その8 バンカラ雅人
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体育館裏。
そこで竹内館出身の不良たちが集合していた。
全員が蟹股でしゃがんでいる中、角刈りの少年だけがリーダーらしい少年の前で立って居る。
角刈りの少年は、みんなの前で今日あったことをリーダーらしい少年に報告した。
「・・・という訳なんです。自分はあのクラスの制覇とかはもうできません。」
すると、すこしボロくなった学帽をかぶった、長い学ランのリーダーらしい少年は腕を組んで答える。
「本当ならどやしつけたいところだが・・・、あのロンリーVさんのイトコじゃ手を出すわけには行かないな。」
「はい、しかも3人とも美少女でして・・・自分にはもう殴れません。」
その言葉に周りがガヤつく。
しかし、リーダーの少年が手を上げると、全員また黙った。
そしてリーダーの少年は角刈りに言葉を続ける。
「兼松美羅は『セント兼松学園』のカリスマだ。
しかも荒川餡はいつも荒神流の門弟が付き従っている荒神流の宗家。
そしてあの天道友美とかいう大量のお花隊を引き連れて歩いているお姫様は『ペルシア学園』のリーダーで間違いないだろう。
お前のクラスは間違いなくこの学校の頂点が集まってやがる。」
すると集まった不良の中で何人かが立ちあがり言った。
「あの、俺達は荒川餡さんとは戦えない。餡さんと戦うときは外れさせてくれ。」
それを聞いてリーダーの少年はうなずく。
「わかってる。竹内館は喧嘩をしても退学にならないから武道家が集まって腕を競う学校だった。だからお前達のように荒神流の人間も多くいるよな。自分の流派の宗家とは戦えないのは俺も理解している。そのあたりは心配しなくて良い。」
「す、すまねえ。」
すると、集まった不良の後ろのほうからリーダーの少年に向かって少女が質問した。
「その荒川餡は荒神流で一番強いのか?。」
リーダーの少年はうなずく。
「ああ、あの若さで宗家になるのは半端じゃねえ。まあロンリーVさんや、大黒魔人と言われた、玄太兄ちゃんほどではないだろうが、10代最強くらいなのは間違いないだろうな。」
「おい、それはおかしくないか?なんでロンリーVよりも弱いのに荒神流のトップなんだ?。」
「なんだ、お前はそんなことも知らないのか?ロンリーVさんは叔父の荒川無為の策略によって荒神流を追放されたんだ。
俺は武威さんが宗家になると思っていただけにショックだったぜ。だけど荒神流を追放された後の方が武威さんは偉大な業績を残したから、あれで良かったのかも知れないな。」
「そうか・・・、そしてついでに聞く。なんでお前は偉そうなんだ?何者だ?。」
その言葉に、そこにいた全員が「は?」と言いながら、今話していた少女のほうを向いた。
リーダーの少年も、やっと部外者と話をしていたことに気づき立ちあがる。
「なんだ、この荒くれ者の集団に部外者が入っていたとは驚いた。
いい度胸いているじゃないか!。知らないなら教えてやろう、俺の名は大黒雅人。
大黒流宗家の大黒玄太の弟で、十代最強候補の一人だ!。お前は何ものだ!。」
すると少女もスクリと立ち上がった。
「私は、荒川武威さんの真荒神流で一番弟子、天道冬美だ。
そしておそらく私が十代最強だ!。
ついでに言えば、Vさんを追い出した荒神流の奴らは全員ぶっ倒す!
