序章
主人公の設定が安定しない…
ある夏の終わりのお昼過ぎ。
商店街から自宅までの帰路を上機嫌で歩く。
その手には商店街の自称地域密着型スーパーの福引きで手に入れたお菓子の詰め合わせ袋が握られている。
俺ももう学業を卒業し働く身であるが、何時になってもこういった人生のサプライズは嬉しくなるもんだ。
と言っても、2年前までは俺も学業が本分ではあったけど。
今日は休日と言うこともあり家を出てぶらぶらしていたのだが、どうやら正解だった様で気持ちがいい。
後はこのまま自宅に戻り、袋を開封するだけ…なのだが。
「…ちょっとくらいいいよな?」
どうも良い事があったからなのか、性分か、袋の中身を直ぐにでも確認したい衝動に駆られる。
「近くに公園がある事だし、ちょっと寄ってみようか」
衝動に駆られるままに、俺は公園へと足を向ける為に帰路である住宅街から少し外れる様、方向を変える。
「公園で食べるお菓子ってのも乙なものだよな」
そう小さく口にしながら、帰路から外れる事数分で目的の公園にたどり着いた。
時間がお昼と夕刻の間の時間であるからなのか、公園には人影は殆ど無く、備え付けてある少し錆びたベンチに腰を下ろすと、周りには人の気配は感じられなくなってた。
「いい大人が公園でお菓子ってのも可笑しいし、人が居なくて助かった」
「さてさて……」
早速とばかりに、戦利品の『特賞:お菓子の詰め合わせ』と書かれている紙袋の封を開封し、中身を確認する。
「お、これ知ってる!」
さっそく知っている駄菓子を見つけはテンションが上がる。
「そうそう!こんな味だった気がする!」
それを口にしては、昔食べたであろう味を思い出す。
袋の中身は、基本的に駄菓子の詰め合わせの様だった。
外から触った感触で、大袋のお菓子では無いと思っていたが、それでも大小様々な駄菓子が入っているのは凄くわくわくするものだ。
「これ最近の駄菓子なのか、見たことないな」
駄菓子を頬張りながら、次々と駄菓子を袋から出していく。
知っている物から、知らない最近の駄菓子であろうお菓子が次々に袋から顔出のは、見ているだけでも楽しい気分にしてくれそうだ。
そうして、袋を物色しながらは、駄菓子を堪能している時だった。
不意にベンチの後ろにある茂みからひんやりとした風が流れてきたのは。
「…ん?」
今は夏も終わりとは云え、まだまだ汗を流す時期。
周囲とは明らかに違う温度差に違和感を感じる。
「後ろの茂みで誰か遊んでるのか?」
そうなると、俺の可笑しな開封式が見られていた事になる訳で…。
「まぁ、見られて困る物でもないけど」
と、言葉に出し後ろに目を向けると、そこには誰も居ない。
茂みの中で遊んでいるなら、葉と葉が擦れるような音がしたり、気配はあると思うんだけど…。
「…気のせいか?」
だが、そう言っている間も自分の体には冷気の様なひんやりとした空気が流れてきている気がする。
今自分が目を向けている茂みの奥から。
「ちょっと気になるし、見に行くか」
袋から取り出しベンチに置いていた幾つかの駄菓子をズボンのポケットに入れて立ち上がる。
「ちょっと確認してくるだけだし、袋は置いておいて大丈夫かな」
そうして茂みの中の違和感の根源を確認する為に、俺はその茂みへと足を踏み入れた。
するとそれであろう根源は直ぐに見つかった。
「どう考えてもこれだよな…」
それは青白く光るモノ(?)だった。
中心に光源があるそれは、周囲に先ほどの違和感のある冷気を放ちながら浮いていた。
そう浮いているのである。
「これって何かヤバそうな気がするんだけど…」
世間一般で云う所のUMAではないかと疑ってくれといった風貌である。
「そもそもこれ物体なのか?気象的な何かにも見えるけど…」
確かに光の本体の様なモノが見えるけど、明らかに冷たい風が吹いてるって事は、やっぱり気象的なモノなのか?
「竜巻ってこんな感じでできるのかな…」
勿論竜巻を実際に見たことが無いので、竜巻が発生するメカニズムはわからない。
「テレビでしか見たことないけど、これがそうなのかな…」
冷たい風は確かに光源の周囲を回るように吹いている、だがしかし……。
「竜巻って中心が光ってなんかないよな?」
……たぶん。
「テレビで見たのは砂煙みたいだったし…」
「とにかく危険な感じはしないけど、一応警察でも呼ぶかな」
お菓子を突っ込んでいる反対側のポケットから、携帯を取り出し操作をしようとした時だった、感じていた冷気が突然感じなくなったのは。
「…?」
無くなった違和感に反応を示した瞬間にそれは大きく光りだし、瞬間の事で反応ができるはずも無く、俺は青白い光に呑まれてしまった。
光は瞬間的にまとった大きな光と共に消え、先ほどまでその場にいた人物も姿を消した。
ベンチに置いてあるお菓子の袋を残して………。
次回異世界辺です