1章 初めての接触
主人公等の登場人物が安定しないので(口調等)、ある程度進みましたら、補填の人物紹介等考えています。
「―――あなたに魔の加護があり―――」
最後に見た目も眩むような光とは逆に、暗く深い闇へと意識が落ち様かと言う時、頭に直接語りかけるような優しい声が響く。
その言葉尻は落ちていく意識にかき消されるかの様に聞き取れなくなり、無音と孤独な闇が視界を支配していく。
そしてそのまま俺の意識は闇に呑まれていった。
…………。
「……き…ぃっ、」
「………もの、……お……さぃっ…」
遠い意識の中で俺は揺さぶられていた、とても柔らかく気持ちの良い感触と共に。
あぁ…、これ、凄く気持ちいい……。
「…なぁっ!?」
何か意識の中に言葉が入ってくる様な気はするが、今はそんな事よりも…
「……くっ…」
「起きなさいと云っているの!この無礼者っ!」
「ぎゃああぁぁぁっっ!!?」
突然深い意識の中にハンマーの様な鈍器で打ち付けられたかの衝撃が走ったかと思えば、先ほどまでの正しく夢のような感触は消え去り、次に自分を迎えたのは堅い堅い石の様な感触。
あまりの事に情けない悲鳴を上げてしまうが、そのおかげか落ちていた意識が少しずつすっきりとしてくる。
「………」
「…生きてますの?」
「な、何とか……」
顔を下…地面へ向けている為相手の姿はまだ見えないが、頭上から響く女性の声に何とかそれだけを口にする。
意識がはっきりとしてくると、次は重い痛みが頭に走り出す、何か殴られた時の痛みに似ている。
というか、多分これ殴られてるよな、いや間違いなく。
「さ、それでは行きますよ」
へ?行くって何処へ…。
頭上から聞こえてきた声の主は早々に興味が無くなり歩き出したのか、頭上から気配が遠ざかる。
「おい、生きているならさっさと立て!この狼藉ものが!」
「うあぁっ!?」
俺は地面へと付けていた顔を地面から無理矢理剥がされかと思いきや、次は両脇を思い切り抱えられ立たされ歩かされる。
それはまるで罪を犯した者が連行される姿のそれである。
「へ?へ?へ?」
意識がはっきりとしてくると、自分が今どういった状況なのかがわかってくる。
「俺…連行されてる?」
声に出すも、両脇を抱えている左右の兵士は声も出さず、ただ絶対逃がさないと言わんばかりにキツく俺の腕を抑えている。
……って。
「…兵士?」
自分で言ったその聞き慣れない単語に違和感を覚える。
俺今兵士って。
そこでふと気づくと目の前の視界には、見慣れない馬に重たそうな鎧を着込んだ見るからに屈強な人間、その背中には大きな剣が見え手には槍を携えている。
そして視界いっぱいに広がる雄大な草原。
先ほど(?)までいた公園も緑はあったが、草原なんて物とはほど遠い物だ。
自分の周りには10人程の兵士、そしてその前を歩くのは馬に跨がる兵士、その数はざっと数えただけで20人以上は見て取れる。
「な……なんだこれ…」
己の理解の範疇を超えた情報量にパニックを通り越して呆然としてしまう。
何だこれ、どうなっているんだ。
「(…夢かな?)」
と思ってみたところで、今まさに頭の方からじわじわと広がる鈍痛にこれは現実なのだと思い知らされる。
「あ、あのぉ〜」
「…………」
「失礼ですけど、ここって何処かわかりますか?」
「…………」
何となく無駄なんだと思いつつ左右を抑える兵士(?)の方に聞いてみても、思った通り反応は無い。
僅かに返ってきたのは、「無駄口を喋るな」と言わんばかりの圧力と腕を抑える力が強くなるだけだ。
「う〜ん、どうしたものか…」
もしかしたら言葉が通じないのかもと思うが、先ほどの女性との応答を思い出し、言葉は通じるのかと内心少し安心してしまう。
ただこの状況からは正直どうしようも無いんだけど。
抵抗を試みたところで、今の自分の状態を鑑みると全くと言って良いほど、良くなることが想像できない。
まずみんなが携えている武器が危険すぎる。
かといってこのまま連行されて良い物かと思うけど…。
そもそもとして、連行されることを何かしたのかもわからない。
「あ、あのぉ〜」
「…………」
「失礼ですけど、俺って何かしたんですか?」
「…っ!……」
「あ、反応してくれた」
「…………」
「俺、何かしましたか? それなら謝りたいんだけど…」
そう口にした時だった。
「止まりなさい。」
前を闊歩する馬の集団の先頭であろう馬の歩みが止まり、周りの兵士とは明らかに違う鎧を身に包んだ女性が優雅な仕草で跨がっている馬から降りる。
それに遅れる様に左右の馬からも兵士が2人降り、その2人を引き連れこちらにゆっくりとした動作で近づいてくる。