そして、さらについでに言えば大黒玄太とは中国で一緒に戦った。
お前はブタオタクの弟か?似ていないな。」
すると、大黒雅人は急に血相が代わった。
いきなりジャンプして10メートルは離れていた冬実の前に飛び込み、冬美の襟を掴んでいった。
「お前、玄太兄ちゃんが中国でどうなったか知っているのか?知ってたら教えろ!玄太兄ちゃんは生きているのか?。」
冬美はしばらく黙ってにらんだ。
そして軽々と襟を掴んだ雅人の手を外し言う。
「お前ムカつく。だから教える気はない。」
にらみ合う二人。
しかし、冬美の後ろから大人の女性の声がした。
「冬美様、そんな事を言ってはいけませんよ。弟さんでしたら玄太さんがどうなったか教えて差し上げないと。」
雅人が声の方向を見ると、大きな荷物を持った女性がいた。
冬美は振り返り不満そうに言った。
「でも房代さん、でもしかしだ、人の襟を掴みながら聞いてくる無礼な奴に教える事はないですよ。」
すると、雅人は房代に向かって急に土下座をしてきた。
「お願いだ、兄ちゃんが生きているのか死んでいるのかだけでもお教えてくれ。俺は兄ちゃんをだれよりも尊敬していて、心配で仕方が無いんだ。このとおりだ教えてくれ。」
まわりの不良たちは、ハラハラした表情で雅人を見ている。
房代は雅人の肩にそっと手をあてて、雅人を起すといった。
「顔を上げてください。仲間の前で土下座できるなんて、あなたは玄太さんに似て器の大きなリーダーですね。
大丈夫です、玄太さんは中国の数万のロボット兵器と素手で戦い、最後は巨大なロボット兵器を倒したと聞いています。
そのあと、思うところがあったようで、治療の後に旅立ってしまったという話ですが、きっと今でも更なる強さを求めて修行しているはずです。ご安心ください。」
嬉しそうに雅人は顔を上げる。
「あ、もしかしてあんたも玄太兄ちゃんをしってるのか・・ですか?。」
無理やり敬語をしゃべろうとする雅人に、房代はクスリと笑う。
「ええ、私も空から降ってきた玄太さんに命を助けていただいた事があるのですよ。この冬美様も『ブタオタク』と呼んでいますが、これはそれだけ仲が良かったからで、冬美様も随分助けてもらいました」
すると冬美は不満そうな顔をしたが、うまく反論する言葉がでなかったようで、何もいえなかった。
大黒雅人は嬉しそうに、ポロポロ泣き出した。
「そうなのか、さすが兄ちゃんはすげえよ。しかもこんな美人を劇的に助けたり、巨大ロボットを倒したりしていたのか!よかった、生きているのか・・・良かった・・・。」
すると傍にいた不良たちも泣きながら数人雅人に駆け寄ってきた。
「よかったすね雅人さん、ほんとうに良かったっすね。」
すると、それをぼーっと見ていた冬美は雅人に言った。
「だったら私がブタオタクと一緒に戦ったときの話をしてやろうか?
麻草首相を暗殺から助けたり、あいつが36人の美少女&セクシースナイパーと共に、Vさんを助けに行った話とか。」
雅人は目を輝かせて立ち上がる。
「おまえええええ、兄ちゃんと一緒に戦ったのか?しかもなんか凄い戦いじゃないか。教えてくれよ!。」
すると、冬美は房代の後ろにある大きな荷物を指差し言った。
「じゃあ、私の乳母の房代さんの代わりに、あの大きな弁当を私の妹である天道友美に運んでくれ。
そこにはお前の兄を知る美少女が30人以上、この弁当の到着をまっているであろう。そしたら話してやる。」
そういわれて雅人はチラリと房代を見て、すこし顔を赤らめる。
「お、おう。だったらしょうがないから運んでやるよ。そのかわりにちゃんと話せよ。」
すると、雅人が荷物を持つ前に、まわりの不良が我先にと荷物をもってしまった。
みんな、校舎の窓から友美を中心に談笑するエスパー部隊を目にしているから、チャンスとばかりに飛びついたのだ。
不良たちの間では「お姫様とお花隊」というあだなが早くもついているくらいだ。
それほど、あの集団は目立っていたのだ。
雅人は慌てて、不良の一人から荷物を奪い取る。
「ば、バカ野郎、おれが頼まれたのに、俺が一つも持っていなかったらカッコ悪いじゃないか!。」
すると房代はクスリと笑うと雅人に言った。
「ありがとうございます、さすが男の子は頼りになりますね。」
そんな房代に「おうよ」と言いながら、また雅人は少し顔を赤らめるのだった。
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大黒雅人マメ知識:考えることは苦手。




