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■プロローグ 6日目 12月31日■

初めて小説を書きますので、至らぬ点も多いかと思いますがご容赦ください。

定期的にアップしていければと思っております。

書籍化・映画化を目指しています。

皆様のご意見、ご感想をお待ちしております。


何卒、お手柔らかによろしくお願いいたします。


■プロローグ 6日目 12月31日■


 

 明日からの新年をじっと待つかの如く、夕暮れの街は静まり返っていた。本来は多くの人で賑わう街には、人の気配が全くなく、雪が降りそうなほどの冬の寒さが、より一層静けさに拍車をかけているかの様だった。

 そんな静寂を全て打ち消しながら、シンイチは走った。

 まるでライオンに追われるシマウマの様に全力で逃走していた。ここで逃げ切らなければ捕食されてしまうという、シマウマが弱肉強食の世界の中で抱くものと同様の恐怖感をシンイチは感じていた。全身の筋肉が限界を超えて悲鳴をあげているが、止まるわけにはいかない。

「君、待ちたまえ!」

 警察官の制止をまるで聞こえていないかの様に、シンイチは無視した。

「待て、こら! クソガキ」

 警察官の後方数メートルには、明らかに堅気でない男が追いかけている。

 街の静けさは警察官と反社会勢力風の男に追いかけられている青年、という異様な構図に完全に打ち消された。コンビニで最低限の買い物をして、なるべく人に会わない様にと急いで帰路につこうとしていた街にいた唯一のカップルは、この勝負の行方に完全に目を奪われていた。

 シンイチも走り抜けた時に一瞬見たこの一組のカップルに、驚きを隠せなかった。よかった……まだ仲良く過ごすカップルは世の中に存在するのだとわかると、胸が熱くなった。ほんの数日前までは平和な世の中だった。クリスマスの夜、街中に幸せそうなカップルはいくらでも見かけたはずだった。

そうだ、俺も六日前のちょうど今頃は、シオリとデートをしていた。最高に幸せな瞬間だった。けれど、もうあの喜びは二度と味わえないのだろう……。六日間……たったの六日間で世界は大きく変わってしまった。いや変えてしまったのは俺だ……。

 

 呼吸も限界を超えて苦しかった。シンイチの脳から下された“全力で逃走せよ”という指令が、電気信号として中枢神経から全身すべての末梢神経に伝えられ、一つ一つの細胞にシナプスを介して伝わって行くのがわかった。同時に、心臓はそれに合わせてポンプを最大出力で、血液をすべての血管に送り込み酸素と栄養素を最大限供給する。

 二十一歳の身体能力の優位性を武器に、シンイチは徐々に差を広げて行く。ここまで距離を広げれば認識できないはずだとシンイチは確信すると、瞬間的に角を曲がった。そして、古びたビルと建設中で防護幕で取り囲まれた建築現場の隙間を見つけ、その路地に飛び込んだ。

「なんで、俺がこんな目に……」

 止まらない心臓の動悸と息切れの中でも大粒の涙がボロボロ出ることをシンイチは知った−—。




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