる仕草をする。
何というか、古風な雰囲気が漂うんだよね、このひとがやると。
見かけは若くて、20代にしか見えないんだけど、古い映画で見た年配の落ち着いた女性のような雰囲気が時々現れる、そんな印象を受ける人だ。
- どうして彼はトルイザン連合に?
「ああそれは、勇者が宿に6人揃っていて、全員で行動を共にしていた時期があったのですが、その当時はまだ各国に勇者に関する協定がありませんでした。
そこで、集まっているなら自分の国に勇者という強力な人材を取り込み、あわよくば王族の血筋に取り込んでしまおうとした国々が、王子や王女を送り込んで勇者を篭絡しようとしたのです」
あまりいい思い出ではないのか、眉を少し寄せながら話してくれた。
このへんは詳しく聞かないほうがいいかもしれないな。
- そうでしたか、それで彼はトルイザン連合に行ってしまったと。
「ええ。その後は私はクリスとは会ったことがありませんので、彼のことは私よりむしろハルトのほうが詳しいでしょう」
- なるほど。それで他の方々についてはどうでしょう?
「ロミ。あの女のことはあまり言いたくはありませんが…、あの女が一婦多財って言っていたのですけれど、そこだけは私も同意しますね。当時は何て女だと思ったものですが…」
あの女?、とても憎らしそうに言うので尋ねたくない。
「シオリ姉さん、一夫多妻じゃないんですか…?」
「違うわ、一婦多財よ」
「え?、違うんですか?」
「大違いよ?」
微妙に発音が違うようだけど、『たざい』って言ったような?
小首を傾げる俺たちに、シオリさんは薄く微笑むだけでそれ以上説明しようとはしなかった。
「次はコウね。彼は愚かしくもあの女に御執心だそうです。それで騙されて何度も帰還しているのにも関わらず、ですね。そういえばコウはサクラに対抗心があるそうよ?、どうしてかしらね?、サクラ」
すこし意地悪そうな表情で視線を流すシオリさん。
「姉さん勘弁してください、私がこっちに来た当時、勇者の宿で出会ってしまったことがありまして、結構苛められたんですよ。やたらと先輩風を吹かせてちょっとした用事を思いついては使いっ走りをやらされました。あれは対抗心だったんですか?」
それを受けるサクラさんは本当に困り顔だ。
そりゃそんな先輩だったら俺だってイヤだ。
最初の時期にそんなのに遭遇しなくてよかったよ…。
「あら、そうだったの?、『よく面倒を見てやっていたのに『剣の勇者』なんて呼ばれやがって』と言っていたらしいけれど…」
人差し指を口元に当てて不思議そうに言う。こういう所がなんとも不思議な雰囲気だなぁ、もう古い映画でしか見ないようなそんな仕草。
あ、元の世界の話ね。現在でもそういう仕草をする人は居るのかもしれないけどね、俺は見かけたことがなかったので。
「いい機会だから言っておきますけど、『剣の勇者』って一体誰が言い始めたんです?、私は自分からそう名乗ったことなんて無いのですよ?!」
「それを私に言われてもね…?」
「だって姉さんが…」
「あのぅ、ホーラードの書物にも書かれていましたよ?、太刀筋や剣を振る姿がとても美しく、まさに『剣の勇者』の名に相応しいと」
「貶されているわけではなく、むしろ称号なのだからそんなに嫌がらなくても良いのではなくて?」
「それはそうなんですけれど、使いっ走りや雑用ばかりやらされていたのに、面倒を見たなんて言われて、挙句、『呼ばれやがって』だなんて私のせいではないのに…」
「そういうのは当人に言ってやりなさいな」
「だってあの人、会うたびに勝負だ勝負だ模擬戦だ本気でやるぞ勇者は死んでも大丈夫だから、ってうるさいんですよ、大嫌いですよ」
サクラさんがそこまで言うぐらいなんだから、相当煩わしいんだろうなぁ…。
「ふぅん、そこまで嫌っていたなんて、彼もある意味哀れね、まぁあの女に入れあげているってだけで哀れさも極まっているのだけれども、あ、そうだ、サクラが嫌ってるって今度見かけたら伝えておくわね」
「やめてください!」
「冗談よ、だいたい会う機会なんて無いんだもの」
冗談でもやめてあげて。
話を変えよう。このままだとサクラさんがかわいそうになってきた。
- それで次はトールさんでしたっけ。彼、でいいのかな、どういう人なんです?
「トールについては私もよくわからないとしか言えませんね…、元の世界で一体何に影響されたのか分かりませんけど、『滅私によって最良の行動ができる』、『自分よりも世界。勇者として世界を救うとする判断に誤りはない』なんて言ってることは凄いけれど、やってることはただの無謀ですし…」
- それだけ聞くと変な人ですね。
「そうね、そうそう『武士道』だったかしら?、何かそういう話をしていたって勇者隊のひとが言っていたらしいです。それぐらいですね、あとは帰還しては数年寝ているだけという印象です」
- そうですか、次は先ほど少し話がでてきたジローさんですが、どんな人です?
「彼については私はほとんど知りません、ハルトが面倒を見たらしいので彼にきくとよいでしょう。
最後はカズですね、ジローと違って、カズのことはハルトより私のほうがよく知っていると思います。
彼は6年かけて『ツギのダンジョン』を踏破して、その過程で『ツギの街』で商いをしていたロスタニアの商人と懇意になり、その縁でロスタニアに来て、私のもとを訪ねてきました。
がっしりした体格と規律を重んじる性格のこともあって前衛職としてロスタニア防衛隊に混じって活躍をしてくれました。
それでロスタニアがダンジョン攻略をするときに、これは第二次ダンジョン討伐隊だったかしら、それに参加したのです。
ところがその討伐隊は大敗という結果になって、彼は帰還しました。討伐隊長の報告では、近くに居た兵士を庇って裂け目から下に落ちたということでした。
以上ですね」
裂け目?、ああそういえば西4のほうにあったな、裂け目部分は狭いけど中はただの深い穴で魔物も居なかったし、他に繋がる通路というわけでもなかったので、気にせず普通に埋めてしまったけど。
- なるほど、ありがとうございます。
「そのように感謝されるほどの内容でも無いような気が致しますが…」
- いいえ、この魔物侵略地域、バルドアでしたか、その経緯や、他の勇者さんたちのお話は今後のことを考えると有用な情報ですよ。
それに他では聞けませんし、感謝してるんですよ、これでも。
「そうですか?、なら私もお話をした甲斐があるというものです」
- それで、どうされます?、ロスタニアにお送りするならすぐにでも構いませんし、何なら夕食まで少しサクラさんたちが訓練するのを見学されるのもよいでしょう、ついでに夕食もご一緒されても問題ありませんよ。
そう尋ねるとシオリさんはまた人差し指を口元に当てて少し考えるそぶりを見せた。
「そうですね、せっかくですし、夕食もお呼ばれにあずかることにします。昼食は美味しかったのですが、あまり心に余裕がもてなくて、味わうことができなかったのが心残りだったのです」
といって上品に微笑んだ。
20180806:文言や言い回しを幾つか訂正。
20180808:西端⇒東端 なんというミスを…orz