そして女性は俺の前、少し距離を空けた所で止まる。
「あなたは今自分が何をしたのかを問いましたか?」
「……ぇ……」
それは先ほど初めての短い応答を済ませた、女性の声でありその持ち主である。
何処か優しそうな雰囲気の声色だが、ハッキリとした口調からは心の強さも感じるようだ。
「あなたは、今、自分が、何をしたのかを、問いましたか?」
女性は怒っていますと言う感情を表すかのように、細かく切りながら再度問いただしてくる。
「え、あ、はい、そうです……」
言葉の語尾がどんどん小さくなっていく。
目の前の女性は、一言で言うならば外見は豪華と言うのがしっくりくる風貌だ。
可愛く整っている顔は優しそうな雰囲気を漂わせているが、真剣にこちらを見る藍眼と凜とした表情は優美さを感じさせ、その金色に輝く長い髪と相まって見たもの全てを魅了してしまう程綺麗であった。
それをさらに助長させているものが、女性の身体や身に纏う鎧である。
女性は上半身と下半身で分けたような鎧を身につけているが、その上下の鎧は傷一つ無く所々には金等があしらわれているのか、光が当たる度にそれらが輝き身につけている者の高貴さを鎧からも感じさせるかの様な代物だ。
かといって身につけている女性が下品に見えることは無く、その女性の優美な佇まいがより強調される物となっている。
そんな目の前の女性の一点に俺の目が向けられる。
「(す、凄い、デカい……)」
女性の象徴とも言えようその大きな乳房へと。
身につけている鎧では収まりきっていない大きな乳房の上乳は見事な谷間を作り出し、見なさいと言うわんばかりに鎧の外へとさらけ出されいる。
鎧と鎧の間から見えるシュッとしたくびれは、その大きな乳房を強調するもので、まさに大きな谷がそこにあるかの様な壮観なものだった。
「いいでしょう、あなたの罪をお教え差し上げます」
女性はそんな俺の視線など気にもしていないのか、変わらぬ態度で言葉を続ける。
「まず私への暗殺未遂の疑惑があなたにかかっています。突然木の上から私目がけて落ちてくるものですから当然でしょうね」
「ち、ちがぅっ――」
ただし、と彼女は言葉を続ける。
「私はこの件に関しては、あなたを疑ってはいません。周りの兵士の皆さんはまだ疑っていると思いますが…」
「違いますっ!?人殺しなんて俺出来ませんよ!」
謂われの無い疑いに声を上げるが、兵士達の目は確かに疑いと怒気と殺気に似た感情を感じさせる。
「ですから、私は疑っていません。そもそもとして武器も所持していない様でしたし、何より気を失っていましたので」
「……ですが」
女性の言葉に心ばかり安心したのは束の間。
「落ちてくるやいなや私の鎧を剥ぎ、さらにはその……ぉ弄った事は断じて許せません」
「剥いで、弄ったって?」
彼女の口から新たな罪(?)であろう言葉が紡がれるが、羞恥の為なの頬が若干朱に染まる女性の言葉は聞き取れない部分があった。
「あの、俺が何を弄ったんですか?」
「この暗殺者風情が、恥をしれ!」
女性の隣に起立していた兵士の一人が、槍の柄部を手慣れた手つきで腹部に突き刺す。
「っぶぅっ!…」
今まで体感した事の無い痛みに、出したことも無いくぐもった奇妙な声が口から漏れてしまう。
そのまま膝か地へと倒れ込みそうになるのを何とか膝立ちで耐え、それでも腹部を両手で抑えて擦り少しでも痛みを紛らわそうとする。
「おやめなさい。」
「し、しかしこの者は……」
女性はさらに手を加えようとする兵士達を手を上げいなすと、そのままのもう一度言葉を続けた。
「あなたは私の鎧を剥いだ後、事もあろうに私の乳房を弄ったのです。」
今度はしっかりと聞こえる言葉が女性の口から発せられる。
聞いてしまってから俺は、聞いたことを深く後悔するが時既に遅し。
「な、…っ、…なる…ほど…」
まだ痛む腹部を抑えながら俺は、何となく遠い意識の中で感じていた、あの気持ちの良くて柔らかい幸せな感触を曖昧な記憶から必死にたぐり寄せる。
あんなに柔らかいのか……と痛みに腹部へと当てている手でどうしても先ほどの女性の感触を思いだそうと確かめてしまう。
「では、理解して頂けたと思いますので、行きましょうか」
女性はそんな俺にはもう目を向けることも無く場を離れると、降りてきた2人の兵士共々再び馬に跨がり何処かを目指し進み出す。
周りの兵士や馬もそれに伴い、ゆっくりと歩き出し俺も再び引きずられる様に歩かされる。
腹部の痛みが少し和らいだ頃、「(そういえばこれって何処に向かってるんだ?)」と気になるが、周りに聞く事もできず、俺はそのまま目的地もわからない旅にズルズルと引きずられていくのだった。
次回は主人公の死刑を予定しています(すっとぼけ)